宗教法人への課税強化には信教の自由と租税公平主義のバランスが問われる

千の課税になって・・・。

 本格的に高市内閣が始動する中で宗教法人への課税をめぐる議論が再び世論の関心を集めている。背景には一部宗教法人の資産規模の大きさや経済活動の多様化がある。まず確認すべきは宗教法人が全面的に「無税」であるという理解は正確ではないという点だ。宗教法人法のもとで設立される宗教法人は、税制上「公益法人等」に分類され、礼拝や布教、祭祀といった本来的宗教活動については法人税が課されない。一方で不動産賃貸や物販、駐車場経営などの収益事業を行えば法人税法上の収益事業として通常の法人と同様に課税対象となる。すなわち、現行制度は「宗教活動は非課税、営利活動は課税」という峻別を前提としている。

 それでもなお課税強化を求める声が上がるのは租税公平主義の観点からである。巨額の収入や資産を有する法人が広範な非課税措置のもとに置かれているとすれば、憲法14条の平等原則との関係が問われる。特に宗教活動と経済活動の境界が実質的に曖昧な場合、課税の公平性と透明性に疑問が生じるのは避けられない。財務情報の公開をより徹底し、収益事業の範囲を明確化すべきだとの主張は制度の信頼性を担保する意味で一定の合理性を持つ。

 課税強化には慎重論も根強い。日本国憲法第20条が保障する信教の自由は日本の憲法秩序の根幹である。課税権は国家の強力な統制手段であり、その運用次第では宗教活動への萎縮効果を生む可能性がある。また、地域の小規模な寺院や神社、教会の多くは経済的基盤が脆弱であり、一律の課税強化は地域コミュニティの維持や文化財保護にも影響を及ぼしかねない。戦前の国家による宗教統制の歴史的経験を踏まえれば国家と宗教の距離感には細心の注意が求められる。

 結局のところ、問題は「特権の是正」か「自由の保障」かという単純な二項対立ではない。信教の自由と租税公平主義という二つの憲法的価値をいかに調和させるかが核心である。感情論や一部事例への反発に流されるのではなく、収益事業の定義の精緻化、財務透明性の向上、小規模法人への配慮措置など段階的かつ制度的な改革を検討すべきだろう。

 宗教法人課税の議論は、単なる税制の問題ではない。それは国家と宗教の関係、そして市民社会の成熟度を映し出す鏡である。冷静で理性的な議論こそが、憲法秩序にかなった解を導く道筋となる。

坂本雅彦ホームページ

坂本まさひこ  作家 国会議員秘書

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