主要国による開発援助の大規模削減が及ぼす影響
ODA切りジョー。
11月20日、世界開発センターが発表した調査結果によると世界の先進国の多くが海外開発援助への資金の削減を行っており、支援から手を引く傾向にあることが鮮明となっていることがわかった。その傾向が顕著にみられる国の中にはアメリカや英国とともに日本も入っている。
同センターの調べではアメリカは世界28位となっているがトランプ政権誕生後にUSAIDの大規模な見直しが行われていることはまだ反映されていない。米国務省によるとUSAIDによる対外援助プログラム6200件のうち5800件の契約解除を行ったといい、総額で約8兆円にも上る深淵の打ち切りとなる。アメリカの援助凍結により途上国での支援団体の活動が軒並み停止に陥っている。
アメリカの動きに続いてイギリスもスターマー首相が40%の大型削減の方針を示している。世界5位のイギリスがアメリカに続いた影響は大きい。ドイツも削減方針を固めている。フランスは37%、オランダは30%削減することを明らかにしている。開発援助国の上位にはスウェーデン、ノルウェー、フィンランドが上位を維持している。
日本の援助額はドルベースで14%削減しているものの世界4位の巨額支援国であることには変わりない。日本の途上国支援の背景には日本経済への需要の循環および還元がある。途上国のインフラニーズの受け皿に日本企業がなることは大きな経済効果を得ることができる。また、資源開発が進めば石油などの安定的な確保が期待できる。90年代は日本が世界1位の援助国だったが01年の米国同時多発テロ以降はアメリカが援助額を大幅に増やしていた。
バルセロナ世界保健研究所の研究によると富裕国による急激な援助の削減によって2030年までに発展途上国で最大2260万人が命を失う可能性があると指摘している。超過死亡はそのうち1400万人と予想する。
そもそもODAは第二次世界大戦後の冷戦構造の中で欧州の復興をアメリカが支援する形で始まった。共産主義を封じ込める目的があったものと考えられる。イギリスやフランスは独立した旧植民地との関係再構築のために支援を行ってきた。そもそもODAは統一された理念に欠けていたのだろう。
中国などかつては支援を受ける側の国が経済大国になっている今では冷戦構造の中で生まれたODAは成り立たないのかもしれない。少なくとも共産主義が台頭する兆しは見られない。ただ、富裕国は世界開発援助を極端に削減することで最貧国やサハラ以南のアフリカの人々の多くの命が危機に晒されることになるということを忘れてはならない。
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