公害等調整委員会委員の同意人事について

こうがいあとをたたず・・。

 公害等調整委員会委員の同意人事案件である。総務省の管轄であり調停や裁定などによって公害紛争の迅速かつ適正な解決を図ること、鉱業や採石業又は砂利採取業と一般公益等との調整を図ることを主な任務としている。公害紛争において裁判所とは別に迅速に処理する機関として設置されており公害紛争処理制度として機能している。公害紛争処理制度は公害紛争を民事訴訟で争った場合、その解決までに多くの時間と費用が掛かるなど被害者の救済の面では必ずしも十分でなかったことから生まれた制度である。この制度には民事訴訟に比べ公害紛争処理機関自ら調査できる、手続が柔軟、費用も少なくて済むなど、様々な特長がある。令和4年度の調停や裁定の係属は72件、そのうち新規受付は24件、終結したのが32件であった。これまでの代表的な案件に水俣病や渡良瀬川水銀公害や神栖市のチッソ、小田急線騒音、伊丹空港騒音トラブルなどがある。公害の調査には現地調査や聞き取り、科学調査、モニタリングなど労力が大きい。調査結果から判断するにも専門性を問われる。大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下及び悪臭などその対象は広い。因果関係が不明な場合は別途専門委員によって調査を行う。専門委員の迅速な調査によって民事裁判より早く裁定できることが委員会利用の利点と特徴といえる。

 委員は常勤が4名、非常勤が3名である。元裁判官2名、弁護士1名、学者2名、民間企業1名、医師1名で構成されている。今回の同意人事案は常勤の医師の新任案である。北窓隆子氏は医師として厚生労働技監を務めたのち環境省総合環境政策局環境保健部企画課石綿健康被害対策室長や国立国際医療研究センター企画戦略局長、新潟県副知事、厚生労働省関東信越厚生局長、厚生労働省大臣官房付、姫路市技監を歴任してきた。化学物質の環境リスクについても明るいという。一人しかいない医師枠であるし、北窓氏が要職を歴任してきたことを鑑み同意人事案には当然賛成するべきではないかと思料する。

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