行政施設等の閉庁日についての法案の検討(参議院浜田聡議員の法制局への相談に対する回答)
雨が降ったりやんだりしています。雨のせいか気温も低くてじっとしていると肌寒いです。私はデブなので動くとすぐに暑くなります。太りすぎの私にとっては寒いか暑いかの二択でありその中間は存在しません。そんなお天気のせいでひとつ困ったことがあります。神宮球場のスタンドが激寒です。防寒しないと見ちゃおれんということです。
さて、参議院浜田聡議員が広く皆様に法案を募集し、ご応募いただいた法案より下記の法案を参議院法制局に相談をして回答を頂戴しましたので僭越ながら浜田議員に代わりここにご報告いたします。
下線部分は私が加筆させて頂きましたことをご了承下さいますようお願い致します。
参議院浜田聡議員による相談と質問(法案コンテストより)
以下の通り、法案の相談をさせていただきたくメールを送らせていただきます。
併せて、次の疑問点を提示させていただきます。
・そもそも一般的に土日が休みであることは日本の法律で決まっているのか?
・↓の法案内容は地方自治体の条例制定で対応することは可能か?
・↓の法案内容は特区制度を利用することで対応することは可能か?
急ぐ法案ではありませんので、よろしくお願いいたします。
*法案名(仮)
公益施設休館平準化法
*法案内容
・市役所等の行政施設は、特別な事由がない限り、毎月1日を閉庁日とし、そこから3日開庁、1日閉庁を月末まで繰り返すこととする
イメージ
旧日程 □□□□□■■□□□□□■■□□□□□■■□□□□□■■□□□
新日程 ■□□□■□□□■□□□■□□□■□□□■□□□■□□□■□□
□=開庁
■=閉庁
*目的
・現代の多様化した働き方に行政も対応する
*背景
職業によって行政サービスの受けやすさに差があるべきではない
行政側が7日を1週とする一般のサイクルとは違うサイクルを取ることにより、休暇と開庁日がずっと重ならないような事態を避ける
*課題
行政システム等の変更が必要になるため、直ぐには施行することができない
下記画像:千葉県八街市休日開庁、八街市HPより
参議院法制局による回答
1 国の行政機関の休日
(1)国の行政機関の休日については、下記のとおり、土曜日、日曜日等が休日とされている。行政機関の休日に関する法律(昭和63年法律第91号)(抄)
(行政機関の休日)
第一条 次の各号に掲げる日は、行政機関の休日とし、行政機関の執務は、原則として行わないものとする。
一 日曜日及び土曜日
二 国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日
三 十二月二十九日から翌年の一月三日までの日(前号に掲げる日を除く。)
2 前項の「行政機関」とは、法律の規定に基づき内閣に置かれる各機関、内閣の統轄の下に行政事務をつかさどる機関として置かれる各機関及び内閣の所轄の下に置かれる機関並びに会計検査院をいう。
3 第一項の規定は、行政機関の休日に各行政機関(前項に掲げる一の機関をいう。以下同じ。)がその所掌事務を遂行することを妨げるものではない。
(2)上記の法律は、国の行政機関において週休二日制を導入するために立法されたものであるところ、当時の国会会議録によれば「長年社会に定着しております執務日を変更するものであること、あるいは国民の権利義務、国民生活等多方面に影響を及ぼすものであるということ等から、土曜閉庁日を行政機関全体として見れば休みの状態になっている日、すなわち行政機関の休日と位置づけまして、これまでの日曜日、年末年始、祝日等と合わせて規定したもの」との答弁がなされているところである(昭和63年11月8日衆議院内閣委員会議録第11号)。
一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律(平成六年法律第三十三号)の第15条において休日の代休等の規定がされているが、上記第一条を前提としており、休日の規定のみならず職員の勤務に関する法律も併せて改正する必要があると思われます。また、現状の雇用契約を維持して行わなければならないとすれば、多くの職員に変形労働制を導入し、4週4日以上の変形休日制を導入しなければならないようになってしまいます。例えば、結婚式場のように季節によって繁忙期(春秋)や閑散期(夏冬)がある場合などに用いられる制度と認識しています。そうではない場合、つまり、懸案のような休日制度自体が変貌するような場合においては第一条の3を適用しての休日制度の変更には無理があるように思います。ちなみに公務員には労働基準法は適用されません。公務員は国家公務員法、地方公務員法の適用となります。しかし、公務員も人間であることから労働基準法同等の権利や保護を要することは当然のことと考えます。
2 地方公共団体の休日
