衆議院議員選挙区画定審議会委員の同意人事案について

二、階さん。

 衆議院議員選挙区画定審議会委員の同意人事案についてである。衆議院議員選挙区画定審議会設置法なんていう法がありそれに基づいて設置されている。衆議院小選挙区選出議員の選挙区の改定に関して調査審議し、必要があると認めるときはその改定案を作成して内閣総理大臣に勧告を行う機関である。会議の開催は年によって大きく違う。例えば2022年には22回も開催されたが2023年は2回だけだった。衆議院議員選挙があった年は多くなる。各選挙区で人口の増減が流動的にあるし、そもそも1票の格差は厳然として存在してきた。それに伴う裁判の判決も国政選挙が行わるごとに下されている状況である。審議会では全国の都道府県知事の意見を聴取し区割りの見直し作業を順次進めている。都度、新たな区割りを審議会から総理大臣に勧告している。

 委員の任期は5年で7名全員が非常勤である。学者が6名、官僚が1名という構成である。えらく学術界に偏った気もするが公益性を考えると利害関係が少ないと思われがちな学者の存在が重宝される傾向にある。今回の人事案で退任になるがテレビ番組で橋下徹弁護士や北村晴男弁護士と共演していた住田裕子弁護士も2期務めていた。住田裕子氏は厚生労働省の雇用・能力開発機構のあり方検討会委員や日本中央競馬会経営委員会委員や消費者庁の消費者委員会委員にも就任している。住田裕子氏の他にも宮崎緑氏も当審議会委員を10年間と務めていたが今回で退任となる。宮崎緑氏はNHKのキャスターから政治学者に転身し千葉商科大学国際教養学部教授となっている。国家公安委員会委員や東京都教育委員会委員にも任命されている。いずれにせよ、住田氏や宮崎氏が就任を望んだのではないように思う。官庁か政治家からの就任依頼を受けたので引き受けただけなのではないか。ことのほか女子アナは政府の諮問会議の委員や外郭団体の役員に重用されがちな印象を受ける。官僚や政治家が女子アナを起用すると国民受けするという先入観を持っているのだろうがそれは違うのではないか。専門分野おいて政府や官僚以上の知識と見識を持っているから任命されるが有識者委員会の委員であるはずだ。そのことを忘れないでほしい。

 さて、新任予定の品田裕氏は神戸大学大学院政治学研究科教授である。政治学の専門家で「小選挙区比例代表並立制が政党・議員・有権者に与えた影響に関する実証的研究」「政治空間としての選挙区-区割りは何をもたらすのか」などの論文を発表している。日本比較政治学会企画委員長、日本政治学会企画委員長、日本選挙学会企画委員長・査読委員長・理事長を歴任してきた。当委員会にはふさわしい人選であると考える。

 再任予定の加藤淳子氏は東京大学大学院法学政治学研究科教授である。政治過程論、公共政策論、比較政治学が専門。イメージができないのだが政治学と脳神経科学の融合を目指した研究を行っているそうである。今回、当会を退任する川戸貞史氏とは東京大学の同僚で「現代の政党と選挙」という共著を持つ。加藤氏は川戸氏の推薦で任命されたのだろうが有能であることと政治活動歴がないことから問題ないと思う。文部科学省日本ユネスコ国内委員会委員も経験している。加藤氏の再任には反対する理由は見当たらない。

 新任予定の林崎理氏は総務官僚であり一般財団法人地域活性化センター理事長である。総務省自治税務局長、総務省大臣官房長、総務省自治財政局長、消防庁長官、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局地方創生総括官など要職を歴任している。次官級にまで上り詰めた官僚であり有能かつ多岐にわたる経験を経ていることから当会委員に申し分のない人物だと考える。

 再任予定の宍戸常寿氏は東京大学大学院法学政治学研究科教授で専門は憲法である。「デジタル時代の「公共」をめぐる法と政治の相互作用に関する研究」「コロナと共に生きる世界・社会と法」などの論文がある。新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議構成員も務めた。現在は日本学術会議特任連携会員、情報法制学会運営委員、日本公法学会理事、法と教育学会理事、憲法理論研究会運営委員を兼任しており日本の第一線級の法学者であることから再任することは妥当であると考える。

 新任予定の飯島淳子氏は東北大学大学院法学研究科教授である。専門分野は公法学、行政学である。「社会保障と私的扶養の交錯と現代的課題」「グローバル法・国家法・ローカル法秩序の多層的構造とその調整法理の分析」を研究課題としていた。論文には「日本鉄道建設公団の地位」「改良住宅の使用権の承認について定める条例の適法性」といった一般には踏み込み辛い課題にも取り組んでいることがわかる。当会の課題との関係性は薄いが活躍を期待したい。

 再任予定の高橋滋氏は法政大学法学部教授であり、一橋大学名誉教授でもある。専門は行政法。行政法に関わる著書は数知れず。法務省司法試験考査委員、内閣府苦情相談情報の効果的活用のための検討会議委員、人事院公平審査制度研究会委員、人事院採用試験の在り方を考える専門家会合座長、総務省行政不服審査制度検討会委員、内閣国家公務員制度改革推進本部労使関係制度検討委員会座長代理、国税庁国税審議会委員、原子力安全委員会安全審査における専門性・中立性・透明性に関する懇談会座長、内閣府情報公開・個人情報保護審査会委員、原子力損害賠償紛争審査会委員、公害等調整委員会委員、内閣官房原子力事故再発防止顧問会議委員、最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会委員、内閣府規制改革推進会議委員を経て内閣府衆議院議員選挙区画定審議会委員となっている。凄まじい数の委員会に関わってきている。紛れもなく歴代政府の御用学者である。再任する必要性をまったく感じない。しかし、非常勤委員は限りなくボランティアなので否認に拘る必要もない。自頭の良さだけは確かである。

 新任予定の谷口尚子氏は慶應義塾大学 システムデザイン・マネジメント研究科教授であり政治学の専門家である。「わが国における選挙・投票行動の研究」「現代民主主義と政治の世襲化:二世・三世議員の増加を促進する制度・財政構造・有権者心理の研究」等を研究テーマとしており実にユニークだ。「中小政党の連立政権参加と有権者の投票行動」「選挙研究」という論文も発表しており選挙制度にも詳しいと思われる。日本選挙学会幹事を務めたこともある。谷口尚子氏は他の委員に比べ選挙制度に関わった研究を行っており深い知識を得ていると思われる。活躍を大いに期待できることから委員の任命にふさわしいと考える。

 以上のことから衆議院議員選挙区画定審議会委員の同意人事案については賛成することが妥当であろうと思料する。

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