動物愛護法の改正について(参議院浜田聡議員のお手伝い)

  連休ベリマッチ、とはいえ、マンボウ延長してる頃な、、、。

 さて、動物愛護に関して少し検討してみます。

 動物愛護法が改正されたということでその内容を確認してみます。

資料:環境省、改正動物愛護法

http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/r0305a.html

法改正は既に行われており、既に2019年に施行しています。改正点の内容によっては段階的に期間的な猶予が設けられています。改正内容を大別すると


①数値規制(飼養管理基準の厳格化)

②虐待の罰則強化

③幼齢犬猫の販売制限

④マイクロチップの装着の義務化


です。

 まずは①の数値規制の概要です。

資料:環境省、飼養管理基準として定める事項

 寝床や休息場所となるケージの大きさはタテ体長の2倍×ヨコ体長の1.5倍×高さ体高の2倍とすることになります。運動スペースの確保と運動時間はケージサイズの床面積の6倍×高さ体高の2倍の運動スペースを確保し、1日3時間以上は運動スペースに出し運動させることが義務付けられました。

資料:環境省、飼養管理基準として定める事項

 1人につき繁殖犬15頭、販売犬20頭まで飼育が可能です。従業員1人あたりにつき、繁殖犬は15頭まで、販売犬は20頭まで飼育可能となります。生涯出産回数は6回まで、メスの交配は6歳までとなります。ただし、満7歳時点で生涯出産回数が6回未満であることを証明できる場合は交配は7歳までです。また、7歳未満であろうとなかろうと、年齢や出産回数にかかわらず、繁殖に適さない個体は交配を認められません。①については2021年6月から施行されています。既存の業者に対しては繁殖用の犬の場合は2022年は25頭、2023年は20頭、2024年は15頭までという段階的な規制となっています。

 次に②の虐待の罰則強化です。動物をみだりに殺したり傷つけたりする行為には、従来は2年以下の懲役または200万円以下の罰金とされていました。これが改正され、現在は5年以下の懲役または500万円以下の罰金に厳罰化されています。また、動物の虐待や遺棄に関しては100万円以下の罰金とされていたものが、現在は1年以下の懲役または100万円以下の罰金とこちらも同じく罰則が強化されました。

 そして③の幼齢犬猫の販売制限についてです。8週齢規制が導入されます。8週齢規制とは生後56日(8週)に満たない犬猫の販売を禁止する規定です。従来までは生後49日(7週)とされていたものから1週間延長されました。ただし、日本犬である柴犬、秋田犬、北海道犬、甲斐犬、紀州犬、四国犬については「天然記念物の保存」を理由に、ブリーダーからの販売に限り8週齢規制の適用対象外とすることが、動物愛護法の付則に盛り込まれました。この規制は2021年6月から運用開始されています。

 上記に加え、④の飼い主がすぐに分かるよう犬や猫にマイクロチップの装着を義務づける改正動物愛護管理法が2022年6月に施行されることになっています。

資料:AbemaTv(2021年12月8日)より

 繁殖を行うブリーダーやペットショップなどの業者には、販売用の犬や猫にマイクロチップを装着し、犬や猫の名前や性別、品種、毛の色のほか、業者名を国のデータベースに登録することが義務づけられます。また、犬や猫を購入する際、飼い主も氏名や住所、電話番号などを30日以内に登録することが義務づけられます。既に飼っている人や、譲り受ける人、保護団体などは装着が努力義務となっています。

 以上が動物愛護法の主要な改正点です。今回の改正では、動物虐待を阻止する目的としては大きな進歩であるという評価がある一方で、ペット先進国にはまだまだ及ばず実行力にも疑問が残るといった意見も多く挙がっています。

 ①の業者の飼養環境に関して異論を唱える人は稀だと思います。2匹の犬に対して畳一枚分の運動スペースすら用意できないのなら、その業者はそもそもペットの繁殖や販売に不向きだと思います。アニマルウェルフェアの考えの一つに「自然に行動できる自由」つまり、その動物が自分の意思で自由に行動するための空間・環境が整っている、その習性に合わせて飼育される環境であることが当然とされます。ペット2匹につき畳一畳のスペースを用意する程度のことに異を唱える業者がいたとすれば、それは即ち自身で「動物に苦痛を与える業者」であることを宣言しているようなものだと思います。

 頭数制限に関してブリーダーから異論が出ています。悪徳ブリーダーを排除する為に法改正が適正なブルーダーまで窮地に追い込んでいると一部の業者が反発しています。一人につき15頭の飼養が少なすぎるというのです。繁殖業者は犬が15匹、猫が25匹です。販売業者は犬が20匹、猫が30匹です。これを少なすぎるというのです。何を基準に少なすぎるというのでしょうか。供給が減ると需要が高まるだけです。ペットの価格が高騰するだけのことでブリーダーの収益が削減した飼育頭数分だけ減少するという単純な結果にはならないと思います。

