国家公務員と首相や閣僚の賃上げについて

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 日本維新の会の音喜多駿議員が「今国会に提出した特別職の給与法改正案が成立すると、首相の給与が月給だけで年間7万2000円上がる。経済対策の給付金額より多い。国民の理解が得られない。法案を取り下げるべきだ」岸田首相を個人攻撃していた。この音喜多氏の発言に対し岸田文雄首相は「法律にかかわらず、行財政改革を引き続き推進する観点から、首相は3割、国務大臣は2割を国庫へ返納することを申し合わせしている。給与は上がっても、返納額は1218万円だ。こうした姿勢を示すことによって、国民の不信を招かないよう努力したい」と返した。

 音喜多氏の発言にも岸田首相の返しにも疑問を抱く。参議院議員も衆議院議員も政治家は特別職の公務員である。憲法上、首相も大臣も議員も公務員である。確かに政治家の給料について人事院の勧告の対象にはなっていない。しかし、政治家も社会を形成する一員であり、国家国民に奉仕する仕事に従事している。人事院勧告の対象とならないのは政治家の給与は民間企業の給与水準と比較することが困難であるからだ。仮に首相を3000人以上の大企業の社長、知事を1,000人以上の企業の社長、市長を1000人以下の企業の社長の平均給与に置き換えるとする。人事院の調査では3,000名以上7,372万円、1,000人以上3,000人未満4,554万円、500人以上1,000人未満:3,963万円である。政治家に置き換えると首相が7300万円以上、知事が4500万円以上、市長が3900万円以上となる。現在の首相の約4032万円、知事の平均は1885万円、市長の報酬の平均は政令市で1878万円である。よって、政治家の首長の報酬を民間企業の役員報酬と比較すると二分の一くらいの報酬である。それを一気に引き上げようとする法案ではない。たかだか年間7万2000円(賞与除く)だけの報酬アップである。逆に少なすぎると感じるくらいだ。「国民の理解を得られない」(音喜多氏の発言)のは報酬のアップというよりも首相の報酬が少なすぎることだろう。人事院勧告の制度は時代遅れだという向きもあるが、この制度を続けるなら特別職である政治家(国会議員、知事、都議、県議、市長、町長、村長ら)の報酬についても勧告の対象とすればよい。現状の金額では到底収まらないはずだ。逆に市議、区議、町議、村議は常勤ではなく非常勤として扱い日当に少々の手当てを支給するだけで良いのではとも思う。

 岸田首相の行財政改革を推進する為になぜ首相が3割、大臣が2割を返納するのか。国家国民の為になるのではあればそれは胸を張って堂々と推し進めれば良い。自分たちの給与をこれだけ返納するのだから行財政改革を進めされてもらうなどという大した引き換え条件にもならない卑屈な言い訳は不要である。日本維新の会もことあるごとに身を切る改革を唱えるが日本維新の会や大阪維新の会の政治家が少しばかり身を切ったところで何の効果もない。財政的には端数にも及ばないことを行って声高に正義を叫べるようにする選挙ツールを手に入れたいだけの行為ではないのか。日本維新の会は企業団体献金を受け取らないことを公約にしているが高額な政治資金パーティーで企業からも団体からも献金を受けている。パーティー券の額面の半分以上が政治家にバックされる。多くの企業やティグレ(税理士会計士グループ)や行政書士団体、不動産業団体など業界団体や学校法人などからにパーティー券を大量に購入してもらっている。大阪維新の会も日本維新の会も詭弁を使いますことが上手なだけなのかもしれません。身を切る改革も資金集めの表題であるし、企業団献金の禁止も表向きだけでパーティーでの資金集めによってしがらみだらけの政治環境に陥り既得権益にしがみついているだけなのではと感じる。

 岸田首相の言う行財政改とは「簡素で効率的な行財政システムを構築するとともに、自らの行財政運営について透明性を高め、公共サービスの質の維持向上に努めるため、給与の適正化、適正な定員管理の推進など積極的な行政改革」だと総務省は説明する。給与の適正化や適正な人員管理に改めるために取り組む人はまず自分の給与を3割も返納するのか。現在の状況を作った責任を取って給与を3割返納するというのならそう言うべきだ。過去と違い人口減少に転じている時代を迎えて行政の体制も変革の必要が生じるのは当然のことである。首相や大臣がいちいち給与の一部を返納して行うとこれまで構築した行政体制が間違いだったかのような印象を受ける。トップの給与カットは不祥事の証左みたいなものだ。3割返納なんて即刻やめるべきである。

 本法案にある人事院勧告通りの賃上げの履行は当然のことと考える。コストプッシュ型インフレが続き賃上げの効果が追い付いていない。円高が仮に落ち着いたとしても今後においては需要がインフレをけん引して経済成長を後押ししないといけない。積極的な賃上げは官民双方にとって重要である。本年の経済成長率は10月で1.96%、前年の約2倍で推移している。デフレーターも105であるから強めのインフレ傾向にある。政府は今が踏ん張りどころである。緊急的な経済対策ではなく賃上げ、減税、償却など緩やかなインフレを長期的に牽引する政策が政府には求められる。本法案には賛成であるが思い切った賃上げとは言えず残念な面もある。人事院勧告制度がそれを阻害していると思料する。

 追記ではあるが、11月2日の朝の情報番組でTBSの人気アナウンサーである安住紳一郎が安住アナは「そもそも国家公務員の給与を上げるという話し合いの中で、閣僚や総理の給与も上げる話をそこに紛れ込ませてきたっていうのが少しね、やっぱり感じ方が変わってるのかなという気がいたします」と語った。これは事実と異なる。閣僚や総理の給与に関しては一般職の公務員の給与を引き上げる法案とは別の法案である。別建ても法案であるから紛れ込ませようがない。しかも、一般職の国家公務員には人事院が勧告を出す。閣僚や総理の給与は人事院の勧告の対象ではない。一国の首相が年額7万2000円(賞与は除く)を他の国家公務員の給与に紛れ込ませて増額するような、まるで首相をコソ泥であるかの如く謗る行為は断じて許されることではない。影響力が大きいテレビを使った発信で事実ではない悪意を感じる印象操作を行うことは卑しい行為であるし不遜極まりない。マスコミの一員であるならば自身の情報集力と調査力と理解力の乏しさをまずは恥じるべきである。


参考

主な特別職の職員の給与 内閣府

https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/files/181130tokubetushoku_kyuyo.pdf

知事と政令市長の給与所得、2年連続増加 読売

https://www.yomiuri.co.jp/national/20230703-OYT1T50172/

役員報酬相場・平均データの特徴とポイント 役員報酬ドットコム

https://yakuin-hoshu.com/data/market-price/

安住紳一郎アナ 閣僚賃上げ法案に「そもそも国家公務員の給与を…そこに紛れ込ませてきたっていうのが」 スポニチ

https://news.yahoo.co.jp/articles/eb47053000f19eb5ab10b35ca1bca5b5a2d4f73d

行財政改革 地方財政白書 総務省

https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/hakusyo/chihou/23data/23czb3-3.html

日本のGDPの推移 経済のネタ帳

https://ecodb.net/country/JP/imf_gdp.html

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