財務省矢野事務次官が発表した論文について(参議院浜田聡議員のお手伝い)

戦争はもうせんそう・・・。プーチンがプチンとキレたか・・・。ロシア、恐ロシア・・・。私の好きなのは六甲おろしや・・・。

 さて、昨日は財務省トップの矢野康治氏が2021年10月6日に文芸春秋にて発表した論文(以下、矢野論文という)について考証しました。

 この論文に関しては多く問題点があると思いますが、それ以前の問題として、論文を発表したタイミングが良くないと思います。10月19日には衆議院選挙の告示、31日には投開票を控える時期ですから多くの政治家が正に政治活動を本格化し、国政政党の多くが公約やマニュフェストを公開していく時期です。矢野論文は意図的にそのような時期に発表し、恣意的に政界や世論の出鼻を挫く為に投じたアジテーションのようなものだと思います。

 内容はともかく現役の官僚中の官僚である財務省の事務次官が書いた論文ですから国民は受容しやすいし共感も得やすい。つまり、選挙を前に世論を誘導する意図がしかと感じられます。しかも、この論文を発表することは事前に当時の麻生財務大臣の許可を得ているというのです。麻生大臣はその内容まで把握して許可したのか聊か疑問です。麻生氏に慮ってか松野官房長官も鈴木財務相も「財政健全化に向けての一般的な政策論を述べただけ」とコメントしています。そうでしょうか。選挙前に政治家の政治的判断について断定的に述べた政策論を日本の代表的な老舗出版社の多くの購読者を有する著名な雑誌に掲載して公開することが私的な意見を述べただけと言えるのでしょうか。

 国家公務員法第102条について人事院が解説した文書には下記のように示されています。

下記:人事院作成

「政治的目的を有する文書の発行」が制限される行為として挙げられています。しかも、刑事罰まで規定されているのです。矢野論文には繰り返し官僚は政治家に「モノ言う犬」でなければならないと自身のポリシーを述べています。その上で意に沿わない政治家の施策を非難し国民を不安に貶める財政論を展開しています。これこそが典型的な政治的な行為であり、職名、職権の影響力を利用した行為に他ならないと思います。鈴木大臣は職務上必要な手続きをとっており問題のない行為だとしていますが、当時の麻生大臣に手記の公開について了解を得たに過ぎず、法律の条文上においては看過される行為ではないのです。これこそが政治家が官僚に手心を加える対応であり政官の馴れ合いの骨頂ではないだろうか。言うまでもなく鈴木財務相はがちがちの財政健全化論者なのです。

 さて、矢野論文の内容を具体的に考証してみます。

①ワニの口は塞がなければならない

 「日本の財政は構造赤字に陥っており、バブル期ですら財政黒字にはならなかった。経済成長によって財政健全化を遂げることは夢物語であり幻想。向こう30年以上の少子高齢化を乗り切っていくために平時は黒字にして有事に備える必要がある」

下記:財務省作成、日本の財政を考える

→上記は財務省が作成したグラフです。歳出がグラフの上段、税収がグラフの下段となっており、その差が年々拡大していく様を〝ワニの口″と表現しているようです。このワニの口がこのまま開き続けると財政破綻を招くというのです。そうなのでしょうか。このワニの口を閉じると国民生活はどうなってしまうのでしょう。ワニの口が開いている現状においても国民の所得は向上しないどころか可処分所得は減少傾向にあります。ワニの口が閉じている1990年と比較して歳出は急増しているにも関わらず国民の給与所得は横ばいか減少傾向に陥っているのです。所謂デフレ傾向が続く中で歳出を半減させてワニの口を閉じるという施策を正しいのでしょうか。国民の生活と市場経済を同時に困窮させるような愚策に思えてなりません。さらに上記の図は歳出と税収で構成されておりますが、当然のことですが歳出と歳入を比較しないと正確ではありません。つまり、図自体が間違っています。歳出には国公債関係費が含まれていますが税収には国公債関係費が含まれていません。よって、両軸は比較対象になり得ないデータによって作成されています。このことからも矢野氏および財務省が意図的に国民の危機感を醸成し煽り立てようとしているように受け取られても致し方ないと思います。

②タイタニック号が氷山に向かって突進しているようなもの

「すでに国の長期債務は973兆円、地方の債務を併せると1166兆円に上ります。GDPの2.2倍であり、先進国でずば抜けて大きな借金を抱えている。タイタニック号は衝突直前まで氷山の存在に気づきませんでしたが、日本は債務の山の存在にはずいぶん前から気づいています。わが国の財政赤字(「一般政府債務残高/GDP」)は256.2%と、第2次大戦直後の状態を超えて過去最悪であり、他のどの先進国よりも劣悪な状態になっています(ちなみにドイツは68.9%、英国は103.7%、米国は127.1%)。」

