うなぎは食べて良いのか(参議院浜田聡議員のお手伝い)
このうな切者~なんて言われないように誠実に生きます。うなぎ恋しかの山ぁ~。。。
うなぎを食べて良いのか悪いのかを考えてみようと思います。まずは私の結論だけ先に申しますと食べて良いと考えます。理由は、以下、順を追って考証します。
うなぎを食べて良いのかなんてことを思っている人は少ないのかもしれません。実はうなぎは絶滅危惧種なのです。食用うなぎはヨーロッパウナギと二ホンウナギが主です。2014年にヨーロッパウナギは国際自然保護連合から絶滅危惧ⅠA類、二ホンウナギは絶滅危惧ⅠB類の指定を受けています。つまり、ジャイアントパンダやトキと同じ程度に絶滅が危惧されているということです。 下記:水産庁、うなぎをめぐる状況1
昭和30年代には200トン以上獲れていたうなぎの稚魚は、平成29年には10トンを下回り、令和2年には僅か3.6トンにまで現状しています。凡そ60年で50分の一にまで減少してしまっています。このような驚異的な稚魚の減少により絶滅が危惧されるに至っているのです。
では、なぜシラスウナギの稚魚が急速に減少しているのでしょうか。昭和の時代には世界中のうなぎの70%が日本で消費されていました。近年では、台湾、中国、韓国、米国、欧州、中近東でもうなぎが食されるようになりました。それは、日本の和食が海外に広く紹介されるようになったことに起因していると考えられます。それでも日本の消費量は未だに世界に流通するうなぎの約50%を占めています。日本人がうなぎを乱獲し消費しすぎているから稚魚が減少してしまったのだという論が多く見受けられますが果たしてそうなのでしょうか。確かにその一面は否定できないことだと思います。かつてのくじらがそうであったようにうなぎも計画性のない稚魚の漁獲が世界中で進められたことにより生態系のサイクルに影響を及ぼしたのかもしれません。しかし、それだけが原因ではないと思います。尋常ではない稚魚の減少を鑑みるに気候変動の影響も受けているのではないかと思います。近年、さんまの漁獲量が急激に減ったり、鮭やスルメイカも漁獲量が減少しています。マイワシやマサバも同様です。これらは水温の上昇も影響しているのではと言われております。うなぎに関してはその生態系が完全に解明されているわけではありません。よって正確に原因を究明することは困難です。うなぎの生態についてわかっている範囲で想像すると温暖化とは無関係とは思えません。 下記:農水技術会議事務局作成
日本うなぎは西マリアナ諸島の西方沖で産卵することがわかっています。ここで産まれた二ホンウナギの稚魚は北赤道海流に乗って西へ向かい、その後、南北に分かれる海流のうち、北へと流れる黒潮に乗って、東アジアの沿岸に来ます。しかし、そもそも産卵地点が南下してしまうと、南へ向かうミンダナオ海流に取り込まれ、成長の場である東アジアにたどり着けない稚魚が増えてしまうことになります。それらの稚魚は二ホンウナギの生態系から外れてしまうということです。さらに、温暖化は北赤道海流が南北に分岐する海域の緯度をも、上下させてしまうと考えられており、このことも、ニホンウナギ本来の回遊を妨げると懸念されています。
温暖化だけではありません。二ホンウナギの生息域の環境の変化も影響しているのかもしれません。ダム建設などの大規模な開発事業もウナギが遡る川の流れを断絶し、その棲家を奪ってしまいます。特に河口堰の建設は川の下流部への潮の侵入を阻んで流れを止めてしまうだけでなく海水と淡水の混ざった「汽水」の自然を大幅に削り取ってしまうために川へ入るシラスウナギは遡上することが困難になると言われています。併せて、河川や湖沼の沿岸をコンクリートの堤防で護岸するなどの工事もウナギの食物となる小さな動物を減少させる原因になるため、その影響も受けることが心配されています。
