菅首相の総務大臣時代の仕事について(参議院浜田聡議員の調査室への依頼に対する回答)

昨日は今年初めて柿をおいしく頂きました。柿食えば 鐘がなるなり 幼稚園児?柿食えば 金がなるなり 織田裕二?牡蠣食えば 金がなくなり 放浪児?なんかしっくりこん。不調不承です。

さて、9月16日に菅内閣が新しく誕生しました。菅首相はかつて竹中平蔵氏のあと継いで総務大臣をなさっておられました。既得権側につく多くの与党政治家に屈せず改革を推進する姿勢は高く評価されていました。そこで、参議院浜田聡議員が参議院調査室に下記のような調査依頼をされて回答を頂戴しましたので僭越ながら私よりご報告させていただきます。

尚、下線部分は私により加筆致しましたことをご了承下さい。


参議院浜田聡議員の調査依頼内容

菅義偉氏の総務副大臣・総務大臣時代の業績に関して調査依頼をさせていただきます。

調査希望内容は次の2点になります。

マスコミの報道犯罪を処罰する制度を計画していたとの話があり、その資料があれば教えてほしいです。

②NHK短波ラジオ国際放送への放送命令に「拉致問題」を具体的に盛り込ませた資料があれば教えてほしいです。


参議院調査室からの回答

企画調整室の総合レファレンス宛てに御依頼いただいた件につきまして、

以下のとおり、資料を送らせていただきます。

①放送局への新たな行政処分について (※御依頼の1つ目)

第166国会(平成19年常会)に提出された放送法等改正案におきまして、放送局への新たな行政処分に係る規定が盛り込まれておりましたが、

第168回国会(平成19年臨時会)における衆議院修正において、当該規定は削除されております。

下記資料:参議院調査室、平成19年12月放送法の一部を改正する法案参考資料

上記はいわゆる〝納豆ダイエット企画データ捏造事件″に端を発した関西テレビの「あるある大事典」という番組の不祥事です。納豆のデータの改竄が判明してからチョコレートや寒天などダイエット企画で次々にデータの捏造が発覚しました。番組は打ち切りになり関西テレビの社長は辞任に追い込まれました。

下記資料:放送法等の一部を改正する法律案

それを受けて菅総務大臣は行政指導を行っても不祥事はなくならないと考えて上記のような法に基づき透明性のある行政処分が可能な法改正案を提出しました。

下記資料:2007年5月2日産経新聞東京朝刊より

それに対して民放連やNHKは一様に反対する姿勢を示しました。また、日弁連の同様の反対意見を表明し放送倫理上の問題は放送事業者によって自主的に解決されるべきだと主張しています。

下記資料:平成19年5月22日衆議院本会議議事録より

平成19年5月22日の衆議院本会議の菅総務大臣の趣旨説明ではBPOの取り組みを優先することを明らかしています。これは、放送事業が言う″表現の自由″に配慮せざるを得ないことから発したものだと考えます。

下記資料:平成19年5月22日衆議院会議録第33号より

民主党の田島要委員の質問です。これに対して菅総務大臣は「今回、捏造番組の放送等の非常に深刻な事態が生じている中で視聴者保護を図る為、再発防止計画の求めという必要最低限の措置を講じたのであります。BPOの新たな取り組みに期待する観点から、放送事業者が自ら認めた場合にのみ適用することも含め、ご指摘のように運用することといたしております」と答弁しています。田島委員の質問と菅大臣の回答がかみ合いません。菅大臣が官僚の答弁書を読み上げているだけだからなのですが、それ以前の問題として田島委員の質問が的を射ていないことに起因しています。田島議員の質問がご覧の通りに法案の中に法の運用方法や指針をなぜ盛り込まないのかという質問です。ちょっと言っていることがわかりません。その必要があるわけがないし、表現の自由という市民社会の基盤に関わる問題すら危惧されることとなるのは明らかです。

下記資料:2007年4月10日朝日新聞朝刊より

結果的に菅総務大臣は継続審議となっていた放送法改正案から第53条の改正案を削除しました。憲法では言論や表現の自由が保障されています。民放連や日弁連の反対に屈したのでしょうか。決してそうではないと思います。憲法を尊重しつつも国会において、放送法の改正案の議論の中で誤った情報を事実かのように放送することの問題の大きさを示せたと思います。ただ、その後も繰り返し放送局の捏造番組や個人の名誉を傷つける事案が起きていることを鑑みても、この時に放送法第53条は改正して行政処分を行うことができる環境にしておくべきだった残念に思います。

