電波監理審議会委員の国会同意人事案について

デンパ地下!

 電波監理審議会委員の国会同意人事案についてである。電波監理審議会とは電波・放送の規正に関する事務の公平かつ能率的な運営を目的とする郵政省の付属機関である。1952年設置。関係事項を調査・審議し、電波法・有線放送規正法に基づく総務大臣の処分に対する異議申立を審査・議決する。チャンネルや周波数の割り当て計画、放送局の免許、無線の技術基準など省令の改正、放送局の施設や技術の問題点や財務面だけでなく、番組が政治的に公平かどうか、事実に即した報道が行われているかどうかも委員会の答申の対象となる。

 昨年度の審議会の議事録を通覧してみた。大枠の課題としては電波の有効利用、NHKのBSプレミアムの停波、BS4Kの基幹放送者の新規認定についてである。総務省から審議の要請を受けて討議したものであるが、印象としては事後報告に徹するものになっている。電波は700MHzにおける楽天モバイルの開設計画が議題に上るがその判断はインフラをシェアリングするKDDIやソフトバンクグループの意見聴取の内容次第ということになる。委員からはインバウンドによる外国人が持ち込む携帯端末の通信の安定性を高めるインフラ措置を進めるように要望が出された。NHKBSプレミアムの停波に関してはチャンネル数が減少することによって外部の番組制作会社の仕事が減ることになるが、残ったBS1とBS4Kの番組制作において外部制作会社の作品の放送量が毎日8時間以上確保出るように総務省がガイドラインを提示している。委員からはガイドラインを超えるようにNHKに対して要望し、民間番組制作会社にBS4Kでの番組制作技術の向上と定着を図ることへの要望があった。BS4Kへの新チャンネルの参入についてであるが、3社が申請していてそれぞれ基準を満たしていることから認可予定であることが総務省から報告されている。委員からは3社のうち2社が通販専門チャンネルであること、3社のうち2社が外国にルーツを持つ会社であること、1社が法令違反を繰り返す会社であることに対して疑義を唱える声が上がった。認可申請の絶対基準、全体審査のみで認可を決めることに対する批判である。ごもっともである。申請しているのはジュピターショップチャンネルとOCOとQVCである。OCOは韓国企業の日本法人、QVCはイギリス企業の日本法人である。外資規制に抵触しないようにしているだけで実質は外国企業の日本ブランチである。ジュピターは景品法事法で課徴金を課されたり、公正取引委員会から排除命令も出されている。繰り返し消費者法令に違反する企業である。形式的に認可条件を満たしていても企業活動の内容や経歴、番組の内容に関しても認可前に議論できないことに苦言を呈している。これは立法府側の問題である。そもそも新規3チャンネルのうち2チャンネルが通販チャンネルで本当に良いのか。公共の電波を利用して商品を販売し続ける、そんなチャンネルばかりになっていしまってはチャンネルの多様性は認められなくなる。放送電波という公共的な店先を使わせるだけになるような認可に意義も公共性も見いだせない。委員の苦悩が窺い知れる議事録であった。当審議会は総務省による事後報告の場になっており機能不全を感じる。

 さて、人事案であるが非常勤の委員2名が任期満了を迎え、共に再任を予定されている。再任予定の笹瀬巌氏は慶応義塾大学名誉教授で電子工学、情報工学の専門家である。電子情報学会会長を務めたこともある。当委員会では会長を務めている。会議では議長の役割を果たしている。再任は適当であると考える。

 再任予定の長田三紀氏は全国消費者団体連絡会の理事を兼任している。情報通信関連の多くの委員会で委員を歴任してきた。キャリアや知識に不足は感じるものの視聴者、利用者の立場に立って検討し発言を期待できる委員である。よって、再任案には賛成するべきだと考える。

 以上、電波監理審議会委員の国会同意人事案について賛成することが妥当だと考える。


参考

電波監理審議会 総務省

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/denpa_kanri/index.html

電波監理審議会 Wiki

https://xn--ja-ee4aw542a.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E6%B3%A2%E7%9B%A3%E7%90%86%E5%AF%A9%E8%AD%B0%E4%BC%9A

電波監理審議会(第1122回)会議資料

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/denpa_kanri/kaisai/02kiban01_04000224.html

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