ベーシックインカムについて(参議院浜田聡議員のお手伝い)

雨だけど出勤、レレレのレイン。雨にも負けず、アニメにも負けず・・・。

さて、昨日は参議員浜田聡議員のお手伝いに上がりベーシックインカムについて考えてみました。


近年、頻繁に聞かれるようになったこのベーシックインカムという言葉ですが、どういったものかそのアウトラインだけ簡単に説明します。

まず、私が知るベーシックインカムとは一言でいうと〝最低生活保障制度″です。もしくは〝最低所得補償制度″です。考えようでは生活保護制度と似ているとも思えますが、生活保護のように貧困対策だけではありません。生活困窮者以外にも平等に機械的に資金を給付するというものです。

下記出典:野村証券、証券用語の解説より

ベーシックインカムとは、政府が性別、年齢に関わらずすべての国民に、生活に必要な最低限の金額を無条件で支給する制度。貧困削減のほか、複雑化した社会保障を一本化して行政の事務コストを減らす効果や、少子化対策にも有効とされる。

基礎的特徴としては、給付の条件を設けず、定期的かつ継続的に、個人単位に給付するという制度です。

つまり、居住地や年齢性別、労働の有無、家族構成、保有資産の大小に関わらず一人一人に余すことなく給付するという概念です。

日本でのベーシックインカムに対する関心の高まりは2000年代から顕著になってきた貧困問題に起因するとされています。竹中平蔵氏らによる新自由主義的な政策の推進は多くの非正規雇用者を生み出しワーキングプアという言葉が生まれました。所得格差は法人個人共に拡大し顕在化しました。全体主義でもなく自由主義でもない日本型保護主義的な体制は国際金融資本を是とするグローバリズムの浸食に侵されてきました。

そのような中で新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延は日本にも深刻な経済不況と国民生活に対する不安をもたらしました。日本政府が行ったコロナ対応の中で国民一人一人に対する10万円の一律給付はベーシックインカムに対する関心を呼ぶ契機となったように思います。

ベーシックインカムは全国民に対する生活保護なので国民の労働意欲がなくなるのではないかという意見が多く聞かれます。しかし、そうでしょうか。少なくとも日本においてはそうだとは一概に言えないと思います。大金持ちは大金を手にしたので働かないかというとそうではないと思います。その高い能力や保有する資産を活用して富める者はますます富むというのが一般的です。また、定年年退職後の高齢者も年金を受け取りつつも社会とのつながりや地域への貢献を望む方が多いです。それに対応して企業は再雇用制度を用意したり、シルバー人材センターなどの高齢者の労務提供機関が機能したりしています。つまり、収入という安心感を得ると人はむしろ生き甲斐を求めるのではないかと私は思っています。

では、政府はなぜベーシックインカムを推進しないのでしょうか。

ひとつには官僚による国民の統治を堅持するためだと思います。ベーシックインカムの古典的な制度の発想には社会保障の廃止に代わる生活保障であることから、国家としての、統治は大きく軽減されます。生活保護の廃止、年金の廃止、国民皆保険の廃止、関税の撤廃、出資法の廃止、公共交通機関の民営化など社会システムは根底から覆るように思われがちです。国家、官僚による統治する機能は大幅に削減されるであろうことに対する恐れから官僚からは拒絶や反発を抱くのではないでしょうか。いわゆる大きな政府は巨大な既得権を有する機構であるとも受け取れます。

もうひとつは現在の経済を壊したくないという保守的な思考から嫌悪するのではないでしょうか。ベーシックインカムの導入によって企業は余計な人材の継続雇用を強いられることはなくなると思います。国民生活の基盤としての経済活動の維持振興が国家による国民の統治に容易にしている側面もあろうかと思います。経済の革新は国家の統治に大きな影響を及ぼすことに対する畏怖の表れかもしれません。変革を嫌悪しなくとも、将来において人工知能や自動化などのデジタル化は否応なく進み、人的な労働の必要性や価値が低下することは避けられないことだと思うのです。よって、統治機構を維持する為にもむしろベーシックインカムの導入は有効な手段のひとつだとも言えます。つまり、人間労働の低下に対する備えとしてのベーシックインカム制度です。ただ、程度によっては生活保護制度や雇用保険制度などがそれに対応する手段として既に妥当であると評価されることもあるようです。

また、政府は財政規律を建前にデフレーションを容認してきたように思います。統合政府でのB/Sを念頭に置くと事実上のプライマリーバランスは黒字化していると言えます。政府の借金を国の負債に置き換えるという混同した解釈は財務省の詭弁に他ならないと思います。財務省の政府の負債に対する認識を改めないことにはベーシックインカムの導入は検討に値しないということになります。少なくとも緊縮財政路線下でのベーシックインカムの見当は意味を為さないと考えます。今の状態でベーシックインカムの議論を行うと財務省お得意の財源不足論が先行し、ベーシックインカムを度外視した増税論に繋がることが予想されます。7万円を全国民に対する無条件給付を継続する場合には100兆円、20歳以上の労働人口に限定して給付する場合でも85兆円の財源を必要とします。政府の負債に対する認識を糺さない限り、増税というロジックが待ち受けていると言えるでしょう。

