朝鮮総連に対する債権回収と拉致問題について

革MAY、MAY惑だ。

 北朝鮮が日本海に向けて発射したミサイルの数は2023年には25回だった。2022年に99回も発射したおかげで感覚的に麻痺してしまい多くの国民が北朝鮮のミサイル発射には反応しなくなっている。メディアが騒ぐと北朝鮮のブラフに乗せられることになるので報道が恣意的に減少している影響もあるのだろう。政府も然り、大きな反応を示さずに遺憾を唱えるだけである。

 朝銀や朝鮮総連本部の問題もバブル崩壊後の不良債権処理が進む中で取りざたされることも少なくなってきたことにより国民の関心事ではなくなりつつある。朝銀は国内問題、拉致は国際問題であると属性を問う向きもあるがそれは違う。1960年代から70年代に全国に多数の朝銀系列の信用組合が設立されたが90年代後半から軒並み破綻している。後に安倍晋三総理は「朝銀信組の破綻の問題は、他の信組の問題とは違って、いわば破綻することがわかっているにもかかわらず、後で預金保険機構あるいは公的資金が入ることを前提にどんどん貸していく、そして大きな穴をあけた結果なんですね。投資の失敗だけではなくて、いわば不正融資というか、北朝鮮に金が渡るということを前提に貸し手側と借り手側が一体となっていたという問題がありました」と予算委員会で発言している。実際、2004年までに朝鮮総連と朝銀の役職員が25名以上逮捕されている。破綻した16組合の処理に1兆3千億円以上が投入されていることから巨額の国民負担が発生している。その一部は朝鮮総連自身の債務であることを認めており整理回収機構が裁判を経て910億円の債権を保有している。朝鮮総連は整理回収機構による不動産の差押えを逃れるために仮装売買を行ったりし妨害行為を行っている。世間を驚かせたのは仮装売買によって移転登記された先の企業の代表者が元公安調査庁長官であった緒方重威だったことだ。緒方氏は懲役2年執行猶予5年の有罪判決を受けている。破壊活動防止法に基づき朝鮮総聯を監視している公安調査庁の元長官である緒方氏が朝鮮総連の本部の不動産売買に関与していたことはモラルが崩壊した衝撃的な事件であった。総連は整理回収機構による競売に対して複数回の根回しを行い妨害したが2014年にイオングループの傘下であるマルナカホールディングスが落札し、2015年には山形県のグリーンフォーリストに転売している。転売には自民党の山内俊夫参議院議員の会社が仲介している。山内氏は本部ビルの売買後も朝鮮総連が使用できるように仕向けている。後に山内氏は自身の関連会社の資金を横領したとして逮捕され懲役4年の実刑判決を受けることとなった。マルナカの落札によって回収できたのは22億円程度であることから朝鮮総連の多額の債務は残ったままになっており、時効が援用されないように手を打ちつつ現在に至っている。

 朝鮮総連に換価できる資産がなければ致し方ないのかもしれないが、実は優良不動産を朝鮮総連は保有していると思われる。衆議院議員の松原仁氏が国会で取り上げているのだが、小平市にある朝鮮大学校は16000坪以上の敷地を誇り学校法人東京朝鮮学園が保有している。名義が東京朝鮮学園になっていることから差押えできないと朝鮮総連は踏んでいるのだろう。デイリー新潮の記事にて指摘されていたが、朝鮮総連の資産を差押えできないのであれば朝鮮総連自体に対して破産申し立てをすればよい。松原仁氏の質問主意書に対し政府は申し立てが可能であることを答弁している。整理回収機構は朝鮮総連の債権回収の為に多くの費用を費やしている。以前にオウム真理教が被害者に被害弁済できないことから債権者による破産申し立てが為されようとしていた。ところが管財業務に多額の費用を必要とすることから国がオウム特別法を作り、国が破産申し立てを行い管財費用の負担をした。朝鮮総連への債権回収に無駄な時間と費用を費やすのであれば破産を申し立てて総連と債権を消滅させてしまえば良いという発想は正論であろう。ただし、総連の看板の掛け替えに終わってしまわないように工夫が必要だ。総連の支配下にある関連組織は一網打尽にしないといけない。朝銀系列の生き残りとしてウリ信用組合、イオ信用組合、朝銀西信用組合が事業を継続している。朝銀破綻の受け皿として新たに設立されたミレ信用組合、ハナ信用組合、京滋信用組合、兵庫ひまわり信用組合も現存している。債権者破産申し立てを強行すれならば法務省、金融庁と連携し朝鮮総連系事業会社を殲滅に追い込まないと逆に総連を利するだけに終わる可能性もある。債務整理を済み受皿団体に機能と人員を移すことが出来るのであれば朝鮮総連にとって単なるリセットに過ぎず願ったり叶ったりな状況となってしまう。

