放送法第64条とNHK受信規約第12条について(参議院浜田聡議員が調査室への依頼に対する回答)

今日から10月です。今年も色々とありましたが早いもので第4クオーターに突入です。今年も悔いを残さぬよう頑張らないといけません。10月に入ったということで本格的に衣替えをしました。そして、気が付きました。私、順調に成長しております、体型だけは。

さて、参議院浜田聡議員が参議院総務委員会調査室に下記の調査を依頼されて回答を頂戴致しましたので僭越ではございますが私よりここにご報告させて頂きます。

下線部分は私にて加筆致しましたことをご了承下さい。


参議院浜田聡議員の質問

①放送法第64条 

②放送法施行規則第23条 

③日本放送協会放送受信規約第12条

がいつ成立したのかを教えていただきたく思います。

また、日本放送協会放送受信規約第12条に関する国会での議論があれば教えていただきたく思います。

下記画像:ウィキペディアより旧NHK東京放送会館

参議院総務委員会調査室の回答

御依頼のあった標記の件について、

以下のとおり回答いたします。

御確認のほどよろしくお願いいたします。

【放送法第64条、施行規則第23条、受信規約第12条の成立日】

内容に若干の違いがあるものもございますが、いずれの規定も、制定当初より盛り

込まれておりました。

①放送法第64条(当時は第32条):昭和25年4月24日

②施行規則第23条(当時は第6条):昭和25年6月30日

③受信規約第12条(当時は第14条):昭和25年8月22日


下記に成立当時の条文を記しておきます。

①昭和25年5月2日成立当初の放送法

第32条 協会の標準放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。但し、放送の受信を目的としない受信設備を設置した者については、この限りではない。

2.協会はあらかじめ電波監理委員会の認可を受けた基準によるのでなければ、前項本文の規定により契約を締結した者から徴収する受信料を免除してはならない。

3.協会は、第一項の契約の条項については、あらかじめ電波監理委員会の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同様とする。

②昭和25年6月30日公布当初の施行規則

第6条 法第32条第3項の契約の条項には少なくとも左に掲げる事項を定めるものとする。

1.受信契約の締結方法

2.受信契約の単位

3.受信料の徴収方法

4.受信契約者の表示に関すること

5.受信契約の解約及び受信契約者の名義若しくは住所変更等

6.受信料の免除に関すること

7.受信契約の締結を怠った場合及び受信料の支払いを延滞した場合における受信料の追徴方法

8.日本放送協会の免責事項及び責任事項

9.契約事項の周知方法

③昭和25年8月22日における日本放送協会放送受信規約(S25年9月6日の官報より)

第14条 受信契約者に左の各号の一に該当する事由がある時は、その受信契約者は、所定の受信料を支払う外、更にその賠償に相当するけ怠金を支払わなければならない。

1.受信料の支払いについて不正があったとき

2.受信料の支払を三期分以上滞納したとき

3.受信料の免除の事由が消滅したにも関わらず、その届け出をしなかったとき

上記、放送法に基づき逓信省の施行規則が発せられあらかじめ認可を受けた日本放送協会放送受信規約が適用されるに至りました。

そもそも放送法の制定には紆余曲折がありました。戦前においてラジオ放送は許可制でした。つまり、放送を受信するには受信者はラジオの設置許可を国からとる必要があり、その際に日本放送協会との聴取契約書を差し出さなければならないと規定されていました。聴取者にとっては徴取契約と受信許可はセットという扱いでした。集金作業は都市部はNHKが直接行っていたが多くの地域では郵便局が委託を受けていました。NHKと郵便局はともに逓信省の管轄であったことから密接な協力関係にあったものと思います。また、無許可で受信機を設置した者は1年以下の懲役または1000万円以下の罰則が科される規定になっていて摘発には逓信省の職員や警察官が当たっていたようです。このような制度を通じて国民は放送を受信するには受信料を納めなければならないという社会常識が成立していました。終戦後にはGHQが「受信は自由であるべき」として見直しを求めました。GHQはNHKの放送の維持を基本方針とするものの行政当局の関与を減らす方向で考えていました。よって、受信許可制度を再検討する必要に迫られました。当初(1948年1月20日)の放送制度を巡る案では受信許可制度は盛り込まれていませんが受信器設置の届け出と受信料の支払い義務がセットで規定されていました。NHKにとって支払いの義務が組み合わされたことで従来の制度を維持できると期待することができる内容の案でした。一方、この頃の民間放送においては広告放送に加えて受信料による有料放送が念頭に置かれていた。この案に関してはGHQが反対したことから1948年2月20日案では受信器設置の届け出義務と受信料の支払い義務をセットにする規定がなくなりました。GHQの方針によって受信機設置届け出と受信料とを関係付けることができなくなりました。つまり、この案によって受信機の設置の届け出制から自由設置性になるという案の転換をみました。この頃、NHKは当時のお金で1900万円という大きな欠損を記録しました。激しいインフレや戦争による聴取者の減少などによるものと考えられます。一時はGHQもNHKの財源が聴取料に依存せず付帯事業の収入増を期待する案も検討されましたが、1948年以降は激しいインフレは沈静化の方向に向かい、聴取者も増加に転じ始めました。同時に聴取料を専ら事業運営に費やし、放送施設の拡充、建設に必要な費用は借入金で賄うことで事業収支が黒字に転換しました。よって、1948年以降は聴取料収入によって安定的にNHKの運営が行える見通しがたったようです。

