男女共同参画という名のもとに
男女兼用とか、いけんよう・・・。
男女共同参画基本法というのを聞いたことがあるだろうか。47ある都道府県すべてに男女共同参画センターや女性プラザなど設置されている。20ある政令指定都市にも必ず設置されている。県庁や市役所の中ではなく国の機関として役場外に独自に設置されている。子供家庭支援センターが同居していることも多い。設置の目的はどこも一様であり、「男女が社会の対等なパートナーとしてあらゆる分野の活動に参画し、政治的、経済的、社会的及び文化的利益を共に享受でき、責任も担う「男女共同参画社会」の形成促進を図る」とされている。同じ法で縛られて開設したのだから一様で当然である。青森や山梨や茨城で男女共同センターを通りかかったことがあるのだが広い空間にポスターやパンフが並んでいるだけで職員以外はほとんど人を見かけなかった。いるとしたら仕事をさぼって涼むサラリーマンくらいであろうか。一見、余って使途のない空間をみっともないので展示で埋めている場所に見える。実はこれが男女共同参画基本法によって設置を定められているれっきとした行政機関なのである。1999年から約24年間、決して国民の身近にあるとは思えないこの施設は継続されてきたことになる。男女共同参画センターはあくまでも国の機関であって地方自治体の設置ではない。つまり、断れない。国は地方分権を進めるとは言うものの打出の小槌は決して手放すことはない。
地方自治体と国は主従関係にはないとはいえ、地方交付税や国庫支出金、国によるインフラ整備等で上下関係がないとは決して言えない。2000年に施行された地方分権一括法で権限移譲が明確化されてはいるものの国の許可なしに起債できないなどの制限に縛られており国と地方自治体が対等な関係ではない。自治事務が国から地方自治体に移譲されてもなお国政に対して地方行政が関与するケースは沖縄県の米軍の普天間移設の承認の取り消しなどの場合を除いて極めて限定的だと言える。
この男女共同参画センターや女性センターは男女共同参画に関する研修や情報提供、女性グループ・団体の活動、女性グループによる調査研究の場の提供を行う施設と規定されている。実態はどうなのか。一部の政治的な勢力の活動のアジトになってはいないだろうか。憲法9条を守れというポスターが貼ってあったり、従軍慰安婦問題を殊更に開設したパネルコーナーがあったり、日本の戦後補償が足りないというビラがあったり。凡そ男女共同参画とは関係のないスペースになっていることがある。実は多くの地方自治体の役所内にも男女共同参画に関わる部署がある。役所のトイレにはどっちが男性でどっちが女性がわからない入口や案内になっていることも多い。それは役所内の男女共同参画部署の功績である。女性が赤やピンクで表示することは勝手な決めつけであり差別を助長したり誘発するというのである。だったら女性トイレの案内を何色にすれば良いというのか。結局、白のプレートに男、女と書かれたものを貼るしかなくなる。呼称も随分と変わってきた。保母は保育士に、看護婦は看護師に、スチュワーデスは客室乗務員、なんと配偶者のことを家内と呼ぶことは許されない、妻と呼ばないといけないそうだ。だったら他人の妻を奥さんと呼ぶこともタブーなのだろうか。パンフレットにはあえて男性がエプロンをしたイラストを使ったり、女性のイラストにはピンクや赤の服を着せないようにしたり、行き過ぎたジェンダー意識が余計に差別を誘発しているのではとさえ懸念する。啓蒙の中身として「男らしさの鎧を脱いで」という項目がある。男が泣いてはいけない、男が弱みを見せてはいけない、男が一家の大黒柱である、男が家庭を支えないといけない、などという風潮の裏返しとして女性が生き方や能力発揮の機会に制約を受けているという。それは被害妄想というものだ。一人一人の個性を尊重し、多様な選択を認め合い、個人の能力を十分に発揮できるようにすることが重要だと規定することで「男らしさ」「女らしさ」というものを頭ごなしに否定しているのではないか。セクハラは男性が女性にするもの、家事は女性が得意、DVは男性が女性に加えるもの、子育ては母親がするもの、女性は文系、など育つ環境や所属する団体の中で無意識のうちに脳にきざみこまれ既成概念や固定概念となっていくものをアンコンシャスバイアスという。無意識の思い込みのことである。このような思い込みを悪いことだと決めつけてしまうことは良くないのではないか。無意識の思い込みが他者を思いがけず傷つけてしますこともあれば、無意識の思い込みが自分自身にも当てはめてしまうこともある。無意識の思い込みは誰もが持っているものであるから、それ自体を悪いものだと決めつけてしまうことは自分も他人も否定することにもなりうる。無意識の思い込みはあくまでも無意識の中にある。無意識のものをどうやって取り払うというのか。物事には多様な視点から見ることができるし、多様な視点や思考をあえて俯瞰的に意識することで自身の可能性を広げていくことにも繋がる。無意識を否定することでは解決することはない。