 →氷山とは債務を意味しています。タイタニック号はもちろん日本政府のことです。この場合、債務は日本政府が発行しているのですからその存在については、政府は十分に理解しています。矢野論文ではその存在に気付いていながらも氷山に気が付いていても尚、日本政府が自分で作った氷山に向かって突き進んでおり、いつかはその氷山と衝突して財政が破綻するか、国民がその負担がのしかかるのだと主張しています。まず、その巨大な債務が本当に存在するのかどうかということが疑問です。世界で突出した債務を日本政府が負っているように矢野氏は煽りますが私の認識ではそのような過剰な債務は存在しないと考えています。矢野氏が示しているドイツや英国や米国の債務の対GDP比はそれぞれの中央銀行との貸借を統合しています。一方、矢野氏が言う国の借金とは日本銀行が取得している政府の債権を連結せずに数値化しているのです。基準があまりに違うのですからドイツや英国や米国と横並びに比較することは出来ないはずです。敢えて比較するのならば日本政府が発行している国債の内、約48%は日本銀行が市場より取得していることから約133%となり、米国並みのGDP比となります。日本政府の債務は決して小さくはありませんが、過剰に大きいこともありません。矢野氏および財務省が意図的に財政危機を煽っているのであって、そのような状況に日本が陥っている事実はないと思います。

③GDPを増やしても赤字が減らない、

 「財政出動を増やせば、単年度収支の赤字幅(正確に言えば基礎的財政収支赤字のGDP比)が増えてしまい、それを相殺してくれるはずの「成長率−金利」の黒字幅との差が開いてしまいます。その結果、「国債残高/GDP」は増え続け、いわば、金利は低くても元本が増え続けてしまうので、財政は際限なく悪化してしまうのです。赤字財政を放置すると国債の格付けにも影響が生じて日本経済全体に大きな影響を及ぼすことになります」

→積極財政論を否定する為の主張だと思いますが、そもそも論として、国債の発行高の増加は健全な経済成長を促す為に必要な措置だと思います。政府の累積債務の増加によって国債金利が上昇するような状況にもなっていません。むしろ、その逆の傾向となっており、日本国債の金利は世界最低水準で推移しています。

下記:財務省HPより

その恩恵として、1997年あたりから利払費が減少しています。金利低下が進む中、過去に発行された金利の高い国債が償還されて、金利の低い国債が発行される。これによって金利負担が軽減しているのです。国債発行が累増しても金利低下の恩恵が強力なため、利払い費は2005年前後まで減少しました。その後、国債発行が累増を続けても利払い費は8兆~9兆円程度で横ばいとなっています。05年前後を起点にすると、借金がほぼ倍増しても返済負担はほぼ変わらないという驚異的な効果を発揮しています。財務省の言う、財政を健全化しないと金利の高騰を招くと言う主張は結果的にそうなっていません。要は、日本の財政が不健全であるという認識が間違っているのだと思います。

 また、財務省は日本やアメリカなど自国建ての国債に関してデフォルトに陥る可能性が皆無であることを実は理解しています。

 2003年に日本国債の格付けについて引き下げられたことがありましたが、その際には上記のように自国通貨建ての国債のデフォルトはありえないということを財務省自身が主張しているのです。一方で政治家や国民に向けては財政破綻の危機を作為的に煽るのですから財務省が二枚舌を使っていることは明らかだと思います。

④消費税引き下げは問題だらけ

 「コロナ対策の窮余の一策として一時的に消費税率を引き下げてはどうか、という政策の提案もあります。社会保障を今後も持続させていくため少子高齢化という日本の構造問題の解決に逆行するものなのです。英国やドイツでは、付加価値税率を一時的に引き下げましたが欧州では、価格転嫁義務がありません。日本では、消費税は価格に転嫁しなければならないと法律で定めていますので買い控えや実行するまでのタイムラグが生じます。」

