日本・アンゴラ貿易協定について

アンゴラ村長、今いずこ・・・。

 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とアンゴラ共和国との間の協定の締結についての承認案が国会に提出されている。協定自体は2023年8月に既に締結されている。国会で承認されるとその30日後に発効される。

 この協定では投資の自由化を促進し投資を行う企業や投資した財産を保護するための国際協定で投資財産の待遇の透明化について定める。また、投資家が投資先の国で何らかの問題に直面した場合の解決手段の1つとなる。日・アンゴラ投資協定は投資参入段階における内国民待遇、最恵国待遇を規律するネガティブリスト方式の留保表を含む自由化型協定である。特定措置履行要求の禁止はWTOの貿易に関連する投資措置に関する協定の規律に加え、ロイヤルティー規制禁止、技術移転要求禁止、自国民雇用要求禁止などを規定している。紛争解決規定として投資家と国の間の紛争解決も盛り込まれている。最恵国待遇のネガティブリストには「日本国における土地の取得又は賃貸借を禁止し又は制限することができる。」が盛り込まれて留保を可能としている。中国を含め多くの国と条約や協定にこの一文がなかったことから日本の土地が次々と買収される事態に現在もある。土地つまり領土は国家そのものと言える。その土地の上に歴史を刻み込み国家が存在する。土地をほぼ自由に買えるということは国家の基盤の一部が諸外国に売りに出されている状態にあるとも言える。アメリカはGeneral Agreement on Trade in Services(貿易に関する一般協定)の締結時に土地取得を制限する留保条項を付けたため厳格な規制が可能である。よって、アメリカは外国籍および外国籍と思しき者、法人、土地取得を許可制にしており当局の判断で外資の取得を却下できる。外国籍、とりわけ中国資本によって凄まじい勢いで日本の土地が出臆され続けていることに焦った当時の安倍政権は外国資本による土地取得を制限しようとしたがガッツ協定に阻まれた。取得制限の対象は自衛隊の基地や原子力発電所など重要施設周辺の土地に限定することが限界であった。中国は自国民でも外国資本でも共に土地の所有権は取得できない。しかし中国人は日本の不動産の所有権をほぼ自由に売買できる。あまりにもアンフェアである。超限戦でいう侵略とも受け取れる状況だ。外務省は近年の条約や協定においてはネガティブリストに土地の取得を制限できることを盛り込むようになった。日本の領土、資源、安全、歴史等を守れるのは日本だけである。WTOやGATSでの失態をどう取り返すか真剣に検討しなければならない。

 さて、話をアンゴラとの協定に戻す。アンゴラは経済の多角化・安定化を目指し汚職対策、財政・金融改革、為替制度改革をはじめ投資環境改善・法整備を推進し、外国からの投資誘致に積極的に取り組んでいる。サハラ以南アフリカ地域有数の経済規模を有するとともにアフリカ屈指の産油量を誇り豊富な鉱物資源を有する経済的潜在成長力の高い国であるため日本企業の関心も高い。豊田通商、キャノン、NEC、パナソニック、横河電機、三菱ふそう、三菱重工、小松製作所、寺岡精工、山梨日立、IHI、JFE、国際石油開発帝石、日本海洋掘削、三井海洋開発、NTT、住友商事、双日、丸紅、日本郵船、千代田化工建設、日揮など錚々たる日系企業が進出している。

 アンゴラは127万平米と面積が広く日本の3倍以上、人口は約3550万人、首都はルアンダでキリスト教徒が多い。1975年独立以来の長期にわたる内戦により経済は極度に疲弊したが石油、ダイヤモンド等の鉱物資源に恵まれている他、農業、漁業等の潜在能力も高く、過去10年間、概ね高い経済成長率を維持している。特に石油についてはナイジェリアに並ぶサブサハラアフリカ最大の産油国。2007年には石油輸出国機構(OPEC)に加盟したが自国の利益にならないと2023年に脱退した。一方、アンゴラ政府は石油依存型経済からの脱却を図るため国家開発計画の下、農業、製造業の振興等による産業多角化を喫緊の課題として掲げている。かつてはコーヒーの栽培が盛んであった。

 日本はアメリカ、フランスに次ぐアンゴラへの支援国である。優勝無償を含め累計740億n類及び輸送用機器類等で約220億円相当の輸出をし、石油や天然ガスを約80億円相当輸入している。

