日バーレーン投資協定について

とうしをたてて投資をけんとうしとうしても投資した挙句に凍死、、、とうしよう。。。

 日本とバーレーン王国との間で締結されて投資協定について国会でその承認が図られます。この協定に関しては立法の措置は必要なく、あくまで国会でその協定の発効の是非を問うのみとなります。つまり、案ではなく内容について確定しているものとなります。

 バーレーンは中東のペルシャ湾に浮かぶ小さな産油国です。湾岸諸国の中では比較的宗教規制が緩やかな立憲君主国です。かつてはイギリスの艦隊基地がおかれた保護領でしたが1971年には独立を果たしています。日本はいち早く独立を承認し1972年には両国間の国交を樹立していますので比較的長い友好関係を保っています。1991年の湾岸戦争時には日本からペルシャ湾に掃海艇を派遣するなど安全保障上の繋がりもあります。バーレーンの人口は約170万人で日本の約70分の一、面積は日本の約500分の一です。GDPは約350億米ドルで日本の約140分の一ですが、一人当たりの実質GDPは約43000米ドルで日本とほぼ互角ですし他の先進国と平均所得は肩を並べていますので比較的裕福な国と言えます。2012年にはハマド・ビン・イーサ・アール・ハリーファ国王が訪日し、翌2013年には安倍晋三総理がバーレーンを訪問しています。バーレーンの対日貿易は2019年度において輸入が677億円、輸出が1277億円となっています。主に日本から自動車を輸入し、日本へは石油やアルミを輸出しています。2018年にはバーレーンにとって最大規模の油田が発見されておりタイトオイルのみならず深層ガスも埋蔵していることが判明しています。現在、進出している日系企業は19社、在留邦人は168名ですが、バーレーンの積極的な外資の誘致活動と新たな石油の採取も期待できることから今後は新たな日系企業の進出も加速することが見込まれています。

 バーレーンの経済的優位性で一番大きな点は立地にあります。中東最大の経済市場であるサウジアラビアのコバールへは車で海上橋を渡り25kmで距離です。クウェート、カタール、オマーンUAEなどGCC(湾岸協力会議)にはバーレーン空港から1時間以内のフライトです。よって、中東へ進出を目論む製造事業者には流通網を確立しやすい環境にあります。土地のリース料金も他のGCC国より割安ですし、生活コストもGCC諸国の中でも最も安いとされています。食品製造からグラスファイバー製造まで製造実績や産業の幅も広くなっており中東を目指す外資系企業が拠点を設置するには優位な条件が整っていると言えます。物流に関してバーレーンの港湾料金はGCC内で最も安く設定されています。商社にとってもバーレーンは立地的にGCC内での商談機会は増大できる機能的な環境と言えます。バーレーン物流ゾーン(BLZ)はGCC内で最速の通関手続きを行っており年中無休24時間稼働しています。BLZは外資団地まで1分、埠頭へ3分、空港へ17分、サウジアラビアへ47分の場所に立地しており土地の借地料は平米11米ドルと格安です。20年の更新可能なBLZ内の土地に自由に建物の所有権を保有できます。また、法人税や個人所得税は0%です。会社設立費用や運営費用は他のGCC諸国と比べて約56%安く済ませられるとされています。外資の投資に対してバーレーン政府からの投資助成金もあります。バーレーンは石油以外に金融事業が非常に発達しておりGDPの18%を占めています。GCC内では金融首都と言われており、367 の地方、地域、世界的な機関からなる金融サービス部門がバーレーンに集結しており地域金融ハブを形成しています。GCCの地域市場価値は200兆円に達するとされており増大する富が集中すると目されています。さらに、バーレーンにはMENA の主要なフィンテックハブであるバーレーンフィンテック ベイの本拠地もあり、暗号資産プラットフォームやデジタル決済において柔軟な市場と強力なテクノロジー インフラストラクチャのおかげで業界のサービスを拡大しています。バーレーンの金融サービスをリードしてきた外資企業としてシティバンク、アメリカンエクスプレス、BNPパリバ、ABCバンク、スタンダードチャータード銀行、デジタル専用銀行のAL BARAKAなどがあり投資に成功しています。各外資系企業の従業員の68%がバーレーンの国内での雇用となっていますが、バーレーンの人的資本開発は世界銀行で最高位の評価を受けており、スキルとモチベーションが共に高い労働力であることが認められています。また、バーレーンの国民の90%が英語を理解し話せるとされています。雇用に対してバーレーン政府は約350億円の賃金支援を行うと同時に年1万回の研修を企画して開催しています。バーレーンでは100%外資の企業設立が認められています。さらに、資本、利益、配当を完全に自由に本国に送金することができます。

