質問主意書に関する国会法改正案について(参議院浜田聡議員の法制局への相談に対する回答)

今年も残り僅か三週間ですね。街を行き交う人が戻ってきたと思ったらコロナも同時に戻ってきてしまったのが皮肉です。冬本番で体も心もお財布も寒くてコールド。忘年会はもうね~んかい。

さて、参議院浜田聡議員が質問主意書に関する国会法改正について参議院法制局に相談して回答を頂戴しましたので下記の通りご報告いたします。

下線部分を加筆しましたことをご了承ください。

画像:衆議院事務局より

先だって前提となる条項を下記に示します。

○国会法(昭和22年法律第79号)

第八章 質問

第七十四条 各議院の議員が、内閣に質問しようとするときは、議長の承認を要する。

② 質問は、簡明な主意書を作り、これを議長に提出しなければならない。

③ 議長の承認しなかつた質問について、その議員から異議を申し立てたときは、議長は、討論を用いないで、議院に諮らなければならない。

④ 議長又は議院の承認しなかつた質問について、その議員から要求があつたときは、議長は、その主意書を会議録に掲載する。

第七十五条 議長又は議院の承認した質問については、議長がその主意書を内閣に転送する。

② 内閣は、質問主意書を受け取った日から七日以内に答弁をしなければならない。その期間内に答弁をすることができないときは、その理由及び答弁をすることができる期限を明示することを要する。

第七十六条 質問が、緊急を要するときは、議院の議決により口頭で質問することができる。

○内閣法(昭和22年法律第5号)

第一条 内閣は、国民主権の理念にのっとり、日本国憲法第七十三条その他日本国憲法に定める職権を行う。

2 内閣は、行政権の行使について、全国民を代表する議員からなる国会に対し連帯して責任を負う。

第四条 内閣がその職権を行うのは、閣議によるものとする。

② 閣議は、内閣総理大臣がこれを主宰する。この場合において、内閣総理大臣は、内閣の重要政策に関する基本的な方針その他の案件を発議することができる。

③ 各大臣は、案件の如何を問わず、内閣総理大臣に提出して、閣議を求めることができる。

○参議院規則

第九章 質問

第百五十三条 議長は、議院又は議長の承認した質問主意書及びこれに対する内閣の答弁書について、電磁的記録の提供その他の適当な方法により、これを各議員に提供する。

第百五十四条 内閣は、質問に対して、口頭で答弁することができる。

② 前項の答弁に対しては、質問者は、口頭で、更に質問することができる。

第百五十五条 国会法第七十四条第四項により質問主意書を会議録に掲載する場合において、議長は、その主意書が簡明でないと認めたときは、これを簡明なものに改めさせることができる。

上記を前提としまして


浜田議員の提案

国会法第七十五条に次の二項を加える。

3 質問主意書内に答弁者が内閣でなくともよいと記された場合、政府は、前項の規定に関わらず、答弁者を内閣ではなく国務大臣とすることができる。

4 質問主意書内に答弁期日を延長してもよいと記された場合、第二項の規定に関わらず、質問主意書内に延長してもよいと記された期日だけ答弁期日が延長されたものとみなす。

参議院法制局の回答

○ 国会法第74条第1項では「各議院の議員が、内閣に質問しようとするときは」と規定されており、現行の質問主意書の制度は、行政権の行使について国会に対し連帯して責任を負う「内閣」に対する質問と位置付けられている。また、合議体である内閣の職権の行使については、閣議によることとされている(内閣法第4条第1項)。議員個人の意思のみにより閣議によらない国務大臣限りの答弁を許容することについては、現行制度の中に整合性をもって組み込むことが可能かどうか検討する必要があるのではないか。

第74条の内閣に対しての質問する制度であることから第75条に項目を追加することよりも第74条において「各議院の議員が、内閣および国務大臣に質問しようとするときは」に変更することがより明確な案であろうと思います。

○ 仮に、各大臣が答弁できることとする質問制度を創設する場合には、議院内閣制における当該質問制度の位置付け(なお、現行の内閣に対する質問制度は、議院内閣制、国政調査権等から導かれる国会の行政監督権の一態様であると解されている。)、議長の関与の在り方(現行では、議長の承認を要し、議長が内閣に転送することとされている。)、現行の内閣に対する質問制度との関係などについて検討する必要があるのではないか。

とはいうものの国務大臣も内閣の一員であり、各国務大臣が内閣を構成する一員としての責務を負っていることは明らかです。内閣が総理大臣の下で一体となって施策を行うとすれば、内閣及び国務大臣が共通認識やその責務も同様に負うものだと解しても違和感はないと思います。よって、浜田議員の提案する国務大臣による質問主意書に対する答弁を良しとすることも肯定されて良いのではないでしょうか。

