オリンピックと放映権について(参議院浜田聡議員のお手伝い)
勤務だる~(きんめだる~)もっと、もっと~とメダルをねだる~。
緊急事態宣言が発せられている最中ではありますが遂に東京オリンピックが始まりました。連日の日本選手のメダル獲得に少なからず感動を頂戴しています。日本選手の健闘を願うと共に世界中から集ったアスリートたちが日ごろの成果を発揮できることを願います。そして、何より無事に大会が運営されることを祈ります。
さて、昨日は参議院浜田聡議員のお手伝いに上がりオリンピックと放映権と開催時期について考えてみました。
2021年7月23日より東京オリンピックの幕が開けました。本来ならば前年の2020年の夏季に予定されていたものの世界的な新柄コロナウイルス感染症の蔓延によって1年延期となっていました。1年延期したからと言ってコロナ禍が終息したわけではありません。感染者の数で言うとむしろ増えているような状態です。6月からは高齢者のワクチン接種も開始されましたが未だに接種率(2回)は25%に留まっています。そのような状況の中での開催に踏み切ったことにマスコミはこぞって政府や東京都を批判して来ました。同時にマスコミはコロナに対するワクチンに関してもその危険性を殊更に煽ったり、副反応を過大に報じたりして来ました。併せて、コロナウイルスの感染防止を図るために飲食店やイベント事業などの営業自粛や開催自粛をまるで強いるような施策をマスコミは批判しています。政府は人流を減らすように緊急事態宣言を発したり蔓延防止法の適用を行い、同時にワクチン接種を進めて来ても尚現在は以前にも増してコロナ感染者は増える一方です。多くのマスコミが主張するように緊急事態宣言を発出せず、蔓延防止法も適用せず、ワクチン接種は危険だから行わないなどという方針を政府がとっていたら日本は地獄絵図のようなおぞましい状況に陥っていたかもしれません。新型コロナウイルス感染症に関するマスコミ報道は国民の生活安全衛生の問題を反体制的な政治カードのひとつとして不用意に利用されて来たように思います。オリンピックの開催の是非についても同様です。大半のマスコミは世論をオリンピックの中止へと仕向けて来たと言っても過言ではありません。確かにコロナ禍が終息していない状況での開催が正解だったとは限りません。世界中で新型コロナウイルスの感染によって多くの方が図らずも命を落としている最中でもあります。海外から数万人の出場者やスタッフやマスコミが東京に集結することになります。コロナ禍の影響で十分にトレーニングが詰めなかった選手も多いでしょうし、各国の国内予選ですらままならない状況であった国も多いでしょう。オリンピックの開催についてはオールオアナッシングです。既に一度延期しており、来年には北京五輪も予定されていることから、やるか、やらないかの判断しかありません。政府が決定した無観客での開催の決定について私は妥当な判断だったと思っています。東京五輪の総予算は約1兆6千億円に上ります。そのうち、国と東京都で約1兆円を負担しています。この約1兆円は紛れもなく国民の血税が投入されています。既に多くの予算が執行されているにも関わらず中止するとその損害はもはや無尽蔵な額に達するでしょう。テレビの放映権やスポンサー料の多くは返金を余儀なくされます。それだけではありません。中止にすると従前に目論まれていた経済効果は皆無に等しい状況となりコロナ禍の二次災害のように国民の経済活動に大きなダメージを与えることとなるはずです。
下記:NRI、2021年6月22日コラムより
オリンピック開催を注した際は約1兆8千億円の経済効果が失われることが見込まれますが、無観客での開催に踏み切った場合は約1兆6千億円の経済効果が生まれると予想されています。感染リスクを軽減しつつ、経済効果の減少を8%程度に抑えることができるのでしたら政府の行った無観客でのオリンピックの開催は御の字だと言えると思います。ただし、実際には緊急事態宣言が発出されている状況での無観客での開催であることから経済効果はさらに大幅に減少していると予想されます。
そうした中でオリンピックを開催することで維持できる巨大な収入が放映権料です。東京五輪では約4400億円にも上ります。IOCが得る放映権料から開催国や出場国へ一定額の分配金が支給されます。この分配金によって各国の五輪委員会の運営が補助されているケースも少なくありません。イギリスの五輪委員会は東京五輪が中止になれば資金繰りが行き詰まることを公表しています。つまり、オリンピックの開催は多くの国のスポーツ振興に重要な役割を担っているのです。
さて、約4400億円にも上る東京五輪の放映権料の中でもひときわ巨額な放映権料契約をしているのがアメリカのNBCです。NBCがCBS,ABCと共にアメリカ三大ネットワークの一社です。NBCは東京五輪で1380億円で米国での独占的な放映権を得ています。NBCは既に2020年3月には1300億円以上の広告枠を販売していると発表しています。前回のリオデジャネイロ大会での広告枠の売上総額は1700億円を超えていたことから東京五輪ではコロナ禍の影響からか少々低調な売り上げに留まっています。NBCはオリンピックの放送を会員制のネットワークで行っており広告売上とは別途に会費収入も大幅に増加することを見越しているのでしょう。
モントリオールオリンピックをはじめ開催地は大きな赤字を強いられてきたオリンピックの歴史と指針を変えたのが1984年のロサンゼルスオリンピックでした。ロサンゼルスオリンピックでは放映権、スポンサー料、商標権などを管理して民間資金を集めることで財源を確保するという商業主義を打ち出しました。以降、ロサンゼルス方式として現在においてもその形態がグローバルスタンダードになっています。ただし、五輪の公益性を保つうえでIOCの署名の無い放映権契約は無効とされています。
世界のスポーツ振興と五輪という大舞台を用意するには巨額の費用を必要とすることは大いに理解できます。また、スポーツの商業化が進むことも私は否定しません。スポーツがビジネスに繋がることでスポーツの発展と競技者の動機付けと子供たちの希望に繋がることも期待できると思うからです。
そうした中でIOCは長期の放映権契約を締結しています。
下記資料:プレジデントオンラインより
