運輸審議会委員の同意人事について

うんパン屋。

 運輸審議会の同意人事案についてである。1か月ほど前にも同会の人事案について記事を書いたばかりだ。旅客や荷物の自動車、鉄道、航空機、船舶による運輸に関して、事業の免許、認可などを行ったり運賃の設定を行う際の審査を行う。

 会議録をみると、標準運輸料金を守らずに低価格で運送している業者が多く規定が実態に即していないという委員の発言に対して安全コストや労働者の賃金を削減している可能性があり是正を行っていくこととした。運輸の3次受け、4次受けを排除する方法としての需給のマッチングシステムの開発を行政が支援していく方針を回答している。運輸業界は料金のみならず人材の不足も深刻だ。2030年には現在比で30%もの輸送力が減少することが予想される。政府は特定技能制度を改正し技能分野に輸送を追加する方針を明らかにしている。民間ではドローンを利用や自動運転車の開発研究が進められ実用化も夢ではないところまで来ている。生産性の向上、労働効率の改善に対する投資が社会資本になっている。人手不足は人材の流通で補うことには限界がある。そもそもそれでは経済成長も見込めない。設備投資や研究開発投資、人材育成投資が成長へ繋がる。輸送業界の人手不足が2024年問題として大きく報道されている。政府は特定技能による外国人労働者の輸入で補う方針である。以前から言われていた問題を場当たり式に解決しようとする政府の姿勢は非難されて然りである。最低限の規模の外国人労働者の受け入れは今となっては仕方ない。しかし、不足した労働力の多くを特定技能労働者で補おうとする発想は奴隷労働思想と受け取られかねないし、国内産業、国内経済の健全な成長を妨げる。事業者が生産性の向上、労働効率の改善の為に資本投資を行わない限り経済成長は望めない。資本主義とはそういうものである。

 審理会では「2次・3次の下請運送事業者についても法令遵守がされているか等引き続き監視すること」「労働時間規制により働き方改革を実現していくとともにトラックGメンによる監視・指導などに取り組むこと」という要望が出された。

 さて、常勤委員として元JR東日本常務執行役員東京支社長であり現在はJR東日本クロスステーション常務取締役リテールカンパニー長である白石敏男氏が就任する信任案である。JR東日本クロスステーションはキオスクやNEWDAYSなどを運営するJRグループのリテール事業の中心的存在だ。元々は国鉄であったことを考えると途方もない民業圧迫というか不正競争を行ってきた事業体であると思う。JRグループが駅ビルや駅ホテルやレンタカー、駅構内でコンビニや売店、蕎麦屋まで運営する。人の流れを掌握しありとあらゆるビジネスを優位に運ぶことは国営企業の特権中の特権。民営化は開き直って民業を圧迫する口実を手に入れたに過ぎない。四国や北海道など不利な条件下で民営化し困窮する事業体もあるにはあるのだがJR東日本、JR東海、JR西日本、JR九州は漁夫の利、濡れ手に粟、棚からぼた餅、とにかく有利な条件で民営化しているのだから民間事業者にとってはたまったものではない。白石敏男氏は旅客運送のトップであるJRの東京支社長を経験し、駅内ビジネスのトップであるキオスクとNEWDAYSを歴任している。JR人事でのトップ争いには敗れたのであろうが長きにわたり旅客運送業界のトップ企業の上層部で得た経験は余人に代え難い。よって白石敏男氏の任命は適当であり人事案に賛成するべきだと思料する。

坂本雅彦ホームページ

坂本まさひこ  作家 国会議員秘書

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