対外情報機関設置の是非について(参議院浜田聡議員のお手伝い)

衆院選の真っ只中ですね。選挙の戦況はどうなのかしら?あと三日で投票で問う日よね。

さて、昨日は参議院浜田聡議員のお手伝いに上がり日本の対外情報機関について少しだけ考えてみました。

米中央情報局(CIA)や英国秘密情報部(SIS、通称MI6)など海外の諜報機関は日本でもよく知られています。日本にはまだそうした海外で諜報活動を行う公的機関がありません。北朝鮮や中国、イスラム国など世界に目を向けると日本の安全を脅かすかもしれないような脅威が存在しています。かつて、エジプトやISILで日本人が政治的なテロ舞台に拘束された際にも日本はトルコやヨルダンなど第三国を介しての救出の為の交渉に終始しています。独立した対外情報機関を持たないことはその良し悪しを論ずるに及ばず国家の安全保障上において必要なものだと思います。

 では、日本版CIAがないのには歴史的な背景があります。戦前、戦中の反省から政府が秘密活動をする機関を持つことに戦後は抵抗があったようです。吉田茂政権下においても幾度となく諜報機関を作ろうと試みていますが実現しませんでした。中曽根政権や橋本政権においては独立した機関は作れなかったものの対外情報を得る機能が強化されています。福田政権ではそのような諜報機関の設立には否定的で活動が後退しました。そして、2013年に長期政権となった安倍政権において特定秘密保護法が成立し、2015年には内閣情報官の統括下に内閣官房国際テロ情報集約室、外務省に国際テロ情報収集ユニットが創設されました。2018年には国際テロ情報集約室に国際テロ対策等情報共有センターを創設されました。これらは統一した、独立した機関が設けられたのではありません。既存の制度の延長として機能が強化されたに過ぎないのです。

 今に至っても独立した機関が作られていないのは野党やマスコミによる国家権力に対する警戒心と猜疑心が強すぎるからです。特定秘密情報保護法が成立する際にもメディアのネガティブキャンペーンや野党の反発も強いものでした。政府が不都合な情報を恣意的に隠ぺいするのではないというのですがそれは一義的に過ぎます。外交上、各国との情報を交わすにあたりそれを保全することは当たり前のことなのです。

 もうひとつ、対外情報機関が出来ない理由があります。それは、各省庁の主導権争いです。公安調査省、外務省、警察庁、防衛省らの確執が障壁となっています。国際的なテロに対する情報収集機関は外務省内に設置されていますが、そのトップと要因は警察庁から配置されています。そのような状態では部署の内部で外務省と警察庁の睨み合いとなってしまいます。

 実は外務省、防衛省、警察庁、公安調査庁、内閣情報調査室などの職員を在外公館に派遣したりはしているのですが、秘密裏におかれる諜報活動には至っておらず、オフィシャルな場での活動に留まっています。他国の現地派遣要員との関係もあり踏み込んだ諜報活動が行えないのは日本の情報部員の育成にも問題があると言えます。また、各省庁がばらばらに要員を配置することは組織の展開上で非効率なだけでなく、目的設定や指針の一貫性や重要性の認識にもずれが生じる可能性が高いと思います。

 各省庁間の足並みが揃わない中で2015年に安倍首相は内閣情報調査室を母体に独立した諜報機関の設立を目論んでいます。内閣情報調査室は警察庁、防衛省、外務省、経産省などの出向者からなる混成部隊です。この計画についても警察庁の主導権が強く、警察庁が重要情報を隠匿するという意見があり実現はしていません。

 さて、機密情報の取得と伝達にはその真偽を図る必要があります。それは、正に政治的なフィルターを経由することになります。情報取得先のフィルターや取得した諜報員のフィルター、報告先のフィルターなどを経由して政府にもたらされる情報の真偽は見極めが困難なことであると言えます。これらの標準化は概念的なことであることから不可能に近いことだと思います。

 これまでに情報を取得する機関について考えてきましたが、他方で情報を保全する方法について考えます。これは特定秘密保持法が成立することで一応の規定が為されました。

資料:日経新聞2014年12月10日より

特定秘密情報保護法は上記に関わる事項で公表すると国家の安全保障に支障をきたす情報について保護するという内容になっています。この法律が制定される契機となったのが2010年に発生した尖閣諸島沖中国漁船衝突事件の映像が流出したことからです。当時、那覇地方検察庁が保管していると思われていた映像を海上保安官の男性がYOUTUBE上に無断で公開したことが問題となったからです。公務員が秘密情報を勝手に公開したことへの危惧と海上保安庁の機密情報管理の体制に懸念が集まったことによります。

 特定秘密情報保護法に関してはマスコミを中心に憲法第21条で保障される「表現の自由」「知る権利」が脅かされると主張しています。しかし、特定秘密情報保護法で保護される情報はそれ以前から非公開とされてきました。特定秘密はそれまでも「特定管理秘密」「防衛秘」として情報を管理されてきていました。内閣府の「情報保全監察室」の機能を高めた法律が特定秘密情報保護法と考えられます。

 一方、日本版NSC、つまり国家安全保障会議についても触れておきます。日本版NSCについても日本版CIA計画と同様の懸念があります。各省庁間の縦割り行政を排除できるかどうかという問題です。設置法には各省庁には機動的に情報を提供する義務が記されています。機動的に情報を得て首相官邸がいかに政策の方向性を決定できるかが問われています。外務・防衛両省の連携不足でしたのでNSCの設置はそれを補い強化するには有効な機関です。自衛権を発動する可否を含む重要政策を政府の最高意思決定者が迅速な判断をすることができるようにすることは望むべくもない。そして、重要機密情報が米国NSCと日本版NSCの間で共有できるようにすることが期待されています。

 不確実性が益々増している東アジア情勢ですが、各省庁を代表して対外機密情報を得ること目的とした日本版CIAの設立は外交防衛上、必要不可欠であることは周知であると思います。そして、日本版NSCが特定秘密情報保護法と統合的に機能することで米国をはじめとした友好国との情報共有を進めることができると見込まれています。

 民主主義において情報は原則的に国民の安全性や国民の政治判断、政治の透明性などに資する目的で公開されねばなりません。しかし、民主政治の過程では、公開することでかえって国民に不利益をもたらしかねない情報もあります。国民・国の安全保障に関わるもの、行政の過程で生じる未成熟な情報などです。これらの情報は公開することで社会に混乱を与えかねないので政府が見極め管理するべきです。

 結論を申し上げると日本版CIAの設立は外交、防衛共に効果的であり必要だと思います。情報の管理方法も特定秘密保護法の成立で強化されています。それらの情報をもとにしたNSCは最高意思決定機関の迅速な政策意思決定に寄与します。各省庁は国家観を今一度認識し縦割り行政の弊害をなくしていくことが急務です。

以上、最後までご拝読を賜りありがとうございます。

資料:ウィキペディア 情報機関一覧

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%83%85%E5%A0%B1%E6%A9%9F%E9%96%A2%E3%81%AE%E4%B8%80%E8%A6%A7

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坂本まさひこ  作家 国会議員秘書

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