幼稚園教諭免許と保育士資格の一本化について(参議院浜田聡議員の法制局への相談に対する回答)

もう11月もあと僅かです。紅葉を見に行こうようと思いつつ時間が過ぎました。都内で紅葉のきれいな所はどこーよー。紅葉を見ると気分が高揚するかな。だったら、紅葉を見る効用がありますね。浜田議員は公用で見に行けるかな。せっかくだから公用車で紅葉を見にいこーよー。紅葉がきれいなところはここーよーって。

さて、参議院浜田聡議員が法案を募集し、その中から幼稚園教諭免許と保育士資格を一本化する法案について参議院法制局に相談して回答を得ましたので下記にご報告いたします。

下線部分は私が加筆致しましたことをご了承ください。

下記画像:東京未来大学より

参議院浜田聡議員の相談内容

保育士資格1本化法案について

★法案概要

新たに幼稚園教諭免許を取得出来ないようにし、保育士資格のみに1本化します。

そして、現在の幼稚園教諭免許の更新は無くします

幼稚園教諭免許のみの者は乳児保育の分野を学校で取得すれば、幼稚園教諭免許を保育士資格に変える事が出来るようにします。

こども園は幼稚園教諭免許と保育士免許の2つの免許が望まれますし、幼稚園は幼稚園教諭しか働けない。

保育園は保育士しか働けないので、人材が限られてきます。

この垣根をとっぱらい、人材不足を補う法案です。

★背景・課題

こども園で働こうとするなら、幼稚園教諭、保育士資格の両方を所持している事が望ましいとされています。

https://hoiku-box.net/useful_cat01/article007/

しかし、保育士資格だけで良いのではないでしょうか?

保育士なら乳児から幼児までカバー出来ます。

それに比べて、幼稚園教諭免許では幼児しかみれず、乳児はみれません。

中途半端な資格だと思います。

そもそも、こども園で働くにあたって2つも免許を取るのが面倒ですし、幼稚園教諭免許は教員免許なのでいちいち更新しないとイケナイのが更に面倒です。

また、保育所では保育士しか働けない、幼稚園では幼稚園教諭しか働けないので、人材が限られてきます。

医師なら医師免許1つだけで色んな病院や診療所で働け、ずっと更新しなくていいのにおかしくないでしょうか?

★法案内容

幼稚園教諭資格は新たに取得する事が出来ない。保育士資格のみとする。

幼稚園教諭免許だけの者は単位を取得する事で保育士資格にする事が出来る。

保育士資格1つあれば幼稚園、保育所、こども園の全てで働けるようにする。

★目的・効果

最近は保育所と幼稚園の統合が進んでおり、こども園が増えてきています。

しかし、人材不足が叫ばれています。

この法案で保育士免許のみ所持している方はこども園で働くにあたって幼稚園教諭免許をとらなくてもすみます。

そして、面倒な幼稚園教諭免許の更新を無くす事で一旦離職された方でも再就職しやすくなります。幼稚園教諭免許のみの方は今まで通り幼児のみ担当出来ますが、乳児保育の分野を学校で取得すれば保育士免許に変える事が出来るようにします。

保育士資格のみにすれば資格取得もスムーズです。

また、保育士資格1つでこども園、幼稚園、保育所の全てで働けるようになれば、人材確保が見込め、就職の選択肢が増えます。

参議院法制局からの回答

「幼稚園教諭免許を取得できないようにし、保育士資格のみに一本化する」法案の検討について

○ 幼稚園は、義務教育及びその後の教育の基礎を培うものとして、幼児を保育し、幼児の健やかな成長のために適当な環境を与えて、その心身の発達を助長することを目的とする「学校」であり(学校教育法(昭和 22 年法律第 26 号) 第1条・第 22 条)、文部科学大臣の定める幼稚園教育要領(平成 29 年文部科 学省告示第 62 号)によって教育等を行うものとされている(同法第 25 条・同 法施行規則(昭和 22 年文部省令第 11 号)第 38 条)。一方で、保育所は、保育を必要とする乳児・幼児を日々保護者の下から通わせて保育を行うことを目的とする「児童福祉施設」とされており(児童福祉法(昭和 22 年法律第 164 号) 第7条第1項・第 39 条第1項)、幼稚園と保育所は、目的や役割・機能等にお いてそれぞれ異なる施設として位置付けられている。

学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)(抄)

第一条 この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。

学校教育法より幼稚園は義務教育です。その教育課程は法に規定されています。教員資格は教育職員検定に合格する必要があります。

児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)(抄)

第七条 この法律で、児童福祉施設とは、助産施設、乳児院、母子生活支援施設、保育所、 幼保連携型認定こども園、児童厚生施設、児童養護施設、障害児入所施設、児童発達支援センター、児童心理治療施設、児童自立支援施設及び児童家庭支援センターとする。