 日本とバーレーン王国の両国の関係性、双方の利害を鑑みてもさらなる経済協力を進めて信頼を構築していく為に投資協定を締結することは必然だと言えるのではないでしょうか。協定の内容は日本が既に他国と多数結んでいる投資協定と内容は大差ありません。大きく分けると4項目となります。投資財産の設立後の内国民待遇・最恵国待遇、投資財産に対する公正な待遇、十分な保護・保障、正当な補償等を伴わない収用の禁止、投資受入国・相手国投資家間の紛争解決手続です。内国民待遇とは自国民と同様の権利を相手国の国民や企業に対しても保障することです。最恵国待遇とはある国が対象となる別の国に対して、最も有利な待遇を受けることを現在および将来において約束することです。公正な待遇とは投資受入国に対し国際慣習法における最低基準を上回る待遇義務が認められると解せます。直接収容であろうが関節収容であろうが公的に外国人の財産を投資受入国が収容する場合は公正な市場価格で差別なく補償することが義務付けられています。投資家と投資受入国との紛争が発生した場合は、投資受入国の司法手続により解決するか又はISDS(投資家と国の間の紛争解決)手続に付託するかを選択することができます。投資関連協定に基づく国際仲裁の流れは次のようになります。投資家は国際仲裁に紛争を付託する場合、投資関連協定が規定する複数の仲裁(手続)規則の中から当該仲裁で利用するものを選択します。仲裁人は紛争当事者である投資受入国及び投資家が各1名ずつ任命し仲裁裁判所の長となる第3の仲裁人は原則として紛争当事者間の合意又は2名の仲裁人の合意で任命されます。仲裁裁判所は投資関連協定及び関係する国際法に従って判断します。投資が適法になされたか否か等については投資受入国の国内法に基づいて判断されます。仲裁裁判所の裁定は仲裁人の多数決で決定されます。投資関連協定に基づく国際仲裁に上訴の仕組みはありません。投資受入国の協定違反により投資家に損害が生じたことを認定した場合、仲裁裁判所は損害賠償や原状回復を命じることがあります。仲裁裁判所は決して投資受入国の政策に関与することはありません。国際仲裁は2015年までに696件の申立てがあり、その過半数が発展途上国での紛争です。中でも中南米での紛争が多くなっています。

 バーレーンは既に英国、米国、ドイツ、フランス、中国など25か国と投資協定を締結しています。バーレーンの投資環境の透明性、法的安定性、予見可能性を向上させる為にも投資協定の締結は有効だと考えます。バーレーンに投資している日本企業や将来バーレーンに投資を検討している企業にとっても有益であることは間違いないでしょう。

 さて、蛇足ではありますが、日本が外国と結んでいる投資協定の状況を見ますと、2022年6月の時点で発効済みの投資協定が35本、投資協定を含む発効済みEPA(経済連携協定)が17本となっており80の国と地域をカバーしています。署名済み未発行の投資協定とEPAはバーレーンとアルゼンチンとTPPの3本となっています。交渉中の投資協定は15本でEPAは3本です。2016年当時は35か国しか締結できていなかったことを考えると短期間の間に集中的に各国と交渉を進め、今では日本企業の投資先の93%のエリアで投資関連協定が締結されるに至っています。今後の政府の方針として100の国と地域において投資協定を締結することを目指しており、現在18本の協定の交渉中ですので目標達成が目前となっています。海外進出や投資を行う日系企業が重視する、内国民待遇、最恵国待遇、資金移転の自由及び一時的なセーフガード措置に関する規律は既に締結済みのすべての投資協定において規定することができており、公正衡平待遇及び ISDS 条項についてもほとんどの投資関連協定で規定されています。政府は今後も中東、中央アジア、中南米、アフリカ諸国との投資協定の締結を進める方針です。グローバル化が加速する中で投資を呼び込みたい諸外国は積極的に投資協定を各国と締結しています。世界中での投資協定は、1990年は330本だったところ2019年には2847本に急増しています。各国にとって投資の保護・促進の観点から二国間や複数国の間で投資関連協定を結び、投資をしやすい環境を創り出すことは重要となっています。2021年の国際貿易投資研究所の調べによると日本の対外直接投資残高はアメリカ、オランダ、中国、カナダ、イギリス、ドイツ、香港に次いで8位となっています。UNCTADの統計によると2021年の日本の対外直接投資額がアメリカ、ドイツに次ぐ3位となっています。銀行の国際取引債権残高は1位がイギリスで日本が2位となっています。外国投資は日本企業の活動に欠かせない柱となっています。という市関連協定による投資の保護と促進は日本政府にとって重要かつ意義のある施策となっています。

以上、最後までご拝読を賜りありがとうございました。


参考

投資の相互促進及び相互保護に関する日本国とバーレーン王国との間の協定 外務省

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100361969.pdf

日本バーレーン投資協定の説明書 外務省

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100472286.pdf

日・バーレーン投資協定 概要 外務省

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100472287.pdf

日本とバーレーンの関係 Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%A8%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%81%AE%E9%96%A2%E4%BF%82

バーレーン、過去最大の油田発見 SPUTNIK

https://sputniknews.jp/20180402/4737247.html

投資関連協定の現状 外務省

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100062901.pdf

国家と投資家の間の紛争解決(ISDS)手続の概要 外務省

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000089854.pdf

世界各国の対外直接投資残高 上位60

https://iti.or.jp/stat/1-006.pdf

世界の対外直接投資 国別ランキング・推移

https://www.globalnote.jp/post-4897.html

世界の銀行国際取引債権残高 国別ランキング・推移

https://www.globalnote.jp/post-14957.html

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