歌舞伎町「立ちんぼ」摘発が問いかける売春防止法の限界
ザ・グレート・歌舞伎町。
東京・歌舞伎町の大久保公園周辺で、売春目的の客待ち行為、いわゆる「立ちんぼ」をした女性が2025年に延べ112人逮捕されたことが明らかになった。前年の97人から増加し、平均年齢は25歳、最年少は16歳であった。動機として最も多かったのはホストクラブやコンセプトカフェに使う金で、約4割を占めたという。大久保公園周辺は近年、路上売春の象徴的な場所として知られるようになった。背景には、コロナ禍以降の生活困窮、ホストクラブへの多額の支出、そしてSNSなどを通じて場所が広く知られたことがあると指摘されている。大久保公園は繁華街の歌舞伎町の中心に近く、ラブホテル街にも近い立地から客と売り手が自然に集まりやすい環境にある。警察は2023年ごろから巡回や摘発を強化し、路上での客待ちを繰り返す女性を中心に検挙を進めてきた。
この問題をめぐっては長年指摘されてきた制度的な矛盾がある。日本の売春規制は売春防止法に基づくが、この法律は売春そのものを禁じながらも売買行為自体に直接の刑事罰を設けていない。処罰対象となるのは売春の勧誘や客待ち、斡旋などの行為であり、今回の摘発も「売春そのもの」ではなく「公衆の場での客待ち行為」が違反とされている。つまり、実務上は売る側の女性が逮捕される一方、買う側の客はほとんど処罰されないという構造になっているのである。
この不均衡は近年とりわけ強く問題視されている。歌舞伎町では未成年を含む若い女性が路上売春に関わるケースが報告され、社会問題としての注目が高まった。女性の背後にホストクラブやスカウト組織などが存在する場合もあり、警察はこうした組織の摘発にも乗り出しているが需要側である買春者がほとんど責任を問われない現状では限界がある。こうした状況を受け、政府内では売春規制の見直しを求める声が出ている。海外では売る側ではなく買う側を処罰する制度を採用する国も多い。いわゆる「北欧モデル」と呼ばれる仕組みで、売春を人身搾取の結果とみなし、需要側を抑制することで問題の縮小を図る考え方である。日本でも、買春側を処罰対象に含めるよう売春防止法の改正を検討すべきだとの議論が法務当局や政治の場で浮上している。もっとも、単純に刑罰を強化すれば問題が解決するわけではない。取り締まりが強まれば売春は地下化し、女性の安全がかえって脅かされる可能性もある。実際、警察の摘発が進んでも売春自体が完全に消えたわけではなく、場所や手段を変えて存続してきたと指摘されている。
大久保公園の「立ちんぼ」問題は単なる風紀問題ではない。若年女性の貧困、ホストクラブ産業、SNSによる勧誘、人身搾取の構造など複雑な社会問題が重なっている。刑事政策としての取り締まりと同時に生活支援や相談体制の充実など社会的支援をどう整えるかも課題である。売る側だけを摘発する現在の制度でよいのか。歌舞伎町の路上で続く摘発は日本の売春規制のあり方そのものを問われることに通じる。
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