TBS報道特集での誹謗中傷の検証について(1月25日放送)
デマがデマわっている・・・(;'∀')
1月18日に元兵庫県会議員で竹内英明氏が亡くなったことが報道された。1月25日にTBSの報道特集という番組内でSNS上に拡散された竹内氏への誹謗中傷に関する真偽の検証が為された。私は普段はテレビを見ていないのだが浜田聡参議院議員のご所望であるので既に放送されたこの番組の内容について少し検証してみる。私はN国党の活動に賛同したり、議員の秘書に従事したりしていることから中立とはいえない。俯瞰的な目線で見られるかも、偏りなく公平に受け止められるか不明ではある。逆に利害関係者であろうとも忖度せず自分の信義には忠実でありたいし、偏重や虚偽や捏造などには加担しないし賛意しない。その上で当該番組の内容に限定して検証してみる。
竹内氏は元西播磨県民局長が複数個所に送ったパワハラなどを告発する文書に関して調査する特別委員会、いわゆる百条委員会のメンバーであった。竹内氏は知事のパワハラを追求する先頭に立っていた一人だった。告発文書についてテレビや新聞等によって斎藤知事や片山副知事の対応に批判的な報道がされ続け世論は知事への糾弾一辺倒になっていた。竹内氏の百条委員会での知事への追及はそんな世論に後押しされる形で行われていたものと察する。そんな風潮を俄かに変えたのが竹内氏が知事のパワハラを追求するにあたり具体例としてあげていた浴衣まつりでの一件である。
番組では
「2023年に姫路市で行われた「ゆかたまつり」。夏の風物詩に、姫路市長らと並び斎藤知事も出席。その際知事は他の来賓と同じように、地元の公民館でボランティアによる着付けを受けることになっていた。しかし、竹内さんはブログでこう指摘した。「知事は着付けを当日直前にキャンセル。他の来賓とは別に自分だけ着付けができる専門店に行って着付けした。公費で払うことになり、秘書課が負担することになった」
とし、浴衣まつりの関係者の芳賀一也氏のコメントとして
「僕ら現場の人間からすると(知事は)めっちゃ機嫌良かった。ボランティアに罵声かけたん?そもそも公民館行ってへんから。あの時にマスコミがちゃんと取材して、何が正しくて何が間違ってるのかをちゃんと報道してたら、SNSに振り回される必要なかった」
と伝えている。
竹内氏の追及が発端となりネット上では「知事がボランティアに暴言を吐いた」や「知事が呉服屋を貸し切った」とか「知事が浴衣まつりを出禁になった」などというデマが出回る状態となった。竹内氏のブログや百条委員会での質疑では知事の暴言や出禁などという発言や主張はない。竹内氏の話が誇張されてバージョンアップされてしまっている。浴衣まつりで知事との窓口になった芳賀一也氏は知事がボランティアを怒鳴ったことも呉服屋を貸し切ったことも浴衣まつりを出禁になったことも当事者として自身のXで完全に否定している。芳賀氏は否定するポストの中でそれを伝えたマスコミの報道を批判するのみならず「竹内議員の発言は一部デマです」と切り捨てている。芳賀氏はネット上で誇張された内容まで竹内氏の発言だと勘違いしてしまっている。斎藤知事を批判するポストが過熱していく過程で誇張されたデマまで実しやかに竹内氏の発言だとされてしまった。芳賀氏のポストによって糾弾一辺倒であった斎藤知事の置かれた状況が俄かに変化する。斎藤知事に向けられた疑惑がデマなのではないかと。そういう意味では芳賀氏のXでのポストはゲームチェンジャーとなったのかもしれない。「竹内氏の発言の一部はデマです」という芳賀氏の発信はインパクトを持って拡散されていくようになった。
番組内で芳賀氏は「あの時にマスコミがちゃんと取材して、何が正しくて何が間違ってるのかをちゃんと報道してたら、SNSに振り回される必要はなかった」とメディアに苦言を呈している。芳賀氏にもSNSで振り回されたという自覚があるのだと受け止める。メディアが報じないことについては正偽を問われることなくSNS上に放置され独り歩きする。その状況を踏まえ報道の責務を問う発言なのであろう。
