兵庫県議会の百条委員会が県職員に行ったアンケート調査がお粗末だった件について

いいんかい!

 兵庫県政が迷走している。11月17日に行われた出直し知事選で斎藤元彦氏が再び知事に返り咲いている。兵庫県議会が知事の不信任案を全会一致で可決したことが出直し知事選の切欠になったのだが、議会の意向と裏腹に斎藤元彦氏は再び県民の信任を受けて知事に返り咲いた。それにも関わらず世間は未だに騒がしい。そもそもは3月中旬に元西播磨県民局長によって作成された文書がマスコミ、県会議員、警察に配布されたことに発端である。この文書には7項目にわたる知事に関する真偽不明の疑義が明記されていた。この文書に書かれた主要な部分に関しては事実無根とされて元県民局長は役職を解任され、定年退職を取り消され、停職3か月の処分が下された。元県民局長は反論文を出すとともに県広域通報制度の窓口に通報した。県による早急な処分が下される中、斎藤知事によるパワハラ行為も俄かに疑われる状況になる。議会は当初、全会一致で第三者委員会での調査を行うとしていたが、「県内の企業から知事に贈られた」と文書に記されていた高級コーヒーメーカーについて産業労働部長が受け取り、3月に返却していたことが発覚したことなどから百条委員会の設置を望む声が県議会で強まった。百条委員会は6月中旬から始まり、7月19日には知事らへの尋問が開始される予定であったが、元県民局長は7月7日に自らこの世を去った。これ以降、斎藤知事の辞職を望む声が一気に増す。マスコミも斎藤知事に批判的な姿勢を露にする。

 前段が長くなった。百条委員会で究明の対象とされるのは元県民局長が作成した文書の内容の真偽である。7項目の疑義に対して当事者である斎藤知事、片山副知事が百条委員会に召喚されるのは当然であるが、当事者だけでは真相は解明できない。当事者に対する関係者、当事者の発言を裏付ける証言などが必要となる。4月には丸尾まき県議が私的に県職員へのアンケート調査を行い、のちに百条委員会に提出している。丸尾県議は県職員300名にアンケートを手渡し21名から回答を得ている。よく混同されているようだが、丸尾県議が行ったアンケート調査と百条委員会が実施したアンケート調査は別物である。丸尾県議が行ったアンケートは丸尾氏自身や竹内英明県議らが百条委員会で知事に質問する際にその内容を使っていた。百条委員会は7月末から県職員に対して改めてアンケート調査を行い、8月23日に中間報告、10月11日に最終報告を公表している。

 このアンケートに対して多くの点で不備が指摘されている。まず、県職員がインターネット上でアンケートに回答する際の入り口となるQRコードであるが、同じコードを読み取ってログインすることで同一人物が何度でもアンケートに回答できてしまう。その時点でアンケート結果の集計は意味を持たない。意図的に集計結果を誘導出来てしまう。ただ、記述に関しては何度同じことを指摘しても斎藤知事が1度否定するとそれでお終いなのだから影響は皆無。無記名の人が多すぎるという指摘も多いが無記名の人が多いのは当然である。斎藤知事に対して良く思っていない者ほど無記名になるし、百条委員会の呼び出しを断ると罰則があることから、記名するメリットなどない。記名して回答するとしたら斎藤知事を好意的に受け止めている人に限りなく限定されてします。その他にもアンケートの質問とはかけ離れた回答が為さていたり、知事に対してではなく県議に対する回答が記入されていたりすることへの批判も多い。ただ、これはアンケートの取りまとめを行う担当者が恣意的または独善的に回答を解釈して訂正することを絶対的に避けるために原文のまま公表しているに過ぎない。アンケート用紙に書かれたそのままを開示することによって意味不明な回答や噛み合わない回答や勘違いだと思われる回答がそのままの状態になる。私の場合は入試の採点や論文指導などの仕事を長年してきたので意味不明な記述には慣れている。表現は良くないが一般的にランクの低いと言われる大学だと大半の文章がそうなのだから読み取るだけで骨が折れる。仕事でもなく、無記名でもよいアンケートに記入された文章なんてものはいい加減であって当然である。たとえ記名で書かれたものであっても普段から文書を書きなれていなければXのポストなどSNSへの投稿とそんなにかわらないようなものになってしまうのはしようがないことである。

 だからといってアンケートの内容をすべて無視したらよいと言っているのはない。すべての設問がマークシートで選択できるほど作りこまれたものならいざ知らず、百条委員会の用意したアンケートは非常に簡素なものであり、設問に対する回答の選択肢が全て同じ。「知っている人から聞いた」「人づてに聞いた」なんていう中途半端な選択もある。よって取捨選択が必要だということ。まず、集計は全て無視するべきだ。何度も回答できるアンケートの数的集計など何の意味も持たない。また、アンケートの目的が元県民局長の作成した文書の裏付けをとったり、それらに関して補完できる情報を募ることだとすると「知らない」「人づてに聞いた」「知っている人から聞いた」は裏付けにもならなければ補完にもならない。よって、無視しても構わないと考える。「目撃等により実際に知っている」という回答したアンケートだけが残る。それらの中から記名で回答した者をAランク、無記名で回答したした者をBランクとし、Aの記述内容を吟味、つづいてBの記述内容を吟味する。AとBの中から確度の高いものを百条委員会で斎藤知事や片山副知事に直接問うてみるのがよい。

