総務省の令和5年予算を通覧
予算をよこさんか。そんな言い方はよさんか。というわけで総務省の予算案(NHK予算以外)について考察しようと思います。
前年と大きく変化した歳出の項目は選挙制度関連と電子自治体関連でした。選挙制度関連(予算要求書153P)とは昨年の参議院選挙に要した費用です。604億円がそのまま無くなって削減となりました。国政選挙に600億円を掛けることが多いのか少ないのかは一概に判断できませんが、回を重ねるごとに選挙制度やスタイルも進化する必要があると思います。参議院選挙が終わったらいきなり予算0円にするのではなく、選挙ポスターのデジタルサイネージ化を導入する検討費用だとか、電磁的な投票方法の検討だとか、公費が支給される選挙カーや紙チラシに代わる周知や広報を図る方法の研究などを進める費用を予算計上し、今後の制度の向上を常時図るようにするべきだと思いました。
もうひとつ予算の大きな減額となっているのが電子自治体関連(予算要求書155P)です。簡単に言うとマイナンバーカード、マイナンバー制度に関わる費用の予算です。前年より約310億円も減少しています。2017年には10%程度の普及率だったマイナンバーカードは2023年2月時点では69%に達し、飛躍的に普及しました。具体的に減少した350億円の内訳はどうなっているのでしょうか。察するに、マイナンバーカードの普及促進の為の周知広報費用やマイナンバーカードの取得特典としてのマイナポイントの進呈費用などが減少することによる予算の減少なのでしょう。
一方で31%の国民は未だマイナンバーカードを保持していない事実があります。国民の31%というと決して少数ではありません。継続的な普及促進を行いながらも、対面での手続きの保障・保険証の存続など現行の行政サービスの存続も保障する必要があるように思います。それを明言することで安心できる人も多いのかもしれません。
マイナンバーカードに関わる予算計上は、カードの発行、申請、交付体制の整備に対する支援として約500億円、マイナンバーカードの英字対応に約200億円という内訳となっています。
政府は今年3月7日にマイナンバーやマイナンバーカードの利用を促進するため、利用範囲を拡大する法案などを閣議決定しています。現状、年金給付などの社会保障や税、災害対策に限られているマイナンバーの利用範囲を拡大する方針です。具体的には、高齢者の年金受取口座を公金受取口座として登録することができるようにするとか、理容師や美容師や建築士などの資格手続きにマイナンバーカードを利用できるようにすることなどを検討しています。このような施策に対しても導入に当たる費用を予算計上しなければいけないでしょう。
既に方針が決定されてマイナンバーカードの利用が予定されているサービスも多数あります。たとえば、処方箋を電子化して利用することや介護保険証としての利用です。TASPOカードとしての利用や学校や企業の健康診断の電子化などもそうです。スマートフォンにも実装される予定にもなっています。もっとも利用者の多いものとして運転免許証との一体化も予定されています。これらの導入に掛かる費用は小さくないと思われますので余裕を持った予算計上が必要でしょう。
総務省は予算案の中で、地域のデジタル化を推進する費用として2500億円を計上しています。しかしながら、上記(運転免許証との一体化など)のような利用方法は地域の課題ではなく国民全体に影響の及ぶ計画です。もし地域デジタル社会推進費の2500億円の予算のなかに運転免許証との一体化する予算なども含まれているのでしたら、国と地域社会を分けて予算するのは適切ではない、もしくは把握しづらい予算に思えます。(電子自治体促進の予算と地域デジタル社会推進費の双方がマイナンバーカード関連の予算だとするとわかりづらいという意味)
また、内閣官房もしくはデジタル庁の提唱するデジタル田園都市国家構想にもマイナンバーカードに関わる施策が存在しています。デジタル庁と総務省での連携やすり合わせ、予算協議はなされているのでしょうか。
デジタル庁では国費ベースで400億円を予算し、地方自治体への補助率100%のデジタル田園都市国家交付金を創設しています。
「マイナンバーカードの普及率が高い団体において、普及率が高いからこそ実施するメリットが大きいマイナンバーカードの利用の取組を実施し、全国への横展開モデルとなるマイナンバーカード利用の先行事例を作る目的で、「当該団体内におけるカードの新規用途の開拓」、「他の地域における横展開が容易な取組」、「他の地域への横展開への協力」を行う地方公共団体に対し、その事業の立ち上げに必要なハード/ソフト経費を国が交付 金により支援する」(デジタル田園都市国家構想交付金、デジタル庁より)