では、ベーシックインカムを日本においても進めていくにはどのような方法が考えられるでしょうか。政治的にオールオアナッシングで決定し超合金のような鋼の精神力で推し進める、なんてことは出来っこありません。ベーシックインカムは社会保障を徹底的に簡素化することが必要ですので、官僚や行政の抵抗はすさまじいものになることは火を見るより明らかです。こういった場合、時間をかけて類似制度を浸透させていくことが正攻法な作戦と言えると思います。税の再分配制度の改革としての〝負の所得税″です。一定額以下の所得に対する課税をマイナスにすると控除は給付に置き換わります。正確な所得を把握することでベーシックインカムに類似した制度となります。

類似制度の導入や官僚や行政機構の削減を行いつつベーシックインカムの導入を図るには相当な年月がかかってしまいます。拙速な社会システムの転換は混乱を招くどころか国民生活が危険に晒されないとも限りません。しかしながら、社会的な素地の整備とシステムの導入に年月をかけすぎると制度自体を骨抜きにされてしまうことも懸念されます。かつての公務員の天下りの根絶を目指した公務員改革や香港の一国二制度もそうです。時間をかけて導入しようとするとその道中で骨抜きにされることが多々あるのです。

よって、今ある社会システムのコペルニクス的な転回を求めずに導入できる日本式のベーシックインカムを模索するべきだと思います。

まず、社会保障の全撤廃は行わず医療に関する福祉政策の相応部分は残すべきだと思います。現状の社会保障制度を出来る限り温存しつつ給付付き税額控除、つまり負の所得税を採用することで最小限のベーシックインカムを導入するのが現実的だと思います。当然、大きな財源を必要としますが、所得控除を見直すことで一部の財源を確保できるのではないでしょうか。扶養控除、雑損控除、生命保険控除、地震保険控除、寄付金控除、寡婦控除、勤労学生控除、配偶者控除、基礎控除などです。これらは結局、増税という発想ですのでベーシックインカムの給付額との見合いとなります。2018年の社会保障費用は年金が約55兆円、医療が約40兆円、生活保護は約3.7兆円、雇用保険は約2兆円です。これらの社会保障費用を全廃することは限りなく不可能なことでしょう。仮に半減したとしても50兆円の財源しか確保できません。控除を見直すことによる所得税の大幅増税を行ったとしても25兆円が最大のように思います。

国民に毎月5万円の給付が限界であるように考えます。これを基本に社会保障の削減と税負担のバランスを見直しつつ給付額の増額を図っていくのが現実的ではないでしょうか。生活保護や基礎年金の給付水準を下回るベーシックインカムが支持されるとは思いませんが、社会システムの拙速な変化はリスクが大きすぎることからやむを得ないと思います。ですが、先にも述べましたが革新に年月をかけすぎると当初の目論見を失うこともあることから10年程度での転換が理想だと考えます。現状の社会保障制度の削減と効率化と給付付き税額控除の先行導入、その後のベーシックインカムの少額給付を併存したハイブリッド型が日本版ベーシックインカムとして導入しやすい形だと思います。そして、古典的ベーシックインカムにこだわらず社会保障を最低限可能な限りにおいて残していくこともリスクマネジメント上、有効であろうと思います。

ベーシックインカムを導入、試験導入、社会実験を行った各国の状況を簡単に確認してみます。

フィンランドでは失業給付を受給中の2000人に毎月7万円を2年間給付したところ給付を受けた者と受けていない者の就業率の違いは見られませんでした。つまり、ベーシックインカムは雇用促進に繋がらないが給付を受けることで働かなくなるということはないことが判明しました。今まで通りの労働意欲を保持しながらも給付を受けられることで全体的な幸福度は上がったと答える者が多かったようです。

ドイツでは全国民に一律の給付(ユニバーサルベーシックインカム)を前提とした試験導入が2021年から開始されています。毎月15万円を3年間給付する試みです。

スペインでは実際の収入や家族数によって給付額が変動する最低収入保障型のベーシックインカムの導入を進めています。独身世帯に月5万8千円、家族が一人あたり1万7千円が付加されます。

アメリカのカリフォルニア州では130人の芸術家に対して月10万5千円を支給するパイロットプログラムを開始しました。

スイスでは月27万円を給付するベーシックインカムの導入案に対しての国民投票が実施されましたが反対多数で否決されています。近隣諸国から低所得者が流入してくることが懸念されたと言われています。

その他にも韓国や中国でもベーシックインカムに関する議論が活発になってきています。

世界各国で社会実験が行われていますが、日本においても条件を限定したベーシックインカムの社会実験を実施してみることは有意義なことだと思います。国民の幸福の向上を目指した社会保障の在り方の一案として、ベーシックインカムに関する議論が成熟することを願っています。

また、各国と情報を共有し、導入に当たっては他国とも連携していくことも視野に入れて見てはどうでしょうか。将来的に新たな通貨圏の構築を目論むことも有効なのかもしれません。

以上、最後までご拝読を賜りありがとうございました。

参考:明治安田総合研究所

   http://www3.keizaireport.com/file/2101_BI.pdf

   財務省、税収に関する資料

   https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/a03.htm

   東京オリンピックの年の光と闇

  https://tokyo-olympic-memory.com/basic-income-netherlands-experimental-results/

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