日本学術会議を民営化する議論について(参議院浜田聡議員の法制局への相談に対する回答)

再びコロナの感染が広がりを見せる今日この頃です。また経済が止まってしまわないか心配です。結婚式や観光の仕事が少なくなりオフィスや教職員室で過ごす時間がほとんどになりました。よって、私の体型は急速に成長しており止まる気配がございません。このままではイソップ童話の「カエルと牛」に出てくるカエルのようにおなかが膨らみすぎて破裂しちゃうのではないかと密かに心配している私でございます。

さて、参議院浜田聡議員が参議院法制局に日本学術会議の民営化に関する相談をして回答を頂戴しましたので僭越ではございますが浜田議員に代わりここにご報告いたします。

下線部分を加筆しましたことをご了承ください。

参議院法制局からの回答

日本学術会議を民営化する法案に関するご相談について

1 ご相談の中で挙げておられるように、日本学術会議の組織形態に関しては、以下のような見解が示されているところであり、民営化をしようとする場合には、これらとの関係を整理する必要がある。

○ H15 総合科学技術会議「日本学術会議の在り方について」

・ 科学者コミュニティの意見を集約して政府に対し提言を行うなどの役割を考えると、日本学術会議を全くの民間の組織とすることも適切でなく、その設置については法律等により国家的な根拠を置き、国の予算措置により財政基盤 を確保すべきである。

・ 最終的な理想像としては、国家的な設置根拠と財政基盤の保証を受けた独立の法人とすることが望ましい方向であると考えられる。

・ 一方で、日本学術会議の設置形態の検討に当たっては、我が国社会や科学者コミュニティの状況等に照らして、直ちに法人とすることが適切かどうか、また、法人化するとすればどのような設置形態の法人とすることが適切であるか、なお慎重に検討する必要がある。なお、この点については、我が国の社会における、学術界からの提言の受け止め方や寄附に関する税制等の状況などに十分留意すべきであるとの指摘があった。

2005年の時点では内閣府は日本学術会議の法人化について慎重に検討する必要があるとしています。これは「検討の必要」を意味しておらず「検討すること事態を慎重に」という否定的な意味合いが伺えます。実際には法人化に至らず現在は内閣総理大臣の所轄であり内閣府の特別機関という位置付けにあります。運営費用は全額国庫負担になっています。

○ H27日本学術会議の新たな展望を考える有識者会議「日本学術会議の今後の展望について」

・ 日本学術会議は、政府から独立性を保ちつつ、その見解が、政府や社会から一定の重みをもって受け取られるような位置付け、権限をもった組織であることが望ましい。また、日本学術会議の性格が、本質的には事業実施機関ではなく審議機関であることを踏まえると、安定的な運営を行うためには、国の予算措置により財政基盤が確保されることが必要と考えられる。これらの点を考慮すると、国の機関でありつつ法律上独立性が担保されており、かつ、政府に対して勧告を行う権限を有している現在の制度は、日本学術会議に期待される機能に照らして相応しいものであり、これを変える積極的な 理由は見出しにくい。

NHKから国民を守る党は寄付金を受け取っておりません。寄付金を募ってもおりません。第一にNHK受信料制度の改革を目指す党として国民の不合理な受信料負担を正すための活動を国民の寄付によって為そうとすることは受信料負担の軽減を希求する国民の負担にばかり偏る可能性がある為だと考えます。

また、寄付を受け取ることによって寄付をした方々の特定の期待に応える必要に迫られたり、特定に意見を恣意的に排除することに繋がったりすることは独立した政治活動を場合によっては干渉したり障害となったりすることが危惧されるということです。

その為、NHKから国民を守る党は国政政党となることで政治資金の交付を受けて独立した政治活動を維持し遂行しております。NHK問題に関する相談窓口として専門のコールセンターを開設し運営できていることは政党交付金の交付の賜物といえます。併せて、多数の地方議員を生み出すことでそれぞれの地域において各議員が議員報酬を公費として収受することで政治的に独立性を保った活動を行うことが可能となっています。それによってNHK委託会社と各地域にある国民との摩擦を防ぐ予防的活動も行うことが出来るに至っています。

