令和7年度政府予算案について(一般・特別・政府関係機関)

予算をよこさん。

 令和7年度の政府予算案についてである。衆議院で予算案を可決して参議院に同予算案を送る際に若干の下方修正するというあまり聞きなれない事態が起きていることが広く報道されている。政府は反発が大きかった高額医療費制度の負担額上限の見直しを先送りしたことで予算の修正を繰り返すこととなった。結局、予算案は参議院で再修正されて見直しが凍結されたことによって予算を105億円増額することになった。今のところ与党と日本維新の会が賛成する方針を明らかにしている為に衆議院で改めて解決され成立する見通しである。そうした中で石破総理が新人議員に商品券を渡した問題が発覚しており、野党の反発から予算の成立はぎりぎりの日程を強いられそうだ。

 政府予算の総額は115兆5415億円で前年より3兆円だけ増えている。国債発行は1兆2089億円であるがマイナスの歳出として6兆8000億円の償還を予定していることから実質的に増加はない。先進国の中で国債を税収で償還したり利払いしたりしている国なんて日本だけではないのか。米国、欧州の諸外国では国債は国債発行で借り換えながらマネタリーベースを膨らませてきた。今年の予算案の中でも相変わらず財政健全化を推進すると明記してしまっている。日銀と政府との決算が連結してみると日本の財政に何の問題もない。国債の半数近くは日銀が保有しているのだからそれを加味すると健全な財政状況にあることは明らかである。ましてや日銀保有分以外の国債を保有しているのはそのほとんどが国民である。外国が保有している日本国債は13%に過ぎない。半面、日本の外貨保有高は1.3兆ドルにも上り中国に次ぐ世界2位である。殊更に国債を将来へのツケ届だと言い続けてきた政府や財務省の認識を世界標準に合わせないと日本は先進国から取り残され続けることになる。

 話を元に戻すと政府予算での重点政策は防衛力の抜本強化を最初に挙げている。が、防衛省の予算は前年並み。隊員の待遇改善が図られるほか目玉となる戦力増強策は見られない。スタンド・オフ防衛は中期計画の一環。口だけということか。続いて、こども・子育て支援、GX投資推進、AI・半導体産業基盤強化、地方創生交付金の倍増や内閣府防災担当の予算・定員の倍増、教職調整額段階的引上げなどである。衆議院では高額療養費制度見直しを行うことになっていたが予選案可決後に何故か撤回。参院選に向けて票が逃げるのを懸念したのだろう。ある意味みっともない。社会保障関係費は38.3兆円程度。高齢者の増加に応じた増額。薬価改定ではマイナス3000億円を見込む。生活保護は月1500円の引上げ。働く者の基礎控除と給与控除の引上げには徹底抵抗するのだが生活保護費に関しては安易に引上げている。政治的かけ引きが産んだ矛盾なのか。教員の待遇は教職調整額を4%から10%に段階的に引上げるが人事院勧告を受け入れただけのこと。上下水道の急所施設の耐震化を進めるが水道料金は一気に高騰する可能性を否定できない。強靭化は必要であるが国民に多くの負担を強いるのはライフラインに関することは避けるべきだと考える。地方創生の交付金を倍増は地方自治体のガス抜き政策としてのばらまき。農地の大区画化、スマート農業の推進は急ぐ必要がある。農家の高齢化は深刻だ。AI、量子、健康・医療分野のイノベーション投資は欠かせない。量子分野では日本が世界を牽引する可能性が高い。半導体産業基盤強化も欠かせない。コロナ化で日本は半導体不足によって産業界が失速した。国産半導体の量産に向けた支援は必要な措置といえる。

