民主党政権による行財政改革の功罪について

一見みんしゅとう。

 あれから15年。民主党政権の誕生と終焉。悪夢の1198日が残したものとは何だったのか。多すぎて書ききれないがその一部を論う。民主党政権とは正確には民主党・国民新党・社民党の連立政権である。民主党左派は社民党と類友、国民新党は郵政民主化反対勢力で反自民党として民主党が選挙で利用。社民党の福島瑞穂氏はでっち上げが判明した従軍慰安婦問題で正体不明の従軍慰安婦達と一緒に日本政府を責め立てていた。福島瑞穂氏と一緒に韓国で従軍慰安婦を仕立てて日本政府を訴えることに必死になっていた高木健一弁護士の盟友は「自衛隊は暴力装置」と国会で発言した悪名高い仙谷由人氏(菅政権時代の官房長官)である。この高木健一弁護士は韓国だけでは飽き足らずインドネシアにも従軍慰安婦問題を輸出し慰安婦をでっち上げ日本政府を訴えている。仙谷由人氏も民主党政権時代に従軍慰安婦問題を肯定し国家による謝罪や保障をさせようと事あるごとに試みた人物である。仙谷由人氏、福島瑞穂氏、高木健一氏は歴史的事実を歪曲し我が国の名誉を傷つけ外交に悪影響を及ぼした代表的な3人の弁護士であると言えよう。3人のうち2人が民主党政権の中枢にいたのだから由々しき事態である。

 民主党政権が強く打ち出したのは官僚への政策丸投げから政治家主導に転換すること。鳩山政権では最初に事務次官会議を廃止して政務三役による命令に置き換えた。これによって官僚機構は機能停止した。政策決定は政府に一本化したが官邸の能力が追い付かず大混乱。政治家主導は政府の指示待ちに徹する官僚を作るだけで何も進まない状態に陥った。民主党政権が政治主導の意味を取り違えたことが原因である。本来の政治主導とは官僚が起案した政策や法案を省庁が横断的に折衝し合意に至ったものが党の政策調査会に送られる。政調で当該案に詳しい族議員が確認修正した後に総務会にかけられる。採決をとり議員全員一致で賛成を得た案が閣議決定に回される。これが政治主導であるべき姿ではなかろうか。起案する官僚をコントロールする能力を高次元で発揮する必要がある。政治主導は政策や法案の起案段階で官僚の介在を排除することでは決してない。小泉政権では総務会の満場一致のルールを多数決に変えた。郵政改革は進んだが法案反対者は自民党を離脱することとなった。その後、安倍政権では公明党の総意も得なければならなくなり閣議決定に至るまでのコンセンサスは2重に必要となった。総理には人事権が専権として与えられていることから政治主導を発揮することは不可能ではない。

 次に民主党政権時の問題点として指摘しておきたいのは規制緩和である。民主党政権はかつて小泉政権時に竹中平蔵が強力に推し進めた規制緩和政策を新成長戦略と称して復活させた。小泉政権でも規制緩和を進めたが景気回復の兆しは見えなかった。それにも関わらず民主党政権は規制緩和による成長戦略を企てた。当然、景気は一向に改善しなかった。失われた10年が民主党に失われた20年になった。国民の消費を阻害する規制を無くすことで消費が回復する、という主張は的外れである。消費が伸びないのは国民の給与、とりわけ手取りが減っているからである。所得が減ると将来に不安を抱くことは当然のことで消費を控えて貯蓄に回す人が多くなる。政治家が根源的な原因を見誤ることで国民の困窮は増していった。財政出動によるデフレギャップの解消、国家による経済の保護政策が必要であったことは他の先進諸国の施策からも明らかである。

 民主党政権が公務員の大幅な人員削減を行ったと思っている国民も少なからずいる。しかし、それは誤解である。公務員が大幅に削減され始めたのは自民党小泉政権である。1980年の85万人をピークに国家公務員は現在の約27万人にまで減少している。急激に削減されたのは2003年の国立大学の独法化によってである。13万人以上の職員が国家公務員から離れることとなった。その後、2007年の郵政民営化では25万人が国家公務員ではなくなり約36万人にまで減少。さらに2015年には国立病院の独法化で国家公務員が約5万人減少した。積極的に公務員の削減に励んできたは民主党政権ではなくいずれも自民党政権時である。2009年の民主党政権時の公約としては公務員給与の2割削減である人員の削減数は謳っていない。公務員の人員2割削減を公約としていたのは「たちあがれ日本」である。みんなの党も10万人の削減を公約としていた。その他の主要政党は公務員数の削減には触れていない。民主党の公務員人件費2割削減の公約は人事院勧告の存在によって阻止されている。民主党は人事院勧告を無視して公務員給与の大幅カットと引き換えに公務員に団体交渉権を与えるという法案を提出したが実現することは無かった。ただし、国家公務員の新規採用に関して一定数を抑制した。公務員の定年は延長される方向性であったことから採用数の削減がダイレクトに業務負担に影響を及ぼすとは限らない。

