検挙数と警察官数と交番数の増減について(参議院浜田聡議員の調査室への調査依頼に対する回答)
今夜はクリスマスイブですね。今年も一人ですごクリスマス。今年もがっクリスマス。苦労スマス。この時期のイチゴはとっても高額だから”いいちこ”で我慢します。
さて、先日、公開済みの「職質と警察手帳の提示について」というご報告の中で
「余談ではありますが、2003年頃から犯罪は年々減少して2019年と比較すると6割以上(交通事故を除く)も減少しています。にも関わらず警察官の数はこの2019年までに17000人も増加しています。警察官の増加で防犯防止効果が出たということでしょうか。それにしては、この15年で交番や駐在所は約1500か所も減少しています。その因果関係は定かではないのですが、検証を行う必要があるように思います。昨今は人口の減少が進んでいます。特に若年層は特にです。犯罪の減少と人口の減少に則して組織や予算の見直しを行う時期に差し掛かっているのではないでしょうか。」
という記述を致しました。それに関しまして浜田議員が調査室に調査依頼をして頂き回答を頂戴致しましたので下記にご報告させていただきます。
下線部分は私にて加筆させて頂きしましたことをご了承下さい。
浜田聡議員の調査依頼の内容
警察官の増加に関する調査をお願いします。
1.過去20年間ほどの犯罪数(交通事故除く)の増減を教えてほしいです。
2.過去20年間ほどの警察官の数の増減を教えてほしいです。
3.過去20年間ほどの交番や駐在所の数の増減を教えてほしいです。
4.問2.で増加している場合、警察庁等による警察官数増加の理由表明等があれば教えてほしいです。
参議院調査室からの回答
1について(交通事故を除く検挙数)
資料:参議院調査室作成
上記では犯罪の認知件数は平成14年の2853739件がピークですが、令和元年では748559件となり74%も減少しています。犯罪の検挙数のピークは平成17年に667620件となっています。その後は徐々に減少し令和元年においては294206件となりました。凡そ56%の減少です。検挙率を見ますと一番低かったのが平成13年の19.8%でしたが令和元年には39.3%となりほぼ2倍増となっています。
認知件数とは犯罪が発生した件数のことを意味します。検挙件数とは逮捕および任意取り調べを含める件数を言います。ピーク時(平成16年)には約66万件を検挙していました。令和元年の犯罪認知件数は約75万件ですので警察が同様の仕事のクオリティーと活動量を維持していたら令和元年の検挙率は約88%になっているはずと考えられるのではないでしょうか。ところが、実際にはその半分にも満たない39%に留まっているのです。検挙率に関して一概に単純な計算式に当てはめることは適当ではないことは承知しています。しかしながら、理想とする犯罪の減少と検挙率の向上との相関関係とはかけ離れた結果であることは間違いのないことだと思います。
2、3について(交番・駐在所数・警察官定員)
資料:参議院調査室作成
平成13年と令和2年と比較して交番は336か所、駐在所は1859か所も減少しています。逆に警察官の数は26615人も増加しています。交番と駐在所が2195か所も減少しているのですからそこに勤務していた人員は所属の警察署での勤務に変更になったということでしょうか。さらに、26615人もの増員が為されているのですが、その配置はいったいどのようになっているのでしょうか。現存している12505か所の交番や駐在所に配置する人員を大幅に増やしたのでしょうか。もしくは、自動車による警邏などに切り替えてきたのでしょうか。交番・駐在所の減少と警察官の増員は理想的な相関関係から反比例していると思われます。
4について(警察官増員について他)
資料:平成30年度警察白書より
政府は平成14年に犯罪認知件数が285万件に達したことを端緒に治安情勢に危機を抱き、治安改善の為の基盤整備を進めました。それが上記の総合的な犯罪対策です。平成14年から平成19年にかけては複雑化かつ多様化する警察事象に対処するためとして約2万人の警察官の増員を行いました。上記のような警察と地方公共団体と地域住民による総合的な犯罪対策が功を奏して犯罪の発生はピークの三分の一にも満たない件数となっています。警察では特に多かった犯罪種別に着目して集中して取り組んでいます。例えば、自販機荒らしや空き巣、コンビニ強盗などの防犯に注力し結果を残しています。地方公共団体では安全安心なまちづくり推進要綱を制定し犯罪防止に配慮した環境設計を行うこととしました。そして、民間事業者は防犯カメラの設置や防犯ボランティア活動やCSR活動など積極的な取り組みが進みました。三位一体の取り組みは犯罪の発生を大いに抑制する結果をもたらしました。並行して、法律の整備も行われてきました。金融機関等による顧客の本人確認の強化、携帯電話の本人確認の強化、出会い系サイトの規制、窃盗罪に関して罰金刑の追加、不正アクセスの禁止、ストーカー規制法、DV規制、リベンジポルノ規制など、中でも平成16年に施行された特殊開錠用具(ピッキング用具)の所持の禁止する法律は大いに効果を発揮し、平成16年には8286件も発生していたが平成29年には333件まで大幅減少して空き巣犯罪の未然の防止に大いに寄与しました。