資料:環境省作成、方針

 法規制は根拠を明示して行われています。従業員一人当たりの労働の分配には限りがあることから決められた頭数です。従業員一人当たりにこれ以上の頭数の飼養を課すとすれば、それは適切な世話を出来ないことを承知の上での体制か、もしくは労働基準法の基準を上回る労働時間を強いるか、ということになるのではないでしょうか。頭数に制限を設けることに反発する業者の中には薄利多売での生体販売に陥っているという事情もあるのでしょう。この法改正を切掛けに飼育されているすべての動物の生活の質を高めようという考え方に変わって欲しいと思います。

 飼養環境の規定や従業員一人当たりの頭数制限によって多くのブリーダーが対応できずに15万頭以上のペットが行き場を失うという意見もありますが、2024年までに段階的に施行されるわけで猶予期間が2021年から3年間をかけて目標値に達します。十分な期間的な猶予も設けられていることから多くのペットが行き場を失うようなことは杞憂であり、そのようなことにはならないと思います。

 ②に関してはもっと強化してもいいのではと個人的には思うところです。罰則を強化して抑止力を強めることは法の機能として最も期待されることです。この場合、生き物に対する危害を加えることを対象とした規定ですので刑罰の上限はもっと強い方が良いと思いました。とは言うものの数値を伴った明確な罰則強化になったことで動物への虐待行為に対する抑止効果は上がったことは間違いありません。

 ③についてはこれまでも生体販売は56日を超えてからと規定されていましたが、附則によって49日と読み替えられていました。その附則を削除したことから56日、つまり8週以降の販売が正式に施行されます。幼齢の小さく健気に時期に高値で販売したいというペット販売業者の意向はやむを得ないことだと思います。顧客ニーズに沿うとそうなるのですから当然です。ですが、8週齢まで母犬及び兄弟犬と共に生活させることで、成長後の問題行動の予防(社会性の習得)、母犬からの免疫力を高め流通過程での感染症を減少させることに繋がるようです。販売を8週齢以降に規定することはドイツやアメリカと同じ基準に揃えたということなのでしょう。

 ④についてマイクロチップの装着で捨て犬(猫)や迷子犬(猫)の幾分かは解決するのかもしれません。むしろ、マイクロチップの装着を義務付けることで飼育放棄をしないように予防する効果を発揮することが主な目的なのでしょう。マイクロチップのデータは飼い主が自主的に内容を更新しない限り住所も連絡先も更新されません。よって、いざそのデータを必要とするときにそのデータが役立つとは限りません。それでも、飼養放棄の一定の抑止力となるのかもしれないので法に規定されたことは現状の改善になることは確かです。2019年の迷子や飼育放棄の動物は85000匹もいるのです。

 動物愛護法の改正がされるとは言うものの、平成から令和にかけて動物に対する倫理や道徳は目まぐるしく向上したと思います。それはSNSの普及と足並みを合わせるように進展してきたように感じます。SNS上にはペットの画像や映像があふれています。その中にはペットの保護活動を行っている人や団体の情報発信も多いです。ペットの迷子情報や里親募集情報などは有効に機能しているようです。

資料:環境省、犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況

いわゆる保健所での引取り数は約7万匹いるのですが、そのうち殺処分に至るペットは約2万匹となっています。保健所に収容されたペットの7割以上が元の飼い主に返還されたり、新しい飼い主に譲渡されています。もちろん、動物愛護団体に引き取られることも多いのも承知していますが、殺処分されるペットは3割以下となっています。

資料:環境省、犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況より

https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/tekisei/result_2.pdf 上記のようにペットの殺処分の数は急速に減少しています。SNSの普及速度に比例していると言って過言ではないと思います。10年で殺処分の数は凡そ10分の一になりました。SNSによって殺処分危機が迫るペットの情報が画像や映像で拡散されるようになりました。おかげで多くのペットが里親に引き取られています。今や、保護権カフェや保護猫カフェでペットの里親になることは珍しいことではありません。ペット販売業者で購入する以外に保護犬や保護猫を動物愛護団などから引き取るという選択肢を確立できたのはインターネットの普及のみならずSNSの浸透によるところが大きく、動物愛護法の改正など法整備をゆうに上回る効果をもたらしました。犬猫の殺処分ゼロを達成することも不可能ではないと思える状況となっています。都道府県単位では殺処分ゼロと達成しているところもあります。また、自治体の境界を越えて広域的な譲渡活動も行われるようになりました。

 動物愛護法の改正がどうでも良いというつもりはありません。法で規定することでしっかりと違反を取り締まる機能を強化し、生体を弄ぶ悪徳業者の撲滅を目指して頂きたいと思います。

