裁判官・検察官の給料の引き上げについて
今日は、土曜どよ~ん・・・。
裁判官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案と検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案が今臨時国会に提出されている。裁判官や検察官は人事院勧告の対象となっていない。なってはいないが親方日の丸の意識は非常に強い国家公務員である。内容自体は国家公務員の一般職の賃上げに倣った程度の法案となっている。裁判官は号俸によって月額6000円から2000円程度の増額、検察官は月額4000円から7700円程度の増額となっている。
勧告の対象とされていないにも関わらず明らかに人事院勧告の内容に沿った賃上げである。昨年は一部の号俸の賃上げに留まったが本法案は対象となる特別職職員の全体に行きわたる賃上げであり、その点は良いことである。
残念なのは賃上げの額が小さいこと。裁判官は司法試験でも成績上位者が任官されることが多い傾向だ。上位20%以内の者が多いと聞く。検察官はそれほどまでに成績は必要ないようだが、それでも成績上位の者が任検することが多いという。検察官になりたい希望者が少なく全体4%以下だという。検察官の場合は成績上位者を優先するとか言っている場合ではないのかもしれない。検察官の募集で優秀者を集めるには待遇が重要になりそうだ。いずれにせよ、優秀な人材を確保するには好待遇であることが大切である。
弁護士は食えない、弁護士はいらなくなる、弁護士の質が低下した、などと揶揄されることの多くなった弁護士業界。確かに司法試験の受験者は激減している。それに合わせて司法試験のハードルも低下している。そして、当然の如く弁護士の質も低下している。さらに市場原理通りに低所得の弁護士がごまんと生み出された。一方、一部の優秀な弁護士は大手の弁護士事務所に雇用され高額な報酬を得ている。弁護士の収入の格差は天と地ほど差が開き中間層が薄い。5大法律事務所といわれる西村あさひ法律事務所、アンダーソン・毛利・友常法律事務所、長島・大野・常松法律事務所、森・濱田松本法律事務所、TMI総合法律事務所は給与も非常に高く数百人の弁護士を抱えている。5大法律事務所に採用されると初年度から1000万円以上の報酬が得られる。頑張って長年勤務して結果が伴えばシニアアソシエイトとなり最高年収3,000万円程度も夢ではない。弁護士事務所の8割以上は一人か二人で開業している零細事務所である。零細事務所に所属する多くの弁護士が年収500万円程度だと言われている。個人事務所やどこかの事務所と提携しているだけの弁護士は200万円台しか収入がないということすらあるのが実情である。
裁判官、検察官は5大法律事務所と優秀な人材を担う双璧であると考える。明確な基準はないが双方ともに司法試験の成績上位者を取り合っている印象がある。裁判官や検察官は身分保障が厚いが5大法律事務所より報酬は低い。5大法律事務所は、報酬は多いが労働時間が長く語学等の特別なスキルも求められる。どちらも一長一短があるのだろうが、司法判断を下す裁判官にあっては中間層の号俸の報酬を厚くして裁判官は給与が良いと世間で言われる程度の待遇を確保してもらいたいものだ。世俗に塗れる弁護士とは一線を画するのは当然であるが社会的評価を高めるのと同様に裁判官には十分な報酬が保証されるべきである。優劣をつけるのは相応しくないかもしれないが検察官は裁判官に次ぐ待遇で良いものと考える。
いずれ近い将来、弁護士なんていう職業は成り立たなくなるのではないだろうか。チャットGDPなどAIの新しい技術が普及するなどしたら人間の法解釈や事実認定なんて当てにしない時代が訪れるだろう。過剰な感情論や掴みどころのない倫理観を排除した論理的な司法判断がAIによって下されるようになるような気がする。人間はその機能を活かすための差配を行うことで十分に事足りる。AIの導入によって裁判の期間も飛躍的に短縮されるだろう。
さて、そうはいっても裁判は、今は人に負うところが多い業務である。本法案に関しては賛成であるが、賃上げの金額はもっと多くて良かったのではないかと察する。国家公務員特別職としての賃上げと弁護士を凌駕する為の賃上げは別物である。人事院がもし大手事務所に属する弁護士との賃金格差を鑑みて勧告を行うとしたら裁判官や検察官の現状の給与は低すぎると判断して然りである。自民党の総裁選で所得倍増を歌って当選した岸田首相なのだから公務員の積極的な且つ大胆な賃上げによって国民の所得倍増に向けて牽引してもらいたいものだ。
参考
民事事件・刑事事件・家事事件・少年事件全体の新受事件数の推移
https://www.moj.go.jp/content/001278005.pdf
第1 事 件 数
https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2023/databook2023/db2023_211.pdf
裁判所データブック2023
https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/databook/index.html
五大(四大)法律事務所とは? リーガルジョブマガジン
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