 残念なことに拉致問題に関しても朝銀問題と同様に国民の意識が薄れていると感じる。2002年に当時の小泉純一郎総理が平壌を訪問し拉致被害者5名の奪還を果たした。2004年に小泉総理の2度目の訪朝では帰国した拉致被害者の家族も叶った。ところがそれ以降は進展が見られない。北朝鮮は日朝平壌宣言を遵守せず核開発を進めミサイル発射による挑発行為を繰り返すようになった。年月ばかりが経過し拉致奪還に対する日本国民の機運は徐々に削がれてしまったのではないか。

 2004年以降、日本政府は「迅速かつ誠意ある対応がなければ、厳しい対応をとらざるを得ない」と制裁を示唆したが北朝鮮の対応は見られない。国連アナン会長も拉致問題の完全解決を望む旨に言及しているし、アメリカ議会でも北朝鮮人権法が成立している。2005年にはイギリスの主導で北朝鮮非難決議案が国連で賛成多数で採択されている。2006年には北朝鮮のミサイル開発に関わっているとされる団体や個人への金融制裁など拉致包囲網の構築に注力する。安倍晋三首相を本部長とする拉致問題対策本部を設置するが国内問題に押しつぶされる形となった。政府は「対話と圧力」という姿勢を崩さず「拉致問題の解決なしに国交正常化はありえない」との方針を継続している。

 2009年に麻生太郎政権下でアメリカは拉致問題を解決する為に全面協力をするとしながらも北朝鮮をテロ支援国家の指定から外している。2011年にはあろうことか菅直人氏が拉致事件の容疑者の親族の団体に6250万円を寄付している。2014年、国連の調査委員会は拉致被害者が世界で約20万人おり、日本人が少なくとも100名はいることを公表した。2014年にはストックホルムで北朝鮮側と拉致被害者の再調査を行うことを約束することと引き換えに経済制裁を解除した。しかし、翌年になっても調査の報告はされなかった。2016年には北朝鮮による核実験と長距離ミサイル発射の強硬に抗議して日本独自の経済制裁を発した。それによって北朝鮮は日朝合意の調査委員会を廃止した。2018年と2019年には米朝首脳会談において2度においてトランプ大統領が拉致問題を提起した。2000年代に入って拉致問題に関わる北朝鮮との目立った動きはなくなり膠着状態が続く。当然、国民の関心も薄れつつある。

 朝鮮総連の破産申立を行うことが拉致問題の解決に寄与するかどうかということについて個人的手見解を示すと、寄与するほどの北朝鮮に対するインパクトはないと考える。各学校法人は施設の所有権もしくは賃借権を維持できれば残せる。海外渡航は北京の北朝鮮大使館で査証の発行を受けられる。在日朝鮮人は社会保険をはじめとして住民サービスを受けられるし、生活保護まで申請が可能である。在日訪日朝鮮人への影響はほとんどない。全国130か所にある地域センターは生活相談程度のものであるから人的ネットワークで代用がきく。北朝鮮本国にとっての不利益はどうか。総連の在日同胞に対する集金機能はとっくの昔に衰えている。拉致問題が表面化した後、送金額は減少していたとみられるが核実験後の度重なる制裁で現在では送金はほぼ不可能な状況となっている。万景峰号も運休となり円の持ち出しもできなくなった以降は北朝鮮政府も日本からの外貨獲得には依存できない状態でいる。90年代までは北朝鮮系の金融機関による融資を受けた企業からの本国への送金は重要な収入源だったはずだ。何しろ北朝鮮の国家予算は4千億円程度と言われる。北朝鮮系金融機関に投入された公的資金は北朝鮮の国家予算の3倍にも上る。国交すらないのに日本からの送金に対する依存度は高かったはずだ。北朝鮮国民は独裁者による脅迫的威圧的国家運営によって計り知れない被害を被っていると言える。