以下の通り、主要省庁の予算の内容を確認していく。

 総務省は総額19兆5917億円となっており前年より1兆3810億円増加している。主要事項としては地方の一般財源総額(地方交付税等)の確保に19兆2767億円で予算のほとんどを占める。通信・放送インフラの強靱化に548億円。マイナンバーカードの利便性・機能向上、円滑な取得・更新環境整備に203億円。 次世代情報通信基盤Beyond 5Gの研究開発・国際標準化・社会実装・海外展開と量子通信技術等や基礎的・基盤的な研究開発の推進で494億円。国勢調査などに818億円。恩給の支給に557億円。参議院議員選挙と政党交付金で1004億円などとなっている。次に予算が大きい個別の事業を挙げる。電波資源拡大のための技術の研究開発に加え、ひっ迫する周波数を有効利用するための技術的条件等に関する検討や試験・分析に450億円。米軍の基地の固定資産税や飛行場や演習場の使用料を地方自治体に交付する基地交付金が307億円、東日本大震災の復旧復興費の総務省該当分が871億円、マイナンバーカードの利便性・機能向上や円滑な取得・更新環境整備に203億円、次世代情報通信基盤Beyond5Gの展開と開発に153億円、量子通信技術等や基礎的・基盤的な研究開発の推進に340億円となっている。地方交付税が1兆円以上増加している理由としていわゆる「103万円の壁」の引上げに対する必要な措置をしたとするが国民民主党の主張する178万円までには引き上げられていない。しかも、地方税のPBは10年以上黒字が続いている。基礎控除や給与所得控除で新たな財源を必要とするかどうかも不明である。臨時財政対策債の残高も減少を続けている。根拠の無い説明はするべきではない。

 経済産業省の予算を見る。経産省関連の総予算は2兆3926億円で前年比24%の増加となった。一般会計は4415億円、エネルギー特会は7818億円、GX推進費は9818億円、特許特会は1546億円となっている。一般会計のうち中⼩企業対策費は1300億円、科学技術振興費は1648億円である。GX・省エネ投資の推進に加え、再エネ、原⼦⼒など、エネルギー⾃給率向上に資する脱炭素エネルギーの供給を拡⼤するための事業環境整備への支援を厚くする。また、グローバルサウス未来志向型共創等事業を新規に予算してグローバルサウスとの経済連携を強める。医⼯連携グローバル展開事業や次世代型医療機器開発等促進事業も新設しヘルスケアスタートアップの⽀援を行う。中⼩企業資⾦繰り⽀援事業や中⼩企業活性化・事業承継総合⽀援事業、成⻑型中⼩企業等研究開発⽀援事業などの予算を軒並み増やし雇用と賃上げと労働環境の向上に資する措置とする。海外ビジネス強化促進事業を新設する。デジタル・ロボットシステム技術基盤構築事業を目指し労働力不足の解消への取組とする。石油やガス価格の高騰への補助金事業は減額傾向であることは懸念材料である。

 厚生労働省の予算は全体(一般・特別)で110兆8546億円である。年金、医療、介護、雇用、福祉を含む一般会計は約34兆円である。年金特会は72兆1786億円、労働保険は3兆3158億円、子供子育て支援特会は1兆616億円、東日本大震災復興特会は86億円となっている。予算の大きい重点事業は医療費国庫負担が10兆2619億円、基礎年金国庫負担割合が3.5兆円、幼児教育・保育の無償化、高等教育の無償化、子ども・子育て支援新制度の実施、医療・介護サービスの提供体制改革、医療・介護保険制度の改革、難病・小児慢性特定疾病への対応、年金生活者支援給付金の支給などの社会保障費に4.1兆円、高齢化等に伴う自然増を含む安定財源が確保できていない既存の社会保障費に7.5兆円などとなっており消費税の増収分の約16兆円が充てられている。厚労省は既存の社会保障費を安定財源が確保できていないなどと公式に表現しているが果たしてそうだろうか。消費税の使途を社会保障に限定すると説明しつつ増税を行って来た。令和6年は過去最高を更新し23兆8千億円となっている。現状を不安定な財源だと宣わり「後代への負担のつけ回し」と公式文書に明記するのであればその責任の一端は厚労省と政権与党にある。社会保障費の上昇は経済成長と並行する必要がある。財政観を見誤った歴代政府の失政を是正しきれずに来た厚労省をはじめとする行政の執行部も無関係ではないはずだ。そもそも国債の発行が後代へのつけ回しなどという認識は誤っている。国債の大部分は国民の資産であることはBS上明らかであり単なる事実である。新設された高校の無償化には6400億円が予算されている。私学まで無償化するというのだから愚の骨頂である。公立高校は私立の補完機能でしかなくなる。本当にそれで良いのだろうか、教育が偏向しないことを願うばかりである。