という基本的な考え方を示しています。広域に普及する取り組みを前提とするならば、事業としても予算としても総務省との連携も不可欠だと思います。
最後に、総務省はマイナンバーカードのICチップの空き容量の利活用を民間事業者に募っています。デジタル庁が地方自治体に100%の補助金を交付するマイナンバーカードの利活用事業を募集しているのですから、総務省で募っているマイナンバーカードの民間事業者における利活用する事業に対しても、100%の補助とは言わないまでも、一定額を補助する制度を設けてはいかがでしょうか。
TKCやNTTコミュニケーションズや内田洋行では入室権限の認証にマイナンバーカードを利用しています。その他、170の保険会社や金融機関が本人確認としてマイナンバーカードを利用していることから、今後は様々な申し込み手続きや住所変更などがスピーディーに行えるようになるのでは期待されています。
デジタル庁や総務省はそういった民間での利活用の後押しになる制度や施策を立てて、希望的な予測を持った予算を計上して欲しいと思います。
別件を追記します。
概算要求書の項目にテレワーク推進普及促進事業費(概算要求書178P)として令和4年には26091万円が計上されていましたが、本予算案には0となっています。令和4年度の要求主旨は
「新たな日常におけるテレワークの定着を図る為。テレワークを導入しようとする企業の相談支援やテレワークに関する普及啓もうをするとともにこれまでのテレワーク実施で明らかになったコミュニケーションの低下等の課題を克服した質の高いテレワークの実現やテレワークによる地域課題の解決に係る実証を実施」
と明記されています。予算要求を0となっているのはそれらの目論見は十分に達成したという認識なのでしょうか。
確かに2019年以降、大きな自治体ではテレワークの導入が進みました。しかし、小さな自治体では導入に限界があり進みません。それは止むを得ないとは思いますが、日本の民間企業の99%が中小零細企業です。つまり、日本全体では思ったほどテレワークが進んでいないではないかと危惧します。危惧するというのは、現状の日本では少子高齢化が進み、将来における労働力の低下、生産の減少が心配されています。業務や生産の効率化を進めえることで補っていくことは当然のこととして、在宅勤務やサテライトオフィスの設置、モバイルワークの導入なども重要かつ効果的な施策だと思います。
コロナ禍の終息と共に折角普及が進んだテレワークも尻つぼみにならないように広く社会に積極的な普及・導入を啓蒙し続けることが大切だと思います。総務省のテレワークの定着に関する現状の認識と予算要求を0にした意図を伺いたいと思います。
あと、郵政行政推進費(概算要求書205P)として9億1千万円以上の予算が計上されています。郵便事業を適正に監督する費用は当然必要だと思いますが、要求主旨にある郵政三事業の(郵便・貯金・保険)のユニバーサルサービスの確保と競争環境整備等関する調査・分析を行い監督するとあります。政府の日本郵政への出資比率も35%以下となっていますし、日本郵政が保有するゆうちょ銀行株は89%と依然として多いもののかんぽ生命は既に50%以下の持株比率となっています。郵政三事業の貯金と保険はもはや一般民間企業と変わらぬ存在となっていると思いますので総務省は郵便事業での関りだけに特化し予算計上もそれに即して検討するべきではないでしょうか。
最後までご拝読を賜りありがとうございました。
参考
マイナンバーカード利用範囲拡大へ 関連法案など閣議決定 テレビ朝日
https://news.yahoo.co.jp/articles/32e126d5057e8ec93ee7c49155250fb296790ea9
自治体でテレワークを導入するには?
https://www.cachatto.jp/column/article/036.html
郵政民営化法の改正でこうなる
https://www.japanpost.jp/corporate/milestone/privatization/index02.html
ゆうちょ
https://www.jp-bank.japanpost.jp/ir/stock/ir_stk_situation.html
かんぽ
https://www.jp-life.japanpost.jp/IR/stock/basic.html
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