情報公開・個人情報保護審査会の国会同意人事(第二弾)について

公開内容に後悔ないように・・・。

 情報公開・個人情報保護審査会の国会同意人事の人事案が提出されています。3月にも同会の人事案が出され全会一致で同意されています。3月10日の私の記事にも書きましたが人事案の一人ひとりには何も問題もありません。気がかりなのは委員会の常勤委員と非常勤委員の属性に関してです。常勤委員は5名、非常勤委員が10名で委員会が構成されています。さらに常勤委員1名、非常勤委員2名の合計3名で部会を結成し、第一部会から第五部会までに分かれて個別の案件に対して審議します。常勤委員は元裁判官が2名、元検察官が2名、元総務官僚が1名です。つまり、全員が元公務員です。一方、非常勤委員は弁護士が3名、学者が6名、会計士が1名です。非常勤委員は全員が民間人です。見事に色分けされています。常勤委員の報酬は年間1824万円ですが、非常勤委員は年間勤務日数27日に対する日当26400円なので712800円となります。各部会も含めて審議会は年27回ほどしか開かれていないのですから委員全員が非常勤で良いのではないかと思います。実務においては職員があたっているので滞りはないはずです。現状の体制はあまりに露骨な天下りポストとなっているように感じます。なんなら元公務員を非常勤委員に、常勤委員に民間人を任命してみてはどうでしょう。元公務員の現在の常勤委員は引き受けないと思うのは私だけでしょうか。元公務員ではなくても行政法、公務員法などに明るければ大丈夫、弁護士が常勤に就いても良いはずです。常勤委員は週5日終日勤務するとされていますが本当に履行しているか疑わしいと私は思っています。一層のこと、常勤委員の勤務実態を示す資料の情報公開請求してみたら良いと思います。恐らくそのような資料は存在しないという回答が返ってくることでしょう。私の憂慮が杞憂でなければ良いのですが。

 今回の非常勤委員の人事案にある野田崇氏は関西学院大学法学部の教授であり、既に高槻市、大阪府、奈良県、大阪市にて情報公開審議会や個人情報保護審査会の委員を歴任しており専門家であると言って過言ではない人物です。令和5年4月から情報公開・個人情報保護審査会の非常勤委員を務めて今回は再任を求められています。民間企業での勤務経験はないものの情報公開法制には十分な見識を持ち、審査会での欠席もないことから野田崇氏の再任には同意すべきだと思料します。

 さて、情報公開・個人情報保護審査会の機能と役割は果たせていると思います。令和3年は申請が約1004件、審議中が1040件、案件の合計が2044件となっています。そのうちの34%にあたる340件で行政の判断が覆り開示が妥当だとされています。行政が行政の判断を覆すことは非常に稀なケースだという思い込みが私にはあったために34%の請求の認容は多く感じました。逆に考えれば、行政機関が決定した不開示や一部開示の決定がいかに不適切で杜撰であるかを裏付けているとも言えるでしょう。

 令和2年における開示請求は繰越分も含めて全省庁で164950件となっています。そのうち開示決定されたのが160773件で実に97.5%に上ります。不開示決定は3863件で2.4%に過ぎません。この数字だけ見ると情報公開は進んでおり透明性が十分に確保されているように思ってしまいます。実は開示決定されても開示された内容の一部または大部分が不開示になっているケースがよくあるのです。令和2年の開示決定された中で116868件は一部または大部分が不開示なのです。要は全部が開示されたのは24.8%に留まり、72.8%は一部開示もしくは一部不開示だったのです。一部開示や一部不開示の程度によりますが、実は大多数が完全な開示ではないというのが情報公開の現状です。

 多くの国民が情報公開と聞くと「のり弁」を連想するのではないでしょうか。記憶に残っているのは森友学園問題です。国有地を森友学園に払い下げる際に埋設物であるゴミを処理するための8億円を減額しました。土地の売却価格からゴミ処理代8億円を引くと土地代はただ同然なってしまうことから多くの国民が疑念を抱くこととなりました。なぜそのような事態になったのかを明らかにするため森友学園と国土交通省、大阪航空局との会議録、交渉経緯が記された公文書の開示請求を朝日放送が行いました。その結果、開示された資料は971枚にも及びましたが内容が衝撃的でした。971枚中729枚が黒塗りの状態、いわゆる「のり弁」だったのです。何の参考にもならない黒塗り文書が積みあがっただけで8億円の値引きが妥当だったかどうかの究明に全くつながりません。むしろ、国交省による報道機関に対する嫌がらせのように感じました。

 情報公開に対する黒塗文書やのり弁が悪名として浸透したことから東京では小池百合子都知事が率いていた地域政党の都民ファーストの会が公約として情報公開文書の「黒塗の廃止」を掲げました。その後、2021年には確かに黒塗、のり弁は廃止されました。都民ファーストの会の公約の進捗の報告にも開示公文書の黒塗の廃止は達成した明記されていました。ところがどっこい、開示文書の透明性は何も変わっていませんでした。どういうことかというと、小池都知事は今まで部分開示として黒く塗っていた部分を「白く」塗るようにしたのです。よって、「黒塗はなくなりました」になるというあまりにも稚拙で都民を愚弄した行為に出たのです。黒が白に変わっただけで非公開分は何も変わっていません。情報公開は何ひとつ進化してはいないのです。東京都は都民からの抗議を受けて、今後は黒塗と白塗りを併用することで視認性を高めていくという頓珍漢は回答をしています。

 こういった行為を鑑みると役人は身勝手なヒエラルキーを意識づけし民間人を見下したり蔑視するのであろうと受け止められても仕方がないと思います。一部の公務員だけであろうが、公僕である限りあからさまな慢心や衒気は許されるものではありません。

最後までご拝読を賜りありがとうございました。


参考

「黒塗りから白塗り」で都ファの公約進捗表示が「実現」になった訳 フライデー

https://friday.kodansha.co.jp/article/219450

令和2年度における行政機関情報公開法の施行の状況について 総務省

https://www.soumu.go.jp/main_content/000808919.pdf

情報公開・個人情報保護審査会の国会同意人事 坂本雅彦

https://masahikosakamoto.amebaownd.com/posts/42048726

坂本雅彦ホームページ

坂本まさひこ  作家 国会議員秘書

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