放送法の改正案について(参議院浜田聡議員のお手伝い)

 アメダス。毎日、雨が降ってびっくりぎょう雨天。

 さて、昨日は参議院浜田聡議員のお手伝いに上がりました。

 放送法改正案が衆議院で可決し、まもなく参議院においても採決される予定です。昨年にも放送法の改正案について与野党で協議されておりましたが、そうした最中にフジメディアホールディングスの外資規制違反の問題が発生したことから先送りとなっていました。この問題の詳細に関しましては昨年公表しました記事をご参照ください。(https://masahikosakamoto.amebaownd.com/posts/16848631

 今回の改正案では放送事業者の株式の保有に関する外資規制を厳格にする為の条文が盛り込まれています。放送事業者および放送事業者の持株会社の外国人株主の議決権比率を20%以下と規定しました。総務省は外資比率が低ければ定期的な報告で順守状況を確認し、20%に抵触しそうな場合は外資比率の変更届け出を追加で求めることが出来るようになります。また、外国人株主の議決権比率に変更があった場合に総務省へ速やかに届け出るよう義務付けています。

 釈然としないのは総務省のフジメディアホールディングスに対する総務省の対応です。外資規制に抵触していた東北新社の子会社に対する放送事業認可を取り消したにも関わらず、フジメディアホールディングスには口頭での注意で済ませています。両社の処分の違いに関して総務省は、フジメディアホールディングスは12年から14年にかけて外資規制を上回る外国人株主の議決権比率になっていたことを総務省に相談しており、2021年当時においては既に違反の状態が解消されていたことから事業認可を取り消せないという説明でした。

 上記の処分の違いに関しては未だに釈然としません。総務省は2014年にフジMHD側から相談を受けていたのだからその時点で東北新社と同じ状況にあったはずです。にも拘わらず、東北新社の認可は取り消して、フジMHDには口頭注意に留めるというのはアンフェアであり二枚舌と言われても仕方がないと思います。

 確かに総務省には各放送事業者の外国人株主の議決権比率を遅滞なく知り得る方法は無かったことから定期的な報告で確認するしかありませんでした。今回の法改正で速やかに総務省に届け出ることが義務付けられることでその問題は解消されます。だからと言って東北新社とフジMHDに対するダブスタ的な処分は法治国家として大きな禍根を残したと思います。

 法の不遡及の原則があり、それまでに起こった問題に関してはそれまでの規定で対応しなければなりません。今回の法案で外資の議決権比率規制に違反した場合の新しい罰則規定が出来たわけではありませんが、新たに報告義務を課すことで暗にこれまでは総務省がその違反に関して知る由がなかったのだという言い訳をしているとも受け取れます。しかし、総務省は2014年にフジMHDから違反状態にあることについて相談を受けているのですからそのような言い訳は通用しません。東北新社の事業認可を取り消した以上、フジMHDに対しても法に倣い厳正な処分を課さなければいけないと考えます。

下記資料:総務省、放送法の一部を改正する法律案の概要

     file:///C:/Users/Owner/Downloads/000734730%20(2).pdf

 次に受信料の値下げの為の積立金制度の新設についてです。今年のNHKの事業予算の6890億円に対して繰越金が1980億円となっています。これを原資として受信料の額の引下げの原資に充てる為の積立金制度です。積立金の額は総務省令で別に定めると言いますが、金額は不明なのはやむを得ませんが、せめて金額を決める基準だけでも明らかにするべきだと思います。

 受信料の引下げは国民にとっては望ましいことですが、それ以前の問題として受信料制度の問題の方が重要なはずです。NHKの発表では受信機を設置している世帯の約17%が未契約だと言います。NHKは年間数百件の裁判を行いつつ受信契約の促進と未払い世帯への督促を進めています。しかし、それはこれまで数十年間に渡り行ってきたことですので抜本的な解決になりません。そこで、今回、受信契約の未契約者に対する割増金制度が盛り込まれています。故意に受信契約を遅滞し、受信料の支払いを免れようとした場合には遅滞した額に加算して遅滞した2倍の金額を付加して支払わないといけなくなるという罰則規定です。公共交通機関のJRのキセル行為と同様の規定になっています。不正を防止するための罰則規定として正規の料金に2倍の料金を加算することが多すぎるのかどうかは人それぞれの金銭感覚によりますが、より不正の防止効果を高めるためには罰則の金額の算定基準が高ければ高いほど良いということになります。

 未契約者に対する割増金の規定はこれまでも存在していました。詳細は下記をご覧ください。(https://masahikosakamoto.amebaownd.com/posts/10704381

 これまでは日本放送協会放送受信規約第12条に規定していたものを放送法第64条4に追記するようにしたに過ぎません。かつて衆議院の逓信委員会において数回、この受信規約第12条について適用実績が問われていますが、NHK側の参考人はこれまでこの罰則規定を適用した実績はないということです。具体的な答弁のやり取りは下記の記事をご覧ください。

https://masahikosakamoto.amebaownd.com/posts/10532406

 NHKはこの規定を精神規定とし、受信規約第12条は伝家の宝刀であり、刀を抜かなくても持っていることが大事なのだと回答しています。つまり、脅しとして必要だと言っているのですが実際には脅しにもなっていませんでした。契約を逃れる者は年々増加してきた事実があります。規定が死文化していたことは間違いありません。

 今回、この死文化していた規定を施行規約ではなく、放送法に規定することで厳格な法の運用をNHK側に課す目的があるのではないかと思います。ただし、これもポーズだけのデモンストレーションに終わる可能性もあります。なぜならば、この罰則規定を適用する具体的な基準が示されていないからです。受信機を設置していることが明らかになってからどのくらいの期間を経たら不正になるのか、たとえば生活保護ではなくなったことを届出ずに隠蔽したことを不正と見なす場合はどのくらいの期間やどのような状況であることが判断基準となるのかが明確にはなっていません。

