会計検査院の検査官の国会同意人事Part2について

会計賢者院?会計検査院です。三人が再任?

というわけで会計検査院の同意人事案について考えてみます。

 会計検査院とは国の収入支出の決算、政府関係機関・独立行政法人等の会計、国が補助金等の財政援助を与えているものの会計などの検査を行う憲法上の独立した機関です。憲法は、「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。」と定めています。会計検査院は重要な機能を他から制約を受けることなく厳正に果たせるよう国会及び裁判所に属さず内閣に対し独立の地位を有する憲法上の機関となっています。

 検査の対象は国の会計のすべての分野のほか、政府関係機関など国が出資している団体や、国が補助金その他の財政援助を与えている都道府県、市町村、各種法人などにまで及んでいます。検査の目的は適正な会計経理が行われるよう常時会計検査を行って会計経理を監督すること為です。検査の結果により国の決算を確認するという職責も負っています。会計検査院が決算の確認という公的な意思表明をすることによって内閣は決算を国会に提出できることになります。上場企業に対する監査法人のような存在です。

 検査は国会からの要請で行われることもあります。最近では東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた取組状況等に関する会計検査の結果について報告されています。

例えば会計検査院は下記のような所見を表明しています。

 「国は、国際的な大規模イベントについて、相当程度国が関与することが見込まれる場合には、国が負担する経費の総額(見込額)を適時に明らかにするとともに、イベント終了後にはその執行状況を明らかにし、また、イベント全体の経費の総額を明らかにする仕組みをあらかじめ整備するなど、イベントの招致及び実施に対する国民の理解に資するよう十分な情報提供を行う態勢を検討すること」

 「文部科学省及びJSCは、国立競技場の民間事業化に向けた事業スキームの検討を遅滞なく進めていくこと」

 「文部科学省は、東京都と調整の上、基金の残余額について、国庫納付の手続を行うこと」

上記の会計検査院の指摘を受けて文科省は380億円余りを国庫に返納することになりました。内閣からは独立した組織ですのである程度は忖度なくタブーもなく踏み込んだ検査ができるのです。

さて、会計検査院の検査官は仕事は、検査官会議を通じて検査等の事務の指揮監督、職員の任免の議決を行います。また、作成した検査報告についても議決を行います。その他に会計検査を受けるものの決定をしたり、検査先の計算証明の決定もします。また、法令や制度や行政に関して意見を表示したり、処置を要求することもできます。

このように会計検査院の業務内容を知ると裁判所と同様に神聖かつ侵すべからざる存在のように思えます。

検査官は3名おりますが、そのうちの1名である森田祐司氏が令和5年9月に定年で退官することになっています。よって、新たな検査官は残任期間である令和7年2月25日までが任期となります。

検査官会議は、昨年度は61回開催され3名共に出席しています。ちなみに検査官は非常勤はおらず、全員が常勤の検査官です。会計検査院の院長は検査官の互選で選ばれます。院長の検査官の報酬は年2929万円です。院長以外の検査官の報酬は2395万円です。相当な高額報酬ではありますが人数が3名と非常に少ない設定ですし、特殊な会計知識と倫理観を保持する必要がありそうなので高額報酬も納得できるような気がします。それにしても3名とはぎりぎり多数決が成立する極限のスリム化したポストです。

在任中の二人は一人が会計検査院のOBの元公務員でもう一人は独立行政法人や総務省関係のアドバイザーを歴任した経営学者です。今回、同意人事案に上っているのは挽文子です。挽氏は公務員ではなく一橋大学の教授として管理会計に精通し、公認会計士試験の委員も務めてきた人物です。3名のバランスを考えると、一人は会計検査院のOBとして業務や実務に関して経験が豊富、もう一人は経営学者、今回の人事案である挽氏は管理会計学に精通している会計学者、俯瞰してもバランスのとれた良い布陣だと思います。よって、私の意見としては挽氏の人事案に賛成です。もし挽氏が任命されたら3名中2名が女性となります。国家の会計制度の保安を担っていく重責にぜひとも3名で結束して能って欲しいと思います。挽氏の任命後に検査官3名の互選で会計検査院の院長が決まるのですが、私の希望は既に任命され任期中である女性検査官の田中弥生が選ばれることを願っています。女性初の会計検査院院長になるでしょうし、何より田中弥生氏は私が尊敬する経営学者のピータードラッガー氏の書籍の翻訳書の著者であるからです。田中弥生氏は、経営は理論だけではなく思想も必要であることを心得た素晴らしい人物であろうと推察します。

今回の人事案も含めて会計検査院は実に頼もしい組織だと思った次第です。

最後までご拝読を賜りありがとうございました。

参考:会計検査院HP

   https://www.jbaudit.go.jp/index.html

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