逓信省内では「受信の自由」を法案に入れた以上はNHKの経営の安定化の為に何らかの措置が必要だと考えていたことから、受信料の支払いの義務付けを法案に盛り込んでありました。その後、芦田均内閣の総辞職によりこの法案は一旦撤回されました。

1949年2月の法案では「日本放送協会の提供する放送を受信することのできる受信設備を設置した者は受信料を支払わなければならない」としました。ところが1か月後には「受信料を支払わなければならない」とする規定は削除されました。かわって、「受信設備を設置した者は協会とその放送の受信についての契約をしたものとみなす」と規定されました。これは、義務を排除する代わりに「契約の擬制」という手段で受信料制度の維持を狙ったものと言えます。その後、郵政省と電気通信省が発足し、1949年8月には再検討が進み、「契約を締結したものとみなす」が「契約をしなければならない」に変わりました。つまり、”双方による契約”という要素が含まれたということです。1949年12月22日に放送法案は国会に提出されました。綱島電波監理長官は「日本放送協会が何らかの法律的根拠がなければ聴取料の徴収を継続していくことが不可能になることが予想される」ということを理由に「強制的に国民と日本放送協会との間に徴取契約を結ばなければならないという条項が必要となってくる」と説明をしました。これによって1950年4月26日に衆議院で可決をみました。

上記のように、NHKの受信料制度は確立においてはGHQの方針のもとに進められてきたのです。「受信の自由」という方針のもとに受信料徴収のための強制措置という要素を極力減らし、受信者とNHKとの双方の契約を重視する方向へと変化しました。

終戦後の混乱期にありながらも素早い経済活動の回復と社会秩序の安定により、聴取料制度が崩壊せずNHKの財源が安定に向かったことも行政の関与を薄める契機となったようです。GHQの基本的な考え方の根底には受信料を放送サービスの対価としてではなく、公共放送を維持するための財源、つまり負担金としてとらえる考え方が一貫して採られていました。負担金の概念については現在では議論が分かれるように思われます。

参考:日本放送史、日本放送出版協会 放送史編集室編

【受信規約第12条に係る議論】

についてですが、それを記す前に日本放送協会受信規約の原文を記しておきます。

実は受信規約の中には法で縛られるものではないにしろ、厳しすぎる私的な罰則規定があります。この罰則規定を含んだ受信規約を総務省はあらかじめ認可しているのです。

(放送受信契約者の義務違反)

第12条 放送受信契約者が次の各号の1に該当するときは、所定の放送受信料を支払うほか、その2倍に相当する額を割増金として支払わなければならない。

(1)放送受信料の支払いについて不正があったとき

(2)放送受信料の免除の事由が消滅したにもかかわらず、その届け出をしなかったとき

(支払いの延滞)

第12条の2 放送受信契約者が放送受信料の支払いを3期分以上延滞したときは、所定の放送受信料を支払うほか、1期あたり2.0%の割合で計算した延滞利息を支払わなくてはならない。

