新聞販売業者による高齢者等の被害について

この寒い時期の雨は厄介です。冬の雨はふゆかいっ!です。ふゆう層は気にしないでしょうけど。天気予報では今日はアメダス。

さて、昨日は参議院議員浜田聡議員のお手伝いに伺い新聞販売業者の訪問販売による高齢者等への被害について検証しましたので下記に記します。

下記:東京都HPより

全国消費生活センターには年6000件を超える新聞の訪問販売に関する相談が寄せられています。その中には多くの高齢者や生活困窮者からの相談が含まれています。生活消費者センターに寄せられる相談は氷山の一角に過ぎないと思います。なぜならば、消費者相談センターに実際に相談するのはその多くが高齢者の家族や介護者であるからです。

下記:日本新聞協会の資料よりワセダクロニクル作成

新聞販売業者による訪問販売の被害が尽きない背景には新聞の急速な発行部数の減少があります。2019年に比較して2020年では270万部も減少しています。2000年から比較すると2020年は35%も減少し全体で3509万部となっています。そして、減少ペースは年々急になっているのです。新聞の販売部数の減少によって新聞販売業者の契約獲得競争はより熾烈になり高齢者等の弱者に対する悪質な訪問販売活動が繰り返される状況となっているのです。

下記:消費生活センター公開資料よりワセダクロニクル作成

消費生活センターに寄せられる新聞販売業者に関する相談には上記のような高齢者に関することが多く寄せられています。上記は2020年1月の相談例ですが全300件中の106件が高齢者をターゲットにした被害の相談例です。上記表中にあるようにそれらの多くは拒否の意思を示す方への販売活動であり消費者被害と言っても過言ではありません。

では、この厄介な新聞の訪問販売から国民を守る法整備はなされていないのでしょうか。

https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/doortodoorsales/

訪問販売から消費者を守る法律として特定商取引法というものがあります。訪問販売を禁じるような法はありませんが、訪問販売をする上でのルールは法内に規定されています。例えば、事業者の氏名の明示義務や書面の交付義務です。書面の交付義務には契約の解除に関する事項(クーリング・オフ)も含まれます。下記のリンクにあるように消費者契約法によって不当な勧誘や不当な契約条項から消費者を守る法律が施行されています。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/consumer_contract_act/pdf/public_relations_170329_0001.pdf

中でも特定商取引法の第三条2には再勧誘の禁止が定められています。消費者が契約締結の意思のないことを示したとき、勧誘の継続やその後の改めて勧誘することは禁止されています。

特定商取引法に違反した場合には行政処分の罰則規定があります。第7条に規定される業務改善指示や第8条に規定される業務停止命令、第8条2に規定される業務禁止命令の行政処分の他、罰則規定があります。

下記リンクの2020年12月29日のワセダクロニクルの記事によると2015年6月10日の国会の消費者委員会の専門調査会に読売新聞グループ本社代表取締役経営主幹で日本新聞協会会長の山口寿一氏が強引な新聞勧誘や契約締結意思のない者への繰り返される勧誘に関して下記のように発言しています。

「新聞の勧誘の現場では、様々な接触のやり方があって、断られたけれども、とっていただくということも現実に多々あるのですね。それは強引なセールスをしてということではないと思います。」

果たしてそうなのでしょうか。その場では強引なセールスをしなくても断っている者への繰り返す訪問による勧誘は私には大いに強引なセールス行為だと感じるのです。

さらに山口寿一氏はこのようにも発言しています。

「それが必ず強引だという前提に立ってしまうと、一旦断られたら、もう二度ととらないということになるのでしょうけれども、そうではなくて、とっていただくというところまでこぎ着けることも多々あるのが新聞という商品の現実なので、事前の規制というものが強化されるのは、過剰な規制になっていくのではないか。新聞販売所の活力を必要以上に奪うことになるのではないかということを非常に懸念しているところです。」

日本新聞協会のモラルとは如何なるものでしょうか。契約しない意思を示しているところへの再勧誘は特定商取引法で禁じられています。行政処分や罰則の規定もあります。それにも関わらず読売新聞社のトップや日本新聞協会の会長(発言当時は理事)がそのように答弁しているのです。契約を断る者に対して新聞を取ってもらえるところまでこぎ着ける訪問活動、それこそが悪質な訪問販売であり、それから消費者を守るために特定商取引法や消費者保護法が制定されているのです。山口寿一氏の主張には遵法意識の欠如を感じます。また、予め訪問勧誘のルールを規定することは新聞販売所の活力を奪う行為なのでしょうか。断る者へ繰り返し訪問することが新聞販売所の活力だとするならば、それこそが違法行為に他ならないのではないでしょうか。再勧誘は法律によって禁止されており行政処分の対象です。山口寿一氏の発言は日本新聞協会と代表し、読売新聞グループを代表して特定商取引法の規定を遵守する意思がないことを表明していると受け取られてもしようがない発言であると思います。