日本国憲法が制定されて77年が経とうとしている。憲法の制定によって、女性は男性と等しく選挙権や被選挙権、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利、家庭における夫婦の平等と相互協力の義務、能力に応じて教育を受ける権利、勤労の権利と義務等、憲法の定める国民としてのすべての権利と義務を持った。こうした憲法上の基本権に基づいて、諸法令が次のように制定、施行され、女性の法制度上の地位は向上してきた。
1947年3月には教育基本法が公布され教育の機会均等や男女共学が規定された。1947年4月には労働基準法が公布され男女同一賃金の原則や女性労働者の保護が規定された。1947年12月には改正民法が公布され親族編と相続編を根本的に改正された。それによって結婚の自由、財産の均等相続などが取り入れられ旧民法の家族制度の規定は全面的に廃止となった。1985年1月には国籍法の一部が改正され父系血統主義から父母両系血統主義に変更された。1986年4月には男女雇用機会均等法が施行され雇用分野における男女の均等な機会や待遇の確保が規定された。1992年4月には育児休業法が施行され子を養育する労働者の雇用の継続を促進が規定されている。1993年12月にはパートタイム労働法が施行されパートタイム労働者の待遇が改善された。1995年10月には育児・介護休業法が施行され子の養育又は家族の介護を行う労働者の雇用の継続の促進が規定された。1999年6月には男女共同参画社会基本法が公布・施行された。2000年11月にはストーカー規制法が施行されストーカー行為の処罰が規制が為された。2001年4月には配偶者暴力防止法が公布・施行され配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護が図られた。2003年7月には10年間の時限立法ではあるが次世代育成支援対策推進法が公布・施行され次世代育成支援対策の推進が規定された。2003年9月には少子化社会対策基本法が施行さて少子化対策の推進が図られた。2014年4月には改正次世代育成支援対策推進法が施行され法律の有効期限が延長された。2015年9月には10年間の時限立法として女性活躍推進法が施行され女性の職業生活における活躍の推進が後押しされた。2016年6月には民法の一部を改正する法律が公布され女性の再婚禁止期間を6か月から100日に短縮された。2018年5月には政治分野における男女共同参画の推進に関する法律が公布・施行された。2018年6月には民法の一部を改正する法律が公布され成年年齢の見直しや男女の婚姻開始年齢を統一することが規定された。2019年4月には働き方改革関連法が順次施行され働き方改革を推進するために8本の労働法が改正されている。
このように男女平等を規定する枠組みとしての法制度は目まぐるしく整備されてきた。女性が自らの意思で社会に参画し、政治的にも経済的にも社会的にも文化的にも利益を享受し、共に責任を担う社会は未だ実現していないというのか。
女性の権利が改善し向上し続けるのと足並みを揃えて男女共同参画予算は巨額となっていく。どこかで歯車が狂いだしてはいないか検証が必要であろう。
次回に続く
資料
男女共同参画社会基本法 Wikipedia
令和元年度男女共同参画基本計画関係予算額(分野別内訳表) 内閣府
https://www.gender.go.jp/about_danjo/yosan/pdf/01yosan-detail.pdf
日本における女性の法的権利,地位の変遷に関する研究(1) 沢津久司
https://core.ac.uk/download/pdf/143642205.pdf
日本における女性政策の発展 利谷信義
http://www.igs.ocha.ac.jp/igs/IGS_publication/journal/01/01_06.pdf
教育をめぐる状況(女子の大学進学率は長期的に上昇傾向) 男女共同参画局
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r02/zentai/html/honpen/b1_s04_01.html
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