上記の罰則規定を基に参議院調査室より国会の答弁資料をご提供頂きましたのでご紹介します。

参考資料:第77回国会衆議院逓信委員会議事録(昭和51年5月12日)下記2点

上記の会議録を説明します。

会議録の質問者である田中議員は受信規約はNHKが受信規約を作成した上で12条一項を定めていることに対して、国民が第12条に関わる義務違反はあるかと質問しました。NHKはそれに回答をせずに第12条一項を適応したことはないと答えました。NHKは第12条一項に当たる不正とはテレビがあるのにないと嘘をついたり、あるいは料金を故意に支払わないというようなことだとしています。田中議員が指摘するのにはNHKは第12条一項のような罰則規定がありながら、NHK基本問題調査会にNHKから出された資料では罰則その他法律上の制裁措置は設けられていないと書いてあることの矛盾を指摘しています。NHKはこの規定が受信規約であり法律での規定ではないことを理由にしています。田中議員はそれでは死文化していると抗議します。NHKはそれでもこの規定を必要とするのは精神規定だとし、未払い者への公平負担を慮る際の歯止めとなる規定と位置付けたいようです。あくまでも精神規定であるからNHKはこの規定を一度も適用していないと回答しています。田中議員は一度も第12条一項の適用がないことにより受信料の不払い者の増加の原因になっているではないか、放送法に罰則規定がないことで強制力がないにも関わらず受信規約の罰則規定も適用されないのなら、正直に受信料を払ったものが馬鹿を見る制度になっているのではないかと指摘しています。村上国務大臣はそれに対して受信規約第12条は伝家の宝刀だとし、NHK料金を払うことは国民的な常識になっていて、払わなくても良いという人は一人もいないとし、伝家の宝刀を抜かないが持っていることは大事だと考えていると答弁しています。

参考資料:第77回国会参議院逓信委員会会議録より

最上議員はNHK受信料の未払い者が約57万人いるが、受信規約第12条一項に該当する件数とその規定を行使したことがあるかを問いました。NHKは受信規約第12条一項を適用して割り増して請求した件はないとしたうえで、話し合いや説得に努めると回答しました。最上議員としては何年も滞納している人に対しては断固とした措置を取らないと何の為に罰則規定を設けたのかということになるという考えを示しました。

参考資料:第91回国会衆議院逓信委員会会議録より

則武議員も受信規約第12条一項の適用実績を問いましたがNHKの回答は発動したことはないということでした。則武議員の疑問は放送法に罰則規定である割り増し料金や延滞金を盛り込むと自動的に滞納がなくなるのかというということです。NHKは放送法第32条の契約の義務に対する疑問があり、これを修正することで国民の受信料への理解が一歩進むのではないかと考えていると回答しました。

上記により、現在においても受信規約第12条は存在します。そして、NHKは受信規約が制定されて約70年を経ますが第12条一項は未だに適用していないようです。これでは精神規定、つまり脅しにもなっていません。私はこの条項を適用することが決して良いこととは思いませんが、現状において放送法は契約の義務しか国民に課していません。よって、上記のような不正や未払いが容易に行える状況が変わることも無く現在に至っています。悪手かもしれませんが、放送法において受信料の支払いの義務を国民に課した場合には、NHKの在り方(事業体とあり方)、ひいては、受信料価格、契約方法、受信料徴収の方法、制作姿勢、電波使用料、人件費、国際放送、インターネット放送、衛星チャンネルの意義など様々な課題についての議論が広く国民の関心事としてとして為されるのではないかと思います。そして、それだけのインパクトのある法改正案が現実味を帯びてこないと国民は本気でNHKの改革について声をあげないのではないかと思えてしまう風潮を感じます。そのような状況の中で、NHKから国民を守る党は、放送法に対する問題を世間に提起し、恣意的にも話題を作り行うことは、NHKに受信料を支払う8割以上の国民にとって不要のように思われていますが、実はそのカウンターパートとして有益をもたらす活動や啓蒙をしているのだと気が付いて戴きたいのです。国民の大部分である受信料を支払っている方々こそが最も不利益を被っているのです。受信料を支払っていない人たちの分まで下支えているのですから。支払っていない国民も同様です。NHKを見ていないのに支払わされる不合理や理不尽に対して問題提起しているのです。これら両者にとって最善を図る為にNHKの問題に目を遣るきっかけを作ることは最重要であり、それなしでは進みえないことです。国会にてNHK受信料に関する議論はたくさんありましたが、NHKという一法人にとっての経済的な問題であり、国民にとって当事者意識は芽生えない議論に終始しました。2019年にNHKから国民を守る党が参院選にて国会議員を生み公党となる躍進を見せました。この出来事は国民にとってNHK問題は潜在的に蔓延している証左であろうと思います。NHKから国民を守る党の存在が放送法の課題に正対する初めの第一歩になったことは間違いないと思います。

最後までご拝読賜りありがとうございました。

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