 受信料契約や受信料の支払いについて罰則規定を実際に運用するためには、その規定を放送法に盛り込むだけではなく、法規定を実行するための最低限の基準を施行規約に定めることも同時に行う必要があると思います。今のままですと錆びた「伝家の宝刀」に変わりなく大きな改善は見込めないと思います。

 NHKの関連会社の統治に関して持株会社を設置し出資できるようにする規定が為されています。以前は90社以上あった関連会社が現在は22社まで整理されているとのことです。私は持株会社を作る前に更に整理を進めるべきだと思います。特に放送分野に関わる5社はNHK本体に戻すべきだと思います。なぜ本業の放送に関して別会社を設立しないといけないのかが理解できません。放送分野だけでなく営業分野や管理分野も別会社にする必要性がわかりません。NHKが放送法に基づいて設立された特殊法人である以上、株式会社の関連会社を設けることには反対です。出来る限りNHK本体で完結することが明瞭であろうし、公共放送だと規定するならば尚更、事業体を安易に分けるべきではないと思います。持株会社に関連会社の多くをぶら下げることでNHK本体は管理しやすくなるかもしれませんが、国民にはそれぞれの関連会社の必要性や事業の収益性や費用の効率性などは見えにくくなるのかもしれません。持株会社が関連会社の収支を取り纏めて連結することで無駄な経費や不要な出向先の温存が逆に可能になってしまうのではないかと危惧します。NHKは上場企業ではないのですから持株会社を作って収支を連結する必要性は感じません。持株会社によって効率化を目論むとしていますが、ならば、効率化できると想定している内容と数的な目標値を設定し明らかにするべきなのではないかと思います。

 さて、本件とは少し話が反れますが、NHKの事業が民業圧迫に繋がっている可能性があると思います。私はNHKの娯楽番組にCMを流しても良いと思います。つまり、報道や国会中継など公共放送としてのNHKと教育番組や文化コンテンツを中心に放映するカルチャー放送としてのNHKとドラマやバラエティーやスポーツなど娯楽性の高いコンテンツを放送する民放としてのNHKに事業を分けても良いのではないかと思います。当然、民放としてのNHKはスポンサーの提供を受けることで運営することを前提に考えます。NHKを事業目的ごとに分けた上で受信料収入によって運営する事業と広告収入で運営する事業を区別すれば国民の負担の軽くなるのではないでしょうか。テレビ業界は兼ねてより営業面で民放各社が凌ぎを削っています。視聴率ではNHKも民放各社と競合しており、その中で民放とさして代わり映えのしない娯楽番組までNHKだけが国民の意思に関わらず負担を強いるようなことを続けるべきでは無いように思います。また、受信料制度とスクランブル放送の導入を前提とした有料放送方式のペイパービュー方式との並立もありなのではと思います。あるいは、JRのように東日本、東海、西日本、九州、四国、北海道に放送網をブロック分けして分割民営化してしまっても良いと思います。NHKの本体はは映像技術の研究開発と特許の管理と国際放送を請け負う公営企業とし、民放各社から上納金を徴収し、リターンとして技術を共有すれば良いのではないでしょうか。極論は、全チャンネル全時間帯をスクランブル化してパイパービューすること、またはNHK全体を国営にすること。極論は極論だけあって、実現の可能性が見込めないでしょう。

 ちなみにテレビからB-CASカードを引き抜くと当然のことですがテレビが見られなくなります。つまり、B-CASカードを引き抜いたテレビは、それはもはやテレビではありません。単なるモニターです。そのモニターにインターネットを繋ぐと最近ドン・キホーテで売られて話題になったチューナーレステレビと同じようになるのではと思っていました。ところが、去年からB-CASカードを取りやめてA-CASチップに変更になっています。このチップは内臓型なので取り外しはできません。A-CASチップを内蔵することで受信契約に応じない視聴者を識別できるようになったようです。

 ところで世界各国の受信料制度も変わりつつあるのが昨今の潮流です。イギリスは受信料制度の抜本的な改革に取り掛かることを表明しています。ドイツやスイス、フィンランド、スウェーデン、ノルウェーは受信料制度を取りやめて税として徴収することになりました。インターネットの普及も進み、情報ツールや娯楽ツールが多様化されることで、日本のみならず世界各国においても受信料制度を見直す時期が来ていたということなのでしょう。

 NHKのスクランブル化を公約に掲げてNHKから国民を守る党(現NHK党)は2019年の参院選で多くの支持を集め国政政党となりました。しかし、電波行政の壁は厚く、受信料制度の改革を進めることは容易ではありませんでした。この状況を打破するためには、公約をエネルギー問題や国防問題や税制問題に広げることも一策ではありますが、初志貫徹をする為にも受信料問題の1点に関して他の政党との連携を模索することに注力する必要があると思います。日本維新の会あたりはNHKの受信料制度の改革を進めることに前向きな方針を打ち出しています。先の衆院選でも、これまでの地方選挙の結果からもNHK党の支持は停滞気味です。謙虚な姿勢で他党に対し一寸丹心に呼びかけ協同や連携を図ることが肝要だと思います。



最後までご拝読を賜りましてありがとうございました。

参考:参考:参議院、電波法及び放送法の一部を改正する法律案https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/208/meisai/m208080208018.htm

      総務省、国会提出法律案(第208回通常国会)

https://www.soumu.go.jp/menu_hourei/k_houan.html

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