日本学術会議にも同様の考えが当てはまるのではないでしょうか。

日本学術会議は大東亜戦争の終戦間際の時期に日本学術会議法が制定されており、終戦の昭和25年には戦争を目的とする科学の研究には絶対従わない決意を表明しています。

成立当時の状況を鑑みると日本学術会議の使命として日本国の平和的復興と人類社会の福祉への貢献に寄与することとしておりその背景には特殊な政治的環境にあったものと想像します。その時々の政治的、行政的な便宜というものの影響や圧力を受けることなく独自性を保持するという素地が根付いていることは当時の歴史的な背景に基づくことによるものだと考えます。目的に叶わぬ忖度を仕向けられるような状況は最も避けなければなりません。

2 立法の必要性として、主に次の点について政策的な説明が必要となる。

○ 現行の組織形態(内閣府の特別の機関)について具体的にどのような問題点があると考えるか。政府から独立させることで、どのようなメリットがあると考えるか。

○ 行政改革という観点からは、例えば、

・ 日本学術会議の運営に関し外部評価の仕組みの導入

・ (10 億円とされている)予算の減額や会員数の縮減、事務局体制のスリム化等といったことも考え得るのではないか。

3 民営化の内容

(1)ご指摘の“政府方針のアシスト”という観点からは、まずは、上記1の見解や検討状況について政府に確認していくということが考えられるのではないか。

(2)政府からの独立性

民営化の内容について、ご指摘の政府からの独立性”という観点からは、主に次の点に留意して政策決定をする必要がある。

① 政府から完全に独立させる場合

・ 完全独立後の姿(例:一般社団法人・一般財団法人、公益社団法人・公益財団法人)をどのようにイメージするか。

※ 公益法人の場合、公益認定等に関し行政庁の監督が及ぶこととなる一方、 税制上の優遇措置がある。

特殊法人化することは総務省の管理監督下に置かれることとなります。税制上の優遇措置を受ける場合は当然のことと理解します。

・ 政府への勧告機能についてどのように考えるか。

※ 日本学術会議は、法律上政府に勧告することができるとされている。

政府への勧告機能を無くして存在意義の多くは失われると思います。運営資金の問題や法人の議論の前提として政府への勧告機能がありきとすべきです。

●日本学術会議法

第五条 日本学術会議は、左の事項について、政府に勧告することができる。

一 科学の振興及び技術の発達に関する方策

二 科学に関する研究成果の活用に関する方策

三 科学研究者の養成に関する方策

四 科学を行政に反映させる方策

五 科学を産業及び国民生活に浸透させる方策

六 その他日本学術会議の目的の遂行に適当な事項

・ 財政的基盤についてどのように考えるか。

民営化とは一般論として財政基盤の在り方の問題であると思います。会の使命や活動内容に関わらず運営資金の捻出方法によってその素性が明らかになるのだと思います。

② 政府との関係を有するようにする場合

・ 新しい日本学術会議の姿をどのようにイメージするか。

※ 公的な役割を担う法人としては、独立行政法人、特殊法人、認可法人、特別民間法人特別法人ようなものがあり、政策決定の参考とするため、これらについて、総務省等からヒアリングしていただくことも有益と考える。

・ 政府との関係(人事や財政、職務等)をどのようにイメージするか。

・ 政府への勧告機能についてどのように考えるか。

これは民営化を図る目的によって左右する事項です。何のために民営化する必要があるのかを明らかにした上での議論となると思われます。

(3)なお、欧米主要国のアカデミーは、政府から独立した法人格を有する組織であるとされているが、その多くは、法律や勅許等の設置根拠があるようであり、それらについても研究していただくことも有益と考える。

上記、法制局からの回答でした。

下記に主要国のアカデミーを少し調べましたので記しておきます。

アメリカ

米国科学アカデミーは約280億円の運営費のうちの8割が公的資金によって賄われています。ただし、団体の位置づけは民間非営利団体です。政府の助言の依頼に対応しています。会員は旅費等の実費以外は無報酬です。

イギリス

ブリティッシュアカデミー。予算43億円のうち97%が政府からの予算措置。3%が寄付。登録公益団体。人文科学分野で政府への助言を行っている。他に科学分野における登録公益団体として王位協会があり政府予算は55%で残りは寄付によります。王位協会への政府からの直接的な諮問はないが、政府に対して独立且つ権威ある助言を行っている。