→そもそも消費税という課税形態自体が悪法だと私は思います。実態は付加価値税ですから人件費と利益に課税されている状態です。企業は営利を目的としているので当然の手立てとして人件費を削減するようになります。つまり、ジャストインタイムに労働を分配するとすれば継続を雇用を避けて期間労働や派遣労働の活用が効果的です。消費税が導入されて以降は日本人の給与所得は上がらず、終身雇用は半減し、不安定なワーキングプアばかりが増加してきたことは紛れもない事実だと思います。また、欧州の消費税は内税ですので法人税の多重課税のようなものです。日本の消費税とは違います。消費減税に市場のインフラの労務負担が大きすぎるから消費税は触れないというのでしたら一層のこと消費税は廃止してしまってはどうかと思います。法人税、所得税の推進課税を見直すことと積極的に財政ファイナンスを行うことでマネタリーベースをインフレ傾向に調整できるのではないでしょうか。消費税減税や消費税の廃止は国民の可処分所得が直接的に増加してインフレに先導することが期待できると思います。

さて、上記のように矢野論文を考証して来ました。矢野論文には中央銀行の役割について記載がありません。恰も国民が使用する貨幣が日本銀行券ではなく財務省券であると勘違いしているかのような内容でした。矢野氏に限らず多くの政治家や実業家や学者や国民が、税収が歳出の財源であると信じ込んでいしまっています。それは違います。財務省も認めているように通貨とは信用創造によって生まれてくるものです。財政支出とは通貨の供給であり、税とは過剰な通貨の供給です。政府は国民経済全体の通貨の量を税と支出により制御しながら適切に通過量を増やしていく役割を担っています。金本位制の時代は20年以上前に終焉しているのです。

 矢野氏同様に積極財政論を批判する人は多くいます。そういった方々の代表的な批判について応答してみます。

 赤字国債を発行し続けると貨幣の供給が過剰となりインフレを起こす可能性が高いという指摘ですが、それはその通りです。貨幣の供給量を増やして現在のデフレ状況を脱却しインフレに転換するべきなのです。日本の一人当たりのGDPは30年前の世界2位から現在では29位にまで落ちてしまっています。それはとりもなおさず日本のデフレから脱却できずにきたことの証左であろうと考えられます。

 財政規律を失うとハイパーインフレが発生するという指摘があります。この20年間は赤字国債を発行し続けて来ましたがハイパーインフレを起こした事実はありません。むしろ、物価水準も給与水準も横ばいか下がりぎみで推移して来ました。それにも関わらず政府は消費税を増税し続けたことは失政だと思います。

 財政赤字が国民の貯蓄不足を招き金利が高騰するという主張も聞かれますが根本的に間違っていると思います。貸方の裏には借方が必ずあります。コインの裏表のようなものです。政府の負債は国民の資産に外なりません。現在においても政府は赤字国債を発行し続けていますが金利が高騰することはなく、むしろ、低金利の状態が続いています。

 銀行は個人や企業から預かった資金を元手に貸し出していると思っている人も多いです。これは財務省も国会答弁で認めていることですが、実際は銀行が貸し出しを行うことで預金が生まれているのです。このことを所謂信用創造と呼んでいます。よって、借り手が返済すると預金は消えるのです。

 以上、矢野論文を基軸に貨幣論を謳ってきましたが、直面しているのは日本の財政危機やデフォルトのリスクではありません。財務省はいつも政府の国債残高を「国の借金」という言葉を使って説明します。政府=国というのは法律用語しては正解ですが国民に誤解を招きます。国の借金と表現すると恰も国民の一人一人が背負っている借金ように受け取られがちです。しかし、それは違います。あくまでも国家の運営している政府の負債です。財務省は国民から1円でも多くの税を取り、支出を1円でも少なく抑えることが使命だと思い込み、そのような考えと行動をして来た人物が高く評価される体質のままなのだと思います。勘定奉行としての意識が強すぎるのでしょう。日本を襲う本当のリスクは日本の経済力の低下による外資の買い漁りにあうリスクなのだと思います。

下記:IMF、World Economic Outlook Database, April 2021 

 EU諸国や中国の富裕層や企業などに日本の不動産資産やテクノロジー資産が安く買われていくことは大いなるリスクだと思うのです。日本人や日本企業にとって高いと思われる資産価値も外資にとっては非常に安いお買い得商品に見えている可能性があるのです。しかも、それらの資産移転や技術移転に対する法規制が日本にはほとんどありません。積極財政政策に踏み切ることでインフレ基調に日本経済を乗せることが出来れば、日本国民と国家の資産防衛にも繋がると思っています。

以上、最後までご拝読を賜りありがとうございました。

参考:文芸春秋デジタル 2021年10月8日

   https://bungeishunju.com/n/n441b267f2218

   財務省 税制を考える

   https://www.mof.go.jp/zaisei/current-situation/situation-dependent.html

  財務省、外国格付け会社宛意見書要旨

   https://www.mof.go.jp/about_mof/other/other/rating/p140430.htm

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