コンウォールサミットとレアアースについて(参議院浜田聡議員のお手伝い)

総理がこっ総理集まったサミット、総理ゃ~良かったね('◇')ゞ

というわけで昨日は参議員浜田聡議員のお手伝いに上がり、先月に英国で開催されたサミットとレアアースについて纏めてみました。

2021年6月に先進7か国首脳と欧州連合代表が参加するサミットが英国コンウォール市で開催されました。オーストラリア、インド、南アフリカ、韓国もホスト国の英国に招待されました。新型コロナウイルスに関しては世界での均等なワクチン供給に関する事項や製造能力の向上、早期警告システム、治療法研究に関しての協力をしていくことが確認されました。また、2050年までに先進7か国の二酸化炭素排出量の実質ゼロを達成するカーボンニュートラルに関して実現することが確認されました。

さて、中国の覇権主義的な動きに対してはG7の間でも意見が分かれています。イタリアは中国が進める一帯一路政策に参加することを検討していることから各国首脳の中国への過度の刺激を戒める発言があったようです。とはいえ、共同声明の中ではインド太平洋の自由を守ると同時に台湾海峡の平和を求めることが盛り込まれた。さらに、中国当局による香港の選挙制度の変更に関して民主主義を根本的に破壊するとして懸念を表明しました。

それに対して中国はG7諸国が、中国が新疆ウイグル地区でのジェノサイドや香港での民主化運動に対する人権侵害が発生していることに対してイスラム信徒を支援したり、中国政府を非難していることに対して、内政干渉であり中国への誹謗中傷であると反論しました。在英国中国大使館はG7を偽物の多国間主義だとけん制しました。

逆に中国の一帯一路構想に対抗すべくG7諸国においても発展途上国に対する支援を表明し中国をけん制しています。透明なルールに基づいたインフラ整備、環境にも配慮して途上国の財政を圧迫せず、持続可能なインフラ整備を支援することを表明しています。

コンウォールサミットの概要は上記で留めます。民主主義先進国が合意し強調することは中国・ロシアなどの社会主義・共産主義国に対峙する連携でもあり

ます。特に中国による覇権主義的な経済連携やインフラ支援は国際貢献、国際連携の名を借りた抑圧的な支配を目論む行為とも受け取れることがあります。

かつて、日本においても中国の高圧的な経済制裁を受けたことがありました。2010年に発生した尖閣諸島付近中国漁船衝突事件です。領海侵犯をして違法操業をしている中国漁船に対して日本の海上保安庁が取締りを行った際に中国漁船が違法操業を継続した挙句に海上保安庁の2隻に故意に衝突したことから同漁船の船長を逮捕し名は地方検察庁石垣支部に送検するという事件が発生しました。中国政府はあろうことか「尖閣諸島は中国固有の領土」という主張に基づき丹羽中国大使を呼び日本の主権行為である司法措置に対して抗議を行い船長らの釈放を求めた。これに対して前原外相も表明している通り「尖閣諸島は日本独自の領土であり領土問題は存在していない」のですから中国の主張は恫喝に過ぎません。さらに中国は日本に対するレアアースの輸出を制限しました。レアアースとは希土類と言われ先端技術産業では欠かすことのできない原材料です。車の蓄電池やハイブリット車の永久磁石、排ガスの触媒など多岐に用いられています。特に日本では多用され世界の消費量の半分が日本での使用だと言われるほどです。そして、そのレアアースの最大の生産国が中国だったのです。1980年頃まではオーストラリアがレアメタルの主要な生産国でしたが1980年以降は中国が大量に生産し圧倒的な安い価格で世界中に輸出するようになり瞬く間にレアアースの生産と輸出は中国の独断場となりました。尖閣諸島漁船衝突事件では中国はレアアースの輸出を不当に政治利用してきたということになります。2010年頃の日本もレアアースの調達を中国に80%以上を頼っている状況にあったことから国内産業は少なからず影響を受けることになってしまいました。

中国による対日制裁の政治的なカードとして斬られた日本向けレアアース輸出制限は明らかな」貿易協定違反でしたが、民主党菅政権は日中の二国間協議を優先してその解消を図りました。アメリカ、メキシコ、EUは連携して中国の貿易協定違反をWTOに申し立てており、その際には日本へ意見聴取をされています。しかし、菅政権は中国の13億人の巨大市場に遠慮してかアメリカやEUとは連携せずにあくまでも二国間交渉に固執しました。二国間交渉と言っても一方的に日本政府が中国側にレアアース輸出制限の緩和を求めるだけのことです。大畠経産相、海江田経産相、枝野経産相、玄葉外相、野田総理がこと同様の要請を繰り返すものの中国側は「近いうちに解決する」「何らかの形で協力したい」「安定供給の為に様々な方策をとっている」などと回答を得るも全く状況は改善されませんでした。2011年になってアメリカ・メキシコ・EUの対中貿易に関しての是正要求をWTOが容認する裁定を下したことから日本においても漸くWTOへの提訴に踏み切るに至りました。もちろん、日本の主張がそのままWTOのパネルにおいても容認されて中国は輸出枠の撤廃を決めました。この間、尖閣諸島漁船事件が起きてから4年が経過することとなりました。WTO敗訴後の中国は自国内のレアアースの統制を緩めたことにより生産過多による価格の下落と品質の劣化が進んだ状況に陥っています。

