衆院選比例制度を11ブロックから全国比例への変更について(参議院浜田聡議員の法制局への相談に対する回答)

早いもので今年も1月の中旬となりました。残念なことにコロナ禍が再び拡大して緊急事態宣言が各地に出されてしまいました。実に悩ましいことです。私のお財布も緊急事態宣言を出さないといけないようです。身もココロもお財布も寒くて震える今日この頃でございます。

さて、参議院浜田聡議員が参議院法制局に下記の件を相談して回答を頂戴しましたので僭越ながら私よりご報告させていただきます。

下線部分を加筆しましたことをご了承下さい。

参議院浜田聡議員の相談

衆議院選挙の比例代表制度を11ブロックから全国比例へ変更する制度にしてはどうか。

画像:総務省HPより

参議院法制局の回答

衆議院議員選挙の比例代表制度11ブロックから全国比例に変更することは、政策としては採り得るものと考えられます。ただ、「ブロックによって1人当選するための必要得票率が違うことから、当選難易度が違います。」、「地域によって当選に必要な難易度が違うのはおかしい」との指摘については、現行の制度のように、選挙区(ブロック)を設けてブロックごとの人口に比例して定数を配分すると、多くの定数を配分されたブロックほど当選に必要な得票「率」が低くなるのは必然的なことであり、それを「当選難易度」と捉えるのは適当ではないのではないでしょうか。 上記の指摘によると、およそ選挙区を設ける制度が採り得ないこととなるため、制度を変更する理由として、上記の指摘のほかにどのような説明が考えられるかについて、改めて検討を要するものと考えられます。

仮に、衆議院議員選挙の比例代表制度を11ブロックから全国比例に変更する場合には、以下のような点についても検討する必要があります。

・ 衆議院議員の選挙制度が、参議院議員の選挙制度(全国比例+選挙区)に今まで以上に近似することとなるが、二院制の趣旨に照らして適当か。

衆議院の選挙制度が参議院に酷似することは私も適当ではないと思います。選挙時期のみならず、より的確に民意を反映させる為には衆参の選挙制度に違いを設けることは有効だと思います。

・ 衆議院議員選挙は、民意集約・政権選択の場としての性格があるとされるところ、現在の衆議院議員選挙の比例代表の定数を維持したまま、単に全国比例に変更すると、当選人の少ない政党が発生するおそれがあり、このような衆議院議員選挙の性格に相いれないのではないか。

民意の集約に関しては衆参議員選挙区の別は関係ないことのように思いますが、衆議院選挙については政権選択選挙であることはその通りです。現行の比例定数のままでブロック制を外すと小さな政党の当選人が少なくなるというのはどういう根拠かわかりづらいです。ミニ政党にとっては全国的に票を集約することで1議席を狙うことも可能となり得ると思います。

・ 現行制度上、小選挙区との重複立候補が認められているため、1つの政党の名簿登載者が300名を超えるようなケースも想定されるが、そのような名簿で有権者が適切な判断をすることができるかとの指摘を受けるのではないか。

各政党の比例代表の名簿登載者の個々人に対する有権者の評価は衆議院の選挙制度と関係のないものと考えます。参議院の比例代表と違って衆議院では比例候補者に対する個人名での投票は出来ないからです。

さて、衆参の選挙制度の在り方の学究的に述べることは出来ませんが私的な意見を示します。衆議院と参議院では国政上の機能や役割に違いが存在することに伴って選挙制度においても違いがあっても然りだと思います。そもそも論として衆議院選挙に比例区の選挙制度は必要なのでしょうか。現行の衆院の選挙制度において、選挙区では当選者は1人でなければなりません。 しかし、比例区と重複立候補することで選挙区にて落選した候補者(2位以降)が比例によって当選するということが起こり得ます。選挙区で1位が当選し、同じ選挙区で(2位ではなく)4位であった落選者が比例区で当選するという珍事も起きてしまいます。それは矛盾であり国民の民意が反映されているとは言い難いのではないでしょうか。

