仮想通貨による収入に対する税制について(参議院浜田聡議員のお手伝い)

「将来の夢はプロ野球選手になることです」byまさひこ(49歳)

今日は4月1日です。エイプリルフールに惑わされず皆さん今日も頑張りましょう。

さて、昨日は参議院浜田聡議員のお手伝いに上がり仮想通貨による収入の税制について調べてみました。

2017年頃から仮想通貨が話題に上ることも多くなり、ビットコインを中心にその価格が高騰しています。大手の家電量販店でも取り扱うようになり、その存在は徐々に身近になりつつあります。仮想通貨は相場の上下が極端に動くことがあり、大きな収益を生むこともあれば、逆に一夜にして激しく価格が下落することもあります。

下記:ビットフライヤーより、ビットコインチャート12か月

2021年の年明けには1ビットコインが346万円であったものが3月下旬の現在では627万円にまで価格が上昇しています。その間、数回にわたり高値から転じて価格が大きく下がるようなことありました。極端な値動きを見せることも仮想通貨の特徴と言えるようです。また、ビットコインのような仮想通貨には国家や企業のような管理者や発行者がいません。誰も管理していない通貨など考えられませんが、ビットコインでは世界中で行われる大量の取引の記録を漏れなく記録することで偽造や二重払いを防ぎ流通の整合性を保っているということです。よって、特定の組織による不当な発行がないことや取引の整合性を認められて信用を得た仮想通貨はビットコインの如く個別の特徴(例えば、国家間の送金の利便性など)を生かしてその存在価値を見出され、その仮想通貨に価値を見出す人が現れることで取引が可能となるのです。それがモノや事象ではなくても取引が発生すると自ずと結果による収支が発生します。このことにおいて利益を得る者は所得に外ならず課税されることは当然です。

日本における仮想通貨に関する課税制度を見てみます。どうやら仮想通貨と株式取引とは税制が違うようです。一見、取引形態が似ていることから同様の税制度なのだと勝手に想起しそうですが、仮想通貨で得た所得は雑所得になるということです。つまり、仮想取引において損失が出た場合でも他の所得と損益通算で相殺できないということです。

仮想通貨について基本的なルールを示します。仮想通貨は保有しているだけでは課税はされることはありません。1年を通じて行った仮想通貨の取引で20万円以上の利益を得た場合、主婦などの扶養内の者は38万円を超える利益を得た場合にはその利益は雑所得となり課税対象となります。所得の計算方法は至って簡単です。仮想通貨の購入時の価格から売却時の価格を引いた額が所得となります。例えば、品物を購入した場合は、100万円の仮想通貨が200万円に上がった時に仮想通貨で200万円の自動車を購入した場合には売却時の200万円から仮想通貨の購入時の100万円を引いて100万円の所得を得たことになります。

下記資料:国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm

仮想通貨についても取引ごとに所得を計算して確定申告しなければなりません。その税率は上記のようになります。

また、仮想通貨の取引ついての申告方法は2種類あります。仮想通貨購入時の価格をもとに計算する「移動平均法」と、一年間の購入額を基に単価の平均額を出す「総平均法」です。移動平均法は、毎回通貨の購入額を基に取引の計算をしなければいけないため、複雑ではありますがより正確な利益が出せる方法です。一方で総平均法は計算しやすいものの、単価の平均額を基に計算している分、実際の利益からかけ離れてしまう可能性があります。平均額によっては、総額が実際の利益を上回り、納税額が多額になる恐れもあります。申告額の計算方法については年度ごとに選ぶことは出来ず、一度選択した計算方法をそれ以降の確定申告においても継続しなければなりません。つまり、年度ごとに有利な計算方法を選ぶことはできません。

参考:国税庁仮想通貨の損益の計算方法について https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/171127/01.pdf

申告は給与所得などの他の所得と合算して行われる総合課税となります。総合課税は累進課税制度ですので所得が増えれば増えるほど納税額も大きくなり最高で所得税が45%、住民税が10%にも達することあり、合計で55%を納税することもあり得ます。

一方、株式投資で得た利益は申告分離課税の対象となり、他で得た所得とは合算せず申告できます。申告分離課税の対象とすることが出来ることから所得税15%、住民税5%の合計が最大20%で済むこととなります。

また、株式投資の場合は確定申告をすることで損失が出た場合でも向こう三年間はその損失を繰り越すことができます。よって、利益が出た場合はその所得と相殺することができることから節税に繋けることが出来ます。一方、雑所得はその対象ではないことから仮想通貨で損失が出た場合においても損失を次年度以降に繰り越すことは出来ません。