 防衛省の予算は前年から約9千億円減額の8兆4332億円となった。防衛増税を控えていることから敢えて予算額を前年以下に抑えたのだろう。増税せずとも予算が増額できてしまうと道理に負ける。所得税法の改正でまずは法人に防衛増税を加算する条文を加えている。主要事業の中で唯一大幅に予算が増えた事業がスタンド・オフ・ミサイルの整備である。射程や速度、飛翔の態様、対処目標、発射プラットフォームといった点で特徴が異なる様々なスタンド・オフ・ミサイルの艦発型の量産が開始されることと潜水艦発射型誘導弾の量産が開始されることから事業予算は30%増の9390億円となった。また、自衛官の処遇改善に167億円、生活・勤務環境の改善に3878億円を予算措置して士の確保に繋げる。営舎内居室の個室化や宿舎の改修や建替え・住宅設備の充実、無線LAN環境の拡充、託児事業の充実や隊舎の女性用区画等の整備、被服等の整備・更新などである。併せてAI等を活用した省人化・無人化による部隊の高度化に努め駐屯地の日1000人の省人化を目指す。自衛官、予備自衛官の報酬も大幅に引き上げることになっている。将来を見据えた投資として宇宙、サイバー、電磁波などの組合せにより非対称的な優勢を確保していくための予算として5403億円が計上されている。戦車や戦闘機や潜水艦などの取得には1兆1385億円、サイバー領域での防衛力強化に2927億円が措置されている。弾薬は7675億円、装備品の維持整備には2兆2247億円、施設の強靭化には6983億円が予算されている。防衛産業の構築のための費用も996億円が盛り込まれた。隊員募集の応募者が急速減っているという。待遇の向上を図りつつもAIの活用、DX化の推進など合理化、効率化にも取り組まなければならない。人の心は金で買はえないので付け焼き刃では通用しない。国防に対する国と国民の意識改革が望まれる。

 国土交通省の予算は一般会計が5兆9528億円、東日本大震災復興特別会計が614億円、財政投融資が1兆3292億円となり総額では前年並みである。公共事業費は5兆2336億円、非公共事業が6775億円となっている。令和6年の補正予算で一般会計は2兆2478億円を計上しておりそのうち公共事業が1兆9126億円、非公共事業が3352億円である。能登半島地震の復興費用で補正予算の今後の執行分を考慮すると比較的増加した予算案となっている。ただし、補正予算で災害復旧を計上したことから令和7年度予算では災害復旧関係費用が前年比30%の減少をしている。気候変動による水災害リスクの増大に備えるための予算は補正予算を加えると50%の増額となっている。堤防整備、ダム建設・再生などの対策をより一層加速する。ウポポイの予算は前年並みで観光振興費用に含まれる。公共ライドシャアも横ばい。ライドシェアについては準備中の事業者が実施に至りはしたものの新たな準備事業者はほとんどなくなっている状態にある。収益に繋がるのは都会に限られている傾向にあり交通インフラ空白エリアをカバーするに至る気配すら現状ではない。国交省関係の財政投融資は軒並み半減している。住宅金融公庫や道路公団の返済負担が軽減していることが窺える。都市再生機構(UR)への融資も減少。

 文部科学省の一般会計予算はほぼ前年並みの1.2%増で5兆4029億円。エネルギー特会が前年同額1084億円、財政投融資が629億円減少の6418億円となった。義務教育の国庫負担が1兆6210億円、国立大学法人運営費1兆784億円、科学技術予算9777億円などの予算が大きい。教員の過大な負担が問題になっているが定員を5827名増員し35名学級の実現を目指す。学級担任への手当を月3千円、教諭と主幹教諭の間に新たな級を創設し月6千円の手当を支給する制度を設ける予定。副校長・教頭マネジメント支援員を拡充するほか新規に校内教育支援センター支援員の配置事業を開始する。GIGAスクール構想の推進やAIの活用、教育DX化を加速する。不登校やいじめ対策費は微増の94億円、校内教育支援センター支援員の配置事業を新規に開始する。教員採用試験の応募者がいきなり20%近くも減ったということは一大事ではある。教員OBなどの補助員の配置を急いで労働時間の短縮など負担の軽減を更に進める必要に迫られている。