以上、うなぎの稚魚の減少には様々な要因が考えられますが、それに対する対策はどうなっているのかを見てみます。日本で消費されるうなぎの7割は輸入品でした。その輸入先は中国が7割以上、残りが台湾からでした。2007年に台湾は資源管理の為にうなぎ(稚魚を含む)の輸出を禁止しました。ヨーロッパウナギも2010年にワシントン条約で実質的に輸出を禁止されました。それによってヨーロッパウナギの養殖を主に行っていた中国は二ホンウナギか北米産のロストラータ種の養殖に切り替えました。うなぎの種の保存の世界的潮流に併せて2012年より日本、中国、台湾、韓国、フィリピンが参加して各国の養殖の池入れ量の上限を設ける取り組みを行っています。 下記:農水省、うなぎをめぐる状況2
日本国内でも内水面漁業振興法によってうなぎ養殖業を農林水産大臣の指定養殖業(許可制)として稚魚の池入れ量の制限を行っています。シラスウナギ(うなぎ稚魚)の採捕については採捕期間を設定し、採捕量と出荷毎の出荷数量の報告を義務付けました。また、ウナギが産卵のため河川から海に下る時期の採捕を禁止しています。
このように世界的なウナギ資源の保護と共に日本においても資源管理に努めています。現状において飛躍的な資源の回復は見られません。よって、国内のうなぎの供給量は今も年々減少しています。稚魚の価格は高騰していることから消費価格も高騰し続けて来ました。 下記:農水省、うなぎをめぐる状況3
上記図のように(様々な制限により)うなぎの国内での供給量は減少しています。図を読み取ると輸入量はピーク時の四分の一にまで減少していますが、養殖生産量はさほど変化がありません。輸入量が激減したのはヨーロッパウナギの輸出が制限されて中国での養殖が激減したことによります。養殖生産量も台湾の稚魚の輸出禁止や国内での採捕制限によって減少するはずのですがそのようになっていません。
どうやら、正規ではない稚魚の取引や採捕が行われているようです。台湾のうなぎの稚魚の輸出が禁止されたのと同時期から何故か香港からのうなぎの稚魚の日本や中国向けの輸出が急増しています。そもそも香港にはうなぎが遡上するような河川はありませんし、それまで香港でのうなぎの稚魚の捕獲実績はありません。明らかに台湾での採捕されたうなぎの稚魚が香港に密輸されているものだろうと推し量ることできます。それだけではありません。日本国内でもシラスウナギの密猟が横行しているようです。
https://www.youtube.com/watch?v=FdcW6LMNjAE
密漁には暴力団が関わっていることしばしばあるようです。シラスウナギの稚魚は価格が高騰していることから「白いダイヤ」と呼ばれて高値での取引が続いています。よって、密漁者の摘発も後を絶ちません。 下記:農水省、うなぎをめぐる状況4
農水省の制限する養殖の池入れ量と実際の市場に供給されているうなぎの数量が甚だ合致しないという現象が起きています。稚魚の量から推定する供給量の約2倍の養殖うなぎが市場に出回っているということが考えられます。これは台湾産のシラスウナギの香港経由での密輸や国内での密漁によるものの影響だと思われます。つまり、私たちが日常的に食しているうなぎの約半数は正規の商品ではないということになります。消費者は何も知らずに密輸入品か密漁品を提供されているのです。 下記:農水省、うなぎをめぐる状況5.