 ペットを取り巻く環境は急速に改善されているとはいえど、営利のみを追求する所謂悪徳ブリーダーがあとを絶ちません。ようするに薄利多売で過剰供給をするのです。ペット市場に過剰な生体が供給されると当然売れ残る生体が増えてしまいます。大きくなってしまった犬猫は売れ残ってしまうことがしばしばです。以前は売れ残ったペットを保健所が引き取って殺処分をしていましたが、現在では保健所は引取りを拒否できるようになりました。保健所が引き取らないことから闇の殺処分業者が暗躍するようになったようです。1匹数千円で引取り殺処分を勝手に行っているようです。もちろん、そのような行為は動物愛護法違反にあたります。今回の法改正でこのような行為は5年以下の懲役、または500万円以下の罰金が科されることとなりました。罰則の強化のみならず、法が形骸化しないように警察が積極的に取り締まらないといけません。また、今後の課題として売れ残ったペットや飼養放棄のペットの引き取り業者の取締りだけでなく、その業者に依頼した飼い主やペット販売業者を対象とした罰則規定も必要だと思います。

 ブリーダーが飼育する幼齢犬(猫)はマイクロチップが装着前であることが多いと思われるので取締りが及ばないことも多いと思います。そういった段階で遺伝子疾患が見られる幼齢犬(猫)をどのように扱うかという問題もあります。

 第一次世界大戦前には世界の列強国は人身売買を行っていました。後進国の人民は奴隷市場で売り買いされていたのです。欧米列強国はそれだけでは満足できず世界中の後進国を植民地化して行きました。今ではそのようなことは人類の恥ずべき黒歴史となっています。願わくばペットに関しても「モノ」として扱うのではなく「命」として尊厳を守るようになればと切に思います。

 世界中でペットショップが姿を消して行っています。ドイツやスウェーデンでは法律で生体販売が禁止されているわけではありませんが、「アニマルウェルフェア」の思想が浸透していることから「命」の売買には否定的なのです。

 イギリスでもルーシー法というものがあり、ペットの第三者販売が全面的に禁止される方向の議論が進んでいます。既に6か月未満の犬猫の販売は禁止され、子犬と母犬が一緒にいる環境を飼い主に販売時に見せることを義務付けるようになりました。

 フランスは2024年から店舗での犬猫の販売が禁止されます。アメリカでもペットの店頭販売を禁止する州が増えて行っています。

 さて、これらの国でのペット購入法ですが大きく分けて3つあります。ひとつは認可された優良ブリーダーに予約して購入する方法。二つ目に、友人などから譲渡を受ける方法。三つ目は動物愛護団体などに里親登録をして譲渡を受ける方法です。

 日本ではショーウィンドー越しの小部屋に入れられたペットを眺めて、あっちがかわいい、こっちの方が好きだ、などと言いながらまるでおもちゃを選ぶかのように購入する、それができてしまう状況にあります。六本木や難波、祇園など全国の繁華街にはペットショップがお決まりのようにあります。酔っ払いが従えているキャバ嬢に高級なペットをその場で買い与えることも可能なわけです。悪質なキャバ嬢はそのペットを翌日に転売して換金していると聞きます。実に卑俗な行為であり品性に欠ける光景です。

 日本においても「アニマルウェルフェア」の意識の啓蒙を徹底しないといけないと思います。アニマルウェルフェアとは「飢え、渇き及び栄養不良からの自由」「恐怖及び苦悩からの自由」「物理的、熱の不快さからの自由」「苦痛、傷害及び疾病からの自由」「通常の行動様式を発現する自由」という5つの自由を尊重する思想です。行政のみならず、民間団体、民間企業が協業して国民の動物愛護に対する意識改革に取り組むことが望まれます。

 私も保護犬を飼っていますし、愛玩動物飼養管理士の資格を有しています。10年くらい前には熱心に犬猫の殺処分を無くすための活動に取り組みました。当時、地元の京都市で建設が計画されていた動物愛護センターに殺処分機の設置をしないように請願するために何度も門川市長に会った記憶があります。結果、ドリームボックス(酸素を抜いて窒息死させる機械)の設置は見送られ、殺処分は麻酔を使用することで決着したのを憶えています。傷病動物や野犬など場合によっては殺処分も止む無き生体が存在することから動物殺処分が完全になくなることはないかもしれませんが、人々が人間と同様に愛玩動物にも慈悲を払えるような社会になることを願っています。ペットは自殺しません。その命を全うするのです。命を最後まで全うできないとすれば、それは人間の仕業に他なりません。

 以上、最後までご拝読を賜りありがとうございました。


参照:環境省「適正な飼養管理の基準の具体化について」

   https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/tekisei/result_2.pdf

参照:アニマルウェルフェアとは(AWFCより)

   https://awfc.jp/about/about-awfc/

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