一方、立花氏は1月20日の動画で「事実無根のゆかたまつりなんかの、事実ではない根拠をもとに(知事を)責めてた」として竹内氏を批判したことを番組内で報じた。事実ではない根拠とは芳賀氏が完全に否定した内容のことである。そして、芳賀氏が否定した内容とは竹内氏の主張に尾ひれがついた風説を指す。当事者であった芳賀氏の「竹内氏の発言の一部はデマ」という発信を立花氏も鵜呑みにしてしまったということであろう。当事者の芳賀氏からの一次情報を信用してしまうのは致し方ないことだと思える。当事者が間違った情報を発信してしまうと、もはやそれは疑いようのない事実だと認識されてもやむを得ない。芳賀氏は言い訳としてマスコミの取材や報道がなかったことが誤報の拡散に繋がったとしている。それにも一理ある。結果として竹内氏がデマを元に知事に追求した事実は確認できない。芳賀氏はSNS上を独り歩きして尾ひれがついた情報を鵜呑みにして竹内氏の発言がデマを含んでいると発信してしまった。当事者の発信を信じて疑わない立花氏は竹内氏がデマを元に知事のパワハラに関する追及を行ったと勘違いしてしまった。これら一連の経緯を鑑みると報道が真実を伝える使命を果たさなかったことが誤った認識を多くの人に持たせる原因となっている。このケースにおいてマスコミが立花氏を批判するのは責任の転嫁に過ぎない。ちなみに竹内氏の発言に尾ひれがついた原因は百条委員会が行ったアンケート調査にある。アンケートが匿名であることから真実に基づかない記述を簡単に行える状態であり、実際に真偽が疑われる記述も多い。竹内氏による発信だと勘違いされたデマはアンケートに記述されている内容でもある。
番組は立花氏に対して「竹内氏のでっち上げ」だと主張する具体例を問うたところ、立花氏は「県民局長の奥様の遺書というか陳述書についても、公になる前に竹内さんは自らのフェイスブックで出しておられた。これが本当に県民局長の奥様が作られたものなのか疑惑がかかっているということです」と回答。
ところがこれは確実に事実に反する。竹内さんがブログに掲載していたのは遺書や陳述書ではなく、それを報じた産経新聞の記事だった。竹内氏のブログを確認すれば容易にわかる勘違いである。竹内氏は百条委員会に元県民局長の遺族が提出した陳述書を遺族より先にファイスブックにアップロードしたという事実はない。単にそれを伝える新聞記事を掲載しただけである。「でっち上げ」の一例にはなり得ない。立花氏は「でっち上げ」とは言っていない、疑惑と言っただけだと主張するが1月20日の動画で「とにかく竹内議員がかなりでっちあげをしていたことは、多くの人はわかっていらっしゃると思うので」と話し、ホワイトボードにも「でっち上げをしていた竹内議員」と書いているのがはっきりと確認できる。立花氏は疑惑として発言したとして問題となっている告発文書とは関係のないこととして「疑惑の真相を究明しようと思うほどの関心はない」と発言。立花氏は番組が放送された後に「でっち上げ」と言っていないというのは「竹内氏が亡くなった後にでっち上げと言ったのであって、それ以前にはでっち上げとは言っていない。番組による印象操作だ」と反論した。この一件に関しては立花氏の主張は反論にあたらない。竹内氏の生前であろうが亡くなった後であろうが事実に反する発信であることに変わりない。
その他にも立花氏による「竹内氏に警察の事情聴取が行われていた」、亡くなった翌日に「竹内氏は逮捕される予定になっていた」などの発信が拡散されている。番組のテーマは竹内氏が命を絶つことになった原因に迫ることではない。竹内氏への誹謗中傷の信義を問うことがテーマである。竹内氏が亡くなった後の発信であるかどうかは番組のテーマとは関係ない。真実かどうか、デマだとするとどのように拡散されていったのか等の問題がテーマとなっている。そういう意味では当事者の兵庫県警の本部長が「任意の調べをしたこともありませんし、ましてや逮捕するという話は全くございません」と完全否定している。それを受けて立花氏も事実誤認を認め謝罪し訂正している。本来ならば立花氏が発言を撤回したことで一件落着となるはずであったが、その後にひと悶着ある。立花氏は「逮捕が怖くて命を断った」という主張は間違いだったと訂正し謝罪。しかし、誹謗中傷はしていないと反論した。1月20日に自身の動画チャンネルにて「竹内さんに対して、僕自身は批判や誹謗中傷した記憶はない。これぐらいのことで自ら命を絶つような人が政治家しちゃいかん」と発言。さらに1月22日にXに「故人が悪事を働いていた事は、明らかですが、、、その悪事を警察が把握してなかっただけ!あるいは警察が裁けない悪事だっただけでしょう!」と発信している。
誹謗中傷があったとしても撤回、訂正、削除、謝罪などがあれば事態の一様の終息を図ることが出来よう。だが、新たな不確かな情報発信で上塗りすることで以前の誤った情報を打ち消すことは手法として頂けない。この手法に対抗できるのは大手メディアによる対抗言論、正偽を糺す情報発信しかないように思われる。報道特集の番組内では