フランス

フランス科学アカデミー。政府からは完全に独立している。政府とは関係はない位置付けではあるが運営費の60%は政府から措置されている。政府への助言も行っている。

ドイツ

ドイツ科学・人文科学アカデミー連合。50%が政府、50%が州からの出資。登録組織だが政府からは独立しています。政府への助言は行わず研究の調整や国際対応や研究成果の普及に努める活動を主としています。

上記のように先進各国においてもそれぞれの設立経緯があって一様ではありません。理想的な形態と呼べる根拠もなく機能としては日本と大差が無いように思えます。

では世間では菅総理が一部の会員の任命を拒否したことからそのことの是非が問われています。私は任命権者が政治家である以上は任命の拒否が有り得ることは当然のことだと思っています。日本学術会議が政府から独立した存在であっても政治家は政治的な意図を押し通すだけの存在とは限りません。政治家は国民の代表であるから国民の意思を代表している側面のあるのです。もし、政治家が任命権者であるにも拘わらず任命の可否の判断できないようであれば政府は学術会議に諮問する必要はないのではないでしょうか。その場合は学術会議の勧告や助言は一方通行のものであり政府との双方向的な応答とは言えません。そのような状況であると公金のいたずらな使用となってしまいます。実際、近年は政府から日本学術会議に諮問することはなくなっていました。無くなって久しい状況です。これでは税金の無題遣いに外なりません。日本学術会議の次期会員の選考を以前は各学会からの推薦によって行われていましたが2005年からは現会員による選考によって行われています。それによって日本学術会議は各学会を代表する会員によって構成されることはなくなりました。つまり、各会員は根無し草になっているということです。これでは俯瞰的な総合的な体制作りには至りません。併せて、各省庁が独自の諮問機関を設立していることから日本学術会議の機能を必要とすることがなくなっています。国が支給する科学研究費補助金の審査委員の推薦権も日本学術会議から15年前に剥奪されています。国との関係を築くことなく日本学術会議は機能不全のまま現在に至っていたということなのです。

考えようによっては、そのような状態にありつつも自主的な改革に取り組まずに存在の法的根拠だけを口実にして継続してきた日本学術会議に対して今回は菅総理が直接的に警鐘を鳴らしたという解釈もできるかもしれません。

また、日本学術会議に対する民営化論は15年前にも国会で議論されていましたが、向こう10年間は猶予期間とされ、期限切れの2015年においても政府の意見の表明が無かったことから日本学術会議の不作為な継続が維持されて、更なる機能不全を招いていたと思われます。81年に政府は学術会議の会員を提案のままに「そのまま任命する」と明言したことも日本学術会議の緊張感を無くす要因になったに違いないでしょう。

日本学術会議は各学会を代表することはなくなりましたが、同時に政府の諮問機関でもなくなっていたということだと理解しています。

そのような状況の日本学術会議でありますから、根拠法を維持するか民営化するかという議論にも増して私は廃止を求めることも一考であろうと思います。

このままでは政治的も学術的にも有用になりえず有益にもなりえないと思われます。

真に必要とされて機能する政策提言期間を求めるであれば日本学術会議の民営化ではなく既に設立している各省庁の諮問機関を統合するような組織団体を新たに設立することが適当なのでないかと考えます。

尚、運営費用の多少に関しては議論が必要だと思いますが、予算措置は全額公費で賄うことが然りであろうと思います。日本国において学術に関する政府の諮問機関を支援するような篤志家は少なく、金銭的な支援が広く社会に根付くことは難しいのではないかと思われます。

政府の予算による運営がなされるにあたり任命権など一応の時の政府つまり政治的なのフィルターを通過することは民主主義国家であることからやむを得ないことだと思います。その上での独立性が完全ではないということ反論に対して政治家による世論のフィルターを通したと見なして寛容であるべきではないかと考えます。但し、憲法では学問の自由を保障されています。軍事的研究に反対することがその存在を肯定するとは限りません。それこそが政治的思想の介入とも受け取れるような気もします。

以上、最後までご拝読賜りありがとうございました。

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