 法務省の一般財源予算は7436億円である。予算総額も人件費も物件費も前年とほぼ同額となった。法務省内の事業区分けで増額となっているのは再犯防止対策の推進、法テラスによる総合法律支援の充実強化、所有者不明土地等問題への対応及び登記所備付地図整備の推進、円滑かつ厳格な出入国在留管理などである。一方、予算減額になった事業はるDXに向けた取組の推進や施設の整備と維持に関する予算である。犯罪の発生も検挙も著しく減少している。防犯カメラが普及しあらゆるところで設置されている状況となっていることが大きい。それでも警察官の数はなかなか減らない。減らないどころか200人程度は増加している。インバウンドの増加に紛れて外国人の不法滞在なども問題になっている。SNSを通じた人権侵害など新たな社会問題にも取り組む。気になったのが刑務所を災害時の地域住民の避難場所にするというが避難場所としてはどうなのか。刑務所に避難したところで心休まることはないのではないか。刑務所の回収費用が欲しいだけなのではないか。

 子供家庭庁の総予算は7兆3270億円で前年対比15%以上が増額された。一般会計が4兆2367億円、子ども・子育て支援特別会計3兆903億円となっている。事業費で一番大きいのが児童手当であり3兆2845億円で前年から5000億円ほど増額されている。これは児童手当を拡充して満年度化することによる増加である。新規には生活困窮家庭の子息の大学入学試験料の補助を開始する。また、保育所整備や保育の質の向上に2兆1819億円を予算している。病児保育の為の予算も300億円ほどアップしており6460億円となっている。特定NPO法人フローレンスの事業は子供家庭庁のコンテンツをなぞって行い国による予算措置が高収益な売り上げに化けるスキームであるように感じる。それもそのはずフローレンスの代表を名乗る実質経営者の駒崎弘樹氏は子供家庭庁の御意見番を務めているのだから。

 農林水産省の予算は2兆2706億円で前年とほぼ同額である。水田活用の直接支払交付金は2870億円、農業者、農業法人、民間団体等が行う生産性向上や販売力強化等に向けた取組を支援する持続的生産強化対策事業に1421億円、多面的機能を支える活動や、地域資源(農地、水路、農道等)の質的向上を図る活動を支援する予算として約500億円、農業生産条件の不利を補正する中山間地域等直接支払交付金として284億円を計上、スマート農業に関する振興や整備にも支援制度を拡充。重点項目として畑地化促進助成に2760億円、農業農村整備事業(スマート農業関連支援も含む)3331億円、強い農業づくり総合支援交付金、新基本計画実装、農業構造転換支援事業、新規就農者育成総合対策、農地利用効率化等支援交付金などで384億円を予算。地方の裁量で使える農山漁村地域整備交付金に762億円、畑作物の直接支払交付金2024億円、収入減少影響緩和対策交付金として446億円、農業共済事業に801億円、畜産・酪農経営安定対策に2303億円などを計上している。いずれも前年と大きな予算規模の変動はない。将来を見据えた生産性の向上のための合理化と効率化を目指した技術革新を進めないことには農業・畜産・漁業ともに行き詰まる危うさを秘めている。危機感を持って取り組まなければならない分野であろう。

 環境省の予算案は5946億円となり2%の微増となった。地球温暖化対策の推進に一般会計で1185億円、特別会計で1964億円、資源循環政策の推進に438億円、環境・経済・社会の統合的向上及び環境政策の基盤整備に316億円などを計上。所管が復興庁の東日本大震災復興特別会計に放射性物質による環境の汚染への対処の対処費用として2450億円を予算措置している。原子力規制委員会の予算は2.5億円程度に留まる。最近、専ら懸念されるようになった有機フッ素化合物のPFASについて自治体や水道事業者に検査や改善の義務について国の負担はあるのか、義務付けに関しての有効性・実効性はどうなのか、予算要求に含まれているのかが気になるところ。トランプ政権誕生による地球温暖化・森林破壊・海洋汚染・水質汚染・大気汚染に関する世界的枠組みによる取り組みに変化が生じた場合の備えを検討する必要があろう。環境問題を社会正義の枠組みだけでとらえずにビジネスとしての勝利を得るための取り組みとしての予算措置と考えるべき。また、米国や中国とは違う立ち位置としてお日本のプレサンスを高める好機でもあろう。

