令和6年補正予算案について

よさん、か。

国債を発行して非課税世帯にばら撒く

 補正予算案に関する日経新聞の報道、「政府は29日、2024年度補正予算案を閣議決定した。ガソリンや電気・都市ガス料金の抑制といった経済対策を裏づける一般会計の追加歳出が13兆9433億円の予算とした。新規国債を6兆6900億円追加で発行し、財源のおよそ5割を借金で賄う。」国債を借金だと言い換えてしまっているところはご愛敬である。歳出の13.9兆円の中には非課税世帯に配る3万円が含まれている。浜田聡参議院議員が指摘した通り野党が減税を言うと財源の不足の問題を持ち出すが、政府が支援金をばら撒く際には原資は議論にならず存在する。不思議なことだが事実である。そのからくりの答えが国債。日経新聞は国債を借金などという言葉に置き換えてしまっているがそうだとすると国は国民から借金して国民に配ることになってしまう。さすがに意味不明だ。実体は、国債は国民からすると資産であり債権である。同時に配られた3万円もお金という資産である。政府は資産を創造するだけのことであり、国民に背負わせる借金が増えるなどということはありえない。

会計検査院の指摘を反映せず

 補正予算の中身についてだが、燃料油価格激変緩和対策事業に約1兆円、電気ガスへの補助が約3200億円。ガソリン価格の高騰に関して政府はいつまで補助金で抑制するというスキームを維持するつもりなのか。補助金支給に係る委託事務経費が巨額となっていることを会計検査院が指摘している。トリガー条項の凍結を解除するか当分の間税を廃止することで物事は解決する。1兆円の予算があればトリガー条項の廃止は可能である。そんなに難しいことではない。当分の間税に関しても、当分の間(2年)と言いながら既に50年も経過している。道路整備に使われる特別税であったのに今では何にでも使える一般会計に移行している。規律のないなし崩しを続けることは国家規律に反する。早々に当分の間税率を廃止することを願う。電気料金に関する補助は必要だがもっと必要なのは原子力発電所の再稼働やリプレイスである。短期間で火力燃料の価格が低下するとは思えない。東日本大震災前の原子力発電のシェアへの回帰を目指して取り組むべきである。

IOWN構想を実現し日本がゲームチェンジャーになり得る

 半導体生産事業者への投資であるがこれまでの3年間で3.9兆円に上っている。政府の関与を減らし民間の投資に任せるべきだと声も聞かれるが、アメリカは米国CHIPSプラス法によりインテルやサムソンに年間約4.5兆円の補助金を出している。中国も国家集積回路産業投資基金(国策ファンド)を設立し7.4兆円以上の補助金を支給している。日本はコロナ禍で半導体の調達が困難に陥り自動車、電化製品など多岐に渡る製品の生産活動が滞り経済成長を妨げた経緯がある。半導体製造では一旦はイニシアティブを海外に奪われたが苦い経験を活かして半導体産業を再生することが日本の主要産業の競争力強化には必須となる。グローバルな競争状態や各国政府が内国半導体事業者を後押ししている状況を鑑みても政府の半導体への関与は必要であり重要である。NTTが牽引してIOWN構想が2030年の実用化を目標に進んでいる。半導体を光を使って動かす技術である。熱を生まないしエネルギー効率も良くなる。もしIOWNの実用化を達成したら日本は半導体業界のゲームチェンジャーになり得る。

国土強靭化は補正予算で対応すべきなのか

 GX経済移行費や新たな防災減災など国土強靭化に係る予算は補正予算ではなく本予算で計上するべきである。補正予算での計上が常態化すると本予算の予算計上と執行が曖昧になる可能性もある。

 能登半島沖地震の復興予算であるが、高橋洋一氏らは今更、遅すぎるというが政府は既に7回の予備予算、合計7150億円を支出している。確かに災害は予見しがたい出費にあたるだろうから国会は事後承認となる予備費の使用でも許される。だが、既に災害発生後、11か月以上が経過した後に補正予算で改めて約2600億円を計上するのなら最初から補正予算を組めばよかったのではないか、国会軽視だと言われてもしようがない。

国の基金はコロナ禍以降に急増

 さて、政府や財務省は財源不足を声高に言うがそんなはずはない。財務省の資料から、本年度の税収の上振れは3.83兆円、税外収入の上振れは1.87兆円、国債規定経費削減1.63兆円となっており合計7.33兆円が財源として確保できる。これだけあれば「103万円の壁」の撤廃に係る減収はカバーできる。残り13兆円は国債を発行しても良いし、国の基金の残高が2022年末で16.6兆円になっていることからそれを活用しても良い。


*政府はコロナ禍を経て一気に膨らんだ国の基金の活用をどのように考えているのか、令和 2年度以降に公益法人等に造成された主な基金の資金を活用することで所謂「103万円の壁」の見直しに関して税の減収を補えるものと考えるが如何に。

*政府はこれまで7回にも及ぶ能登半島沖地震の復興費用を迅速な対応を理由に予備費から支出しているが、この期に及んでなぜ補正予算に組み込むことにしたのか。

*ガソリン価格高騰に係る補助金の支出をするための事務委託費が巨額になっていることを会計検査院によって指摘されているが、トリガー条項凍結解除や当分の間税(上乗せ税)を廃止することで同様の効果が得られると考える。政府はなぜ補助金を支給するスキームに固執するのか。

*GX経済移行費や新たな防災減災など国土強靭化に係る予算は予見できない予算ではないはずであるから、本来、補正予算として計上すべきものではなく本予算(当初予算)に計上されて然りであろうと考えるが、補正予算として計上する理由を明らかにされたし。


参考

令和6年度補正予算 

https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/budget/fy2024/20241129.html

令和6年度補正予算(第1号)の要点

https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/budget/fy2024/hosei241129c.pdf

2024年度補正予算案のポイント 第一生命研究所

https://www.dlri.co.jp/report/macro/396119.html

国の基金の現状と課題 国会図書館

https://dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?itemId=info:ndljp/pid/13741829#:~:text=%E3%81%9D%E3%81%AE%E7%B5%90%E6%9E%9C%E3%80%81%E5%9B%BD%E3%81%AE%E5%9F%BA%E9%87%91,%E3%81%97%E3%81%9F%EF%BC%88%E5%9B%B3%203%EF%BC%8917%E3%80%82

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