大赤字の税務署があるって本当?
あ火事。
商品を製造することも販売することもなく、大したサービスも提供しない、付加価値はほぼ皆無なのに否応なく収入は入ってくると言う事業体がある。お察しの通り、税務署である。税務署は政府の徴税権を担い日本に住まう個人や法人から一手に税の収納を任されている。よほど過大な人員配置や経費の無駄遣いがなければ税務署が赤字になることはありえないと考えるのが普通。ところが不思議なことに全国には赤字の税務署が結構存在する。
愛知県豊田税務署は5075億円の赤字、神奈川税務署は1419億円の赤字、広島県海田税務署は1303億円の赤字、京都府右京税務署は678億円の赤字、大阪府浪速税務署は325億円の赤字、愛知県刈谷税務署は252億円の赤字、等々赤字の税務署は多数存在し枚挙に暇がない。
それではなぜ多くの税務署が赤字になってしまっているのか。それは輸出企業に対する消費税の還付金が高額であるからだ。豊田税務署はトヨタ自動車に6102億円、神奈川税務署は日産自動車に2283億円、海田税務署はマツダに1714億円、右京税務署は村田製作所に762億円、浪速税務署はクボタに566億円、刈谷税務署はデンソーに1058億円の消費税を還付している。収納した税収よりも消費税の還付金の方が高額であるために税務署の収支がマイナスになっているのだ。(2023年データ元・全国商工新聞2024年9月23日より)
収めた消費税を返すだけなのになぜ赤字になるのかと疑問に思う人いるだろう。輸出業者に対する消費税は0%だからそもそも輸出商品に対してトヨタや日産などは消費税を支払うことはない。しかし、トヨタや日産などには多額の消費税が還付されている。では還付されている消費税はどこから徴収した消費税なのか。実はトヨタや日産が商品を製造するにあたって必要とする経費や仕入れなどが発生するバリューチェーン全体に係る消費税が輸出者であるトヨタや日産に一括して還付されている。つまり、輸出商品に対して消費税を1円も負担していないトヨタや日産に下請けや仕入れ先など背後で関わったすべての企業が支払った消費税が全額還付されているという仕組みである。国全体で事業者が収めた2022年度の消費税は約20兆2千億円、そのうち還付金は約7兆1千億円で約35%にも上る。ちなみにトヨタは売り上げの80%が輸出であり、輸出還付金が大きすぎて本来納めなければならない国内売り上げに係る消費税を納めずに還付金と相殺している。相殺してもなお足りずに還付されているのが6102億円なのだ。このことにからも消費税は預かり金ではない。消費税は商品価格の一部であり直接税である。預かってもいない税を還付することはあり得ないことだが、消費税は預かり金ではないから実質的に輸出補助金として交付しているのと何ら変わりない。消費税にはゼロ税率と仕入税額控除があるために輸出を行う大企業に巨額の還付金が生じるのである。おかげでナショナルメーカーを抱える地区の税務署が赤字になることは珍しくない。
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