多数決である小選挙区と得票率に比例する比例区のちょうど中間あたりに得票率と議席獲得率の中間点があるとされます。その均衡を図るには小選挙区と比例区の当選者の割合(配分)も重要とされるはずです。

小選挙区と比例区の並立制の選挙制度の場合は小政党にも国政参画の可能性を見出す(残す)というメリットがあります。共産党が望むような小選挙区を廃止して比例区だけの選挙にすると小政党の乱立が予測され政治の安定性を欠く結果となることも考えられます。ドイツでは日本と同様に小選挙区と比例区との並立制をとっています。ドイツの比例代表制では日本と違い5%以上の得票ないし3選挙区以上での当選というハードルを越えない限り議席は分配されません。いわゆる阻止条項といわれるナチス対策です。スウェーデンの比例制度では得票率が全国で4%、対象選挙区で12%未満の政党には議席が割り当てられません。また、ハンガリーでは小選挙区176席、比例区152席と拮抗したバランスです。世界的には多数性選挙が91か国、比例代表制が72か国、並立制が30か国となっています。

比例区を全国区とすることは少数政党への好機ではありますが大衆扇動のリスクもあるということなのでしょうか。それに応じた対策をする国があるということです。

いずれにせよ、参議院選挙において選挙区と比例区の並立制で重複立候補がない制度が運用されていることから、衆議院においては独自の選挙制度であることが良いと思っています。衆議院の比例区の選挙制度については候補者の選択が出来ません。衆議院でも比例区の選挙制度を維持するのであれば、参議院のように非拘束名簿式のように政党だけでなく候補者も選択できる制度を検討することも一案だと思います。そして、全国の得票率と議席率を近づけるために議席配分は大きな単位で行う必要があるとは思いますが、比例名簿に関しては一定の地域ごとに分けることで候補者の顔が見える選挙になり易いのではないかと思います。そうした多段階式選挙に類似した制度はオーストラリアやオーストリアで既に採用されています。余談ですがオーストラリアでは「義務投票制」で選挙に行かないと罰金20AUS(約1750円)の罰金を課せられます。

さて、現行の衆議院選挙を変更するのであれば中選挙区制度に戻すというのはどうでしょうか。中選挙区はお金がかかる選挙制度で政治家の不正が起こりやすいということから小選挙区制度に変更したのではなかったのでしょうか。小選挙区は本当にお金のかからない選挙制度なのでしょうか。政治家の政治資金パーティーは小選挙区になってから逆に激増していると言われています。結局、政治家にとって小選挙区は一人しか当選できない為に細かな政治活動と選挙区内での支持基盤を盤石なものにするために中選挙区の時よりも結局のところ資金が必要となってしまっているのではないでしょうか。併せて、政治家の金権体質を脱却するには選挙制度だけではなく政治資金規正法の運用の見直しを図るなど視点を変えることも必要であろうと考えます。選挙制度の改革で政治家の金権体質を変えたり、汚職を無くすることは難しかったということであろうと思います。

最後までご拝読賜りありがとうございました。


参考

よく分かるドイツ型小選挙区比例代表併用制の仕組み

https://globalethics.wordpress.com/2017/07/10/%e3%82%88%e3%81%8f%e5%88%86%e3%81%8b%e3%82%8b%e3%83%89%e3%82%a4%e3%83%84%e5%9e%8b%e5%b0%8f%e9%81%b8%e6%8c%99%e5%8c%ba%e6%af%94%e4%be%8b%e4%bb%a3%e8%a1%a8%e4%bd%b5%e7%94%a8%e5%88%b6%e3%81%ae%e4%bb%95/

スウェーデンの選挙制度 田中久雄

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jalps/56/1/56_157/_pdf/-char/ja

「世界で最も完璧に近い投票制度」オーストラリアの難解すぎる選挙

https://withnews.jp/article/f0171016001qq000000000000000W03510101qq000016047A

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