さらに株式投資による収支は事業所得や不動産所得や譲渡所得などと合算の上で損益を相殺することができる損益通算という方法が適用されます。しかし、仮想通貨の取引はその対象外です。仮想通貨の取引は雑所得内だけでしか相殺はできません。

上記のことから仮想通貨での節税は不向きだと思いますが、どうしても節税に繋げたい場合は仮想通貨が購入時より値上がりするまで保有して取引による利益を20万円に抑えるということだと思います。

さて、仮想通貨に関する現状の課税方法に対して多くの識者が株取引と同様にするべきだと主張しているようです。それは仮想通貨も株取引も投資であることに違いないことからでしょう。日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)と日本暗号資産取引業協会(JVCEA)は暗号資産(仮想通貨に代表される)に関わる所得の申告を適正なものにするためにも分離課税の対象とするべきだと要望しています。仮想通貨の所得を分離課税の対象とすることで所得税と住民税の最大55%から最大20%まで税率が軽減され、恩恵を得ることにより適正な申告が進むのだとしています。また、そのことが〝健全な納税環境の整備を推進する″ことに繋がるのだと主張しています。これらの要望は与野党に強く働きかけられているようです。

私はそのような主張に多少の違和感を感じました。租税の制度に関しては確かに公平性を保たなければならないことです。ですので、株式投資と仮想通貨投資は同じような投資活動による所得と言えないこともないと思います。仮想通貨などのデリバティブ取引を含む金融取引に関して同様の課税方法を適用することは公平性・公正性の観点から求められることは一理あると言えるかもしれません。

ただ、私が違和感を感じているのはそのことではありません。私が違和感を感じるのは正しい納税を促すために仮想通貨での所得を分離課税の対象とすることでメリットを与えるという発想です。メリットがないと正しい申告が促進できないということでは困ります。本当に国民がそのような考えであれば国家の存亡に関わる事態だと思います。義務教育を受けてさえいれば納税の義務を軽んじる人はほとんどいないと私は思っています。逆にメリットを設定することで所得に関する正しい申告が進むのだからそうすべきだと主張する方々の納税に対する了見に疑問を抱きます。

私の思うのは金融デリバティブ取引に関しての納税制度を一定にするという意味で分離課税の対象にするのならば税の公平性から理解し得ることですが、納税者に正しい納税を促すためのメリットとして分離課税の対象とすることには異論があるということなのです。

余談になりますが、私はそもそも株や仮想通貨や先物などの金融取引に関して分離課税の対象として優遇することに賛成できません。分離課税制度の存在自体に異を唱えているのではありません。総合課税の所得税が累進課税制度であるならば分離課税も累進課税制度にするべきではないかと思っています。例えば、裕福な資産家が大規模な取引で得た1億円の利益もサラリーマンが所得の一部で少額を使って出た50万円の利益も同じ税率が課せられます。これでは、大企業や一部の資産家を優遇している課税制度と言われてもしょうがないのではないでしょうか。分離課税を無くすべきと言っているのではなく、総合課税よりも税率は低く設定しつつも累進課税を採用するべきだと考えています。それは株式の取引だけではなく配当による所得も同様です。ちなみにアメリカもイギリスも3段階の新課税制度となっています。所得税率を下げてきた政策は紛れもなく富裕層を優遇する政策の他ならないと思います。それに加えて、分離課税において金融取引による所得や株式配当による所得に係る税率が一律であることはある意味、富裕層を優遇していることにならないでしょうか。

資料:財務省、主要国の配当課税の概要

現状の所得税の税率の引き下げと税率を一律最大20%とする分離課税の税制は国民の格差の拡大に繋がると思います。分離課税で大きな利益を得た者に優位な税制であるのは間違いないと思います。各国に倣い、この際、改正を一考することが必要だと思います。

また、国民生活に直結するとは思えない分離課税である金融派生取引による所得に関して少し増税を行い、増税分を総合課税における低所得帯の減税の原資とすれば良いのではないでしょうか。

もしくは、総合課税の最高税率を少し引き上げることで確保して中低所得層の税率引き下げを試みてはいかがでしょうか。

貧困問題は格差問題でもあります。ここでは述べることは差し控えますが格差が与える社会への悪影響は広範囲に及びます。資産差や所得差の固定化を招いたり、その格差が広がることは日本において相対的貧困層の拡大にもつながっています。富の再分配の是正だけで解消できるような問題ではありませんが、小泉政権以降はそのような傾向にあるように思えます。

以上、最後までご拝読を賜りありがとうございました。

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