(1)地方公共団体の休日については、下記のとおり、条例で定めるものとされており、基本的に国と同様、土曜日、日曜日等を休日として定めるものとされている。
○地方自治法(昭和22年法律第67号)(抄)
第四条の二 地方公共団体の休日は、条例で定める。
② 前項の地方公共団体の休日は、次に掲げる日について定めるものとする。
一 日曜日及び土曜日
二 国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日
三 年末又は年始における日で条例で定めるもの
③ 前項各号に掲げる日のほか、当該地方公共団体において特別な歴史的、社会的意義を有し、住民がこぞつて記念することが定着している日で、当該地方公共団体の休日とすることについて広く国民の理解を得られるようなものは、第一項の地方公共団体の休日として定めることができる。この場合においては、当該地方公共団体の長は、あらかじめ総務大臣に協議しなければならない。
④ 〔略〕
地方自治法の休日に関する規定は行政機関の休日に関する法律に準ずると解釈してよいと思われます。あらかじめ総務大臣に届け出るでもなく、認可を得るでもなく、協議しなければならないとあるのは、つまり、その可否は国による判断に委ねられると解釈しました。
(2)上記の第4条の2第2項について、政府答弁書によれば、その趣旨は「地方公共団体の行政が住民の生活に深くかかわるものであるとともに国及び他の地方公共団体の行政とも密接な関連を有して行われているものであることから、住民の利便と国、都道府県、市町村を通ずる行政の円滑な運営を確保するため、国の行政機関の休日に対応するものを当該条例で定めるべき日として特定したものである」、「地方公共団体の休日に関する制度は国及び他の地方公共団体と均衡のとれたものである必要がある」ものとされている。
また、「第4条の2第2項の規定は、同項各号に掲げる日のすべてについて条例で規定することを予定しているものであり、また、同項各号に掲げる日以外の日について条例で規定することを認めない趣旨のものであると考えている」とされているところである(答弁書第1号内閣参質115第1号(平成元年8月25日))。
上記により、土日祝日とあらかじめ認められた例外日以外の規定を認めない趣旨としていることから、自治体が単独で休日の運用を変更することが不可能であることは明らかです。その上で国が住民の利便を鑑みて休日を設定しているとすれば、それを覆すだけの明らかな理由付けが必要だということだと思います。休日をローテーションする背景として多様化した現代の働き方に対応するということだけでは法改正の論点に対するエビデンスとしては十分ではない思われます。
(3)上記のような地方自治法の趣旨から、「法律の範囲内」で制定することができるとされる条例において(憲法第94条)“3日開庁1日閉庁”とすることを定めることはできない。
自治体の条例の制定で休日の運用を変えることは地方自治法において検討する以前の問題として憲法上においても不可能であるとのこと。地方自治法における休日規定は行政機関の休日に関する法律(昭和63年法律第91号)に紐づけられていることから自治体が単独に条例を制定して運用を変更することは困難であることは明白だと思われます。
(4)地方公共団体が条例により“3日開庁1日閉庁”とすることを定めることができるようにするには、それが、「法律の範囲内」であると言えるよう、地方自治法を改正するか、地方自治法の特例を認める法律の根拠(特例法)を設ける必要があるが、上記の「住民の利便と国、都道府県、市町村を通ずる行政の円滑な運営を確保する」という趣旨を踏まえ、その必要性・妥当性について慎重に検討する必要があると思われる。
上記の通り条例での可否を図る問題ではなく地方自治法に関わる問題だということです。少なくとも自治体における行政サービスは国、都道府県との業務を連携する必要もあることから、自治体だけが業務の稼働日を変更することは不可能といえるほどの弊害が生ずる可能性を感じます。つまり、行うなら国、都道府県の一部の機能が市町村と併せて休日の運用を変更する必要があろうかと思います。
3 特区制度による対応
地方公共団体の休日に関する地方自治法の特例法を設ける方法として、特区制度を用いることの適否については、特区制度の趣旨・目的に照らして判断されることとなるが、例えば構造改革特区制度の場合であれば、「地域の特性に応じた規制の特例措置の適用を受けて地方公共団体が特定の事業を実施すること等により、経済社会の構造改革を推進する」ということがその趣旨・目的とされているところ、地方公共団体の休日の設定が、これに該当するかどうかは疑問があるのではなかろうか。