交番ついては平成16年当初は警察官が不在となることが多い「空き交番」が1925か所ありました。交番は三交代制となっており所轄で6人以上、警視庁では四交代制で8人以上を配置することになっています。空き交番とは犯罪の発生が多く事件事故等の対応の為に留守となることが多い交番を指しています。また、例外的に警察事象が少ない交番については配置人員を5人以下となっています。この例外的な交番においても空き交番となる時間が生じる可能性があります。これら空き交番となる可能性が高い交番を改善する為に平成13年から18年にかけて6000人以上の警察官を交番機能強化の為の要員として位置付けています。併せて警察官の身分を有してはいませんが、非常勤の職員として交番相談員を平成18年までに5200人配置しています。交番相談員は警察官の退職者が多く経験や知識を有しており、地理案内、被害届の代書、拾得届の受理、事件・事故の警察官への連絡などを行っています。このように、交番や駐在所の数は減少しているにも関わらず警察官と相談員の合計1万人以上の要員が交番機能の強化に当たっているということになります。その結果、平成19年には空き交番は完全に解消されるに至っています。
さて、上記のように犯罪発生件数はこの20年間で劇的に減少しています。交番や駐在所も減少しています。それに比例して警察官も減少していると思ったら逆に増えていました。警察官を増やすことで防犯環境が改善されて犯罪が減少したということかもしれません。ただ、警察官を26000人以上増員することが犯罪抑止の環境整備にあたるのだとすればそれは効率的ではないと思います。犯罪を抑止することは犯罪を検挙することを並行して行わないといけないと思います。犯罪数が減ったので検挙数も減るというような一義的な状態になってはいけないはずです。犯罪は劇的に減っても警察官は減っていないのだから検挙率は劇的に上がるのではないかと考えるのも一義的な考えかもしれません。ですが、国民感情として犯罪数が四分の一になっているにも関わらず警察官の人数が増えていくというのは理解しがたいのも事実です。このままでは警察組織の肥大化が益々進むのではと危惧されても仕方がないのかもしれません。
政府が主導してきた「総合的な犯罪対策」は効果的で良い結果に繋がったと思います。これからの課題は現状の犯罪の減少傾向を維持しつつ、警察組織のスリム化に転じる時期に差し掛かっているのではないでしょうか。
また、各地の公安委員会は警察の民主的運営と政治的中立を確保する為に設置されていますが、警察組織やその活動を俯瞰的に監察し指示できているのかどうかを調査することが必要だと思います。国民が直接警察を監視する制度はなく、公安委員会に苦情を申し出るしかありません。つまり、公安委員会が形骸化すると強制権限を有する警察の活動範囲や人権に対抗する局面が増大しても歯止めがかからないということになりかねません。
例えば、警察は逮捕した全容疑者の顔のデータベース化を進めています。この顔認証データベースと民間事業者(東京メトロ、JR東日本、都営地下鉄)の非常時映像伝送システムとが連動し、警察がリアルタイムで一元監視できるようになっています。これは東京オリンピックのテロ対策の一環として用意されたもので今後の用途は未定です。また、JR東海とJR東日本の駅や車両内の防犯カメラも警察と連携済みです。今後は駅の改札も顔認証が導入される可能性があり大阪メトロは既に実験を行っています。そのほかにも自動販売機やコンビニやビルやマンションの入退管理で導入しているところがあります。もしこれらの顔認証データが警察のシステムと連行することあると日本は世界でも類を見ないと巨大な顔認証データ網を確立することになります。そして、もし、そのデータにマイナンバーシステムを紐付けると巨大な国家による国民管理システムが構築されることになります。
警察は治安維持活動の柱を防犯に傾けている傾向にあり未然防ぐ活動が主導になりつつあります。もちろん、顔認証データ網の構築も防犯を前提して行っているものと思います。この顔認証システムを中国やインドは政府主導で行っていますが、日本やアメリカは民間の協力を仰ぐ形で進めています。日本においてはそのような状況や実態を国民にとって見えにくくなっていると思います。市民が直接警察を監視するシステムや方法、民主的コントロールの手段を今一度考える必要があるのではないでしょうか。そして、公安委員会の機能や存在意義についても見直す必要があるのではないでしょうか。
最後に犯罪の抑止や環境整備の重要性は理解しましたが、同時に発生した犯罪の検挙はそれにも増して重要なことだと思います。検挙率が39%ということは61%の犯罪が見逃されているということになります。それは軽微な犯罪だから見逃されるのでしょうか。それとも高度な犯罪だから捜査に限界があったからでしょうか。犯罪を認知しているにも関わらずその半数以上は罪に問われていないのです。犯罪を犯して刑法に問われずにいる、刑罰が及ばない、そのような状況がある限りは完全なる法治体制ではありません。物理的に100%の検挙は不可能だとしてもそれを目指す意義と必要性を今一度意識づけて欲しいと思います。
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