軽貨物運送事業者からの相談について(参議院浜田聡議員のお手伝い)

今日は「昭和の日」です。〝パンダこのやろう〟〝すみまペン〟〝熊った〟〝どうもありガチョウ〟〝恐ロシア〟などなどぜ~んぶ昭和の産物です。私とは一切関係ありま千昌夫。

さて、参議院浜田聡議員のお手伝いに上がり、軽貨物運送事業者からの相談について考証してみました。

相談者の相談内容は、軽貨物の事業者募集での募集者との面談時での説明と実際の業務内容が違うということでした。具体的には下記のような事柄をあげられています。

 ①朝から晩まで周辺待機させられる。

 ②派遣業許可がないにも関わらず数か月にもわたりドライバーを倉庫作業に派遣している。

 ③業務に関わる高速道路代が荷主から往復分が支払われているにも関わらず、実際に運送するドライバーには片道しか支給されず、ガソリン代は自腹になっている。

④元請け会社がドライバーと業務委託契約を行い黒ナンバーを取得した車をリースして、ドライバーは名義貸しをしている。

⑤車両保険代と貨物保険代を毎月給料から天引きされている。

⑥委託契約した勤務先が二次請け業者だと聞いていたが実際には五次請け業者だった。

 (多重請負によって本来得られる報酬を受け取れない)

⑦長時間の過重労働を強いられても事業者に罰則はない。

⑧軽貨物運送業に関しても一般貨物運送業と同等の法整備をして欲しい。

運送業にはいくつかの種類があります。大分類として旅客と貨物です。

旅客運送には乗合旅客運送と呼ばれる路線バスなどの認可、貸切旅客運送と呼ばれる観光や団体輸送などの認可、乗用旅客運送と呼ばれるタクシーなどの認可があります。これらの旅客運送の許可は人命を預かる事業でもあることから極めて厳格で厳しいものとなっています。旅客運送は運転免許も2種免許の取得が必要となります。

貨物運送業にもいくつかの許認可の種類があります。一般貨物は最もポピュラーなもので、有償で荷物を運ぶ許可です。複数の荷物を集めて配送することができるのが一般貨物運送の許可です。それに対して特定貨物運送とは限定した取引先の荷物のみを専ら運送する許可です。貨物軽自動車運送とは軽自動車を利用して運送する許可です。さらに貨物利用運送事業とは会社や個人の方からの依頼により運賃や料金を受け取って自らが運送責任を負いつつ、他の運送事業者に貨物の運送を委託して運送する事業を言います。

一般貨物運送業と貨物軽自動車運送業との許可要件の違いは大きいです。

一般貨物は営業所、休憩所、車庫を別々に用意しないといけません。貨物自動車も5台以上からとなります。人員は運転者(アルバイト不可)5名以上、運行管理者、整備責任者がそれぞれ必要となり、経営者または経営執行責任者は法令試験(受験2回まで、8割正解)をパスする必要があります。そのほか、許可後にも点呼(出車・帰車)や運行記録など多くの法令で定められた運用規則があります。事業計画に沿った資金も必要となります。数か月分のキャッシュフローを見越した銀行の残高証明も用意する必要があります。一方、貨物軽自動車運送は営業所(自宅可)と駐車場(自宅可)と軽自動車があれば一人でも許可を受けることが可能です。そして、貨物利用運送とは、自らはトラックなどの輸送手段を持たずに、荷主からの依頼をそのまま、他の運送事業者に貨物の輸送を依頼する運送事業のことです。要するに配車係がそのまま事業として独立した存在になったような印象です。貨物利用運送には自動車運送のみを扱う第1種と自動車に併せて船舶や航空機での輸送も手配できる第2種があります。許可を得るには営業所と純資産300万円以上が必要となります。最新のバランスシートの提出も必要となります。貨物利用運送の許可に対するハードルは高くはありませんが、利用運送(水屋と呼ばれる)と自社で一般貨物運送事業も行う兼業も多いようです。過剰は仕事を断るのはもったいので他社に振り分けるという趣旨だと思います。

上記を踏まえて具体的な相談内容に私感を記します。

①周辺待機中の報酬は発生していないので不満が発生するのでしょう。雇用契約と委託契約の差はそのようなことで差異が出るのです。雇用契約ではないのでしたら労働時間のロスに対するリスクは受託者にあることが通常であろうと思います。相談者は雇用契約によって労働時間や労働場所の縛りがないと思われますので、ご自身の許容される労働環境が提供される受託者を探されるか、雇用契約を結ぶことが出来る事業者を探すことが望ましいと思います。

②委託先の依頼により運送業務以外の労務を支持された場合はご自身の意思で断れるのではないでしょうか。それとも、委託先の指示を拒否することが出来ないような契約内容となっているのでしょうか。倉庫での作業は人材の派遣なのでしょうか。つまり、派遣された先の倉庫の担当者の指示命令によって作業にあたるのでしょうか。派遣されるには派遣元と派遣者は雇用契約を結ぶ必要がありますし、派遣元と派遣先は派遣契約を締結している必要があります。上記の場合には派遣元は労働者派遣事業の認可を受けなければなりません。