 外務省の予算は微増の7617億円である。政策経費が3226億円、分担金・拠出金が1048億円、任意拠出金が140億円、JICA運営費1484億円、無償資金協力が1514億円(政府全体のODA予算は5664億円)、デジタル庁のシステム予算169億円となっている。日米同盟、G7、日米豪印、日米韓、韓国、ASEAN、太平洋島嶼国など同盟国・同士国との連携、グローバルサウスとの関係強化、ウクライナ紛争やイスラエル・パレスチナ紛争への支援などに予算の多くが割かれる。ODAを戦略的活用し経済安全保障に繋げる。併せて日本企業の海外展開をバックアップの強化。情報戦時代への取組の強化、戦略的対外発信の推進など先端技術の活用の能力を高める必要性がある。(汚染水などという風評被害を教訓に)政府のODA予算は年々縮小傾向にあるが外務省独自のODAが約30年間横ばいか微減にとどまる。(借款ではなく無償供与を基準)世界的なプレサンスに変動がみられる昨今の状況を見据えて東アジアをリードしつつ出来る限りニュートラルな立ち位置の確保を願いたい。予算規模は横ばいとは言えども当初予算としては過去最高額となっている。

 財務省の予算であるが30兆4031億円でありほぼ横ばい。巨額予算ではあるがそのほとんどが国債費であり28兆2179億円となっている。国債費のうち約17兆円が償還費、約10兆円が利払い費である。国債費以外には経済協力費に854億円、中小企業対策費が600億円、社会保障関係費が787億円、予備費が1000億円、その他が9609億円となっている。ちなみに世間で活用をよく言われる外為特会の残高であるが令和5年末で外貨準備高が1.3兆ドル、政府短期証券残高が107.9兆円となっており、これは世界最大の外為資産高だと思われる。令和7年の外国為替の売買等で得る歳入総額の概算は4兆9430億円としているが現状を鑑みると大きく上振れる可能性がある。財政投融資に関しては歳入総額 21兆6382億円を国債整理基金特別会計に約11兆円、財政融資資金として10兆円が使用される。昨年までは1兆円の予算があった原油価格・物価高騰対策費は皆減となっている。エネルギー高や輸入物価の高騰が高止まりしていることで多くの国民が困っているのだが政府の認識では既に解決済みということなのだろう。今季予算には1円たりとも計上されていない。いざとなれば事後承認である予備費を投入すればよいことだと考えているのだろうか。そうであれば政府による議会民主主義の軽視ともとれる。為替レートを読む限り外貨準備高と政府短期証券のバランスには幾分余裕がある。40兆円程度の差益は読めることから政府短期証券による財源確保による減税の実施による危険性は低いものと考える。以上が一般会計の省庁別予算案についてである。

 次に特別会計の大枠にも触れておく。特別会計の歳出総額は429.5兆円。前年の7兆円減である。そのうち国債借換が136.2兆円、勘定間の融通が89.2兆円、残りの204.1兆円が実質的な歳出総額である。使途は国債償還費等が85.9兆円、社会保障給付費が78.9兆円、地方交付税交付金等が21.6兆円、財政融資資金への繰入れが10兆円、その他が7.2兆円である。7.2兆円の内訳は労災や雇用などの保険関係や年金機構の運営費に2.5兆円、エネルギー対策として石油などの備蓄、省エネ導入、半導体関係に1.9兆円、食料安全供給の為のコメの備蓄などに1兆円、外国為替や税制投融資などに1.8兆円となっている。

 最後に政府関係機関の予算についてである。政府関係機関は採算を図る事業者でもあることからNHKのようにP/Lを基にした事業計画のようなものから予算化している。対象となるのは4法人。沖縄振興開発金融公庫は売上と費用とはバランスして384億円、損失はない。純資産は1693億円。株式会社日本政策金融公庫は一般国民向けが2721億円の赤字、農林水産業者向けはプラスマイナスゼロ、中小企業向け融資は売上1384億円、利益が360億円を見込む。信用保証業務は売上2213億円、経常費用8853億円で6639億円の損失となっている。2年前までは黒字であったのが巨額損失を出すようになったのは保険引受費用が急増したからである。公庫や信用保証協会の信用保険を包括的に請け負っている。コロナ禍明けの倒産が急増した場合は信用保証協会に対する保険金の支払額が嵩むことになる。代位弁済額は債務の70%から90%となっている。公庫の巨額負担が一過性のものであれば良いが数年にわたると経営を蝕むことになる。現在のところ公庫には4兆3756億円の純資産があるため様子見で良いと考える。最後に株式会社国際協力銀行の予算は営業利益が1773億円(売上げは約6500億円)、経常費用が2435億円、661億円の赤字予想である。要因となっているのは借入利息が3年で4倍に高騰していることと信託運用益が減少していることによる。国際協力銀行の純資産は10兆3898億円あることからB/Sの問題はないであろう。国際協力銀行は政府系の旧日本輸出入銀行の国際金融部門が株式会社日本政策金融公庫と統合したが、2012年に日本政策金融公庫から分離・独立する形で発足した銀行である。日本で唯一の国際金融に特化した政策金融機関である。