 アンケートが完全に無駄ではなかったと言えるのは百条委員会の場で知事にアンケートの記述にある幾つかを問うた際に知事が概ね認める発言を行っているものがある。「机をたたいて付箋を投げつけた」というものは事実であると証言したが投げた付箋は一枚を折りたたんだものであり人に向かっては投げていないと釈明。この件はたとえ知事が過少に見せかけて証言していたとしてもパワハラとは思えない。一方、県立考古博物館で入り口まで20メートル歩かされただけで怒鳴って叱ったという件であるが、知事は百条委員会でその事実を概ね認めて入り口で待っていた職員に強い口調で厳しく注意したと証言。その時にはその場所が自動車侵入禁止区域だと知らなかったからだと主張。パワハラかどうかは委員会や有識者の判断に委ねるとした。皇室や総理の誘導に間違いがあったのならまだしも、自身がたかだか20メートル歩くだけのことで、それが車止めの除去の忘れであろうがなかろうが厳しく叱責することはありえない。いきなりの叱責は明らかにパワハラだと思うし、斎藤知事は怒鳴ったということも否定せず「厳しい口調で叱責」と言い換えた。事情を聞かずにいきなり怒鳴りつけ、「その時は進入禁止区域だとはしらなかったので」なんていう理由は通用しない。知事は百条委員会後に当人には謝罪したことを明かし、記者会見でパワハラについて聞かれ「心の中におごりや慢心があった」と釈明している。

 ここでは一つ一つの件を取り上げないが、アンケートのA「実際に目撃等で知っている」に該当する記述に絞って信憑性が高く元県民局長の作成した文書の内容にリンクしているか、類似性のあるものをピックアップして百条委員会で利用すれば全くの無駄にはならない。アンケートの内容が本当か虚偽かは物的証拠がない限り指摘された当人に聞くしかない。聞いてみることで見えてくることもあろう。

 百条委員会のような何かの真実を究明するような場においてアンケート調査が有効かというとそうではないかもしれない。そもそもアンケートは馴染まないのかもしれない。傾向や統計をとるのとは違うからからである。元県民局長の作成した文書に関する情報を集めるのならアンケートという手法はしっくりこない。よく交通事故があった現場に「目撃者情報求む」という看板が立てられている。百条委員会が求めているものはそれに近いのではないか。

そもそもアンケートであろうが情報提供であろうが、それはあくまでも参考資料に過ぎない。アンケートや情報提供に斎藤知事に関する明らかなパワハラと思える行為が記載されていてもそれでパワハラを確定することはできない。アンケートは一方の言い分であり、斎藤知事にそれを質問し否定されたとしてもそれも一方の言い分である。斉藤知事が認めた事象が出てきて初めてそれがパワハラなのかどうかを百条委員会や第三者委員会が検証することになる。

12月9日現在、まだ百条委員会の取りまとめは出ていない。第三者委員会も進んでいない。斉藤知事は県職員を傷つける言動があったことを詫び、当人にも直接謝罪を済ませたと言う。パワハラだったのかどうかは結論を待つしかない。

最後に私の偏った意見を申し上げると、今回の元県民局長が作成し送付した文書は事実であるかもしれないこととそうではないことが混じっている。よって、斎藤知事が悪で亡くなった県民局長が正義だという構図をマスコミが構築したことは不適切だし、悪意すら感じる。一方で、斎藤知事は大いに反省するべきだ。斎藤知事のことを良く思っていない県職員が大勢いるのは間違いない。県職員、県内市町村長、官僚時代の同僚や学生時代の同級生、親族、マスコミなどで斎藤知事を擁護する声はほとんど聞かれない。わずか数人は選挙中に現れて応援していただけだ。マスコミが偏向報道したことが影響しているのはわかるが当初から孤立していた。竹内県議や丸尾県議の嘘がバレた9月頃から斎藤知事を擁護する声が聞かれるようになったがあまりに遅い。斉藤知事の仕事ぶりもそうだ。県庁の建て替えをストップしたこと以外に大したことは何もしていない。各部局から上がってきた事項を進めたに過ぎない。3年前の選挙時から斎藤知事の具体的な公約なんて皆無に近い。維新の公認と自民の分列という構図ができたことで当選した、ただそれだけだ。今回の出直し選挙でも大した公約は何もない。改革を進めるというだけ。改革なんていう言葉を使うほどのことは何もしていない。それが現実である。三都の中で大阪、京都に大きく先行され取り残された感のある兵庫。兵庫は私の生まれ故郷でもある。斉藤知事には名誉挽回の機会を得たのだから延長戦だと思い目覚ましい奮励を期待する。県民の目は厳しくなっているぞ。


参考

ねこぽん

https://x.com/aradnekopon/status/1860527600801841286

百条委員会パワハラアンケートを全数チェックしてみた 公表されていないヤバイ事実を発見 株式会社経営人事パートナーズ

https://www.youtube.com/watch?v=s_HcQq11-bE

文書問題調査特別委員会 兵庫県職員アンケート調査

https://web.pref.hyogo.lg.jp/gikai/iinkai/index/tokubetsu/bunsho/index.html

坂本雅彦ホームページ

坂本まさひこ  作家 国会議員秘書

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