 ただし、委託先と倉庫が業務請負契約であり、倉庫での作業の指揮命令が倉庫の担当者では委託元である場合は労働者派遣事業にはあたりません。この場合、相談者と委託先との関係は委託元からの相談者への委託業務の再委託にあたると考えます。よって、法律違反にはあたらないと思います。

 相談者にとって不本意な労働を強いられていると感じるのでしたら憲法第22条で保障されている職業の自由もあることから委託契約を放棄するか、契約外の業務で望まない仕事でしたら毅然と断ることも必要だと思います。

 結論として、上記のケースが違法に労働者派遣業を行っていると断定はできません。

③労働者ではなく、あくまでも委託元と受託者という関係で言うと有料道路料金の負担や燃料費の負担に関して法的な規制などありません。荷主がそれらの経費を負担していることが仮に明らかな場合であっても、違法に搾取したことにもならず、どのような条件で委託先に発注するかは委託元の自由であり、資本主義市場での自由競争の範疇であろうかと思います。相談者はより条件の良い委託者を探すことでその原理に適おうとすることが出来ます。

④元請け会社が黒ナンバーを取得して運送の委託先に車両をリースすることが即ち名義貸しだとは限りません。委託先を個人事業主と考えたとしても、黒ナンバー(軽貨物)の場合は1名でも事業認可を受けることができるのでここで言う元請け会社は名義貸しを必要としません。委託元が貨物利用運送か貨物軽自動車運送なのか明らかではありません。貨物医用運送の場合だけでは黒ナンバーの取得はできないので、委託元は貨物軽自動車運送の許可を得ていて、委託先の人物を運転者登録して黒ナンバーを取得して車をリースしているのでしょう。車をリースをしてもらう必要がなく、自前で用意できる場合は委託元で運転者登録する必要はないわけですので相談者も他社で運転手登録を行う必要はなくなります。ただし、委託契約の前提として軽自動車のリースが必須とされている場合は、委託元のビジネスモデル自体が運送による利益、運送を手配することによる利益、自動車のリースや付帯する保険等から得られる利益等によって構成されていると考えられます。それはそのようなビジネスモデルを構築しているものと考えて、相談者は委託契約を結ぶにあたって利害関係を認識し、自身の意思決定として選択するほかないと思います。

⑤車検証や損害保険書を確認できてないことを前提の見解です。相談者の文面からは委託元は無許可の損害保険の代理店か損害保険募集人がいないにも関わらず保険商品の販売を行っているような書きぶりです。しかし、相談者は保険商品を委託元に購入させられたのでしょうか。私にはそうではないように感じます。委託元が委託元の所有している車両の保険に申し込み、委託元から車両のリースを受けている相談者に当該車両に関わる保険料の負担をさせられているに過ぎないのかもしれません。法令順守に厳しい保険会社が資格の代理店と保険商品の取引を行うことは思えません。ここで言う保険代の天引きとは、車両の所有者が車両の使用者に車両の保険料金を実費で請求しているのだと思えます。

⑥運送業界における多重請負に関しては業界内でもその是非が分かれているようです。貨物運送における多重請負事態が違法行為ということはありません。また、一次請けの金額が明らかにされないので五次請けの場合の損害額を明らかにできないという相談者の主張ですが、一次請けは受注金額を公開する義務はありません。独禁法や下請代金法というのはA社がB社に運送を依頼する場合に優越的地位の濫用をして、例えば消費税分の値引きを取引の条件としたり、発注額の数%の割り戻しや設備協力金を取引条件とする場合において法に抵触する可能性があるということです。中間マージンが多数発生すると危惧されえる多重請負についての違法性があるとは私には現段階では思えません。

⑦業務委託契約の関係上において過重労働を強いられるという概念は当てはまらないのではないでしょうか。むしろ、各々の運送業務の安全を維持する為の体制や予防の構築は委託者ではなくその運送業務に実際に当たる受託者が負うことではないかと思います。物理的に安全な運送が確保できない業務であれば受託者はその業務を固辞するべきではないでしょうか。元請け業者、つまり委託者が相談者に過重労働を強いることなど出来ないし、仮にそのようなことがあったとしたら、それはまた別の凄惨な問題であると思いますし、何等かの犯罪にあたるのかもしれません。