 さて、民主党政権時代に行われた行政事務の削減であるが、2008年から自民党政権下で既に開始されていた事業仕分けおよび行政事業レビューを2009年に発足した民主党政権で引き継いだ。そもそもこの仕組みは予算の有効性を高め効率化を図るために2002年に岐阜県の自治体が導入し全国の広がっていたものである。民主党政権では「一部の政治家と官僚の考えや利害の一致によって予算が決められているのではないかという疑念を払拭するため」に行うとしており元来の主眼とは異なっている。2010年には471事業が廃止され2210事業が見直しとなり1.3兆円の削減に繋がっている。2011年には220事業が廃止され1832事業が見直しとなり4500億円が削減された。ちなみに民主党政権時には自民党政権時より税収はマイナス約10兆円、歳出は約13.5兆円増加して初めて100兆円を超えた。その後、歳出は100兆円を超えたまま高止まりとなっている。どれだけ予算を見直しても歳入が減って歳出が増加しているのだから事業者であれば失格の烙印を押されて当然である。事業者ではなく政権や政党であっても口先三寸の実力不足であると言われてもしようがない。

 民主党が2009年の衆院選で掲げた公約のほとんどが実現しなかったが、数少ない実現した公約の中にNPO法の改正というものがある。1998年にNPO法が制定され、2001年には認定NPO法人制度が導入された。これを民主党政権時の2011年に法改正し、絶対値基準や仮認定制度の導入、税額控除方式の導入やNPO法人への認証手続きの簡素化などが実現したことで認定を取得する法人は徐々に増加した。認定基準に従来の相対値基準に加えて「3000円の寄付者が年平均 100 人以上」という絶対値基準を導入した。また、仮認定制度を導入して段階的に認定NPO法人格を取得できるようにした。さらに、所得控除方式に加えて税額控除方式を導入し認定NPO法人への寄付者は最大で寄付金額の約半額が減税されることになった。その他、国から都道府県・政令市への認定業務の移管、みなし寄付金制度の拡充、NPO法人会計基準の採用なども実現した。新寄付税制は閣法、NPO法改正は議員立法であり全会一致で成立した。寄付金の税額控除は世界でも類を見ない試みであったが、この2法の改正で認定法人が急激に増えたわけではない。NPO法人全体の1%をやっと超えた程度である。よって、実現はしたものの政策効果は芳しくない。

 民主党が主導したNPO法改正によって認定権限が国から自治体に移譲されることになる。この権限移譲によって自治体とNPO法人の距離は大幅に縮まる。現在では一定規模以上のほとんどの自治体で行政とNPOとの協働が為されている。

 小泉・竹中政権を発端とする行財政改革は極端な公務員の削減が行われ、民主党政権時にはNPO認可管理事務が自治体に移行した。国家の統治機構の縮小は国民を貧困に陥れただけでなく非営利活動法人という営利活動団体を流行させ、公益を装った野心家が認定NPO法人という名のもとに行政との協働を進め公金と寄付(無税)を事業収益の柱とするハイブリッド事業のビジネスモデルを構築した。消費税導入以降、バブル経済は崩壊し小泉政権ではグローバリストが台頭する。竹中平蔵氏が重用され銀行や証券会社、保険会社など日本の代表的な国富はだだ同然で切り売りし外資に持ち去られた。政府は国内産業を安静も図らず保護もしない。そればかりか財務省は財再悪化ばかりを問題視し国民の危機感を無意味に煽り続けた。民主党の悪夢の3年間ばかりが取り沙汰されるが誤った国家運営はそれ以前に既に始まっていた。民主党は自民党に比べてマネージメントとパブリッシングが未熟であっただけなのかもしれない。

 フローレンスをはじめとした偽善的NPOが公金ビジネスを既得権化しつつある。特定のNPOに限定してクラウドファンディング型ふるさと納税による資金を提供したり、行政サービスの委託が進んでいる。行政の弱体化は国家の弱体化を意味する。国家の弱体化は産業や商業の弱体のみならず安全保障も揺るがす。ロシアのウクライナ侵攻、北朝鮮の核開発、中国の覇権主義化、中東紛争など世界情勢は不安定になりつつある。果たして日本は政府の弱体化をこのまま進めていいのか。小さな政府を志向して本当に1億2千万の日本国民の生命と財産を守り抜けるのか。政府の縮小化、財政の縮小化、人口の縮小化は、国家を滅ぼす危機を孕んでいるのではないか。


参考

日本の NPO 政策過程に対する新制度論的考察 権 妍李

https://tsukuba.repo.nii.ac.jp/record/50759/files/DB02900.pdf

民主党による行財政改革 三菱UFJリサーチ

https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2013/04/qj1301_04.pdf

国家公務員の人件費削減問題の動向と今後の課題 総務委員会調査室 佐伯 道子

https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2011pdf/20110114016.pdf

民主党の期待外れ度は深刻、政治主導が空回りして政権運営に未熟さ 改革公約はほとんど実現せず、政権交代後の中間決算は企業でいえば大赤字 牧野義司 賢者の選択

https://kenja.jp/1343_20171224/

民主党政権の検証 参議院自由民主党

https://www2.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/067_01.pdf

井上伸 国交労連 X 

https://x.com/inoueshin0/status/1495708352252362753/photo/1

一般職国家公務員在職状況統計表(令和3年7月1日時点)概要

https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/files/shukei_gaiyou.pdf

NPO法改正・新寄付税制の政策過程 原田峻

https://www.jstage.jst.go.jp/article/janpora/15/1/15_1/_pdf

坂本雅彦ホームページ

坂本まさひこ  作家 国会議員秘書

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