2021年NHK決算について(参議院浜田聡議員のお手伝い)
今日は急に寒くなったので・・・コールド負け。
さて、昨日は参議院浜田聡議員のお手伝いに上がり2021年度のNHKの決算について検討しました。
2021年度の事業収入は7009億円となり前年より112億円の減収となりました。当初の予算より109億円の増収となっています。つまり、予想通り減りはしたが、思ったほどの減収ではなかったということです。NHKの受信料は中期事業計画により2020年から2期連続で受信料の値下げを行っており、値下げ分を加味して当初予算は多めの減収を予想していたのです。ちなみに値下げの額は地上波で月額59円、衛星で月額102円を行っています。3億円の誤差については受信契約件数が想定を上回ったという説明です。
事業支出は前年より94億円減少し6609億円となりました。当初予算は7130億円でしたので521億円も減少しています。新型コロナウイルスの蔓延によりオリンピック・パラリンピックをはじめとした番組制作や取材活動の縮小によるものです。併せて、受信契約等の訪問要員体制の縮小も寄与しています。結果的に230億円の赤字の予想から630億円が改善され400億円の黒字となっています。
受信料収入については2020年の6895億円から2021年は6801億円となり94億円の減収となりました。2021年の受信契約総数は4155万件であり、前年から14万件の減少(0.3%減)となっています。誤差程度の微々たる変化です。支払い率は80%で前年同様です。
受信料収入に対する営業経費の状況は2020年の710億円から2021年は622億円となり、87億円の減少となっています。とりわけ、契約収納費の法人委託手数料は2020年の213億円から131億円となり82億円の減少となりました。法人委託業者とは外部業者に訪問による受信契約を促進する活動を委託された業者のことです。
受信料収入の減少が94億円、訪問による受信契約費用の減少が82億円ですので大差がありません。94億円の減少にはテレビを持たない世帯の増加や物故等による世帯の自然減要因も含まれます。そのことを斟酌すると訪問による受信契約に掛かる費用は成果を上回る費用を使っていたと言っても過言ではないでしょう。このことは奇しくも新型コロナウイルスの蔓延による戸別訪問活動の停滞によって明らかになった現実です。仮に82億円を使って94億円の契約を獲得していたとするとあまりにも非効率的であり、何も生み出していないに近い状況だと思います。
NHKは段階的に訪問による契約収納活動を廃止する計画を発表しています。外部業者への委託は2023年9月末をもって全廃する方針です。戸別訪問活動の出来高に連動した手数料収入を得ることを目的とする外部委託業者とテレビを持たない、見ない、NHKの番組等に不満のある国民との不要なトラブルは解消されます。コロナ禍は国家経済や国民生活にたくさんの不利益をもたらしましたが、NHKの戸別訪問が廃止されるきっかけを作ったことは怪我の功名と言えるような仕儀であろうと思います。
NHKは戸別訪問による活動を廃止後、いかに公平かつ安全な営業活動を行っていくのかが重要であり、その体制づくりが不可欠です。NHKは既に未契約世帯に受取人の氏名が分からなくても住所を記載すれば郵便物を送れる新サービス「特別あて所配達郵便」を利用して契約の促進を図る方針を示しています。この制度についてはフィッシング業者のDMなど特殊詐欺に利用されることを懸念する意見も散見されます。NHKは2021年6月より試験導入して既に1年以上が経過していますが、その現状が気になります。宛名の無い郵便物を何通出して、その結果、何件の契約に至ったのか、その結果を受けて今後、特別あて所配達郵便の利用をどのように考えているのかをNHKには明らかにして頂きたいと思います。
ちなみにNHK未契約世帯数は800万世帯とされています。800万世帯すべてに特別あて所配達郵便を1回利用すると22億7千万円を必要とします。例年、NHKは売上の約10%の営業経費をかけて受信契約の促進をしてきましたので227億円程の売上に対する経費に匹敵する額となります。
また、NHKは戸別訪問の全廃の方針を示す一方で、法人委託契約は廃止しても個人の委託契約のスタッフは継続する方針のようです。戸別訪問を全廃後の個人の委託契約スタッフの役割はどのようになるのかが明らかにされていません。個人の委託契約のスタッフが戸別訪問を続けると「訪問による営業活動の全廃」は達成されず朝令暮改の方針となってしまいます。個人の委託スタッフの具体的な今後の業務に関してNHKは明らかにするべきだと思います。
今年の通常国会で未契約世帯への割増金が請求できることに法改正されました。併せて、繰越金は受信料の値下げの原資とすることが規定されました。このことはNHKにとって1世帯でも多くの受信料契約の締結を図ろうとするモチベーションが低下する要因になるかもしれません。今は契約の自然減を受け入れて、極めて少額の受信料値下げを繰り返して世間の風向きを好意的に変えることを目論見、世論を見極めた上で、タイミングを諮ってインターネットでの配信の有料化を行うことを計画しているのではないでしょうか。電波による放送とネット回線は別ものだと考えます。NHKは試験的にネットでの同時配信を行っていますが、何を目的としているのでしょうか。どのような出口描いて試験をしているのでしょうか。あくまで契約者へのサービスの拡充なのでしょうか。それとも、テレビ離れが進む中、ネット回線への事業領域の拡大を図る準備を行っているのでしょうか。NHKはネットでの無料の同時配信についてあくまで暫定的な措置なのか、それとも恒久的に新たなネット受信料の聴取を考えていないのかを明らかにするべきです。