さて、中国のレアアース輸出規制に端を発して日本が取った対策は大きく3つあります。ひとつは中国以外の産出国からの輸入による確保、レアアースの代替物となる材料の開発、そして、レアアースのリサイクルです。

(下記資料:資源エネルギー庁 2030年に向けたエネルギー政策の在り方についてより)

中国以外の供給国ですが、ベトナムとドンパオ鉱山の共同開発に合意、インドとも共同生産することで合意しています。オーストラリアからも安定供給を約束されました。カザフスタンやモンゴルとも共同開発することで合意しています。2020年現在において日本の中国からのレアアースの輸入比率は60%程度にとどまっていてベトナムやフランス、インドからの輸入が増えている状況にあります。

(下記資料:資源エネルギー庁 2030年に向けたエネルギー政策の在り方についてより)

レアアース代替物ですが、そのようなものは今のところないと思います。よって、正確に言うとレアアースの使用量の軽減だと思います。自動車用モーターの磁石についてのレアアース削減67%を達成、その後にホンダはレアアースを使用しないモーターの開発に成功しています。神戸製鋼もレアアースの使用を減ずる溶接技術を実用化しています。堺化学工業もセリウムの使用を80%軽減するガラス研磨剤を開発しています。日本ハードメタルも超合金による製造過程の置き換えによってコバルトやタングステンの使用を削減しています。そのほか現在では数えきれないほどのレアアースの使用削減が進んでいます。

(下記資料:資源エネルギー庁 2030年に向けたエネルギー政策の在り方についてより)

レアアースのリサイクル事業はマクロでは進んでいません。JX金属や三菱マテリアルや住友金属鉱山などが研究開発を行い事業化への後押しを始めています。事業化には採算に見合う必要があることから相応の規模を必要とします。そのための国内外からパソコンやスマートフォンを回収する国際ルールの制定など日本がリードすることを期待されている分野でもあります。リサイクル後には欧米をはじめ世界各国に再生レアアースを提供するハブ機能を日本が負うことが期待されています。

結論として、中国が世界のレアアース需要にこたえる供給を一手に負っていたことが政治的に利用される原因となりました。その矢面に立ったのが日本であり、中国がレアアースの供給を政治カードとして日本に対して使用したことは世界中の多くの国に危機感をもたらすことになりました。レアアース自体は中国でしか採れないものではありません。世界中で鉱山として認識されている総量中の39%が中国に存在しますが、次いでブラジルやインド、オーストラリア、ベトナムなどでも大量に埋蔵しています。

天然資源であるレアアースの流通を中国がほぼ独占することで覇権的にふるまわれていることは世界各国の平和と安定した発展を阻害することは明らかです。中国がレアアースに関してイニシアティブをとるに至ったのは乱暴な資源開発とオーストラリアをターゲットにした低価での輸出でした。多くの国にとって採算に合わなくなるように仕向けた中国のレアアースの資源開発と利用は覇権主義の政治カードなってしまったのです。

このような苦い経験から民主主義国を中心とした各国は連携してレアアースの政治利用を無効化するべく取り組んできました。WTOの裁定によって中国のレアアースの政治利用は年月を経て失敗に終わったと言えますが、一部の国の資源ナショナリズムに繋がってしまったことも事実です。アジアではインドネシアやフィリピンが実質的に鉱石の輸出を禁止するにようになっています。

 ところで、日本にはレアアース資源はないのでしょうか。実は日本の排他的経済海域の南鳥島にはとてつもない埋蔵量のレアアース泥があります。東京大学工学系研究科の加藤教授らの研究室の調査により世界の消費量の数百年分にあたる1600万トンの資源量を誇ることが確認されています。また、加藤研究室はリン酸カルシウムを使ったレアアースの回収方法も確立しています。この方法によると従来の中国産の陸上にある鉱床の20倍の濃度で採集が可能となります。これらにより日本は中国にレアアースの供給を依存することから脱却することのみならず資源小国からも脱却できることになります。12年に発見されたこの海床での回収に関する研究が同研究室と三井海洋開発やトヨタ自動車と共に行われてきました。

(下記資料:海洋エネルギー・鉱物資源開発計画(2019年2月策定))

政府は2028年をめどに回収の事業化を行いたい意向です。商業化に向けては採鉱場所の選定や環境影響評価などいくつものハードルを越えなければなりません。効率よく掘り進める専用機の開発も必要です。陸上で採れるレアアースに対する競争力のある価格で安定供給できるかどうかも重要です。中国のようにただ無防備にレアアースを掘り出すのではなく、周辺環境に悪影響を与えないような公害に関するコストも含んで採算性が認められる必要があります。その上で商業化の可能性を見出すところまでは政府の役目だと言えます。リスクが高い事業であることから政府系機関がSPCなどで先導し生産から安定したサプライチェーンの構築まで関与することが望ましいと思います。

 また、レアアースは自国への安定供給と並行し、人類の共有財産として発展途上国への利益を少しだけでも分配するべきだと思います。

ちなみにEEZ外でも日本は国際海底機構(ISE)と契約して探査権を得ています。その場合は隣国の韓国や中国、ロシアも同様の権利を有していることになります。日本の探査結果は周辺諸国と共有することが良いと思います。

海洋鉱物資源の開発に成功した例は未だ他にないと思いますので日本がそのフロンティアになることを期待しています。

以上、最後までご拝読を賜りありがとうございました。

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