保険医会アンケート回答と社会保障費増大について(参議院浜田聡議員のお手伝い)

 医者があかるいしゃ会、医者が目指すいいしゃ会。

 昨日は参議院浜田聡議員のお手伝いに上がり、北海道異保険医会のアンケートの回答と質問事項にあった社会保障費の増大について検討しました。

下記に回答したアンケートを明示します。

 3について具体的に検討したいと思います。

 社会保障費の予算増大について危惧する論調が多く見られます。日本では少子高齢化の影響で社会保障費が年々増加しています。社会保障費の増加による国民の負担増は家計への影響が大きいことから慎重に判断されなければなりません。そこで日本の社会保障制度の現状と未来を考証します。

下記:財務省、財政に関する資料より

上記の表より歳出の半分以上が国債関係費と社会保障費に使われています。昔は公共事業費が最も多かったのですが、今では社会保障費が35.8兆円で歳出の中では最大となっています。

下記:厚生労働省作成、人口割合と推移

 上記より生産年齢人口が徐々に減少しています。中でも14歳以下の年少人口の減少が著しく見られます。一方、65歳以上の人口は直近30年で倍増しています。2050年代には日本の人口が1億人を切ると言われていますから人口減少も大きな問題となっています。高齢比率が右肩上がりになっていることから、社会保障を受ける高齢者が増えていく一方で、年金を支払う現役世代の人口が減少して行っています。そのことから社会保障の今後の在り方が問われているのです。

下記:全国健康保険協会HPより

 上記より給与の30%以上が社会保障費の負担として納めることになることを表しています。

下記:内閣府作成、2060年の世界および日本経済の行方

 上記より日本のGDPはほぼ横ばいで推移することが予想されています。高齢者人口の増加推移から予想すると2040年には年金は1.2倍、医療費は1.4倍、介護費は1.7倍になることが予想されています。最低限の経済成長率を見込んだとしても恐らく年金が1.2倍になることに関してはマイナス成長でない限り大丈夫だと思われますが、問題は医療と福祉です。医療と福祉に関しては経済成長を超える給付の歳出増になる可能性があります。社会保障費の増加に経済成長が追い付かない場合はその財源の手当が必要となります。

さしあたり取り組むべき日本の医療体制が抱える問題点を見ています。

下記:厚労省HPより、医療保障制度に関する国際関係資料について

 上記より日本は平均在院日数が圧倒的に長いです。人口千人当たりの総病床数はとても多いのですが、人口千人当たりの臨床医師数や看護師数は少なくなっています。このことから、医師や看護師が少ないにも関わらず病人が長く滞在する状況となっていることがわかります。よって、より効率的な医療体制を目指して改善に取り組む必要があります。それ以外にも医療用医薬品とOTC医薬品の問題があります。医療用医薬品とは病院でもらう薬のことで、OTC医薬品とは市販薬のことです。医療用医薬品の場合は現役世代は3割負担、高齢者は1割負担です。残りは税金で支払われています。一方、市薬品は全額が購入者の負担なので割高となります。そうすると国民は薬が安く手に入る病院に行きがちになります。特に高齢者にそのような傾向があります。また、病院に行ってはみたもののもらった薬を使用しない人もいるようです。そのような薬代の大半が税金で賄われていると考えると安易に医療機関を利用することが問題視されています。

 このような問題が起きないような制度を導入している国があります。フランスでは抗がん剤などの代替性がない高額医療品の国民の負担率は0%です。その他は医薬品の有効性を鑑みて負担率が変わる制度を取り得れています。重要な医薬品は35%の負担、中程度は70%、軽度は85%、不十分なものは100%の負担となります。本当にその人にとって必要なのかという必要性によって自己負担率が変わるという制度です。この制度を日本も取り入れると医療費の抑制にもつながると思われます。

下記:財務省、負担率に関する資料

 日本の対GDP比の国民負担率は31.2%です。イギリスは34.3%、ドイツは39.9%、イタリアは42.7%、フランスは47.7%となっています。日本の負担率はヨーロッパと比べるとまだまだ低いと言えます。今後、益々保険料が上がる可能性は高いということでしょう。

 高齢化社会に突入し、社会保障費が年々増加しているのは経済成長率が鈍化していることと医療体制に改善の余地があることに起因していると考えます。

 さて、こう言ってしまうと元も子もないのかもしれませんが、将来的な財源の不足が問題視されているのなら国債を発行して補えばよいのではないかという現代貨幣理論的な発想をすることも出来ます。確かに財源的にはそのとおりなのかもしれません。しかし、社会保障の問題はそんな単純な問題はないと思います。

 社会保障の問題の本質はインフレギャップの問題です。年金をもらう高齢者も当然の如く生活費を遣います。それ以外に車を買ったり旅行に行ったり、贈り物を買ったり、被服費も必要です。年金は消費の為にもらうもの言っても良いと思います。高齢者が増えると年金の支給者数も増えるのですから、労働を引退したとしても需要の総量は変わらないか、場合によっては上昇します。その一方で少子高齢化の影響を受けて労働人口は徐々に減少していきます。労働者はつまり生産者ですので、生産者が減少すると供給量も減少する可能性があります。もちろん、生産者も消費者ですので重要があります。そこに高齢者の需要が維持されるか増える可能性のあるのですから、供給が減少するとギャップが発生します。要するに社会保障の問題とはこのインフレギャップのことを指しているのです。

 1990年には一人の年金受給者を5.8人の労働者で支えていました。ところが、2040年には高齢者一人あたり1.5人の労働者で支えなければならなくなります。多くの国民はこのレトリックを金銭的に支えることだと勘違いしています。ここで言う〝支える″とは需給ギャップを解消できるかどうかのことです。金銭的なことではなく生産性のことを言います。高齢者を含む需要に対して減少していく生産年齢人口で供給を維持することが出来るかどうかです。よって、解決策は明確です。供給能力を高めるための生産性を向上させることに尽きます。

 家計調査によると高齢者の消費は生産者の消費を1とすると0.8くらいだとされています。では、人口が減少する中で2040年までに生産性をどのくらい向上させる必要があるかというと、1990年を基準として34%の生産性を増やす必要があると言われています。50年で34%の生産性の向上を目指すわけですから、実質毎年0.7%程度で良いのです。

下記:内閣府、GDP統計、http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/menu.html

 2008年は世界金融恐慌が発生してマイナス成長となりましたが、自然災害が起きない限り日本経済のマイナス成長は稀なことです。国経済成長の目標とするのは当然2%とか3%としています。よって、毎年0.7%以上の経済成長を続けるというのは低すぎるくらいの目標であり、十分に達成が見込める数値目標なのです。

 上記より、社会保障の問題は医療体制の改善は必要とするものの、生産性の向上を促進することで経済成長を促すということが問題の本質だと言えます。そして、必要と見込まれる生産性の向上、つまり経済成長の目標値は決して高いものではないということです。また、財源の問題は国債発行にて補えばよいでしょう。ハイパーインフレを引き起こすような懸念はないと考えます。

以上、最後までご拝読を賜りありがとうございました。


資料:内閣府、国民経済計算

   https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/menu.html

   財務省、負担率に関する資料

   https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/a04.htm

   

   厚生労働省、医療保障制度に関する国際関係資料

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken11/index.html

   内閣府、2060年の世界および日本経済の行方

https://www8.cao.go.jp/space/comittee/01-kihon/kihon-dai5/siryou2-1.pdf

   厚生労働省、人口と人口割合の推移と予測

https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/17/backdata/01-01-02-07.html

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