 アンゴラは元々はポルトガルの植民地であったが第二次世界大戦後に独立運動が巻き起こり1975年にはポルトガルからの独立が認められた。だが、それ以降も2002年まで内戦が続いた。キューバとソ連の支援を受けた社会主義政権が南アフリカとアメリカ、中国の支援を受けた反政府勢力との衝突が激化し多くの人命が失われ経済は疲弊した。内戦で使用された地雷の撤去が進んでおらず現在でも経済成長の足かせになっている。国連の推定によるとアンゴラ全土に残されている地雷は数百万発に達すると言われている。冷戦終結後、外国軍は撤退しポルトガル政府の仲介によって内戦は終結する。しかし、政府のザイール出兵後に反政府勢力が再び蜂起し内戦が勃発する。2002年2月、反政府勢力のサヴィンビ議長が民間軍事会社の攻撃で戦死して長い内戦の歴史にピリオドを打った。

 アンゴラの内戦後、中国はアンドラに多くのインフラ整備を行っている。2014年には内戦で破壊されたベンゲラ鉄道を中国の援助で再建した。アンゴラは原油の4分の1を中国に輸出しており最大の輸出先なっている。しかし、アンゴラに利益を還流しない中国の方法にはアンゴラ人からの批判もあり大規模な反中デモも起きている。沿岸部の埋蔵量80億バレルとされる原油と内陸部で産出するダイヤモンドなど鉱産資源には比較的恵まれていることから中国は20億ドルの融資を行いインフラの再建を手助けしIMFの影響力を低下させることに成功した。アンゴラの石油の輸出先で一番多いのが中国であり、中国にとってもアンゴラが石油輸入の最多先となっている。

 内戦の影響は物価を直撃している。アンゴラの首都ルアンダの物価は世界一といわれている。ほとんどの物資を輸入に頼っていることからキャベツ1個が約20ドルになってしまっている。住宅の供給数が絶対的に不足していることから家賃が高騰、日本人駐在員の家賃相場は月100万円を下国人は強盗のターゲットにされているという。

 内戦の爪痕、経済、治安など未だ課題の多いアンゴラであるが、1月27日付WP紙は、‘U.S. deepens ties with Angola, a model for Washington’s ties to Africa’によると国内鉄道の敷設にあたりこれまでの中国を頼ってきたが新たな調達案件でアメリカのコンソーシアムへの依頼を選択した。アンゴラは社会主義国家であったことから内戦時代から中ソとの関係が深かった。よって米国の支援や救済の対象となることはないものと考えられてきた。中国がアンゴラ国内で行ってきたインフラ整備の質の悪さや対応の悪さにもアンゴラ政府は不満を募らせていただろう。ロシアのウクライナへの侵攻に対してもアンゴラ政府は国連で苦言を呈している。アンゴラ政府が中ソ一辺倒ではなく欧米との協調も視野に入れるようになったと言える。アメリカのブリンケン国務長官のアンゴラ訪問は両国の関係改善を顕著に示している。アメリカにとってアンゴラとの関係は経済協力に留まらない。隣国コンゴの紛争解決にも繋げたい意図がある。アメリカがアフリカの将来的な有効性を認め友好関係を築くことはこれまでになかった姿勢である。アメリカは制裁に加える役割に一区切りをつけようとしている。世界の警察としての役割を担ってきたアメリカが友好国を増やしていくことで大局に対峙するためのリーダーシップを得ることは新時代的な平和の世界的枠組みの構築に繋がる。日本はアメリカの動きに注視しつつ友好国の枠組みの拡大と深化の流れに関与し連携を図っていくことが期待されているに違いない。


参考

日・アンゴラ投資協定の署名 外務省

https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press7_000107.html

日・アンゴラ投資協定が署名、アフリカと6カ国目

https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/08/55c1cc7d5c8a768b.html

投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とアンゴラ共和国との間の協定 条文

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100538260.pdf

西村経済産業大臣が投資環境整備及び経済協力に関する共同声明に署名するとともに日・アンゴラ投資協定の署名に立ち会いました 経産省

https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230809002/20230809002.html

アンゴラ Wiki

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%82%B4%E3%83%A9

アフリカビジネスに関わる日本企業リスト アジア開発銀行

https://ab-network.jp/wp-content/uploads/2013/12/%E3%82%A2%E3%83%95%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%8D%E3%82%B9%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%82%8F%E3%82%8B%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BC%81%E6%A5%AD%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88%EF%BC%88%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E7%89%88%EF%BC%89_2014%E5%B9%B46%E6%9C%88%E6%9B%B4%E6%96%B0_ver.2.pdf

アンゴラでの駐在生活

https://www.jftc.jp/monthly/overseas/entry-571.html

<親中国・ロシアから米国へ>アンゴラの〝転換〟「罰する」から「善行の引き出し」へ変わるグローバルサウス獲得の手法 ウェッジ

https://news.yahoo.co.jp/articles/022e07108537be0b576bbd789f05013923c55124?page=2

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