*市井での経済活動は活発であるが物価高騰で国民生活は逼迫しつつある。税収は過去最高を更新している状況下で政府予算案の規模には物足りなさを感じる。好機を逃さず政府は積極的な財政出動を行うことを旨とするべきではないか。

*政府予算案を衆議院で可決後に下方修正するという例はあまり聞かないが、政府がそのようにした事情を説明されたし。

*外為を売却せずとも政府短期証券の発行による資金到達によって野党各党との懸案事項となっているガソリン暫定税や所得控除引上げは十分に措置が可能なのではないか。

*政府予算案では防衛予算はほぼ据え置きであるが。法人税に係る防衛増税を所得税法改正法案に盛り込む布石であるのかどうか。防衛費を拡大する財源は基金の活用で十分に措置できるのではないか。

*国債の償還は国債の発行によって行うのが国際的には常識ではないのか。

*エネルギー価格の高騰が続く中で政府は支援の継続を念頭においていないのか。

*能登半島地震の復旧予算は十分であるのか。

*ウクライナへの支援の方針や内容を問う。同様にイスラエル・パレスチナ間の紛争に係る政府の方針を問う。

*米トランプ政権がパリ協定からの脱退を決めたことによる日本政府の方針や取り組みに影響があるのかどうか。あるとすればどこの何に影響があるのか。

*子供家庭庁の各種諮問委員会の委員に特定NPO法人フローレンスの自称会長(登記簿上の役員ではない)である駒崎弘樹氏が任命されている。同時に駒崎氏率いる特定NPO法人フローレンスの事業の柱である病児保育のサービス提供に関する子供家庭庁の支援予算が300億円も増額されている。子供家庭庁と駒崎氏との現状の関係を訝しく感じるのも当然であろうと考える。子供家庭庁が駒崎氏を何らかの委員に任命することは不適切だと考えるが如何か。

*公共事業費への投資が経済成長への影響が一番大きく反映されると考える。よって、公共事業への予算配分にもう少しウエイトを置くべきではないか。

*高校無償化の為に公立高の地盤沈下の恐れなど多くの課題が指摘されている。これについて政府の見解を問う。

*政府与党が行う日本維新の会や国民民主党との個別協議は他の政党を排除し国会での議論を避けた国会軽視ではないのか。


参考

令和7年度予算政府案

https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/budget/fy2025/seifuan2025/index.html

令和7年度予算及び財政投融資計画の説明

https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/budget/fy2025/20250124.html

令和7年一般会計予算案

https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/budget/fy2025/2025yokyuippan_link.html

令和7年特別会計予算案

https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/budget/fy2025/2025yokyutokkai_link.html

特別会計について(令和7年度予算)財務省

https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/budget/fy2025/seifuan2025/25.pdf

令和7年政府関係機関予算案

https://www.bb.mof.go.jp/server/2025/html/202513001Main.html

令和7年度予算(修正後)フレーム

https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/budget/fy2025/02.pdf

総務省予算概要

https://www.soumu.go.jp/main_content/000987292.pdf

令和7年度経済産業省関連予算案等の概要

https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2025/index.html

令和7年度厚生労働省所管予算案関係 厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/25syokanyosan/index.html

令和7年度予算案の概要 防衛省

https://www.mod.go.jp/j/budget/yosan_gaiyo/fy2025/yosan_20241227_summary.pdf

令和7年度予算決定概要 国土交通省

https://www.mlit.go.jp/page/kanbo05_hy_003307.html

令和7年度予算 文部科学省

https://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/r01/1420672_00010.html

令和7年度予算(案)について 法務省

https://www.moj.go.jp/content/001430061.pdf

令和7年度こども家庭庁予算案

https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/88749a20-e454-4a5b-9da8-3a32e1788a23/5cbb6234/20241227_policies_budget_53.pdf

令和7年度農林水産予算概算決定 農林水産省

https://www.maff.go.jp/j/budget/r7kettei.html

一般会計歳出予算各目明細書 環境省

https://www.env.go.jp/content/000193990.pdf

令和7年度政府予算案の概要 外務省

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100775019.pdf

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