公安審査委員会委員の国会同意人事案について

かん公安ないw

 公安審査委員会委員の国会同意人事案についてである。公安審査委員会については今年の4月にも同意人案が出ていたのでその際に組織については書いた。法務省のHPでは、「公安審査委員会は、国家行政組織法に基づき、法務省の外局として設置された委員会で、破壊活動防止法及び無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律の規定により、公共の安全の確保に寄与するために、破壊的団体及び無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関し、適正な審査及び決定を行うことを任務としています。」と説明されている。公安調査庁が調査した事案を公安審査委員会が破防法おける解散命令などを判断して適用するかどうかの可否を決める役割を担う。有名な事案としてはオウム真理教による一連の事件が有名だ。オウム真理教は地下鉄内でサリンを撒くなど無差別殺人を起こしたり、坂本弁護士一家誘拐殺人事件など12名もの犠牲者を出し、数千名に被害を及ばせている。ところがこのような傍若無人な犯行を繰り返したオウム真理教の解散命令の申請は却下し、公安の監視対象に留める決定を下したのがこの公安審査委員会である。おかげで破防法の成立以来、解散に追い込まれた団体は未だに存在しない。統一教会関連団体の解散命令を岸田内閣が申請したという報道もあったがオウム真理教ですら解散命令は出されていないのに、殺人に至るような行為は今のところない統一教会に解散命令など出せるわけがない。統一教会に恨みを持った人物が安倍元首相を殺害したのであり統一教会はオウム真理教と違って殺人を犯したわけもない。統一教会の解散命令の申請は岸田内閣が国民の処罰感情を利用して行ったデモンストレーションに過ぎない。公安審議委員会が想定する破防法適用団体とはどのような悪行を行った団体を指すのだろうか。いったい何人の人が殺されたら適用されるのだろうか。オウム真理教は少なくとも12名を殺害しているのだからそれ以上が最低ラインということなのだろう。私の私見ではこの委員会は不要である。役割がないというより、役割を既に放棄した団体だと考える。機能していないから不要というより、この公安審査委員会があることが犯罪組織に破防法を甘く見られる状態を招くからである。大量殺人を目的とした無差別テロを起こしても破防法が適用されないという悪しき前例を作ったのが公安審査委員会である。当該審査委員会は毎年同じ文言のオウム真理教に対する再発防止処分の決定と観察処分の期間更新が壊れたおもちゃのように定期的に出し続けているばかりが唯一の役割となっている。

 とはいえ、公安審査委員会は今日も現存し委員も任命されている。それゆえ、委員の同意人事案が相も変わらず提案される。人事案の全員をその人物の素養を問わず反対することで公安審査委員会の存在自体への提唱に代えることできるとは思うが、法や規定を正規の手続きしたがって変更するわけではないことから石の礫を投げているに過ぎないことになる。当該委員会の不必要を説くならば法務委員会等に所属するなり、一定数以上の議員の賛同を経て改正案を提出し成立を目指すか、与党に属して省令などで運用を曖昧にしてしまうかなど手段は限られる。

 さて、現実的な判断として各人事案に対して個別に確認する。委員の定員は7名、全員が非常勤で任期は4年。団藤丈士氏は非常勤の委員長の新任案として提案されている。団藤氏は元名古屋高等裁判所長官であり中央建設工事紛争審査会の特別委員との兼任を予定している。複数の省庁へ出向し紛争解決に取り組んだ経験を持つ。司法分野では卓越した見識を有していることは疑う余地がなく団藤氏の新任案には賛成するべきだと考える。

 非常勤で再任予定の秋山信将氏は一橋大学大学院法学研究科の教授である。国際政治学が専門で核不拡散にも尽力した。最近の研究では「先端技術と国際秩序:革新技術がもたらす国家のパワー、権威、倫理性の変容」に取り組んでいるようだ。破防法と国際政治は一見、関わりが薄そうだが防止策や防御策で規模感の違いはあれど思考を一にできることもあろう。差し当たり秋山氏に対して反対する理由はないので賛成とするべきだと考える。

 非常勤の新任案の長沢裕美子氏についてである。日興証券勤務を経てフォスターフォーラム(良質な金融商品を育てる)を創設。金融庁参事・金融行政モニター委員、金融審議会委員、金融経済教育推進会議委員、国民生活センター紛争解決委員会特別委員、日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会理事を歴任。消費者保護の活動なのか、投資信託の促進なのか、わかりずらいキャリアであるが、なぜこの方が公安審査委員会委員に提案されるのかはもっとわかりずらい。しかしながら、非常勤での人事案であることと当該委員会の活動が形骸化していることから賛成しても悪影響はないと思われる。

 三好真理氏は非常勤の委員の人事案として提案されている。外務省出身、女性初の局長就任。領事局長を経てアイルランド特命全権大使、国際テロ対策・組織犯罪対策協力担当大使兼北極担当大使を経て現職や兼職はなし。北極に大使なんていたんだと驚かされた。調べたら、結氷域の減少から北極の経済活動の可能性が増したことや航路や資源の開拓の為に2013年に北極担当大使が新設されたとのこと。別に北極に大使館を設置してビザの発給や邦人保護にあたっているわけではない。三好氏は国連代表部としてジュネーブでもニューヨークでも勤務している。ジュネーブでは緒方高等難民審議官がいた頃で人権人道支援を担当した経歴を持つ。国際テロ対策・組織犯罪対策協力担当大使を経験していることもあり三好氏の委員任命には大いに賛成するべきだと思料する。


参考

公安審査委員会とは 法務省

https://www.moj.go.jp/kouanshin/kouanshinsa_index.html

公安審査委員会委員の人事について 坂本まさひこ 2024年2月

https://masahikosakamoto.amebaownd.com/posts/51759970

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