行政不服審査会の国会同意人事案について
めんどく裁判
行政不服審査会の国会同意人事案についてである。
総務省のホームページによると行政不服審査会は行政庁の処分又はその不作為についての審査請求の裁決の客観性・公正性を高めるため各府省の諮問に応じて審理員が行った審理手続の適正性や法令解釈を含め審査庁の判断の妥当性をチェックする機関である。令和4年度の活動報告を見ると諮問件数は102件、答申は84件、次年度繰越が9件となっている。答申の結果は、省庁の判断を妥当としたものが73件、省庁の判断の一部を否定したものが2件、省庁の判断の全部を否定したものが8件、取下げが1件だった。1割以上の請求について省庁の判断が覆っている。思ったより多い印象を受ける。そのことからも行政不服審査会の存在が重要であり、機関がきちんと機能しているという証左と言えよう。請求の審査庁は厚労省に対するものが66%と最も多く、次いで特許庁が11%、国交省が8%、消費者庁が4%と続く。請求人は個人が6割、法人が4割である。請求の多くが賃金や退職金に対するものである。請求に対する調査は大凡2カ月間、答申を発するまでの期間は1年半から2年を要している。処理速度は地裁や高裁と同じくらいと言った印象。
さて、行政不服審査会の委員は9名で、常勤が3名、非常勤が9名となっている。今回の同意人事案は常勤1名と非常勤2名の任期満了による人事案である。常勤の委員の後任には元総務省政策統括官の吉開正治郎氏が就任予定である。吉開氏は行政不服審査会の担当課である行政管理局行政手続室長だったこともあり委員の任務には長けているのだろう。行政評価局にも長く所属していた。大臣官房審議官時も行政評価や行政管理を担当している。吉開氏は当審査会の委員には適任であると思料する。委員の任期は3年、報酬は年1845万円である。
2人目は非常勤委員として千葉大学大学院社会科学研究院長の下井康史氏の新任案である。下井氏は以前にも同じ総務省の情報公開個人情報保護審査会の委員も務めていた。その後、千葉県や浦安市の行政不服審査会の委員も務めている。公務員制度が専門家であり行政法にも詳しい。諮問機関の委員経験も長く下井氏の人事案は適任であると考える。
3人目は弁護士である村田珠美氏の非常勤委員の再任案である。国内最大手の弁護士事務所であるあさひ法律事務所から独立し東京第二弁護士会の副会長も経験している。以前には同じ総務省の電波監理審議会の委員も務めていた。法曹界では実績のある方であるし、非常勤の委員の人事案であることから妥当であると考える。
それにしても総務省の人事案は有識者のたらいまわしというかリサイクルというか、同一人物を複数回に渡って起用することが多いような気がする。
参考
行政不服審査会 総務省
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/singi/fufukushinsa/index.html
令和4年度 行政不服審査会の活動状況
0コメント