規制緩和について(参議院浜田聡議員のお手伝い)

 連日の忘年会で多忙ねん・・・。二日酔いが普通かよ、胃が癒えん。。。

 さて、昨日は参議院浜田聡議員のお手伝いにあがり、2対1ルール、行政評価、規制評価、規制緩和という4つのキーワードをお題として頂戴しましたので検討してみました。それぞれが独立した課題と考えるのではなく共通する一定の政策目標によって関連していることを前提にしようと思います。

 少しだけ用語に関して解説します。

 2対1ルールとは米国の前大統領のトランプ氏が定めた政令です。政府機関が公式な通達や新しい規制を公布するたびに、少なくとも2つの既存の規制を廃止する、併せて、新しい規制によるコスト増は、2つ以上の既存の規制によるコストを削減することで相殺しなければならない、という趣旨です。この政令はバイデン政権において既に廃止されています。

 行政評価とは、行政のさまざまな活動を、「国民にとっての効果は何か」「当初期待した目的どおりに成果が上がっているか」といった視点で評価・検証することとしています。

 規制評価とは、例えば金融庁の説明によると、「規制の導入や修正に際し、実施に当たって想定される費用や効果といった影響を客観的に分析し、公表することにより規制の客観性と透明性の向上を目指す手法」とされています。

 最後に規制緩和とは、主に経済を活性化するために政府や自治体が認可や届け出などの規制を緩めることを一般的には意味します。

 上記用語の意味を踏まえて簡易的に4つのキーワードを繋げて意図する政策を表現すると下記のようになるのではないでしょうか。

 「政府は行政の運営を通じて毎年、数多くの規制を導入して各種政策の実現を図っています。それらの規制が年々、蓄積することで民間の産業活動や事業活動の障害となるケールも少なくありません。よって、市井の経済活動を促進し、需要創出を促すためには、規制緩和が必要かつ有効です。それは、ただやみくもに規制緩和するのではなく、規制評価の結果に沿い、効果の薄い政策や目論んだ効果を得られなかった政策の破棄や軌道修正を行うことで規制緩和を実現することが妥当だと考えます。規制緩和による効果は、民間の経済活動の推進することのみならず、行政評価の向上に繋がると共に規制コスト、つまり、行政コストの削減にも繋がります。しかし、現実には規制緩和は規制評価や行政評価の結果による見込み通りには進んでいません。よって、この際、米国大統領令に倣い、新たに1つの規制を設けるには既存の規制を2つ削減することを要件とすることを規定し、規制の新設が規制の緩和になるという画期的な効果を約束されたフローを構築することが効果的です。」

 という文脈になるように思います。

 確かに上記は少なくとも論理的であるように思います。特に2対1ルールの導入は規制緩和の数的な効果が現れるのは間違いのないことですので理想的とも言えます。確かに、規制の数が減ればよいという単純な問題ではありません。廃止しても経済的な影響も効果も生まれない規制も多くあります。

下記資料:総務省、許認可等の統一的把握の結果について

 上記資料より、許認可数は直近15年で1.5倍の数に膨らんでいます。ある意味、毎年、増えていくのは当然のことです。テクノロジーの発達、生活様式の変化、経済のグローバル化など社会の進展は留まることはありません。それによって直面する課題は途切れることはありませんので、並行して行政の対応も必要に応じて行われるのです。

 一方的に増え続ける規制に対して2対1ルールは実に有効だと思います。新規の規制の設定は社会情勢に応じて必要なことですので、その為に否応なく2つの規制の撤廃が必要となります。2対1ルールは一見乱暴な規制だと思われますが、そうでもしないと規制は一方的に増え続けることは自明です。規制が増えれば増えるほど息苦しい社会になっていくような気になります。新たな規制を作る為に2つの規制がなくなり、規制が緩和されることで経済的な効果が見込めるのであれば一挙両得です。

 撤廃する規制を義務付けることは社会規範を犯す結果とならないかという疑念を抱く向きもあります。しかし、現状の規制の内容を見てみるとその不安も払拭されるでしょう。

下記資料:総務省、許認可等の統一的把握の結果について

 規制にも内容によって強弱があります。15000件以上ある規制の中で実は半分以上が弱い規制なのです。弱い規制とは、一定の事実を行政庁に知らせるもので、行政庁は原則として記載事項を確認し、受理するにとどまるものであって行政の役割は受動的です。そのような弱い規制の中には単に記録としてしか機能しないものも多くあると思われます。それらを見直すことで数多くの弱い規制の削減を諮れると思います。

 ただし、弱い規制を撤廃したところで経済活動の促進に繋がることは期待できないような気もします。単なる断捨離に過ぎないかもしれませんが、受け身でありながらも行政コストの削減には多少は繋がるはずですのでプラスの策には違いありません。ちなみにイギリスではキャメロン首相が2010年から2015年に2対1ルールを導入しています。イギリスでは中小企業対策として施行され約1500億円の企業負担が軽減されています。アメリカのトランプ政権での2対1ルールの成果はあまりに短期間であったために不明です。1980年代のレーガン政権では規制緩和を積極的に進める経済刺激策が取られました。併せてマネーサプライを抑制しドル高を誘導しました。緊縮財政による新自由主義の経済活動を促進し富裕層の労働意欲の向上を図りました。結果、景気の好転は芳しくなく、結局は軍事需要に頼ることになりました。失業者も増えています。1985年頃からは大減税によって景気を刺激して雇用は徐々に改善され景況感も回復に向かいました。しかし、累積財政赤字は就任時の2.6倍となり大きな負の遺産を残すことになりました。