行政もそのような状況を黙って放置しているだけではありません。猟期の夜間の河口などでは取締りのパトロール活動も行っています。中には海保の摘発を受けた者もいます。それでも密漁が減らないのは現行犯でしか検挙できないという事情があるようです。密漁防止活動をしても密漁が減らない現状なのですから、パトロール以外の摘発方法も検討するべきだと思います。うなぎの養殖業者は池入れ量と販売量の差について整合性を持ったエビデンスの提示と説明を出来るように義務付けて、行政の適時の調査に応じる義務も備えた法整備(条例等)を検討するべきだと考えます。世界最大のうなぎ消費国の日本には他国に見ない厳しい資源保護の使命を負っていると思うからです。
香港からのシラスウナギの輸入についても厳格に原産ルートを究明するべきだとは思いますが、台湾の行政権に関わることですので、日本がそれを指摘することは内政干渉にあたるかもしれません。よって、慎重であらざるを得ないでしょう。そうであっても国際的な養鰻監理団体であるASEA(持続可能な養鰻同盟)での協議などを通じて正常化を働きかけていくべきだと思います。
さて、うなぎを食べて良いのか悪いのかですが、冒頭にも書きましたが、私は食べても良いと思います。世界的なうなぎの資源保護の方針と指針を遵守しつつ、日本独自のシラスウナギの採捕制限を厳格化することでうなぎの世界的保護の要請に対して応分に応えていることになると思います。要は、正規のルールに則って市場に提供されたうなぎに関しては食べても良いのではと考えているということです。まぐろやくじらと同様でうなぎも国際ルールを守って鰻食を維持することは何も問題ないはずです。
また、うなぎを食することは日本の文化でもあります。古くは万葉集(4世紀から8世紀)の大伴家持の歌にうなぎが登場します。醍醐天皇の選集にもうなぎが記されているようです。室町時代の料理本にはうなぎを丸のまま焼くと紹介されています。土用の丑の日にウナギを食べる風習は江戸時代に、一説では平賀源内が考案したと言われています。現在でもその風習は引き継がれています。
更に、うなぎを食しても良いと考える理由のひとつとしてうなぎの完全養殖に関しての研究と実験の成果が出だしたということもあります。現在のうなぎの養殖は完全な養殖ではありません。自然界から稚魚を捕獲し、それを育てる行為をうなぎの養殖と呼んでいます。それでは成長の手助けをしているだけで完全な養殖とは言えませんし、資源が保護されることもありません。ある意味、現在の養殖のうなぎは天然のうなぎでもあるのです。ちなみに自然界で育った本当の天然鰻は流通しているうなぎの僅か1%しかありません。
国立研究開発法人であるうなぎ種苗量産研究センターでは、約30年にも及ぶ研究の結果として既に親魚へのホルモン注射から採卵や孵化にも成功しています。そして、稚魚から市場サイズまで育てるサイクルを構築することにも成功しています。つまり、完全養殖は可能な状況となっています。ですが、まだ乗り越えられていない問題があります。それはコストと餌の問題です。孵化した稚魚の生存率が4%と少ないことから量産するには多大なコストがかかってしまいます。これでは高くなった現在のうなぎの市場価格より更に高い価格となってしまいます。もうひとつの課題は稚魚の時期の餌の問題です。現在はアブラツノザメの卵を餌にすると死なずに成長するとわかっていますが、アブラツノザメの卵がうなぎの量産に応えるほどの量が確保できない状況にあります。
いずれにせよ、希望的観測ではありますが、量産する技術的なハードルはクリア出来ていますので、残った課題も遠からず克服できると思います。よって、うなぎは食しても構わないと考えます。万が一、最終的な絶滅に瀕しそうになっても完全養殖による資源の保護は可能なのです。費用が高くつくだけで・・・。
ちなみに、昨年は何故か日本国内でのシラスウナギの採捕量が前年の2倍になりました。日本でのシラスウナギの豊漁の一報を受けて中国産のうなぎの価格が現在は暴落しています。前年の3割以上の安値でスーパーなどの店頭に並んでいます。去年の日本のシラスウナギが豊漁だということは、そのうなぎが成長して市場に出回る今年は中国産のうなぎの需要が激減すると予想され、中国の養殖業者がうなぎの投げ売りを行ったそうです。よって、最近は中国産のうなぎがスーパーなどで680円から980円程度で販売されることが多くなっているようです。うなぎの稚魚が沢山とれた要因は不明であることからうなぎの生態には未解明なこともまだ多くあるということです。
以上、最後までご拝読を賜りありがとうございました。私の好きなうなぎ屋さんは浅草の小柳です。
参考資料:水産庁、うなぎをめぐる状況と対策について
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