北京五輪から2032年までの6大会でアメリカのNBCと約7800億円という巨額契約です。2030年の冬季オリンピックの開催地は未定の状況のままでの契約です。2012年夏季から2021年の東京五輪までのNBCとの契約が5大会で約4500億円でした。契約上、冬季大会が1回増えているだけで1.7倍に高騰しています。高騰した要因は色々とあると思いますが大きな要因としては放送局のビジネスモデルの変化にあると思います。従来の地上波における広告収入を維持しつつも新たなメディア市場が急速に開拓されてきたことが背景にあるのでしょう。NetFlixやAmazonPrimeやDisney+などが提供する有料配信サービスの市場です。NetFlixは約1億8000万人、AmazonPrimeは約1億人、Disney+は5千万人の会員を擁します。NBCが4400万人の会員を抱えると言いますが、実際には地上波での視聴者がほとんどで有料配信サービスの利用者は1500万人ほどだと言われています。NBCは有料配信サービスでの覇権争いの上でもオリンピックという信頼性も知名度も高い超優良コンテンツの放映権を米国で独占的に取得し巻き返しを図りたいということなのだと思われます。メディア市場の拡大は放映権料の増額という意味でIOCに好影響をもたらしていると言えるでしょう。IOCの収入が増えるということは各国に渡されるスポーツ振興費用や五輪開催地への分配金の増額に繋がるということです。
長期的な放映権契約はIOCの継続的で安定的な資金の確保を可能にしました。その一方で、五輪開催地の早期決定を放映権者に促されることも必至になりました。これまでは7年先を決定するというスパンで進められていた開催地の検討が11年先まで決定することが可能とするプロセスに変更されました。開催国の金銭的な負担や地球環境問題、IOC理事へのロビー活動などが障壁となり招致熱が劇的に下がってしまっていると言われています。そうした中でコンペ形式からIOC理事による書類選考や個別視察だけで決定する一本釣り形式に変更したことで決定しやすくなりました。長期契約による巨額の放映権料はIOCのみならず開催地への分配金も増えることになります。確かにIOCはNBCの顔色を伺いながらと決定するというのは否めませんが、確実に開催してくれる開催地を確保して巨額でありながら安定的な資金を確保できる体制を整えることが出来たのも確かだと思います。
放映権の高騰がスポーツの発展に寄与することは間違いのないことでしょう。しかしながら、スポーツの種類によって大きな経済格差を生まれています。オリンピックやサッカーワールドカップの高額放映権収入が牽引してスポーツ界の俯瞰的に見渡し啓蒙と振興できる組織を模索する必要があると思います。また、極端な放映権の高騰により放映権者が赤字に陥ることのないように経済的な上限をIOC等の放映権料を司る組織は認識しなければならないと思います。経済界とスポーツ界のバランスが偏ると双方が不幸な結果を招くことになります。スポーツ界がこの大きな収入を絶たれてしますと金メダルを目指して努力してきた選手たちのみならず、それぞれのスポーツでスターを夢見て来た子供たちの希望や期待を打ち砕くことにもなりかねません。スポンサーに過度の負担を強いらないような配慮を為すことが将来の展望に繋がるのだと思います。
最後にオリンピックの開催時期についてです。1964年の東京オリンピックや1968年のメキシコオリンピックは10月に開催されています。東京の10月と言いますと気温も15℃ほどでスポーツには最適なシーズンだと言えると思います。しかし、その後、約20年は7月か8月頃の真夏に開催されています。日本の夏の平均気温は28℃以上になります。最高気温では34℃にも達します。あまりの高温の中ではアスリートたちが実力を発揮することが困難なのではないでしょうか。日本で言うなら春か秋がちょうどよい気候だと思います。ではなぜオリンピックは往々にして7月か8月に開催されるのでしょうか。それは紛れもなく高額な放映権料を支払っている欧米メディアの影響だと言われています。5月や10月には世界的なスポーツイベントが目白押しとなっておりメディアが高額コンテンツを欲していないという事情があるようです。他のスポーツイベントと同時期に開催となると視聴者を食い合うことが予想されることから避けたい意図があるのです。7月8月ならばそのような大きなスポーツイベントもなく高視聴率を目論むことが出来る為に高額な放映権料を出すことが出来るということのようです。放映権料が高額になることはスポーツ界にとって喜ばしいことですが、その結果としてアスリートに過度の負担を強いるのでは本末転倒です。朝夕は若干気温も穏やかにはなりますが真夏に開催するマラソンや競歩やトライアスロンはアスリートにとって過酷な競技環境であることに変わりはありません。せめて8月下旬から9月上旬での開催にできなかったのかと思います。オリンピックがスポーツ競技会の頂点にあるとすれば、商業主義に優先してアスリートがパフォーマンスを最大に発揮できる環境を整備することは必須の条件だと思います。特に寒暖などは絶対に近い条件だと思います。JOCも東京大会の開催時期について具体的にIOCに相談したり、変更を申し出たりすることはなかったようです。ただし、マラソンの開催時間や開催地に関しては議論が為された上で北海道での開催に決まりました。
スポーツに関わる経済が商業主義であることは私は良いことだと思いますが、俯瞰的にマクロ的に判断ができる組織が確立されることが必要だと思います。
以上、最後までご拝読を賜りありがとうございました。
参考資料
木内登英のGlobal Economy & Policy Insight
https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2021/fis/kiuchi/0622
気象庁、過去の気象データ
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/monthly_s3.php?prec_no=44&block_no=47662&year=&month=&day=&view=a2
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