NHKの給与・退職手当・厚生費についてです。2020年と2021年の額は内訳こそ違えど総額は全くの同額で1631億円となっています。給与だけでみると1114億円です。年度末の職員数は2020年も2021も同人数の10175人です。人件費の総額を職員数で単純に割ると約1603万円になります。退職金や福利厚生費を除いた給与のみですと一人当たり約1095万円となります。業界の平均年収は、TBSが1632万円、テレ朝が1479万円、日テレが1462万円、テレ東が1392万円となっており、NHKの給与水準は民放よりも少し安くなっているのかもしれません。
資産勘定に建設積立資産として1693億円が前年に引き続き計上されています。承知の通り、渋谷放送センターの建て替えに要する費用を積立てているのです。2021年度は36円が予算執行されています。2020年には解体等に着手されているのでその費用の一部だと思われます。2021年5月に着工し、2036年12月末に竣工を予定しています。実に15年にも及ぶ大工事です。工事は2期にわかれており、第一期の予算が600億円、第二期の予算が1100億円となっています。
ここで少し危惧するのは工期が14年先に及ぶ長期の事業であるにも関わらず建設資金の全額を積立ていることです。現在、国内のみならず世界的な物価高騰が急速に進んでいます。国交省の建設着工統計資料によると建築費の水準は2012年から2021年の10年間で約29.4%も上昇しています。建築資材の高騰はさらに凄まじいことになっています。2020年9月から2022年1月までに木材は約73.5%、鋼材は44%も価格が上昇しています。日本を含むアメリカ、ドイツ、インド、インドネシア、中国などの需要国の経済は今後も安定的な成長が見込まれていますので、今後も建築資材の需要は世界的に高まる見通しです。NHKの建て替えの基本計画は平成28年時点のもので、「今後の社会・経済情勢の変化、協会をとりまく環境の変化、業者選定の過程において金額が変わる可能性があります」と明記されています。建設業界は止まらない資材高騰、労務コスト、人材不足、ウクライナ・ロシア危機の影響などによって超売り手市場になっています。NHKはこのような状況の中、建設費用についてどのような見通しを持っているのかを聞いてみたいです。普通に考えると建設費用を全額積み立てるのではなく、融資で資金手当てをするのが良いのではないかと思いますが、NHKはどうして全額を積み立てるのかお聞きしたいです。
連結決算に関して、先の通常国会で日本放送協会に紐付けて連結子会社を、持株会社を設立して、その持株会社にて運営を統括し、配当を得られるようにする規定が出来ましたが現状の運営状況はどうなっているのか気になります。特殊法人であるNHKが11社もの株式会社を傘下に置くことには少し違和感を感じます。番組制作を行うNHKセンタープライズやNHKグローバルメディアサービス、NHKエデュケーションは番組制作を請け負う会社であり、NHK本体の本業でもあると思うので、子会社ではなく本体に吸収することはできないものなのでしょうか。また、NHK営業サービスも受信料関係の事務や情報処理であればNHKの本体で十分に行える事業ではないでしょうか。また、NHK文化センターは教養や趣味や実用や健康等の各種講座の運営を行っていますが、このような事業は市井の民間事業者が多数存在するので、NHKが子会社をもって行う必要性を感じません。民業を圧迫しかねない事業を子会社で行うことの真意をNHKに聞いてみたいです。特殊法人の事業体は出来る限りわかりやすくシンプルであるべきだと思います。
番組の制作費ですが、スポーツやアニメに関しては製作費を明らかにされていません。製作費の中で放映権料が占める割合が多く、守秘義務上の問題があり公表が出来ないということです。よほどの事情がない限り、公共放送の性質上、放映権料などの仕入れ額を明らかに出来ないようなコンテンツは民放にまかせておいてはどうでしょうか。
最後に2021年‐2023年NHK経営計画に進展についてです。番組経費の見直しは具体的にどのように進んでいるのか、要員について具体的にどのような既存業務をスクラップしてどのような重点事項に要員をシフトしたのかを明らかにして欲しいです。
以上、最後までご拝読を賜りありがとうございました。
資料:NHK 2021年決算 概要
https://www.nhk.or.jp/info/pr/kessan/
マンパワーグループ 【2019年最新版】マスコミ業界の年収は高い?平均年収ランキングまで紹介
https://www.manpowergroup.jp/column/career/mass-media-salary.html
NHK放送センター建替工事
https://skyskysky.net/construction/203601.html
建築費が超高騰時代へ突入すると見込まれる具体的な理由とは|2022年版
https://archi-book.com/news/detail/649
放送センター建て替え 基本計画 NHK
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