保育所やこども園は児童福祉施設としての位置付けであり教育機関とは一線を画していると考えられます。よって、保育所に教育課程に関する法規定はありません

○ 幼稚園教諭と保育士は、幼稚園と保育所の基本的な目的や役割・機能等の違いを反映し、それぞれに求められる固有の専門性を有している。

下記資料:令和元年10月23日幼児教育の実践の質向上に関する検討会資料より

先に明記したように幼稚園教諭の免許と保育士資格とはその性格が大きく違います。幼稚園教諭は教員としての教職に関する実務と学力を必要とするが、保育に保育士は専門的な知識や技術の習得を持って足るとしていることから両資格が共通すると定義することができる資格とは考えにくいと思います。

⇒ 学校教育を担う幼稚園教諭固有の専門性が担保されていない保育士に幼稚園における教育等を担わせることについては、その合理性等を説明することが困難であるだけでなく、幼稚園の「学校」としての位置付け等についても見直す必要が生じるとの指摘がされ得るのではないか。

幼稚園を学校教育法から除外し義務教育では無くすることは国民の利益とならないと思います。全ての子供が幼稚園教育を受けることが出来得る環境を維持することは絶対条件であると考えます。

下記の通り平成30年2月9日に参議院小川勝也議員より幼稚園教諭及び保育士免許・資格制度の在り方に関する質問主意書が提出され内閣の回答を得ています。

質問 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/196/syuh/s196015.htm

回答 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/196/touh/t196015.htm

政府は職務の内容や職務の対象となる子供の年齢などが異なることからそれぞれの資格を有する必要があるとしています。平成24年に就学前の子供に関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律において、幼稚園の教諭の免許及び保育士の資格について一本化を含めた在り方について検討を加えるとしているが、上記のような政府の指針により具体的な検討は進んでいないものと思われます。

○ なお、令和元年5月1日時点において、幼稚園教諭等のうち幼稚園教諭免許状・保育士資格を併有している者の割合が 85.8%となっている現状を踏まえると幼稚園教諭免許を取得できないようにし、保育士資格のみに一本化するという政策手段は、御政策の目的である乳幼児の保育に当たる者の人材不足の解消に必ずしも資するとは言えないとの指摘もされ得るのではないか。

※ 幼稚園教諭と保育士については、それぞれの免許・資格を同時に取得しやすくするための養成課程の見直しが行われてきたほか、平成27年度から10年間の特例として、既に幼稚園教諭免許状又は保育士資格を有する者による他方の免許又は資格の取得要件が緩和されている。

下記資料:令和元年幼児教育実態調査、文科省より

幼稚園教諭免許の保有者のうちの85.8%が保育士免許を保有しているのであれば法制局のご指摘通り、保育士資格への一本化によって保育士不足の解消には繋がるとは考えづらいということはその通りだと思います。つまり、常勤の幼稚園教諭においては保育士の資格の保有は一般的になりつつあると考えて相違ないと思います。当該資格の一本化の是非と幼稚園教諭の免許保有者の保育士資格の取得とは別問題だと思いますので後述します。特に法案提案者の言う保育士への一本化は義務教育との法的な関りを勘案しましても容易ではないものと思います。

下記資料:幼児教育の現状、令和元年10月23日幼児教育の実践の質向上に関する検討会より

保育士に対して幼稚園免許取得の特例を上記のように設けています。通常は83単位を必要とする大学等における単位の取得が3年の勤務経験をもって8単位とされており取得の促進が74%にまで進んでいます。

下記資料:幼児教育の現状、令和元年10月23日幼児教育の実践の質向上に関する検討会より

同様に幼稚園教諭の保育士資格取得の特例に関しても8単位の取得と3年間の実務経験のよって通常は68単位の取得と筆記試験や実技試験が必要であるところを免除しています。

それにより、幼稚園教諭の保育士資格の保有率は85%以上となっています。

これら双方の免許と資格は認定こども園制度施行から10年間の特例措置となっています。


保育士資格一本化法案に関するご相談について(認定こども園関係)

認定こども園の法的性格・機能について認定こども園は、教育と保育を一体的に行う施設であり、幼稚園と保育所の両方の機能を併せ持っている。

下記資料:内閣府、令和元年6月、子供・子育て支援新制度についてより

幼稚園と保育所の両方の機能を有していても3歳以下は保育士資格が必要です。三歳以上に関しても幼稚園教諭の免許と保育士資格の両方の保有が望ましいとしています。

2 認定こども園の職員に求められる専門性について幼保連携型認定こども園については幼稚園教諭免許と保育士資格の併有義務があり、それ以外の類型の認定こども園についても両免許・資格の併有が望ましいとされているのは、認定こども園の法的性格・機能を踏まえれば、その職員について教育と保育の双方についての専門性が求められることは当然であり、極めて合理的なものと思われる。保育士であれば乳児から幼児までカバーできるとの認識は、認定こども園における「保育」の機能にだけ着目しているものであり、的を射たものではないように思われ、また、特に幼保連携型と幼稚園型については、学校の性格を有していることから、職員が幼稚園教諭としての知識や技能を有することは必須であるように思われる。 認定こども園において、保育士資格のみを有し、幼稚園教諭として求められる知識や技能を習得していない者だけが、保育だけでなく満3歳以上の子ども(幼児) の教育にも従事するような制度とすることは、認定こども園の存在意義を失わせることになるのではないか。