⑧貨物軽自動車運送業を一般貨物運送業と同等の法規制を行うことには反対です。仮に軽貨物運送を一般貨物運送業と同等の法規制をすると、軽自動車5台以上、運転者5名以上の雇用、営業所、休憩所、車庫の規制も厳しくなります。運行管理者、整備責任者も必要になりますし、経営者には法令試験も課されます。必要な帳票類も莫大になりますし、事業計画や資金計画に沿った現金残高も要求されます。つまり、軽貨物運送の法整備を一般貨物運送並みに法整備するのなら貨物軽自動車運送という許可の種類は必要がなくなり、貨物運送業は一般貨物運送だけよいという主張となります。一般貨物運動業と貨物軽自動車運送業にはそれぞれにメリットとデメリットがあります。そして、それぞれに職業としてニーズがあるのです。

以上が相談者に対する私の見解です。契約書や車検証、保険証、業務実態を証明する者、運行記録などを拝見した上で述べた見解ではありませんのであくまでも私感です。

さて、相談内容とは別に私の貨物運送業についての見当を考えてみます。

国が貨物利用運送業という業を許可する法律を制定したのには目的があると思います。

利用運送事業を禁止した場合、出荷主は繁忙期や緊急時の輸送に際し契約外の運送事業者を自力で探さなければなりません。同時に新興や中小零細の運送事業者は常に荷主探しに奔走することになります。需要と供給のミスマッチが恒常的に発生し運賃相場は常に乱高下します。物流の非効率は日本の経済活動停滞を招き物価も不安定になります。

利用運送事業は物流の潤滑油の役割を果たしていますが、自社車両や運行管理者を必要としないなど運送事業者を名乗るには首を傾げる面があります。特に自動車運送業界内の格差を助長し、中小零細運送事業者の経営を圧迫し、従業員の待遇悪化を招くこともあり得ることは私も理解できます。仕事を授ける側、仕事を頂戴する側はそれぞれの立ち位置と性格上、従属関係にあることも否めません。その従属関係は法で縛るものではないのも事実ですので受注の可否の判断は独立しています。

運送業界にヒエラルキーがピラミッド状に層をなしていて、貨物や情報が流れていく過程で多重請負の温床となっていることも確かです。貨物利用運送業は荷主と運送業者、運送業者と運送業者の需要と供給のマッチングサービスを行う存在です。需給のロスをなくすためには有益な存在ではありますが、一方では多重構造を生む原因となっているという指摘もあります。

相談者は運送業界のヒエラルキーの中で暗中模索というか試行錯誤というか疑心暗鬼の中にあるとは思いますが、下記のような新しい時代の輸送需給のマッチングサービスも誕生しています。自由資本主義上であらゆる業界の技術革新は絶え間なく進んでいます。

下記:ソフトバンクHPより

https://www.softbank.jp/biz/future_stride/entry/iot_5G/20191129/

https://pickgo.town/

上記PICK GOというサイトは荷主とドライバーを繋ぐ配送マッチングプラットフォームです。下記はPICK GO の中村社長のコメントです。

「『PickGo』の最大の特長は、ドライバーが荷主から直接受注できるため、多重下請け構造を許さないことです。また、『PickGo』ではドライバーの評価制度を導入し、受注のスピードだけではなくサービスの質でドライバーの方が勝負できる環境を作っています。

ドライバーが1つ配送を終えるごとに、配送遅延がないか、適切なタイミングで必要な連絡をしているかなどをシステム上で評価。さらに、荷主や受取主がドライバーの対応を評価。これらを総合して、ドライバーの顔写真やプロフィールとともに5段階評価が表示されます。プラットフォーム上で仕事内容や評価が可視化されることで、努力した分だけ評価が上がり、より多くの仕事を受注することができます。もちろん、中間業者をはさまないので単価も上がります。こうした仕組みが共感され、多くのフリーランスドライバーに登録してもらえるようになりました。従来の多重下請け構造では月20〜30万の収入だったフリーランスドライバーが『PickGo』を活用して月100万円以上の収入を得るケースも出ています」

輸送の発展は国家の発展にもつながります。私が子供の頃に林さんという林タオル工業という会社の社長さんが父の会社のご近所さんで仲良くさせてもらっていました。林タオル工業は後のシャディー(サラダ館)という贈答品では国内屈指の企業に発展しました。林さんから林タオル工業の成功は偏(ひとえ)に物流網の構築によってもたらされたものだと教わりました。多数の運送業者とアライランスを組み、沖縄から北海道まで隈なく物流網を構築し、贈答品が早く安くどこへでも届けることができるようになったことで、贈答品業界で急成長を遂げることになったということでした。流通は商業と国民生活とは実に密接な関係にあります。国家の文化的発展を支えていると言っても過言ではありません。物流の発達と発展が国民の生活を豊かにしてくれます。それらのことを慮った上で、私は運送業法等で輸送業者を規制することは出来るだけ避けるべきだと思っています。そして、運送業の参入障壁を出来るだけ低くして、運送業界の発展を後押しするべきだと思います。

ただし、旅客運送は違います。人を運ぶ事業ですので、逆に慎重かつ徹底した監視が必要だと考えます。

最後までご拝読を賜りありがとうございました。

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