トルネード・キャッシュの規制について(参議院浜田聡議員のお手伝い)

マネーは余んねぇ、、、。マネーが少なくてすマネー。

というわけで昨日は参議院浜田聡議員のお手伝いに上がり米政府のトルネード・キャッシュの規制について検討しました。

 トルネード・キャッシュという言葉を聞いたことがありますか。トルネード・キャッシュとは、暗号資産の取引履歴を人々の目から隠すことを可能にするオープンソースプロジェクトです。要はプライバシーに特化した暗号資産のブロックチェーンのことです。

 トルネード・キャッシュは主にイーサリアム上に構築され、預け入れた資金は非管理型システムに置かれ、手続きも完全非公開です。トルネード・キャッシュは受信アドレスと宛先アドレスのオンチューンリンクが切断されており完全な匿名での預金が可能です。預金に対して秘密を作成し、コミットメントと共に送信します。契約は預金を受け入れて、預金リストにコミットメントを追加するだけです。

 キャッシュの引き出しは、預金リストの未使用のコミットメントと秘密を証明し、一致すれば指定されたアドレスに送金されます。外部のサーバーではこの引き出しがどの預金からされているのか判断することはできません。預けた人と引き出し先のアドレスの関係がわからなくなること自体が匿名性を保つこととされています。

 さて、米財務省は8月8日にこのトルネード・キャッシュを全面的に禁止しました。この措置を受けてステーブルコインを手掛けるサークル社はトルネード・キャッシュと関わった履歴のあるアドレスを使用禁止にしました。他のプラットフォームや企業も同様の措置を講じているようです。

 米財務省がこのような措置に動いたにはわけがあります。取引履歴を隠すことができるトルネード・キャッシュを用いたマネーロンダリングが横行しているからです。米政府は北朝鮮のハッカーによって70億ドル相当の不正資金のマネーロンダリングに利用されていると主張しています。ランサムウェア、詐欺、ハッキングを通じて得た約15億ドル相当の違法な資産がブロックチェーンのデータ分析を手掛けるエリプティック社によって特定されています。また、他のデータ分析企業によると今年の4月にはトルネード・キャッシュをはじめとする暗号資産ミキサーによって5180億ドルもの資金がロンダリングされたことを明かしています。12日にはオランダの捜査当局がトルネード・キャッシュの開発者の一人を逮捕しました。悪意を持った利用者のマネーロンダリングを助長したという容疑です。

 一方、トルネード・キャッシュにアクセスできなくなった人の中には合法な目的でトルネード・キャッシュを利用してきた人たちも含まれています。米財務省の制裁は無実の利用者の資産をも動かせなくしてしまっています。無実の人たちが自らの資産を引き出すことができるようにする許可証の作成をDeFi関連団体が主導して米財務省に求めています。同時に暗号資産ミキサーの利用者が必要とする者がとるべき安全策について米財務省の説明を要求しています。

 今回の米財務省の制裁はシステムを悪用した人に対してではなく、匿名性を追求した技術に対して行われています。つまり、悪行を働く特定の悪人を取り締まる為に、健全に利用しようとしている人達にまで制裁してしまっています。

 暗号資産の業界には多数のミキシングサービスが存在します。仮想通貨の中にも匿名性の高いプライバシーコインというカテゴリーがあります。米財務省が仮想通貨の匿名性を許容しないのであれば、トルネード・キャッシュだけではなく他のミキシングサービスもプライバシーコインも事業として継続性の担保を失うこととなり成立し難くなります。

 トルネード・キャッシュは独自にTORNという仮想通貨を発行していますが、トルネード・キャッシュが禁止される以前は取引額が3000円前後で推移していましたが、禁止の発表以後は約1700円にまで急落しました。同様の危惧が他のプライバシーコインに起きる可能性があるということです。

 米国はトルネード・キャッシュに対してなぜこのような極端な制裁を行ったのでしょうか。第一義的にはシステムを悪用することでマネーロンダリングを容易に行えるからです。誰が誰に送ったのかがわからなければ、違法カジノや麻薬取引のための送金にも利用されてしまうのは至極当然です。

 そもそも、現金であろうが、仮想通貨であろうが、匿名性を重視する必要が本来あるのでしょうか。財産や資金の不透明な、もしくは秘密裏の動きは誤解を招いたり、トラブルを招いたりします。国家はマネーを介して国家運営をしています。国民の資産資金の動きを働きかけ、継続的な経済活動の中から国家運営の原資を得ます。それは統治というよりも互助のニュアンスに近いように思います。国家が、トルネード・キャッシュのようなミキシングサービスはプライバシーの保護を謳う過剰な手段であり、公益にはつながらないと捉えることは当然のことかもしれません。

 国が発行した通貨と違って仮想通貨は発行主体が存在しません。利用者が相互に管理と監視を行うのが仮想通貨です。ビットコインにはブロックチェーンの技術が使われています。ブロックというデータの単位を一定期間ごとに生成し、連結してデータを保管しています。ビットコインの利用履歴は共有されたネットワークに残ります。送金と入金の記録はすべて共有され上書きができません。利用者が明らかにされ、取引も明らかにされるビットコインは透明性がとても高いと言えます。トルネード・キャッシュと違い、ビットコインは送り手と宛先のアドレスがすべて記録されます。すべての記録が追える状態にあります。ビットコインの取引履歴が完全に開示されているのに対して、取引履歴が不明なプライバシーコインや、資金の属性を不明にするシステムであるミキシングサービスが法的な規制の対象となる可能性はここに至るまでも懸念されてきたことです。仮想通貨はこれからも益々普及が進むでしょう。悪用や犯罪に対する適切な対策を講じ安全に利用することが出来れば、国家の経済活動を促進する便利な通貨となるに違いないと思います。私は匿名性よりも透明性が重視されるべきだと思いますし、利便性よりも安全性が重視されるべきだと思います。世界の金融システムにおいてアンチマネーロンダリングを徹底できないサービスは退場させられて当然なのではないでしょうか。今回の措置で巻き添えになった健全な利用者は救済手段を提示されるべきだとは思いますが、まずは、利用者がそれぞれのサービスを利用する前に将来的なリスクを検討することが必須です。プライバシーの保護よりも国家の安全保障が優先されることは当然のことです。

 ちなみに日本の金融庁は2018年に既に仮想通貨の事業者登録済みの6業者に「マネーロンダリングとテロ資金供与」に対する対策が不十分であることに対して業務改善命令を出しています。事業者は利用者の本人確認を徹底し、プライバシーコインの取引であっても本人情報を確認できる仕組みを構築するように指導しています。日本政府のこの対応について国家による監視の助長だとかプライバシーの侵害だという声もあるようですが、私はそうは思いません。犯罪の抑止が優先されることは国民の生命と財産を守る為には当然のことなのではないでしょうか。

 以上、最後までもご拝読を賜りありがとうございました。


参考:トルネード・キャッシュ使用禁止令で波紋広がる

www.coindeskjapan.com/157289/

ミキシングサービスのトルネード・キャッシュが制裁対象に!仮想通貨コミュニティが反発

https://myforex.com/ja/news/myf22081701.html

仮想通貨の「透明性・匿名性」はどのように担保されるのか?

https://gentosha-go.com/articles/-/14528

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