 行政評価、規制評価により施策の実行や予算の適正化を図りつつ、2対1ルールにより不済活動が活況となる、という目論見はおいそれとはいかないかもしれません。弱い規制の撤廃は市場を刺激するほどインパクトのある効果を生むことはないと思われますし、行政コストの削減に繋がる予算規模も大きくは見込めないからです。国家運営を小さな政府に転換するほどの効果が見込めないと思うということで決して取り組みと連携が無駄だとは思いません。効果は継続した蓄積によって増大するからです。

 少し現実的に検討してみたいと思います。

 規制評価は行政評価の一環としてどうでしょうか。さらに、行政評価を評価している総務省と予算執行を監査する会計監査院の業務を共有することで行政コストの一部が削減できると思います。当然、監査と評価の主導的役割は総務省が負うべきです。評価制度上、政策の変更、中止、縮小、削減、延長、拡大など政府の政策意図の促進の是非を会計監査の段階に至ってしまっては事後的で何の意味も為さないからです。

 規制緩和や規制撤廃についてですが、経済活動の活性化や促進につなげるには弱い規制の撤廃では足りません。いわゆる岩盤規制と言われるような主要分野において取り組まないと効果が微々たるものになってしまいます。

 かつて安倍政権の前期(2012年から2015年)で規制緩和による経済成長を打ち出しましたが、その成果は乏しく終わりました。既得権益者や抵抗勢力に潰された側面もあるでしょうが、経済活動や技術革新の主体者が不在であったことが主な要因だと考えます。そもそも、規制緩和による経済成長を図るには企業や研究者などの活発に技術革新を企てようとする主体者がいて、その主体者の邪魔をさせないようにする環境を用意することが本質なのですが、従前より主体となる企業や研究者が育ちにくい土壌が形勢されてしまっていて、規制緩和の機会を活かしきれなかったのだと思います。

 インパクトのある規制緩和の手法としては、既に実績を残している公共事業の民営化が考えられると思います。根拠法を無くすることで多くの旧態然とした制度や機関が改革や民営化されてきました。日本航空、国鉄や電信電話局、郵便局、八幡製鉄所、三池炭鉱、日本郵船、大日本製薬、日本通運、JTB、農林中央金庫、東京メトロ、きらぼし銀行などあげつらうとキリがないほどの官営企業が改革されたり、根拠法が廃止されて民営化されて来ました。今後、民営化すると大きな経済刺激策となり得る国営企業としては東日本高速道路株式会社(NEXCO東日本)、中日本高速道路株式会社(NEXCO中日本)、西日本高速道路株式会社(NEXCO西日本)は大型案件になると思います。いずれも政府全額出資の事業体です。その他には日本中央競馬会(JRA)も全額政府の出資です。

 つまり、規制緩和で経済成長を目指すには予めターゲットを定めておかないと難しいと思います。安倍政権も岩盤規制を打ち破るために、規制の特例措置を適用する国家戦略特区を設けました。

 カジノ特区(未定)や国際観光特区(沖縄)、外国人家事使用人雇用特区(東京、神奈川、千葉、大阪)、大規模農業特区(新潟、兵庫)などがあります。新潟市での農地の権利移転は既に述べ227件に達しており一定の成果を出しています。兵庫県養父市でも述べ39件の農地権利の移転が為されており、地域の農地の流動化に貢献しています。また、養父市では農業法人による遊休農地の活用が進められ4法人による農業の6次産業化が進められています。コロナ禍の影響もあり直近2年の進捗は良くありませんが、実質的な移民政策ともとれる家事や介護支援や農業漁業など限定された職種における外国人労働者の受け入れが開始されています。

 以上、規制緩和を中心に経済振興と行政コストの削減を見て来ましたが、かつての取り組みも含めて十分な効果を今のところ得ていないという印象を抱きました。2対1ルールもトランプ政権下で35の新規規制と61の規制撤廃という実績がありますが、その効果を評価するにはあまりにもサンプルが少なすぎます。アメリカの規制の総数は不明なのですがアメリカは自由の国のイメージがありますが実際はそうではないような気がします。私はハワイやグアムで事業を行った経験がありますが、必要とする許可や認可の数は日本とは比べ物にならないくらい多かったような記憶あります。アメリカでは弁護士や会計士など仕業者が多いのは、それだけ規制が多いからなのだと思います。

 取り留めもない考証となりましたが、私は2対1ルールの導入、規制・行政評価、規制緩和の連動した取り組みを否定はしません。むしろ、進めるべき政策だと思います。その前提で上記の取り組みによって大きな効果を見込む経済政策として期待するには物足りないと思います。安倍政権下において国家戦略特区の取り組みで岩盤規制に一穴を開ける為の挑戦をしたのでしょうが、結果的には大きな経済効果を実証するには至っていません。

 古典的と言われるかもしれませんが、やはり、社会的かつ経済的にもインパクトのある規制緩和を目論むのであれば国有事業の民営化を検討するべきだと考えました。

 以上、最後までご拝読を賜りありがとうございます。

参考資料:総務省、許認可等の統一的把握の 結果について

    https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/hyouka/hyouka_kansi_n/kyoninka.html

      内閣府、地方創生・国家戦略特区

      https://www.chisou.go.jp/tiiki/kokusentoc/index.html

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