法制局の解釈としては保育士だけが配置されたこども園があった場合は学校教育としての機能が疎かになるので保育園と幼稚園の融合として負に働くのでないかという指摘だと理解しました。

3 認定こども園における人材不足との認識(立法事実)について認定こども園における人材不足という認識についても、それが立法事実たり得るのかについて十分な調査を要するように思われる。

・幼保連携型認定こども園における保育教諭については、令和6年度末まで、幼稚園教諭免許又は保育士資格のどちらか一方を有していれば保育教諭となることができる経過措置が講ぜられている。 現状では、幼保連携型以外の認定こども園では、保育士資格を有する者も職員となることが可能である。議員の問題意識が、幼稚園教諭免許及び保育士資格を併有する者の不足という点にあるのであれば、保育士資格に一本化し保育士資格のみを有する者によって認定こども園の人材を確保するという政策は、問題意識とは結び付かないのではないか。 なお、現在、保育士に対する幼稚園教諭免許の要件を緩和し、併有を促進する特 例措置が講ぜられているところであり、その一層の推進を図るべきではないか。

保育士の幼稚園教諭の資格保有率は74%に至っており、人材不足の原因が免許と資格に関わる制度の問題だと指摘するには及ばないという法制局の指摘は妥当なものだと思います。

4 資格の一本化について幼稚園・保育所・認定こども園の各職員に共通する資格の創設(一本化)ということであれば、認定こども園の立場からは、それは「保育士」ではなく、それとは 別の「教育と保育の双方の、専門的な能力を有する資格」ということになろうかと 思われる。しかし、それは、幼稚園又は保育所で勤務しようとする者にとっては、過剰な能力の習得を要求されることとなり、その導入は難しいのではなかろうか。

どちらかの資格に一本化するのならば共有する知識や技能以外について一本化した資格の新たな教習範囲となり、習得に係る負担が過度になるという法制局の指摘はその通りであり、双方の必要とする履修単位を単純に合計すると1種免許が192単位、2種が130単位となります。それは明らかに過度な要件だと思われます。

上記の法制局のご指摘も踏まえて考えますと、幼稚園教諭の免許を保育士資格に一本化することには私は賛成しかねます。認定こども園の創設によって10年という次元的な要件の緩和措置によって保育士の幼稚園教諭の免許保有者が74%に、幼稚園教諭の保育士の資格保有者が85%にも上っています。つまり、双方の取得要件の特例措置の効果は相当に得られていると言っても過言ではないと思います。よって、免許や資格の違いや保有状況が幼稚園や保育園やこども園の運営現場における人材不足を招いていることの法的な起因として認めることは正確ではないと言えます。

また、幼稚園教育が義務教育である以上、保育所やこども園とは法的な位置づけも教育的要求も違います。幼稚園は学校教育法に定められた「学校」であり文部科学大臣が定める教育要領に沿って教育を行う必要があります。一方、保育所は児童福祉法に定める福祉施設であり保育を行うことを目的としています。そして、児童福祉法は厚生労働省の管轄です。それぞれに目的が違っていますし、根拠する法律も違います。特に保育士の資格に幼稚園教諭の免許を一本化すると国家としての義務教育の根幹を見直す議論が必要となるのではないでしょうか。幼稚園が「学校」で無くなっても良いと考える国民は多数ではないと想像します。

こども園は両方の機能を有していることから幼保一体とする施設の基礎形式と考えられます。こども園によって双方の不足を補ったことも事実だと思います。なにより、こども園ができたことで幼稚園教諭と保育士の双方保有が飛躍的に進んでいる状況にあります。内閣府、厚生労働省、文部科学省の3省の認可・運営基準であることも大きな進展と言えると思います。

保育や幼児教育の現場で人材不足という事実があるとして、その問題解決を図る方法としては助成による待遇改善や介護福祉士との資格の連動など福祉分野全体の労働環境や待遇措置の改善を図っていくことも一考ではないでしょうか。

また、幼児教育と保育に関して文科省と厚労省の二重行政があるとしたらまずはその解消から取り組む必要があると思います。

以上、最後までご拝読賜りありがとうございました。

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