「1月19日昼ごろに竹内さんが自殺したとみられることが報道されると、その動機を「逮捕を恐れて死んだ」などとする投稿が一気に拡散された。しかし、19日夕方、新聞3紙が県警関係者への取材をもとに「そうした事実はない」と報道すると、竹内さんを擁護する投稿が批判の4倍拡散された。」
と伝えている。大手メディアの影響力と果たすべき役割が暗示されていると感じる。東京大学鳥海教授によると通常、炎上と呼ばれる状態は3日程度で収まるというが、竹内氏に対する誹謗中傷と思われる発信はその後も残り続け、発信力の強いアカウントからの発信が続いていたことから拡散が止まらなかったという。拡散は11万回以上に上るが半数以上が発信力の強い僅か13のアカウントからによるもの。鳥海教授は情報空間での受け取り手の認識を改める必要性を説いた。
竹内氏に関わる真偽不明の情報を発信したとされるアカウントの中には元宮崎県知事の東国原英夫氏も含まれている。東国原氏は竹内氏が亡くなった直後に「警察から事情聴取もされていたと聞く」とXに投稿した。東国原氏は番組内でインタビューに答え、投稿を削除し謝罪した上で「不確かな情報であっても自分なりに精査すれば“疑惑”として発信することは問題ない」という認識を示した。番組では東国原氏のこのような認識についてネガティブに受け止めているように感じたが、多くの週刊誌報道やタブロイド紙の記事では当たり前のように黙認されてきた。それはエンタメ的要素を含んだうえで容認されていたのだと思われる。竹内氏に関する疑惑の発信は、元県民局長が亡くなったり、出直し知事選が行われたりして、そのような余地がなかったのだろう。時として疑惑を発信することは看過されない誹謗中傷となりうることを示した出来事である。発信する側にはその境を見極める状況判断が必要とされよう。
最後に番組の山本恵里伽キャスターは
「SNSだけでなく多くのメディアが誤った情報を流布する側になったこともある。正しい情報が伝えられなかったことがデマの拡散に繋がった。メディアによるファクトチェックがデマの拡散を抑えられた側面もある。経験の蓄積があるメディアの責任は大きい」
日下部正樹キャスターは
「テレビが自分は安全圏にいながら散々人を追い詰めてきたという批判があり否定できない面もある。立花氏のやっていることとテレビの斎藤知事バッシングの何が違うのかという声を否定できない。立花氏の言動にきちんと向き合ってこなかった。結果、立花的言動が野放しになって一部受け入れられる空気を作ってしまった。誹謗中傷に口を紡ぐ社会にしてはいけない。私たちと立花氏の間に線を引くためには愚直に真実を追いたとえ少数派になろうとダメなことはダメと声を上げ続けなければならない」
と纏めている。
辛辣すぎる締め括りだとは思うが、テレビの報道姿勢に関する反省も窺える。立花氏のどの発言かを特定せずに「立花的言動」と呼び、「私たち(メディア)と立花氏の間に線を引くために」と立花氏を反社的な定義付けを思わせる表現をして番組を締め括ることには違和感を感じる。受け取りようによっては立花氏に対する誹謗中傷のように思える。
番組の構成としては竹内氏が命を絶った原因を立花氏による竹内氏への誹謗中傷が原因であると仕向けてはいない。番組テーマは冒頭に明らかにされており、そのテーマに沿って立花氏による発信の検証と拡散の経緯を探っている。それ以上でも以下でもない。
参考
追い詰められていた元兵庫県議の竹内英明さん 「でっち上げ」と発言した立花孝志氏は【報道特集】 TBS NEWS DIG
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1689385?display=1
報道特集(JNN / TBSテレビ)
https://x.com/tbs_houtoku/status/1882426415288816067
死亡元県議の聴取・逮捕情報、兵庫県警が明確に否定 SNS拡散巡り 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20250120/k00/00m/040/064000c
ami X ポスト
https://x.com/AmiHeartGlitter/status/1883102381862490349
芳賀一也 ゆかたまつり Xポスト
https://x.com/uyFSvO7PBcw8QeZ/status/1881308407220822502/photo/1
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