公正取引委員会委員の国会同意人事について

福利こうせい、、、こうせい労働省、こうせい物質、、、

公正取引委員会がについて朧気にもご存じの方は多いでしょう。私は見ていないのですが、昨年にはフジテレビで公正取引委員会を舞台にした「競争の番人」というドラマが放映されたようです。俳優の坂口健太郎さんと杏さんがW主演として公正取引委員会の職員を演じたとのこと。公正取引委員会の全面協力の下で製作されて、実際の公正取引委員会の中でも撮影が行われた力作です。ドラマの中では坂口さんの演じる小勝負と杏さん演じる白熊が警察のように立ち入り検査、事情聴取、張り込みや尾行を行う反面、警察のような強力な権力は持っていません。その狭間で小勝負と白熊が奮闘するドラマです。

 前置きが長くなりましたが今回は公正取引委員会の委員の国会同意人事についての所見です。2月にも公正取引委員会の国会同意人事案件がありましたが、それとは別の人の人事案件です。

 公正取引委員会は法務省の管轄で、独占禁止法等を執行する行政機関であり,国民生活に影響の大きい価格カルテルや談合,中小事業者等に不当に不利益をもたらす優越的地位の濫用など,社会的ニーズに対応した多様な事件に対処しています。これら事件を摘発し,排除措置命令・課徴金納付命令といった行政処分を行うだけでなく,悪質重大な価格カルテルや談合事件等については,刑事処分を求めて検事総長に告発を行います。

 公正取引委員会は5人の委員からなる合議制の組織です。裁判官、検察官、学者、公正取引委員会事務総長で構成されています。5人だけでは業務をこなせないので事務局には840名もの職員がいます。さしずめ、委員長は民間で言う代表取締役、委員は取締役という塩梅なのでしょう。

 公正取引委員会で最近話題になったのは令和4年12月に公表した「優越的地位の濫用」の恐れがあるとされた大企業13社です。佐川急便、三協立山、JA、デンソー、ドン・キホーテ、三菱食品、東急コミュニティ、豊田自動織機などの日本を代表する大企業です。これらの企業は下請け企業などとの間で原燃料費や人件費といったコスト上昇分を取引価格に反映する協議をしなかったことが独禁法の「優越的地位の濫用」に該当する恐れがあるとされました。下請け側が価格転嫁を要請していなくても、立場の強い発注側が自発的に協議するよう求める指導と注意喚起が為されています。

独禁法の運用の基準としては、受注企業と発注企業の価格交渉の場で価格転嫁の必要性について協議しない、または価格転嫁の要請があったのに拒否し、その理由を回答しない

のいずれかに該当する場合は優越的地位の濫用とされます。公表された13社は価格転嫁の必要性について協議をしなかったようです。同様のケースが全国で約4300社もあったということでした。

 公正取引委員会はウクライナの紛争を背景とする原材料費の高騰、燃料費の高騰などが続いており、経営が圧迫されている中小企業を守る活動も行っているということです。価格転嫁を要請しにくい立場にある中小企業が国内企業の9割以上です。公正取引委員会が発注側の受注者への配慮を強く求めた珍しいケースです。公正取引委員会に社名を公表された13社はそろって「本件を真摯に受け止め再発防止に努める。協力企業の立場に配慮し相互発展を目指していく。」とコメントしています。

 このような公正取引委員会のこれまでにない踏み込んだ指導は政府が提唱する「新しい資本主義の実現」の意向に沿う形で実行されたのかもしれません。新しい資本主義のグランドデザインの中には下記のように記されています。

「我が国においては、成長の果実が、地方や取引先に適切に分配されていない、さらには、次なる研究開発や設備投資、そして従業員給料に十分に回されていないといった、「目詰まり」が存在する。その「目詰まり」が次なる成長を阻害している。待っていても、トリクルダウンは起きない。積極的な政策関与によって、「目詰まり」を解消していくことが必要である。」

発注者と受注者の間で優越的地位が強く存在することが「目詰まり」の一種とも言えよう。

 さて、人事案に戻ります。任期満了となる委員は山本氏で元公正取引委員会事務総長です。新たな人事案の泉水文雄氏は神戸大学法学部の教授で独占禁止法の専門家です。公正取引委員会独占禁止懇話会委員を務めた経験があり、これまでも公正取引委員会と繋がりがあったようです。経歴を見ると泉水氏は適任なのかもしれません。しかし、私には少し気になる点があります。泉水氏についてではありません。5名のメンバーの構成についてです。泉水氏が任命されると公正取引委員会出身の委員がいなくなります。そうなると公正取引委員会に所属する840名のスタッフの意気が下がってしまうのではないかと危惧するのです。公正取引委員会の元事務総長が委員になることが慣例化してしまうことは既得権益になってしまうという意見もあるとは思いますが、天下りよりかはよっぽどましです。公正取引委員会の委員長は元国税庁長官です。この人物こそ典型的な天下りではないでしょうか。委員の中に1人くらいは現場出身の叩き上げの人物がいても良いのではないでしょうか。泉水氏は委員にふさわしい経歴の持ち主ですが、今回のポストは事務総長が昇格する為のポストであったはずなのに、という思いを抱きました。

 最後に独禁法はグローバル化の波により国内のみならず国際的なM&Aや事業提携などの影響を受けるようになっていると思います。国際的な経済活動に明るい人物を委員として任命する必要もあるのではないでしょうか。また、10月にはインボイス制度がスタートします。発注者が免税業者への消費税の不払い行為は下請法違反になります。下請法についても公正取引委員会の管轄です。弱者が不利益を強制されないために公正取引委員会の啓蒙活動が重要となります。

以上、最後までご拝読を賜りありがとうございました。

参考

Wikipedia 公正取引委員会

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AC%E6%AD%A3%E5%8F%96%E5%BC%95%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A

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