地震財特法について
危ないからぼうさいっとするな。
地震防災対策強化地域における地震対策緊急整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(地震財特法)についてである。地方公共団体その他の者が実施する避難地、避難路等地震防災対策上緊急に整備すべき施設等の整備(地震対策緊急整備事業)に対する国の財政上の特別措置を講ずるための法律である。昭和55年に成立した議員立法であるがこれまで5年ごとに延長を繰り返して現在に至っている。令和7年3月末で日切れとなることから更に5年間、延長するための法改正である。 地震対策緊急整備計画に基づいて8地域が指定されている。東京都、神奈川県、静岡県、長野県、岐阜県、山梨県、愛知県、三重県の8都県が強化地域である。強化地域の都県は整備計画を策定することが規定されているが平成22年の法改正で事業計画の策定義務は廃止されている。現在は個別の案件ごとに事業対象となっており避難場所、避難経路、消防用施設、公立中高の耐震改修など17事業が該当する。本法案では国庫の補助率を嵩上げする改定が為される。消防用施設は1/3から1/2に、社会福祉施設は1/2から2/3に、公立小中学校の耐震補強は1/3から1/2に嵩上げされる。これらの嵩上げは今回が初めてではなく従前より嵩上げされている。少なくとも前回の令和2年に本法案が延長されたときには今回と同様の補助率の嵩上げが既に為されていた。要は、嵩上げも含めた延長法案ということである。
我が国の地震防災に関する法律は数多ある。全国を対象としたもの以外に首都直下型地震対策、南海トラフ巨大地震対策、日本海溝・千島海溝地震対策、東海地震対策にわかれる。本法案は8エリアを対象として予算措置を行っているが地震防災に関する法律は他にもたくさんある。首都直下型地震対策特別措置法、南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法、大規模地震対策特別措置法などがエリアを指定した法律である。その他に災害対策基本法、津波対策の推進に関する法律、津波防災地域づくりに関する法律、地震防災対策特別措置法がある。
例えば内閣府の行政事業レビューでみると令和4年には地震対策等の推進に必要な経費として約6億5千5百万円が予算措置されている。執行額は5億5千万円で執行率は81%であった。気になるのはその事業の根拠法令である。災害対策基本法、大規模地震対策特別措置法、南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法、首都直下地震対策特別措置法、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法、地震防災対策強化地域における地震対策緊急整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律、地震防災対策特別措置法、津波対策の推進に関する法律、活動火山対策特別措置法などと記載されている。関連する計画は防災基本計画、大規模地震防災・減災対策大綱、南海トラフ地震防災対策推進基本計画、首都直下地震緊急対策推進基本計画、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進基本計画、活動火山対策の総合的な推進に関する基本的な指針、首都圏大規模水害対策大綱などである。
内閣府が行う地震対策を推進するために9本の法律が根拠となり、7本の計画に沿った事業が展開される。これはさすがに多すぎないか。災害に関わる法律の多くを根拠にしうる、計画に関しても防災関係の多くの計画に適合する計画となる、ではややこしいだけでなく1事業で複数の財政措置を誤ってされかねない。内容もネーミングもほぼ一緒という法律もある。地震防災対策特別措置法と地震財特法(本法案)は内容がほぼ一緒。違うのは対象とする地域ぐらい。地震防災対策特別措置法は全国を対象として事業を行っているが、地震財特法は東海地震を前提とした東海エリアを中心に8都県に対象を絞っている。大は小を兼ねるのだから同類項は纏めるべきである。
災害対策基本法と大規模地震対策特別措置法、津波防災地域づくりに関する法律は閣法である。その他は議員立法であることから同類項が林立することになったのかもしれない。
内閣府によると防災関係の法律は基本法関係が7本、災害予防関係が18本、災害対応関係が3本、災害復旧・復興、財政金融措置関係が23本、組織関係が4本となっており合計55本も災害に関係する法律が存在している。本法案のように類似する法律がある場合はひとまとめにしないと足並みがそろわず事業の統一性が失われて事業効果が減少してしまうのではないか。そればかりか似た事業同士にそれぞれ予算措置してしまい資金と労力のロスを生むのではないか。本法律を直ちに廃止する必要はないが地震防災対策特別措置法と一本化することが望ましいと考える。地震防災対策特別措置法の期限は令和8年3月末となっていることからその際に一本化を図ることを期待したい。
*地震財特法に関連する令和6年の予算規模はどのくらいか。
*令和2年に本法律が延長された際に「現行計画に基づく事業のうち未執行のものが約2,130億円分残っている。また、財政的制約等で現行計画に盛り込めなかった事業として約2,170億円分が見込まれる。」という記載がある。未執行の予算がその後どうなったのか、当時に盛り込めなかった事業はどうなったのか。
*大規模防災関係の法律が数多あることで労務的・予算的ロスも発生するのではないかと考える。類似する法律、関連する法律を整理統合することが必要と考えるが如何に。(地震財特法(本法)と大規模地震対策特別措置法)
参考
地震防災対策強化地域における地震対策緊急整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律
https://laws.e-gov.go.jp/law/355AC1000000063
地震防災対策強化地域における地震対策緊急整備事業に係る国の財政上の特別措置
に関する法律(昭和55年法律第63号)の概要
https://www.bousai.go.jp/jishin/pdf/jishinzaitokuhougaiyou.pdf
地震防災対策強化地域における地震対策緊急整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案
地震防災対策特別措置法 Wiki
附属資料4 災害対策に関する主な法律の一覧 内閣府HP
https://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/h21/bousai2009/html/honbun/1b_fuzoku_siryo_04.htm
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