現在においても放送事業者の自主的な自浄作用が発揮されているとは考えにくいと思います。菅大臣が提起した平成19年の放送法改正案にて行政指導だけでなく行政処分を可能にすることが出来ていたならと考えても不毛ではありますが、放送事業者が自主自律を主張し法改正を阻んだにも関わらず未だに同様の不正な番組が放送される事態が繰り返されているという事実があります。やらせ番組などは後を絶ちません。不正確、虚偽などあらぬ情報を受け取るのは視聴者である国民です。不特定の国民が被害を被る以上は放送法において放送事業者に対して法的なモラルハザードを規定することは今も昔も国民から望まれていることだと思いますし政治家の仕事の本分であろうと思います。


②拉致問題に係る国際放送の命令放送について(※御依頼の2つ目)

平成18年11月に、平成18年度国際放送実施命令が変更され、拉致問題が明記されました。なお、平19年の放送法改正により、「命令」放送が「要請」放送に変更されております。

下記資料:放送法逐条解説(情報通信振興会)より

上記を改正した平成19年以前は命令放送と規定されていました。平成18年11月に北朝鮮拉致問題に係る命令放送を切っ掛けに放送法第3条の編集の自由を、さらに憲法で保障された表現の自由を制限するのではないかという懸念が提起されて上記の改正案が成立しました。ただし、3項において「要請」は応諾の努力義務を規定していることから行政処分が可能になっています。

下記資料:平成18年11月8日総務省情報通信政策局衛星放送課報道資料より

上記のように国際放送の実施命令が出されました。国際放送実施命令はそれまでも毎年出され続けてきているもので平成18年が殊更に珍しいわけではありません。この国際放送実施命令に関しての変更が法改正の議論のきっかけになりました。「北朝鮮による日本人拉致問題に留意する」という指示が追加されてことが契機となりました。その結果、命令放送が要請放送にはなりましたが、要請放送の応諾に関しては行政処分を行うことができます。憲法に抵触しないように配慮した措置であり根本的な命令報道の定義付けに変更はないものと考えます。

放送法第35条において命令放送の費用は国の負担であるとされていますが、そもそも国際放送自体が概ね国の予算措置として約35億円を支給することで放送が行われています。外国人の視聴者から受信料を徴収することは不可能ですし、日本国のプロパガンダ的な要素もあることから当然の措置と思います。

下記資料:平成18年11月10日総務省報道資料より

菅大臣は命令放送に追加する際に大臣談話にてその理由をあげている。1に北朝鮮に対して拉致問題が日朝間の最重要課題という政府の毅然とした姿勢を示すため、2に北朝鮮にいる拉致被害者に日本政府が全力で救出活動を行っていることを伝えるため、3に拉致被害の家族会から命令放送を求められていたため、です。その上で菅大臣は「表現の自由、報道の自由が極めて重要であることは私も認識しております。番組内容などには踏み込むつもりはありません」と配慮を明言しています。

下記資料:放送研究と調査2007年1月号より

日本新聞協会は上記の菅大臣の命令放送の変更に対して、報道・放送の自由を侵す恐れがあるとして懸念を表明しました。NHKの橋本会長は「国際放送においても自主的に放送してきており、今後とも自主自律を堅持し自主的な編集を貫いていく」と述べました。NHKの国内の放送ではそれでよいでしょう。しかし、公費で行っている国際放送で自主自立を殊更に主張することには、私は違和感を感じます。国際放送は視聴者からの受信料で運営しているわけではありません。政府の予算にて運営しているのですから、政府の意向に慮った命令放送であって然りなのではないでしょうか。また、その命令の意図として大臣談話を表明しているのですから決して不透明な運用ではありません。民放では番組制作においてスパンサードされることで業を為しています。いわば、民放ではすべてが命令放送のようなものです。そして、民放の番組制作や編集においてはスポンサーの意向が強く反映されています。一方、国際放送は受信料による運営ではありません。国民の代表より舵取りを行っている政府の予算によって放送されるのですから、政府が方針や指針や要請放送(命令放送)の目的を明らかにすることは重要であろうし、至極当たり前のことだと思うのは私だけでしょうか。そして、北朝鮮問題にかかわる要請放送が報道機関の自主性を阻害するとは私には到底思えないのです。人命に係る国家間の問題を政府が費用負担して要請放送することの何が報道や放送の自由を侵すのでしょうか。政府のおいては国益優先、国民の権利が最優先であることを前提として措置していることは明らかだと思います。菅大臣が憲法に配慮した上での拉致問題に関する取り組みを行っていること対して異論反論を唱えること、そのことこそに“異論したい”と思いました。

最後までご拝読ありがとうございました。

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