○ 答弁期日の延長については、国会法第75条第2項後段において、期間内に答弁をすることができないときは、その理由及び答弁をすることができる期限を明示することにより答弁期日を延長することが可能であり、質問議員のイニシアチブによる答弁期限の延長の仕組みを新たに設ける必要性を十分に説明し得るか。また、質問主意書内に記された延長された答弁期日にも間に合わない場合に、内閣が更に答弁期日を延長できるのかなどについても検討する必要があるのではないか。

浜田議員が提案する質問を提出する議員による答弁期日の延長する申し出は、不誠実答弁を回避するという明白な事情が伺えます。「質問の趣旨が明らかではない」とか「お答えすることは困難」だとか「お答えすることを差し控える」とか「お答えする立場にない」とかいう回答が多用されている現状を問題提起し、解決を図る方策のひとつとしての提案だと思います。回答者の過度な負担を軽減し、回答の品質を向上しようとすることは理に適う提案でもあります。


下記に簡単に所感を記します。

質問主意書という制度は少数会派にとって実に意義あるものです。本会議や委員会といった国会活動の場で機会に限りがある少数会派や無所属議員の政治活動を補うものでユーティリティな制度です。

半面、質問主意書の制度を利用して濫用することは厳に慎まなければなりません。2009年の第171回国会では鈴木宗男議員が452本の質問主意書を提出しています。質問主意書は閣議決定を伴う重要な文書です。内閣の責任の下で答弁する正式見解であり、正式な情報提供なのです。それにも関わらず、凡そ半年間の会期中において452本もの質問主意書を出すことが正当な議員活動とは私には思えませんし、鈴木宗男氏が自分に投票してぃれた有権者の付託に応じた行為を行ったのだとも思えません。国民はこのような行為を恐らく知らないだけであり、批判や非難に及んでいないだけなのではと思います。質問主意書が提出されると、その内容に応じて該当する省庁の国会対応の担当者や担当部署の者が他の仕事にさきがけて質問主意書の答弁書の作成に当たらないといけなくなります。法律では7日以内に閣議決定することとされていますが、閣議は火曜日と金曜日にしか開かれません。しかも、7日以内には土日も含まれています。各省庁にはそれぞれの繁忙期があると思われますが、この質問主意書が届くと自身の通常業務に優先して対応せねばならず、過大に負担となりかねません。時には省庁を跨いだ協議が必要であったり、法制局との審議を要したりすることもあります。複雑かつ大変な作業の上で7日以内の閣議決定に間に合わせることは並大抵のことではありません。土日と閣議当日を除くと実質4日間しか猶予はありません。そもそも、閣僚にとって質問主意書は予測できるものでもないことから突発的に業務に割り込む性質のものです。突発的であり強制的な業務を強いることを提出する側の国会議員も認識しなければなりません。質問内容の逼迫性についても考慮する必要があるでしょう。それを慮って浜田議員は「提出議員による回答期限の延長を提案する」と制度の如何を図っているのだと思います。短い時間制限のままだと答弁の内容が劣化するのはやむを得ないことかもしれません。「ご指摘の意味が明らかではない」「お答えすることはできない」という回答が為されることは内閣の正式な回答としてふさわしいとは決して思えませんが、その背景に質問主意書の乱発による恒常的かつ強制的な残業が発生していることも想定しないといけないのではないでしょうか。政治活動の実績を問うにあたり質問主意書の提出本数が参考にされることは不条理であろうと思います。質問主意書はその議員の公約やライフワークや専門分野、逼迫性のある問題など一定の政治的な理解が得られるものに照準を絞ることもモラルとして配慮するべきなのではないかと思います。今年の11月に京都南丹市で警察署に無職の女性が無言電話を137回かけて逮捕されるという事件もありました。千葉県浦安市では無職の男性が56回にわたり“税金泥棒”などと浦安署に電話をかけて偽計業務妨害で逮捕されています。半年間で452本の質問主意書を提出することが正義だと私には思えません。法的に許されている行為なのかもしれませんが社会通念上では評価されることはないであろうと思います。何より、国政調査権や行政監督権の行使だと思える範疇をゆうに越えている行為なのではないでしょうか。社会道徳を逸脱する行為と受け取られてもしようがないとまで思えてきます。そのような事態を発生させないためには不偏不党である衆参議長の権限でもって「質問主意書の乱発」という権力の乱用を対して歯止めをかける仕組みを検討することも必要ではないかと考えます。以上、質問主意書に思う問題点は、浜田議員の仰る回答期限の問題と回答者の問題、それに加えて提出の乱発の防止策を考えるべきではないかと思った次第です。

最後までご拝読頂きありがとうございました。

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