 国内において日本人に許されない行為が朝鮮人には許されるということがあってはならない。国は朝鮮総連の不正を糺さなければならないし、債権回収を怠ることは許されない。あらゆる手段を講じるべきだ。一方、北朝鮮政府に対し人道支援を行う用意があることを前提に拉致問題の糸口を見出さなければならない。急がないと多くの時間は残されていない。拉致被害者家族は高齢を迎えている。拉致被害者家族連絡会は北朝鮮への人道支援を望む声明を出している。昨年の報道によると北朝鮮は餓死者が発生するほどの食料不足に陥っているとされる。人口の44%が栄養不足になっている。原因が2020年1月に新型コロナウィスル感染症のパンデミックが発生すると同時に北朝鮮は中国との国境を完全に閉鎖した。それによって人とモノの出入りが遮断された。北朝鮮国内でもコロナ防疫を理由に人の移動が制限され経済活動は停滞した。国際社会から孤立している北朝鮮は救済措置の死角となってしまった。そのような状況を伝え聞くことで拉致被害者の家族会はさぞかし心を痛めたことであろう。自分たちの家族がそこで苦しんでいるかもしれないと思うと強硬姿勢から転じて人道支援を望むようになったのも致し方ない。

 日本にいる北朝鮮人民、とりわけ朝鮮総連メンバーたちを北朝鮮に渡し、北朝鮮にいる日本人拉致被害者を返してもらえないだろうか。北朝鮮にいる拉致被害者はまるで人質を取られているが如く両国の状況を硬直させている。かつて日本政府はダッカ事件では日本赤軍によるハイジャックによって囚われられた人質と日本国内で獄中にいたメンバーの交換に応じている。当時の福田赳夫総理は「一人の生命は地球より重い」と述べて超法規的措置をとった。国民の生命と財産を守ることは国家としての最低限の義務ではないのか。憲法の前文には「諸国民の公正と信義を信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とある。外交交渉、経済制裁だけでは拉致問題は解決しない。もう残された時間はわずかであることを心して決断しなければならない。自衛隊は「拉致された国民を救出する作戦プランなど検討されたこともない」というが実際にそうでないはずだ。命令とあらば必ず救出するし出来るのが自衛隊であると私は信じる。たとえ暴論と言われても未だ北朝鮮で救出を待っている拉致被害者の顔を思い浮かべ、家族を拉致によって奪わて奪還を待ち望む家族の顔を思い浮かべ、主権国家の代表者として国会議員は超法規的措置を真剣に検討する時期に来ているのではないだろうか。


参考

朝鮮総連への破産申立てに関する質問主意書 松原仁

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a198055.htm

朝鮮総連への破産申立てについて 浜田聡

https://www.youtube.com/watch?v=3BNr4vytTT8

いまこそ朝鮮総連に破産申立てをせよ デイリー新潮 2017年12月20日

https://www.dailyshincho.jp/article/2017/12200650/?all=1

北朝鮮による日本人拉致問題 Wiki

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E6%9C%9D%E9%AE%AE%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E6%8B%89%E8%87%B4%E5%95%8F%E9%A1%8C

朝銀信用組合 Wiki

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%9D%E9%8A%80%E4%BF%A1%E7%94%A8%E7%B5%84%E5%90%88

日朝首脳会談 Wiki

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%9D%E9%A6%96%E8%84%B3%E4%BC%9A%E8%AB%87

2023年北朝鮮 誰がなぜ飢えているのか? ~セン博士の「飢饉分析」から考える~

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/fab1c5d2bfb93d35aeeaf248188eb5028da58d96

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