参考にさせて頂いたワセダクロニクルの記事「高齢者を狙う新聞販売」(2020年12月29日)には現在においても契約を拒否する相手への訪問販売は法律で禁止されていないままであるとされている。しかし、私は完全ではないものの一定の規定が存在していると考えています。予め契約を拒否する者に対して勧誘を繰り返す行為は禁じられている。それだけではありません。特定商取引法第三条の2には消費者に勧誘を受ける意思があることを確認するように努めなければないないとされています。商品の勧誘を受ける者がその必要を認めない場合の勧誘はその規定に則っていないと解釈できると思います。ただし、表記されているのは〝努める″義務でありますから規定としては十分ではないようにも受け取れます。

ワセダクロニクルの記事によると下記の三点について日本新聞協会に質問を送り、日本新聞協会の西野文章専務理事・事務局長の名義で得た回答を公開している。

1.認知症の高齢者らに対して悪質な新聞販売が行われていることを把握しているか。

回答→「国民生活センターの公表資料で、高齢者との消費者トラブルがあることは把握していますが、新聞協会として販売現場の具体的な事例は調査していません」

2.悪質な新聞販売に対する具体的な対策は。

回答→「新聞協会販売委員会で、国民生活センター公表資料を報告し、全国の販売現場に対して内容を共有し、高齢者を中心に消費者とのトラブルには更に注意するように指示しています」

3.特定商取引法など新聞販売に関係する法律を順守しているか。

回答→「新聞協会は特定商取引法はじめ販売ルールを順守徹底するよう、全国の販売現場に対して呼び掛けており、その成果が相談件数の減少として表れていると考えています」

1についてトラブルとは紛争を意味する言葉であり新聞販売業者だけではなく高齢者にもその責任の一端があるような表現をしています。具体的な事例を調査しないことで高齢者の被害状況を把握せず恰も双方に責任があるような表明をすることは真摯な回答とは思えません。

2についてトラブルを防止する具体的な方法や指示が明記されていないことから現状認識と問題意識の欠如を伺わせます。

3について2018年から2019年にかけて新聞販売に関する消費生活センターへの相談件数が1000件以上減少していることを指していると思われます。そうではありながらも未だに年6000件以上の相談が寄せられているという現状を直視しないばかりか、特定商取引法、消費者保護法を順守しているかどうかの質問には答えていない不誠実な回答だと思いました。

下記:消費生活センター提供データ

以上、ワセダクロニクルの記事を基に検証して参りました。

消費生活センターに寄せられる相談や被害の報告は氷山の一角であるはずです。相談件数が約6000件だとしますと実際にはその何倍もの被害が発生していると推測できます。高齢者の被害が増えていることは認知症や判断能力の低下がみられる方々も多いはずです。それらの方々が消費生活センターに相談することは稀なことだと思います。所謂、社会的弱者が意に反する契約を強いられることは商道徳や倫理に悖ります。行政は社会正義の元に厳格に法規定を適用し、法令違反には厳しく対処してもらいたいと思います。弱者の保護は道徳的義務を超越した政治的、行政的、社会的要請であり必要性を感じます。

さて、大阪市の事例をご紹介します。大阪市では独自に悪質な訪問勧誘を規制する条例を制定しています。それと同時に訪問販売お断りのステッカーも作成し配布しています。

下記:大阪市HPより

玄関先に「訪問販売お断り」のステッカーを貼るなど、あらかじめ勧誘してほしくない意思を表示しているにもかかわらず、事業者が勧誘する行為は大阪市消費者保護条例が禁止する「不当な取引行為」に該当し、条例に違反することになります。

https://www.city.osaka.lg.jp/lnet/page/0000475776.html

大阪市の取り組みは特定商取引法の延長上の取り組みであり制定することが困難なことではありません。訪問勧誘被害に対して一歩進んだ防止策に過ぎないのです。願わくば、国会にて特定商取引法第三条の2の改正を行い、事前の訪問勧誘の拒絶の意思を表明する者への訪問勧誘を禁じて頂きたいと思います。

NHKも2021年度の計画にて戸別訪問によらない営業活動への転換を表明しています。

時代は移ろい変わります。商取引の形態も然りです。社会の高齢化が益々進んでいます。安全で安心な社会生活を送れるように政治的な対応による整備を進めて戴くことを願います。個々の有する正義感に大きな違いがないとすれば案外スムーズに法改正のコンセンサスを得られるのではないでしょうか。

最後までご拝読賜りありがとうございました。

引用資料:ワセダクロニクル 2020年12月28日、12月29日、2021年1月25日

https://www.wasedachronicle.org/articles/newspaper/np1/

https://www.wasedachronicle.org/articles/newspaper/np2/

https://www.wasedachronicle.org/articles/newspaper/np3/

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