特区制度の趣旨である“実情に合わなくなった国の制度”を例外的に規制を緩和し地域を限定して改革を行うという制度だすれば、自治体の休日の運用方法が民間事業者の経済活動や地方公共団体の事業活動を妨げていると考えるのは無理があるのでは思います。
まず、そうであるならばそれを指摘するに足る事実を明らかにする必要があると思います。
(参考:他の特区制度の趣旨)
〇総合特区:産業構造及び国際的な競争条件の変化、急速な少子高齢化の進展等の経済社会情勢の変化に対応して、産業の国際競争力の強化及び地域の活性化に関する施策を総合的かつ集中的に推進することにより、我が国の経済社会の活力の向上及び持続的発展を図る
〇国家戦略特区:我が国を取り巻く国際経済環境の変化その他の経済社会情勢の変化に対応して、我が国の経済社会の活力の向上及び持続的発展を図るためには、国が定めた国家戦略特別区域において、経済社会の構造改革を重点的に推進することにより、産業の国際競争力を強化するとともに、国際的な経済活動の拠点を形成することが重要である
また、特区制度が、まさに特定の地方公共団体について規制を緩和する仕組みであることから、「住民の利便と国、都道府県、市町村を通ずる行政の円滑な運営を確保する」という、地方公共団体の休日制度の趣旨にも留意する必要があると思われる。
地方公共団体だけでの休日の運用方法の変更は国や都道府県との連携に支障をきたす可能性が考えられるので、むしろ行政サービスの質の低下を招かないか危惧します。
4 地方公共団体の休日についての運用
地方公共団体の休日においては、その機関は原則として執務をしないこととなるが、それは休日を定める条例が各機関の休日における執務を禁止することを意味するものではないものとされており、現在、住民の利便性向上のために、休日開庁や平日の執務時間の延長を行っている地方公共団体も存在するところである。こうした運用では不十分なのか。
下記画像:品川区行政サービス(品川区HPより)
昨今では多くの自治体が日曜開庁や行政サービスコーナーでの住民票、印鑑証明、戸籍謄本の交付を行っています。また、夜間延長窓口を設ける自治体も多いです。出生や婚姻、死亡等、戸籍関係の届出は24時間行っている自治体がほとんどです。よって、地方公共団体の行政サービスの意識も向上していると思います。
5 その他
例えば次のような観点からの検討も必要となると思われる。
① 行政施設には、窓口や企画立案など様々な部門が存在するところ、どの分野を休日変更の対象とするのか。議員が対象としようとしている「公益施設」とはどのような施設を念頭に置いているのか。
不明ですがここでは市庁舎を前提にまとめました。
② “現代の多様化した働き方に行政も対応する”という目的からすれば、休日の変更よりも、オンラインによる住民サービスの向上を図るといった対応を一層進めることの方が目的の達成により資するのではないかとの意見もあり得るのではないか。
ごもっともです。市庁舎に足を運ぶ必要がなくなるということは究極のサービスかもしれません。住民票や印鑑証明はコンビニにて取得できる自治体も多いです。また、昨今ではインターネット普及によって銀行業務や保険業務など窓口での取り扱いが減少し業態の構造が改革されることも珍しくなくなりました。行政サービスのオンライン化が進むことは休日の運用を変更する以上のサービスに繋がるかもしれません。
③ 休日の変更は、勤務する公務員の働き方にも大きく影響するのではないか。
職員の勤務時間、休日及び休暇の運用について(平成6年7月27日職職―328)
第4 特別の形態によって勤務する必要のある職員の週休日及び勤務時間の割振りの基準等関係
1 各省各庁の長は、勤務時間法第7条第1項の規定による週休日及び勤務時間の割振りを定める場合には、割振り単位期間(同条第2項本文に規定する4週間ごとの期間又は同項ただし書の規定により人事院と協議して各省各庁の長が定めた52週間を超えない期間をいう。)ができる限り多く連続するように一括して行うものとする。
上記により公務員にも変形労働はありますが、国、都道府県、市町村が連携して導入しなければならないと思います。単なる証明類の発行だけならば既に休日の行政サービスの提供は進んでおります。保険、年金、福祉、課税など窓口サービスにて個別多様な相談を有する場合において国や都道府県の一部の業務も連携して行う必要に迫られるのではと思います。ならば、法制局のご指摘の通り,行政サービスのオンライン化の方が提供する側も受ける側も利便性が増すのでは思います。
また、自治体全体の休みの変更をする場合は、道路、財務、環境、資源、会計などの担当部署によっては民間事業者との関りもあり行政だけに留まらない大きな影響を及ぼすことが不可避だと思います。
以上、最後までご拝読ありがとうございました。
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