在日中国系企業によるフェンタニルの対米不正輸出問題について
コカインで後悔ん。
合成麻薬とされるフェンタニルが日本を結点にしてアメリカに輸出されているという報道が日本経済新聞によってスクープされた。6月25日の紙面で
「合成麻薬フェンタニルを米国に不正輸出する中国組織が日本に拠点をつくっていた疑いが判明した。日本経済新聞の独自調査でわかった。中心人物が名古屋市に法人を登記し、少なくとも2024年7月まで日本から危険薬物の集配送や資金管理を指示していた姿が浮かび上がった。日本は米中対立を招いたフェンタニル危機の最前線となっているおそれがある。」
と報じている。フェンタニルは麻薬及び向精神薬取締法で麻薬に指定されている。ヘロインの50倍、モルヒネの100倍の効力を持つと言われ毒性が非常に強い。通常、麻酔および鎮痛を目的として静脈注射して手術時や集中治療時に使用されている。世界中でフェンタニルの強い毒性によって品質の悪いコカインやヒロインなどの違法薬物の効果を増強させるために混合して使用され社会問題となっている。英国では薬物乱用法のクラスAに指定され、オランダではアヘン法、アメリカやカナダでは規制物質法など多くの国が厳格に法律で規制している。アメリカでは薬物中毒者が11万人にも上っているが、そのうちフェンタニルによる死者は7万人を超えるに至っており、米国麻薬取締局(DEA)は2016年以降、取締りを強化してきた。2024年11月以降、トランプ大統領が中国、メキシコ、カナダの輸入関税を引き上げた一端となっているのがフェンタニルなどの違法薬物の流入問題であるとされている。
そんな中で日経新聞がスクープしたのが前述の記事である。日本も中国に舐められたものである。日本が、もしくは日本人や生粋の日本企業が米国にフェンタニルを輸出していたのではない。日本の信用を利用して中国企業もしくは中国人が行っていた蛮行である。アメリカを筆頭に世界中の貿易取引国から日本に対する信用は厚い。アメリカの通関が行う中国に対する確認作業よりも日本に対しては比較的緩やかな姿勢であることは否めない。中国はそこを利用した。日本法人からの輸出品としてフェンタニルを大量に送っていたのである。中国によって日本の信用を利用されて、その結果、日本の信用が著しく棄損された。
このことは中国の一企業が行った単独の犯行とは言い切れない。中国共産党による超限戦である可能性も否めない。武器を利用した戦闘だけが戦争ではない。心理戦、ネットワーク戦、諜報戦、法律戦などあらゆる方策によってアメーバ式に侵入し浸透させ、暗に中国の意を汲み、支配すること、それこそが超限戦であり、戦争行為の一種でもある。それは時として国家テロにも繋がる。大量のフェンタニルをアメリカに流入させることは凄まじい破壊力を伴う。一過性のテロではなく、いわば化学兵器による攻撃とも受け取れる。フェンタニルの使用による死者が7万を超えるのであるから核兵器並みの威力である。中国共産党が首謀者だと確定的に非難することはできないが中国企業が行った蛮行であることは恐らく間違いのないことだ。中国企業による合成麻薬の不正輸出が中国共産党による超限戦の一種であるとすれば事態は深刻だ。そうだとすればアメリカと中国の対立に日本が図らずも巻き込まれたことになる。とはいえ、知らなかったですまされる問題ではない。国際紛争の火種になりかねない。
日本政府はこのことを軽々に考えてはいけない。自公政権による長期間にわたる媚中外交が国際問題を招く結果となった可能性も否定できない。いつもの「遺憾砲」だけでは日本の国際的な信用回復は見込めない。フェンタニルを取り扱う企業や施設の調査に留まらず外資企業、中でも中国系日本企業の徹底した実態調査に基づく再発防止策を含む法整備が必要だ。この際、中国が仕掛ける超限戦に対する対策を広範囲に行うことを可能とする法整備にまで踏み込むべきだ。問題が発生してからの対処法では国際的な日本の信用が低下するし、紛争に巻き込まれかねない。今回のことで日本は既に流れ弾に当たってしまっているのかもしれない。日米同盟は今後も外交の基軸であるべきであるが自律的な安全保障政策を進めることも重要である。
今月は参議院議員選挙が行われる。かつて栄華を誇ったジャパニーズ経済圏は崩壊し、国際的な発言力も低下の一途を辿っている。民主党政権の悪夢を経験した日本の野党だからこそ同じ轍を踏まないと信じ、政権交代を期待するのも良かろう。外交安全保障、経済政策など再考と再建を要するタイミングでもある。「戦を見て矢を矧ぐ」では遅い。「常在戦場」にあることを忘れてはならない。
参考
米国へのフェンタニル密輸、日本経由か 中国組織が名古屋に拠点 日経新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN090A00Z00C25A5000000/
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